ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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3978天平19年3月20日,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,枕詞,高岡

[題詞]述戀緒歌一首[并短歌]

・・・・・・・・・・・・・
妹毛吾毛ー妹も吾れもーいももあれもー妻も私も
許己呂波於夜自ー心は同じーこころはおやじー思いは同じである
多具敝礼登ーたぐへれどーたぐへれどー寄り添っていても
伊夜奈都可之久ーいやなつかしくーますます慕わしく
相見<婆>ー相見ればーあひみればー床に入れば
登許波都波奈尓ー常初花にーとこはつはなにーいつも初花のように新鮮で
情具之ー心ぐしーこころぐしーせつなく苦しい気詰まりもなく
眼具之毛奈之尓ーめぐしもなしにー気がかりで見苦しい思いも無しに
波思家夜之ーはしけやしー愛しい 
安我於久豆麻ー吾が奥妻ーあがおくづまーわが心の奥の妻よ
大王能ー大君のーおほきみのー陛下の 
美許登加之古美ー命畏みーみことかしこみーご命令を畏れ謹んで
阿之比奇能ー[あしひきの]ー
夜麻古要奴由伎ー山越え野行きーやまこえぬゆきー山を越え野を過ぎ
安麻射加流ー天離るー[あまざかる]ー
比奈乎左米尓等ー鄙治めにとーひなをさめにとー都から空遠く隔たった地方を治めるため
別来之ー別れ来しーわかれこしー別れてきた
曽乃日乃伎波美ーその日の極みーそのひのきはみーその日を最後
荒璞能ー[あらたまの]ー
登之由吉我敝利ー年行き返りーとしゆきがへりー年が改まり
春花<乃>ー春花のーはるはなのー春の花が
宇都呂布麻泥尓ーうつろふまでにー散る季節になるまで
相見祢婆ー相見ねばーあひみねばー共寝することが出来ないので
伊多母須敝奈美ーいたもすべなみー何とも致し方がなく
之伎多倍能ー敷栲のー[しきたへの]ー
蘇泥可敝之都追ー袖返しつつーそでかへしつつー袖を折り返しながら
宿夜於知受ー寝る夜おちずーぬるよおちずー寝る夜毎に
伊米尓波見礼登ー夢には見れどーいめにはみれどー夢に見るけれど
宇都追尓之ーうつつにしー現実に
多太尓安良祢婆ー直にあらねばーただにあらねばーじかに躰を触れるわけではないから
孤悲之家口ー恋しけくーこひしけくー恋しさは
知敝尓都母里奴ー千重に積もりぬーちへにつもりぬー千重に積もった
近<在>者ー近くあらばーちかくあらばー近くにいるのなら
加敝利尓太仁母ー帰りにだにもーかへりにだにもーちょっと帰るだけでも
宇知由吉○ーうち行きてーうちゆきてー都へ行って
妹我多麻久良ー妹が手枕ーいもがたまくらー妻と手枕を
佐之加倍○ーさし交へてーさしかへてー差し交わして
祢天蒙許万思乎ー寝ても来ましをーねてもこましをー寝て来ようものを
多麻保己乃ー玉桙のー[たまほこの]ー
路波之騰保久ー道はし遠くーみちはしとほくーなにしろ道は遠く
關左閇尓ー関さへにーせきさへにー間には関さえ
敝奈里○安礼許曽ーへなりてあれこそー隔てているのだから
与思恵夜之ー[よしゑやし]ー ままよ
餘志播安良武曽ーよしはあらむぞー手立てはあるはずだ
霍公鳥ーほととぎすー霍公鳥が
来鳴牟都奇尓ー来鳴かむ月にーきなかむつきにー来て鳴く四月に
伊都之加母ーいつしかもー(副詞「いつしか」に、係助詞「も」のついたもの)いつか
波夜久奈里那牟ー早くなりなむーはやくなりなむー早くならないものか
宇乃花能ー卯の花のーうのはなのー卯の花が
尓保敝流山乎ーにほへる山をーにほへるやまをー咲きにおう山を
余曽能未母ーよそのみもーよそ目にばかり
布里佐氣見都追ー振り放け見つつーふりさけみつつー眺めやりつつ
淡海路尓ー近江道にーあふみぢにー近江道に
伊由伎能里多知ーい行き乗り立ちーいゆきのりたちー足を踏み入れ
青丹吉ー[あをによし]ー
奈良乃吾家尓ー奈良の吾家にーならのわぎへにー奈良の吾が家で
奴要鳥能ーぬえ鳥のー[ぬえどりの]ー
宇良奈氣之都追ーうら泣けしつつーうらなけしつつーぬえ鳥のようにしのび泣きながら
思多戀尓ー下恋にーしたごひにー〕(「した」は心の意)面には出さず
於毛比宇良夫礼ー思ひうらぶれーおもひうらぶれー恋しさに打ちひしがれて
可度尓多知ー門に立ちーかどにたちー門先に立っては
由布氣刀比都追ー夕占問ひつつーゆふけとひつつーいつ逢えるかと夕占で占ったりしつつ
吾乎麻都等ー吾を待つとーわをまつとー私を待ち焦がれて
奈須良牟妹乎ー寝すらむ妹をーなすらむいもをー寝ているだろう妻に
安比○早見牟ー逢ひてはや見むーあひてはやみむー早く逢いたいそして共寝しよう
・・・・・・・・・・・・・




