ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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以下<笠女郎の歌二十四首>の意訳・解説は[家持と人々 女たち(4)水垣 久著]より<全記事転載> 
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/column11.html
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4 592;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恨み,贈答,序詞

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

闇夜尓  鳴奈流鶴之  外耳  聞乍可将有  相跡羽奈之尓

闇の夜に 鳴くなる鶴の 外のみに 聞きつつかあらむ 逢ふとはなしに 

やみのよに なくなるたづの よそのみに ききつつかあらむ あふとはなしに
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闇夜に鳴く鶴の声を聞くように

遠くからお噂ばかりを聞いて過ごすのでしょうか

お逢いすることもできないまま
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都に帰った彼女は、再び恋人と引き離された哀しみを歌います。

「闇の夜に鳴くなる鶴」とは、暗闇の中でお互いの所在が分からなくなった鶴のカップルを言っているのでしょう。

鳴き声でそこにいると知ることは出来ても、姿は見えず、逢うことは出来ない、ということです。
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* 「のみ」 副助詞。種々の語に付き、そのことだけに限定する意をあらわす。「〜だけ」「〜ばかり」。強調の意ともなる。語源は「の身」で、「それ以外の何物でもない」ことを示すのが原義。古くは「のみ-を」「のみ-に」などと格助詞の上に付いたが、平安時代以降は「を-のみ」「に-のみ」などと格助詞の下に付くようになった。



4 593;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,待つ,奈良,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

君尓戀  痛毛為便無見  楢山之  小松之下尓  立嘆鴨

君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の 小松が下に 立ち嘆くかも 

きみにこひ いたもすべなみ ならやまの こまつがしたに たちなげくかも
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あなたへの恋心が募って

もうどうしようもなくなり

奈良山の小松の下に佇んで嘆くばかりです
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奈良山からは、家持の邸のある佐保の里を眺めることができたでしょう。

しかし、彼はまだ越中にいました。
せめてなにか寄り添うものが欲しいとでもいうように、笠女郎は「小松が下に」佇み、嘆くばかりでした。

この歌は笠女郎の名歌のなかでも、いや万葉集の全恋歌のなかでも、とびきりの秀詠です。
やり場のない深い悲しみを歌いながら、まるで一本の細く清潔な樹木のように、健気で凜とした姿をしています。 
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4 594;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,序詞,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

吾屋戸之  暮陰草乃  白露之  消蟹本名  所念鴨

我がやどの 夕蔭草の 白露の 消ぬがにもとな 思ほゆるかも 

わがやどの ゆふかげくさの しらつゆの けぬがに おもほゆるかも
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庭にあるの夕陰草の葉に置く白露のように

今にも消えてしまいそうなほど

無闇に恋い焦がれているのです
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夕方、家の庭で物思いに耽る女のようすが、ありありと浮びます。

「夕陰草」は夕方の光の中にほのかに浮かび上がって見える草の意で、彼女の造語であろうと言われています。
なんと情趣ある言葉でしょう。 
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* 「がに」 接続助詞 比況。動詞・助動詞の終止形を承け、「〜しそうに」「〜するばかりに」「〜するかのように」などの意をあらわす。完了の助動詞「ぬ」に付き「ぬがに」の形をとることが多い。疑問の助詞「か」と格助詞「に」が結び付いたものかという。
* 「もと‐な」[副]「もと」は根本の意。「な」は形容詞「無し」の語》1 わけもなく。みだりに。



4 595;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

吾命之  将全<牟>限  忘目八  弥日異者  念益十方

我が命の 全けむ限り 忘れめや いや日に異には 思ひ増すとも 

わがいのちの またけむかぎり わすれめや いやひにけには おもひますとも
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私の命が損なわれない限り

貴方のことを忘れるものですか

たとえ日に日に恋心が増すことはあっても

忘れるなんて
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ここで再び転調です。
恋を遂げようとのつよい意志が復活します。

彼女はもう一度越中への旅に出ました。

続く二首は、彼女が家持のそばにもどったことを暗示しています。
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サ 596;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,贈答,掛詞

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)


八百日徃  濱之沙毛  吾戀二  豈不益歟  奥嶋守

八百日行く 浜の真砂も 我が恋に あにまさらじか 沖つ島守 

やほかゆく はまのまなごも あがこひに あにまさらじか おきつしまもり
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歩き尽くすのに八百日もかかるような長い長い浜―そんな浜の真砂(まさご)を全部合わせたって

私の恋心の果てしなさには敵いますまい

そうでしょう

沖の島の島守さん
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吉田金彦氏が指摘している通り、「八百日ゆく浜」は、越中か能登のどこかの海岸を言っていると思えます。

「沖つ島」は、能登半島沖の舳倉島(へくらじま)のことで、「沖つ島守」が越中守家持を暗示していることは、明らかでしょう。

因みに家持には越中時代に詠んだ次のような歌があります。

 越の海の 信濃の浜を ゆき暮らし 長き春日も 忘れて思へや
 (17-4020)<「や」已然形に付き、反語「〜だろうか、いやそんなことはない」の意をあらわす。>


この歌など、笠女郎に応答したような気がしなくもありません。

普通、「忘れて思へや」は都の家族のことを言うと解釈されているのですが、遥々都から訪ねてくる旨手紙を寄越した、恋人への思いだったのかも知れません。 
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4 597;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,枕詞,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)


宇都蝉之  人目乎繁見  石走  間近<君>尓  戀度可聞

うつせみの 人目を繁み 石橋の 間近き君に 恋ひわたるかも 

うつせみの ひとめをしげみ いしはしの まちかききみに こひわたるかも
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世間の人目がうるさいので

飛石のように間近にいる貴方に逢うことも出来ず

ただ恋い焦がれながら過ごしているのです
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再度恋人のそばまでやって来ながら、やはり逢うことはままならない。

国守館に住む家持は、常に下僚に取り巻かれ、気ままな行動など許されなかったでしょう。

彼女は恋しさに痩せ、死にそうになる、と訴えます。
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