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挽歌 3324 奈良,皇子挽歌,献呈挽歌,枕詞 [題詞]挽歌 ・・・・・・・・・・・
<挂>纒毛ーかけまくもー心に思うのさえ 文恐ーあやに畏しーあやにかしこしー畏れおおいが あえて言葉にして申しあげます 藤原ー藤原のーふぢはらのー藤原の 王都志弥美尓ー都しみみにーみやこしみみにー都には 人下ー人はしもーひとはしもー人は 満雖有ー満ちてあれどもーみちてあれどもー満ちあふれて 君下ー君はしもーきみはしもー君と呼ばれる人は 大座常ー多くいませどーおほくいませどー多くおられるが 徃向ー行き向ふーゆきむかふー廻り来る <年>緒長ー年の緒長くーとしのをながくー長い年月 仕来ー仕へ来しーつかへこしー仕え来た 君之御門乎ー君の御門をーきみのみかどをーわが君の御殿 如天ー天のごとーあめのごとー天のように 仰而見乍ー仰ぎて見つつーあふぎてみつつー仰ぎて見ながら 雖畏ー畏けどーかしこけどー畏れおおくも 思憑而ー思ひ頼みてーおもひたのみてー行く末を頼みに思い 何時可聞ーいつしかもー一刻も早く 日足座而ー日足らしましてーひたらしましてー立派に天皇になられて 十五月之ー望月のーもちづきのー満月のように 多田波思家武登ー満しけむとーたたはしけむとー満ち足りてほしいと 吾思ー吾が思へるーわがもへるーわが思いに思ってきた 皇子命者ー皇子の命はーみこのみことはーその皇子のみことは 春避者ー春さればーはるさればー春になれば 殖槻於之ー植槻が上のーうゑつきがうへのー植槻の岡のほとりの 遠人ー遠つ人ー[とほつひと]ー 待之下道湯ー松の下道ゆーまつのしたぢゆー松林の下道を 登之而ー登らしてーのぼらしてー登って 國見所遊ー国見遊ばしーくにみあそばしー国見をなさり 九月之ー九月のーながつきのー九月の 四具礼<乃>秋者ーしぐれの秋はーしぐれのあきはー時雨れ降る秋には 大殿之ー大殿のーおほとののー御殿の 砌志美弥尓ー砌しみみにーみぎりしみみにー石畳いっばいに 露負而ー露負ひてーつゆおひてー露を受けて 靡<芽>乎ー靡ける萩をーなびけるはぎをー靡いている萩を 珠<手>次ー玉たすきー[たまたすき]ー 懸而所偲ー懸けて偲はしーかけてしのはしーしみじみと愛でられ 三雪零ーみ雪降るーみゆきふるー雪降る 冬朝者ー冬の朝はーふゆのあしたはー冬の朝には 刺楊ー刺し柳ーさしやなぎー刺し柳の 根張梓矣ー根張り梓をーねはりあづさをー根がぴんと張ったような梓弓を 御手二ー大御手にーおほみてにー御手に 所取賜而ー取らし賜ひてーとらしたまひてー取って 所遊ー遊ばししーあそばししー猟りをなさった 我王矣ー我が大君をーわがおほきみをーわが頼りとする大君は 烟立ー霞立つー[かすみたつ]ー霞立つ 春日暮ー春の日暮らしーはるのひくらしー春の日を見暮らしても 喚犬追馬鏡ーまそ鏡ー[まそかがみ]ー 雖見不飽者ー見れど飽かねばーみれどあかねばー見飽きぬほど立派だった 万歳ー万代にーよろづよにーいついつまでも 如是霜欲得常ーかくしもがもとーかくあれかしと願い 大船之ー大船のー[おほぶねの]ー 憑有時尓ー頼める時にーたのめるときにー頼みにしてきたのに 涙言ー泣く我れーなくわれーあまりの知らせに泣きはらすわれ 目鴨迷ー目かも迷へるーめかもまとへるーわが目が狂ったかと 大殿矣ー大殿をーおほとのをー御殿を 振放見者ー振り放け見ればーふりさけみればー仰ぎ見れば 白細布ー白栲にー[しろたへに]ー 餝奉而ー飾りまつりてーかざりまつりてー喪の白栲がはりめぐらされ 内日刺ー[うちひさす]ー 宮舎人方ー宮の舎人もーみやのとねりもー宮の舎人も [一云 者]ー[一云 は]ー[は]ー 雪穂ー栲のほのー[たへのほの]ー 麻衣服者ー麻衣着ればーあさぎぬければー麻衣の喪服を着ている 夢鴨ー夢かもーいめかもー夢か 現前鴨跡ーうつつかもとーうつつかと 雲入夜之ー曇り夜のーくもりよのーやみ夜のように 迷間ー迷へる間にーまとへるほどにー惑っている間に 朝裳吉ー[あさもよし]ー 城於道従ー城上の道ゆーきのへのみちゆーもがりの城上の道より 角障經ー[つのさはふ]ー 石村乎見乍ー磐余を見つつーいはれをみつつー磐余をめざして 神葬ー神葬りー[かむはぶり]ー神として 々奉者ー葬りまつればーはぶりまつればー葬り祀れば 