3979 天平19年3月20日,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,枕詞,高岡

[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])

安良多麻<乃> 登之可敝流麻泥 安比見祢婆 許己呂毛之努尓 於母保由流香

あらたまの 年返るまで 相見ねば 心もしのに 思ほゆるかも 

あらたまの としかへるまで あひみねば こころもしのに おもほゆるかも

・・・・・・・・・・・・・
年が改まるまで共寝しなかったので
心もうちしおれるばかりに妻が恋しく思えることだ
・・・・・・・・・・・・・

* 「相見る」は、単に顔を合わせる意から、性交渉のまで含む。ここでは妻の肌身を恋い慕っていることを強調。



3980 天平19年3月20日,作者:大伴家持,枕詞,望郷,恋情,悲別,高岡

[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])

奴婆多麻乃 伊米尓<波>母等奈 安比見礼騰 多太尓安良祢婆 孤悲夜麻受家里

ぬばたまの 夢にはもとな 相見れど 直にあらねば 恋ひやまずけり 

ぬばたまの いめにはもとな あひみれど ただにあらねば こひやまずけり

・・・・・・・・・・・・・
夜の夢ではやたらと逢っているが
じかに触れるわけではないのだから
恋しさは止みはしなかった
・・・・・・・・・・・・・





<出典・転載[大伴家持全集 訳注編 Vol.2水垣 久 編訳]等より。>
http://www.asahi-net.or.jp/~SG2H-ymst/yakayak2.html



3981 天平19年3月20日,作者:大伴家持,枕詞,望郷,恋情,悲別,高岡

[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])

安之比奇能 夜麻伎敝奈里○ 等保家騰母 許己呂之遊氣婆 伊米尓美要家里

あしひきの 山きへなりて 遠けども 心し行けば 夢に見えけり 

[あしひきの] やまきへなりて とほけども こころしゆけば いめにみえけり

・・・・・・・・・・・
山が隔てて遠いけれども
心が行き通じ合ったので
夢で逢えたのだ
・・・・・・・・・・・

* 「へなり」は「隔て」の意であるが、「き」の意味するところは不詳。




3982 天平19年3月20日,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,高岡

[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])

