ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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7 1271;雑歌,柿本人麻呂歌集

[題詞]行路

遠有而 雲居尓所見 妹家尓 早将至 歩黒駒

遠くありて 雲居に見ゆる 妹が家に 早く至らむ 歩め黒駒 

とほくありて くもゐにみゆる いもがいへに はやくいたらむ あゆめくろこま

[左注]右一首柿本朝臣人麻呂之歌集出

雲を隔てた遠くに見える
妻の家に早く着きたい
もっと歩け歩け黒毛の馬よ

* ひねもす歌の言葉に惹かれます。

くも‐い〔‐ゐ〕【雲居/雲井】.

《「居」はすわるの意。「井」は当て字》

1 雲のある場所。雲のたなびいている所。大空。
「みずからを―のひばりに比べ」〈倉田・愛と認識との出発〉

2 雲。
「はしけやし我家(わぎへ)の方よ―立ち来(く)も」〈記・中・歌謡〉

3 はるかに遠く、または高く隔たった所。
「―なる海山越えてい行きなば吾(あれ)は恋ひむな後は相寝(あひぬ)とも」〈万・三一九〇〉

4 宮中。禁中。
「わざとの御学問はさるものにて、琴、笛の音にも―を響かし」〈源・桐壺〉

5 皇居のある所。みやこ。
「秋の夜のつきげの駒よ我が恋ふる―を駆けれ時の間も見む」〈源・明石〉



くもいぢょうし【雲井調子】

近世箏曲(そうきょく)で、平調子(ひらぢょうし)とともに最も普通の調子。平調子の第3と第8の弦を半音下げ、第4と第9の弦を1全音上げたもの。


くもいなす【雲居なす】

[枕]

1 雲のかかる遠くの意から、「遠く」にかかる。
「隼人(はやひと)の薩摩(さつま)の瀬戸を―遠くも我は今日見つるかも」〈万・二四八〉

2 雲のように揺れ動く心の意から、「心」にかかる。
「―心もしのに立つ霧の思ひ過ぐさず」〈万・四〇〇三〉


くもいのさくら【雲居の桜】

1 宮中にある桜。

2 吉野山世尊寺の近くにあったという桜。


くもいのそら【雲居の空】

1 雲のある大空。
「はかなくて煙となりし人により―の睦(むつま)じきかな」〈和泉式部集・上〉

2 遠く離れた所。また、宮中。
「君は三笠の山高み―にまじりつつ」〈増鏡・おどろの下〉


くもいのよそ【雲居の余所】

遠く離れている所。はるかに隔たった所。
「限りなき―に別るとも人を心に遅らさむやは」〈古今・離別〉


くもいはるか【雲居遥か】

[連語]

1 非常に遠く離れているさま。
「ちはやぶる神にもあらぬ我が仲の―になりもゆくかな」〈後撰・恋六〉

2 及びもつかないさま。
「逢ふことは―になるかみの音に聞きつつ恋ひわたるかな」〈古今・恋・一〉
7 1272;雑歌,柿本人麻呂歌集,旋頭歌,枕詞

[題詞]旋頭歌

劔<後> 鞘納野 葛引吾妹 真袖以 著點等鴨 夏草苅母

大刀の後 鞘に入野に 葛引く我妹 真袖もち 着せてむとかも 夏草刈るも 

[たちのしり] [さやに]いりのに くずひくわぎも まそでもち きせてむとかも なつくさかるも

[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)

入野の葛を引き採って
その繊維で袖付き着物を作り
両袖を持ってそれを私に着せようと
そのために妻は暑い中を夏草を刈っている
・・・・・・・・・・
吾妹は入野で袖をからげて葛草を刈り取っている
私に着せようと一生懸命なのだろう
夏草も刈り取っていることよ
・・・・・・・・・・
剣太刀は鞘に入れる
その入野で
蔓を引くかわいい子
立派な衣の袖を掛けてあげよう
夏草を刈っても

* 枕詞が成熟していく時代を感じさせる。身に添える女性に似合う「剣太刀」。
 
7 1273;雑歌,柿本人麻呂歌集,旋頭歌,大阪

[題詞](旋頭歌)

住吉 波豆麻<公>之 馬乗衣 雜豆臈 漢女乎座而 縫衣叙

住吉の 波豆麻の君が 馬乗衣 さひづらふ 漢女を据ゑて 縫へる衣ぞ 

すみのえの はづまのきみが うまのりころも [さひづらふ] あやめをすゑて ぬへるころもぞ

住吉の波豆麻の殿の乗馬服は
中国の女性を雇って縫わせた服なんですよ
綾錦か 綺麗なものですねえ

* 「さひづらふ」は、漢女(あやめ)に掛かる枕詞。鳥が囀る意。
 渡来人の外国語が鳥が囀るように聞こえたからか。
7 1274;雑歌,柿本人麻呂歌集,旋頭歌,大阪

[題詞](旋頭歌)

住吉 出見濱 柴莫苅曽尼 未通女等 赤裳下 閏将徃見

住吉の 出見の浜の 柴な刈りそね 娘子らが 赤裳の裾の 濡れて行かむ見む 

すみのえの いでみのはまの しばなかりそね をとめらが あかものすその ぬれてゆかむみむ

[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)

住吉の出見の浜の柴をあまり刈らないでくれ
都の女官たちが浜辺で戯れて
赤裳の裾が濡れて行くのを
隠れて覗き見る柴なんだから


<タ・テ>http://blogs.yahoo.co.jp/chiyokokkk/24195678.html?type=folderlist
(住吉の 出見の浜の 柴は刈らないでおくれ おとめらの 赤い裳裾が 濡れたまま行くのを草陰からそっと見よう)
「赤裳の裾」は、女官のつけた裳が赤かったから。
当時の赤は、赤土(はに)などの摺り染めだから、濡れるといっそう鮮やかになり、男性の心をときめかした。
エロチックだったらしい。
ほほう、殿方は、裳裾が濡れたら、エロチシズムを感じるんだあ。ふむふむ。
今度、雨でスカートが濡れたら、ダンナサンに、
「感じる?」って聞いてみよう。(#´ο`#)

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7 1275;雑歌,柿本人麻呂歌集,旋頭歌,大阪

[題詞](旋頭歌)

住吉 小田苅為子 賎鴨無 奴雖在 妹御為 私田苅

住吉の 小田を刈らす子 奴かもなき 奴あれど 妹がみためと 私田刈る 

[すみのえの] をだをからすこ やつこかもなき やつこあれど いもがみためと わたくしだかる

[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)

そこで田を刈っているお若い兄さん
働かせる奴(やっこ)はいないのかい

奴はいますよ でも今は
自分が奴でいい人のために
その人の田を刈っているのさ

* 「私田」律令制で、位田・職田・賜田・口分田・墾田など個人に供給された田。
* 「奴(やっこ)」最下級の隷属民 奴婢。

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