徃道之ー行く道のーゆくみちのー道に立っても 田付○不知ーたづきを知らにーたづきをしらにー方角もわからなく 雖思ー思へどもーおもへどもーどう思っても 印手無見ー験をなみーしるしをなみーかいがなく 雖歎ー嘆けどもーなげけどもー嘆いても 奥香乎無見ー奥処をなみーおくかをなみーきりがなく 御袖ー大御袖ーおほみそでーお袖が 徃觸之松矣ー行き触れし松をーゆきふれしまつをー国見の折に行き触れた松を 言不問ー言問はぬーこととはぬー物言わぬ 木雖在ー木にはありともーきにはありともー木ではあるが 荒玉之ー[あらたまの]ー 立月毎ーたつつきごとにー月がかわるごとに 天原ー天の原ー[あまのはら]ー 振放見管ー振り放け見つつーふりさけみつつー点を仰ぎ見ながら 珠手次ー玉たすきー[たまたすき]ー 懸而思名ー懸けて偲はなーかけてしのはなー偲ぶばかり 雖恐有ー畏くあれどもーかしこくあれどもー畏れおおいながら ・・・・・・・・・・・ [題詞]反歌 角障經 石村山丹 白栲 懸有雲者 皇可聞 [つのさはふ] いはれのやまに [しろたへに] かかれるくもは おほきみにかも ・・・・・・・・・・・
磐余の山に 喪の白栲のように 懸っている雲は あれは今は亡き 大君の霊魂なのかもしれない ・・・・・・・・・・・ 3326 奈良,皇子挽歌,枕詞 [題詞] ・・・・・・・・・・・
礒城嶋之ー礒城島のー[しきしまの]ー 日本國尓ー大和の国にーやまとのくににー国の都なるこのヤマト 何方ーいかさまにー何と 御念食可ー思ほしめせかーおもほしめせかー思われたのか 津礼毛無ーつれもなきーゆかりもない 城上宮尓ー城上の宮にーきのへのみやにー城上の宮に 大殿乎ー大殿をーおほとのをーその御殿に 都可倍奉而ー仕へまつりてーつかへまつりてー 殿隠ー殿隠りーとのごもりー殯の宮を 々座者ー隠りいませばーこもりいませばーお隠れになっていらっしゃるので 朝者ー朝にはーあしたにはー 召而使ー召して使ひーめしてつかひー 夕者ー夕にはーゆふへにはー 召而使ー召して使ひーめしてつかひー 遣之ー使はししーつかはししー朝夕召し使っておられた 舎人之子等者ー舎人の子らはーとねりのこらはー舎人達は 行鳥之ー行く鳥のー[ゆくとりの]ー 群而待ー群がりて待ちーむらがりてまちー鳥のように群がって 有雖待ーあり待てどーありまてどーはべっているけれど 不召賜者ー召したまはねばーめしたまはねばーお召しがないので 劔刀ー剣大刀ー[つるぎたち]ー 磨之心乎ー磨ぎし心をーとぎしこころをー張りつめていた気持も 天雲尓ー天雲にー[あまくもに]ー天雲のように 念散之ー思ひはぶらしーおもひはぶらしーちりぢりになってしまって 展轉ー臥いまろびーこいまろびー伏し悶え 土打哭杼母ーひづち哭けどもーひづちなけどもー泣き濡れても 飽不足可聞ー飽き足らぬかもーあきだらぬかもー悲しみは 晴れることがありません ・・・・・・・・・・・ 3327 美努王,譬喩,皇子挽歌 [題詞] ・・・・・・・・・・・
百小竹之ー百小竹のー[ももしのの]ー 三野王ー三野の王ーみののおほきみー美努王が 金厩ー西の馬屋にーにしのうまやにー西の厩に 立而飼駒ー立てて飼ふ駒ーたててかふこまー飼っている馬も 角厩ー東の馬屋にーひむがしのうまやにー東の厩に 立而飼駒ー立てて飼ふ駒ーたててかふこまー飼っている馬も 草社者ー草こそばーくさこそばー草を 取而飼<曰戸>ー取りて飼ふと言へーとりてかふといへー取ってあたえた餌はあるのに 水社者ー水こそばーみづこそばー水は ○而飼<曰戸>ー汲みて飼ふと言へーくみてかふといへー汲んであたえた水があるのに 何然ー何しかもーなにしかもーなぜ 大分青馬之ー葦毛の馬のーあしげのうまのー葦毛の馬は 鳴立鶴ーいなき立てつるーいなきたてつるーいなないているのだろう ・・・・・・・・・・・ [題詞]反歌 衣袖 大分青馬之 嘶音 情有鳧 常従異鳴 [ころもで] あしげのうまの いなくこゑ こころあれかも つねゆけになく
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白毛交じりの葦毛の馬がいななく声は 主人の死を悲しむ心のためか ふだんと違う様子でいなないているよ ・・・・・・・・・・・ |
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