春花能 宇都路布麻泥尓 相見祢<婆> 月日餘美都追 伊母麻都良牟曽

春花の うつろふまでに 相見ねば 月日数みつつ 妹待つらむぞ 

はるはなの うつろふまでに あひみねば つきひよみつつ いもまつらむぞ

・・・・・・・・・・・
春の花が散ってしまうまで逢わなかったので
月日を数えながら妻は私を待っていることだろう
・・・・・・・・・・・

* 「つつ」は、接続助詞。動詞の連用形に付き、動作の反復・継続を表す。「繰り返し〜して」「そのたびに〜して」。

 

3983 天平19年3月29日,作者:大伴家持,枕詞,恨,高岡

[題詞]立夏四月既經累日而由未聞霍公鳥喧因作恨歌二首
(立夏四月既に累日を経ぬれども未だ霍公鳥の鳴くを聞かず因りて作る恨みの歌二首)

安思比奇能 夜麻毛知可吉乎 保登等藝須 都奇多都麻泥尓 奈仁加吉奈可奴

あしひきの 山も近きを 霍公鳥 月立つまでに 何か来鳴かぬ 

[あしひきの] やまもちかきを ほととぎす つきたつまでに なにかきなかぬ

・・・・・・・・・・・
ここは山も近いのに
ほととぎすよ
立夏を過ぎて四月になっても
何故鳴きに来てくれないのか
・・・・・・・・・・・




3984 天平19年3月29日,作者:大伴家持,恨,高岡

[題詞](立夏四月既經累日而由未聞霍公鳥喧因作恨歌二首)

多麻尓奴久 波奈多知<婆>奈乎 等毛之美思 己能和我佐刀尓 伎奈可受安流良之

玉に貫く 花橘を ともしみし この吾が里に 来鳴かずあるらし 

たまにぬく はなたちばなを ともしみし このわがさとに きなかずあるらし

・・・・・・・・・・・
糸に通してくす玉にする花橘が
乏しいと見てか
霍公鳥はこの私の里に 
来て鳴かないらしい
・・・・・・・・・・・




3985 天平19年3月30日,作者:大伴家持,高岡,山讃美,寿歌,枕詞,依興,儀礼歌,土地讃美

[題詞]二上山賦一首 [此山者有射水郡也]


・・・・・・・・・・・
伊美都河泊ー射水川ーいみづがはーいみずがわ(射水川=小矢部川)が
伊由伎米具礼流ーい行き廻れるーいゆきめぐれるー麓を廻って流れる
多麻久之氣ー玉櫛笥ー[たまくしげ]ー
布多我美山者ー二上山はーふたがみやまはー二上山は
波流波奈乃ー春花のーはるはなのー春は花の
佐家流左加利尓ー咲ける盛りにーさけるさかりにー咲く盛りに
安吉<能>葉乃ー秋の葉のーあきのはのー秋は黄葉の 
尓保敝流等伎尓ーにほへる時にーにほへるときにー鮮やかに色づく時に
出立○ー出で立ちてーいでたちてー外に出て
布里佐氣見礼婆ー振り放け見ればーふりさけみればー仰ぎ見れば
可牟加良夜ー神からやーかむからやー国神の神々しさからか
曽許婆多敷刀伎ーそこば貴きーそこばたふときーかくも貴く感じ
夜麻可良夜ー山からやーやまからやー山の品格からか
見我保之加良武ー見が欲しからむーみがほしからむーかくも目を惹かれるのか
須賣可未能ー統め神のーすめかみのー神を尊敬していう語
須蘇未乃夜麻能ー裾廻の山のーすそみのやまのー山の裾まわりの
之夫多尓能ー渋谿のーしぶたにのー富山県氷見市渋谷、いま雨晴(あまはらし)海岸と呼ばれるあたりを 言った
佐吉乃安里蘇尓ー崎の荒礒にーさきのありそにー海に入る渋谿の崎の荒磯に
阿佐奈藝尓ー朝なぎにーあさなぎにー朝なぎに
餘須流之良奈美ー寄する白波ーよするしらなみー寄せる白波
由敷奈藝尓ー夕なぎにーゆふなぎにー夕なぎに
美知久流之保能ー満ち来る潮のーみちくるしほのー満ちて来る潮
伊夜麻之尓ーいや増しにーいやましにーいよいよますます
多由流許登奈久ー絶ゆることなくーたゆることなくー絶えることなく
伊尓之敝由ーいにしへゆー遠い過去から
伊麻乃乎都豆尓ー今のをつつにーいまのをつつにー今現在に至るまで(今(いま)の現(おつつ)に)
可久之許曽ーかくしこそー「かくこそ」に強調の副助詞「し」が入ったもの。 このように
見流比登其等尓ー見る人ごとにーみるひとごとにー見る人すべてが
加氣○之努波米ー懸けて偲はめーかけてしのはめー心にかけて誉めしのぶことであろう
・・・・・・・・・・・
 
