ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

全体表示

[ リスト ]

以下<笠女郎の歌二十四首>の意訳・解説は[家持と人々 女たち(4)水垣 久著]より<全記事転載> 
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/column11.html
・・・・・・・・・・・・・・
4 598;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋病,恋情,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

戀尓毛曽 人者死為 水<無>瀬河  下従吾痩  月日異

恋にもぞ 人は死にする 水無瀬川 下ゆ我れ痩す 月に日に異に 

こひにもぞ  ひとはしにする  みなせがは  したゆわれやす  つきにひにけに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
恋のためにだって人は死んでしまうのです

伏流水のように目には見えず

ひそかに慕う恋心から

私は痩せてゆくのです

日毎に月毎に。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



4 599;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

朝霧之 欝相見之 人故尓 命可死 戀渡鴨

朝霧の おほに相見し 人故に 命死ぬべく 恋ひわたるかも 

[あさぎりの] おほにあひみし ひとゆゑに いのちしぬべく こひわたるかも

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝霧のようにほのかに逢っただけの人のために

私は死にそうなほどの思いで

ずっと恋をし続けるのですねえ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これはようやく逢瀬を遂げた、後朝(きぬぎぬ)の歌でしょう。

「相見し」は、単に顔を合わせたということでなく、ともに夜を過ごしたことを言っています。
「朝霧の」は、「欝」に掛けた枕詞的な用法ですが、霧の中を帰って行く恋人の姿をも暗示しているような気がします。

これも素晴らしい歌です。 



4 600;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,三重,序詞,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

伊勢海之 礒毛動尓 因流波 恐人尓 戀渡鴨

伊勢の海の 礒もとどろに 寄する波 畏き人に 恋ひわたるかも 

[いせのうみの いそもとどろに よするなみ] かしこきひとに こひわたるかも

・・・・・・・・・・・・・・・・・
伊勢の海の磯に轟々と音立てて寄せる波

そんな身も竦むほどの勿体ないお方に

私はずっと恋し続けているのですねえ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「かしこき」に恐ろしい意と畏れ多い意と両意を掛けています。
「かしこき人」は、越中守という然るべき地位にあった家持を言っています。

吉田氏はこの歌を、家持が伊勢守だった頃(宝亀七年任官、家持五十九歳)に贈った作だろうとしています。
これまた魅力的な解釈ですが、私は一連の歌をもう少し時間的に連続したものとして読みたい気持の方が強いので、ここでは、神風の吹く伊勢という畏き土地を比喩として借りたものだろうと考えておきます。 



4 601;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

従情毛 吾者不念寸 山河毛 隔莫國 如是戀常羽

心ゆも 我は思はずき 山川も 隔たらなくに かく恋ひむとは 

こころゆも わはおもはずき やまかはも へだたらなくに かくこひむとは

・・・・・・・・・・・・・・・・
思いもよりませんでした

もう山川を隔てているわけではないのに

これほど恋い焦がれようとは。
・・・・・・・・・・・・・・・・
家持はようやく帰京したようです。
奈良山のそばに住んでいたらしい笠女郎にとって、佐保の邸に落ち着いた家持は、再び近隣の人となりました。
彼女はこうなることをずっと願っていたはずです。

ところが、「山河を隔て」なくなった今も、やはり恋しさに苛まれる。
思いもしなかった、と言うのです。
このように、彼女の願望はつねに現実によって裏切られます。
しかし、それが恋する者の宿命でしょう。
それでもなお彼女は傷つくことを恐れず、恋の成就を願い続けずにはいません。

この後家持は、因幡守に左遷されるまでの七年ほどを都で過ごすことになります。
笠女郎の恋は、時に鎮静し、時に炎を上げます。 
* 「ずき」 連用形「ず」+過去の助動詞「き」。「〜しなかった」。



4 602;相聞,作者:笠女郎,大伴家持、恋情,贈答

[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)

暮去者  物念益  見之人乃  言問為形  面景尓而

夕されば 物思ひまさる 見し人の 言とふ姿 面影にして 

ゆふされば ものもひまさる みしひとの こととふすがた おもかげにして

・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕暮れになると物思いがいっそう募ります

お会いした方の

話しかける時の姿が

面影に浮かんで来て
・・・・・・・・・・・・・・・・・

.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事