 
 

3986 天平19年3月30日,作者:大伴家持,高岡,序詞,寿歌,儀礼歌,土地讃美,依興

[題詞](二上山賦一首 [此山者有射水郡也])

之夫多尓能 佐伎能安里蘇尓 与須流奈美 伊夜思久思久尓 伊尓之敝於母保由

渋谿の 崎の荒礒に 寄する波 いやしくしくに いにしへ思ほゆ 

しぶたにの さきのありそに よするなみ いやしくしくに いにしへおもほゆ

・・・・・・・・・・・
渋谿の先の荒磯に
次々と寄せる波のように
しきりに昔のことが思い起こされる
・・・・・・・・・・ ・




3987 天平19年3月30日,作者:大伴家持,土地讃美,枕詞,高岡,寿歌,儀礼歌

[題詞](二上山賦一首 [此山者有射水郡也])

多麻久之氣 敷多我美也麻尓 鳴鳥能 許恵乃孤悲思吉 登岐波伎尓家里

玉櫛笥 二上山に 鳴く鳥の 声の恋しき 時は来にけり 

[たまくしげ] ふたがみやまに なくとりの こゑのこひしき ときはきにけり

・・・・・・・・・・・
二上山に鳴く鶯の
声に恋親しむ時が
今年もやってきた 
・・・・・・・・・・・




3988 天平19年4月16日,作者:大伴家持,枕詞,叙景

[題詞]四月十六日夜裏遥聞霍公鳥喧述懐歌一首

奴婆多麻<乃> 都奇尓牟加比C 保登等藝須 奈久於登波流氣之 佐刀騰保美可聞

ぬばたまの 月に向ひて 霍公鳥 鳴く音遥けし 里遠みかも 

[ぬばたまの] つきにむかひて ほととぎす なくおとはるけし さとどほみかも

・・・・・・・・・・・
春浅い月の夜に
ほととぎすの鳴く声が
遥かに聞こえたようだ
まだ里からは遠くにいるらしい
・・・・・・・・・・・




3989 天平19年4月20日,作者:大伴家持,宴席,恋情,羈旅,出発,悲別,序詞,秦八千島,高岡

[題詞]大目秦忌寸八千嶋之舘餞守大伴宿祢家持宴歌二首

奈呉能宇美能 意吉都之良奈美 志苦思苦尓 於毛保要武可母 多知和可礼奈<婆>

奈呉の海の 沖つ白波 しくしくに 思ほえむかも 立ち別れなば 

なごのうみの おきつしらなみ しくしくに おもほえむかも たちわかれなば

・・・・・・・・・・・
奈呉の海の沖に立っている白波のように
絶え間なく
思うことでしょう
お別れして都に行けば 
・・・・・・・・・・・




3990 天平19年4月20日,作者:大伴家持,宴席,恋情,羈旅,悲別,秦八千島,高岡

[題詞](大目秦忌寸八千嶋之舘餞守大伴宿祢家持宴歌二首)

和<我>勢故波 多麻尓母我毛奈 手尓麻伎C 見都追由可牟乎 於吉C伊加婆乎思

吾が背子は 玉にもがもな 手に巻きて 見つつ行かむを 置きて行かば惜し 

わがせこは たまにもがもな てにまきて みつつゆかむを おきていかばをし

・・・・・・・・・・・
あなたが玉ででもあってほしい
玉なら手首に巻いて
見ながら行けるのに
別れて置いて行くのは
何とも残念に思う
・・・・・・・・・・・

万葉集巻17 3991




3991天平19年4月24日,作者:大伴家持,遊覧,土地讃美,氷見,枕詞,道行き,高岡,寿歌

[題詞]遊覧布勢水海賦一首[并短歌] [此海者有射水郡舊江村也]
   布勢の内海を遊覧するの賦


・・・・・・・・・・・・
物能乃敷能ー[もののふの]ー
夜蘇等母乃乎能ー八十伴の男のーやそとものをのー大勢の大伴の
於毛布度知ー思ふどちーおもふどちー仲の良い者が
許己呂也良武等ー心遣らむとーこころやらむとー気を晴らそうと
宇麻奈米○ー馬並めてーうまなめてー馬を並らべて
宇知久知夫利乃ーうちくちぶりのー(くちぶり)は、言葉つき 越中訛り
之良奈美能ー白波のーしらなみのー白波の
安里蘇尓与須流ー荒礒に寄するーありそによするー荒礒に寄せる
之夫多尓能ー渋谿のーしぶたにのー渋谿の
佐吉多母登保理ー崎た廻りーさきたもとほりー崎を行き巡り
麻都太要能ー松田江のーまつだえのー松田江の
奈我波麻須義○ー長浜過ぎてーながはますぎてー長浜を過ぎて
宇奈比河波ー宇奈比川ーうなひがはー宇奈比川の
伎欲吉勢其等尓ー清き瀬ごとにーきよきせごとにー清い瀬ごとに
宇加波多知ー鵜川立ちーうかはたちー鵜飼を楽しみ
可由吉加久遊岐ーか行きかく行きーかゆきかくゆきーあちらへ行きこちらへ行き
見都礼騰母ー見つれどもーみつれどもー風景を楽しんだが
曽許母安加尓等ーそこも飽かにとーそこもあかにとーそれでもまだ足りないとばかりに
布勢能宇弥尓ー布施の海にーふせのうみにー氷見市の地にあった広大な淡水湖
布祢宇氣須恵○ー舟浮け据ゑてーふねうけすゑてー舟を浮べて
於伎敝許藝ー沖辺漕ぎーおきへこぎー沖へ漕いだり
邊尓己伎見礼婆ー辺に漕ぎ見ればーへにこぎみればー海辺へ漕いだりして見ると
奈藝左尓波ー渚にはーなぎさにはー渚には 
安遅牟良佐和伎ーあぢ群騒きーあぢむらさわきー鴨の群れが騒ぎ
之麻<未>尓波ー島廻にはーしまみにはー島の周りでは
許奴礼波奈左吉ー木末花咲きーこぬれはなさきー梢に花が咲き
許己婆久毛ーここばくもー副詞「ここば」に副詞語尾「く」の付いたもの。たいそうな意。これは何とまあ
見乃佐夜氣吉加ー見のさやけきかーみのさやけきかー眺めのあざやかであることよ
多麻久之氣ー玉櫛笥ー[たまくしげ]ー
布多我弥夜麻尓ー二上山にーふたがみやまにー二上山に
波布都多能ー延ふ蔦のーはふつたのー延ふ蔦のように
由伎波和可礼受ー行きは別れずーゆきはわかれずー先行きも別れることなく
安里我欲比ーあり通ひーありがよひー「あり」は、常に反復する等の意。
伊夜登之能波尓ーいや年のはにーいやとしのはにー毎年毎年
於母布度知ー思ふどちーおもふどちー気の合った同士
可久思安蘇婆牟ーかくし遊ばむーかくしあそばむーこうして遊ぼうではないか
異麻母見流其等ー今も見るごとーいまもみるごとー今この時のように
・・・・・・・・・・・・



3992天平19年4月24日,作者:大伴家持,遊覧,土地讃美,氷見,寿歌

[題詞](遊覧布勢水海賦一首[并短歌] [此海者有射水郡舊江村也])

布勢能宇美能 意枳都之良奈美 安利我欲比 伊夜登偲能波尓 見都追思<努>播牟

布勢の海の 沖つ白波 あり通ひ いや年のはに 見つつ偲はむ 

ふせのうみの おきつしらなみ ありがよひ いやとしのはに みつつしのはむ

・・・・・・・・・・・・
布勢の海の沖の白波よ
年毎にずっと通いつづけ
この眺めを賞美しよう
・・・・・・・・・・・・




3993 天平19年4月26日,作者:大伴池主,追和,大伴家持,遊覧,枕詞,氷見,高岡,寿歌,儀礼歌,土地讃美

[題詞]敬和遊覧布勢水海賦一首并一絶

・・・・・・・・・・・・
布治奈美波ー藤波はーふぢなみはー藤の花は
佐岐弖知理尓伎ー咲きて散りにきーさきてちりにきー咲いて散ってしまった
宇能波奈波ー卯の花はーうのはなはー卯の花は
伊麻曽佐可理等ー今ぞ盛りとーいまぞさかりとー今が盛りだと
安之比奇能ー[あしひきの]ー
夜麻尓毛野尓毛ー山にも野にもーやまにものにもー山にも野にも
保登等藝須ー霍公鳥ーほととぎすー霍公鳥が
奈伎之等与米婆ー鳴きし響めばーなきしとよめばー鳴き声がひびくので
宇知奈妣久ーうち靡くーうちなびくー草木が靡くように
許己呂毛之努尓ー心もしのにーこころもしのにーこころも撓うばかりに
曽己乎之母ーそこをしもーそちらの方が
宇良胡非之美等ーうら恋しみとーうらごひしみとー恋しくてならないので
於毛布度知ー思ふどちーおもふどちー気の合う仲間同士
宇麻宇知牟礼弖ー馬打ち群れてーうまうちむれてー馬に鞭打ち
多豆佐波理ー携はりーたづさはりー連れ立って
伊泥多知美礼婆ー出で立ち見ればーいでたちみればー出かけてみると
伊美豆河泊ー射水川ーいみづがはー射水川の
美奈刀能須登利ー港の渚鳥ーみなとのすどりー河口の干潟にいる鳥たちは
安佐奈藝尓ー朝なぎにーあさなぎにー朝なぎ時には
可多尓安佐里之ー潟にあさりしーかたにあさりしー干潟に餌を漁り
思保美弖婆ー潮満てばーしほみてばー満ち潮時には
都麻欲<妣>可波須ー夫呼び交すーつまよびかはすー連れ合いと鳴き交わす
等母之伎尓ー羨しきにーともしきにー羨ましく思う
美都追須疑由伎ー見つつ過ぎ行きーみつつすぎゆきー見ながらそこを過ぎて行き
之夫多尓能ー渋谿のーしぶたにのー渋谿の
安利蘇乃佐伎尓ー荒礒の崎にーありそのさきにー荒礒の崎では
於枳追奈美ー沖つ波ーおきつなみー沖の波が
余勢久流多麻母ー寄せ来る玉藻ーよせくるたまもー寄せて来る美しい藻
可多与理尓ー片縒りにーかたよりにー片撚りにひねって
可都良尓都久理ー蘰に作りーかづらにつくりー縵に作り
伊毛我多米ー妹がためーいもがためー妻のために
○尓麻吉母知弖ー手に巻き持ちてーてにまきもちてー手に巻いて持って行き
宇良具波之ーうらぐはしー見て美しい。見た目にりっぱである。
布<勢>能美豆宇弥尓ー布勢の水海にーふせのみづうみにー富山県氷見市にあった海跡淡水湖、布勢の水海
阿麻夫祢尓ー海人船にーあまぶねにー海人の船に
麻可治加伊奴吉ーま楫掻い貫きーまかぢかいぬきー櫓を取りつけ
之路多倍能ー白栲のー[しろたへの]ー
蘇泥布<理>可邊之ー袖振り返しーそでふりかへしー真っ白な袖をひるがえし
阿登毛比弖ーあどもひてー仲間を率ひて 声を合わせて
和賀己藝由氣婆ー吾が漕ぎ行けばーわがこぎゆけばー私が漕いで行くと
乎布能佐伎ー乎布の崎ーをふのさきー乎布の崎には
<波>奈知利麻我比ー花散りまがひーはなちりまがひー花が散り乱れ
奈伎佐尓波ー渚にはーなぎさにはー渚には
阿之賀毛佐和伎ー葦鴨騒きーあしがもさわきー葦鴨が賑やかに集まり
佐射礼奈美ーさざれ波ーさざれなみーさざ波が
多知弖毛為弖母ー立ちても居てもーたちてもゐてもー立つように立ったり、また座ったりしながら
己藝米具利ー漕ぎ廻りーこぎめぐりー漕ぎ巡りながら
美礼登母安可受ー見れども飽かずーみれどもあかずーいくら眺めても見飽かず
安伎佐良婆ー秋さらばーあきさらばー秋になれば
毛美知能等伎尓ー黄葉の時にーもみちのときにー紅葉の時に
波流佐良婆ー春さらばーはるさらばー春になれば
波奈能佐可利尓ー花の盛りにーはなのさかりにー花の盛りに
可毛加久母ーかもかくもーどちらにしても
伎美我麻尓麻等ー君がまにまとーきみがまにまとー貴方の思いのままに
可久之許曽ーかくしこそーこうして
美母安吉良米々ー見も明らめめーみもあきらめめー景色を眺め心を晴らしましょう
多由流比安良米也ー絶ゆる日あらめやーたゆるひあらめやー絶える日などあるでしょうか。
・・・・・・・・・・・・




3994 天平19年4月26日,作者:大伴池主,追和,大伴家持,遊覧,枕詞,氷見,高岡,寿歌,儀礼歌,土地讃美

[題詞](敬和遊覧布勢水海賦一首并一絶)

之良奈美能 与世久流多麻毛 余能安比太母 都藝弖民仁許武 吉欲伎波麻備乎

白波の 寄せ来る玉藻 世の間も 継ぎて見に来む 清き浜びを 

しらなみの よせくるたまも よのあひだも つぎてみにこむ きよきはまびを

・・・・・・・・・・・・
白波が打ち寄せる美しい玉藻よ
生きて世にあるかぎり
いつも見に来よう
この清い浜辺を
・・・・・・・・・・・・




3995 天平19年4月26日,作者:大伴家持,宴席,餞別,羈旅,出発,大伴池主,恋情,悲別,枕詞,推敲,高岡

[題詞]四月廿六日掾大伴宿祢池主之舘餞税帳使守大伴宿祢家持宴歌并古歌四首

多麻保許乃 美知尓伊泥多知 和可礼奈婆 見奴日佐麻祢美 孤悲思家武可母 [一云 不見日久弥 戀之家牟加母]

玉桙の 道に出で立ち 別れなば 見ぬ日さまねみ 恋しけむかも 
[一云 見ぬ日久しみ 恋しけむかも]

[たまほこの] みちにいでたち わかれなば みぬひさまねみ こひしけむかも[みぬひひさしみ こひしけむかも]

・・・・・・・・・・・・
旅路につき別れてのちは
会わない日が多くなり恋しいことであろう
・・・・・・・・・・・・

* 「さまねみ」は、形容詞「さまねし」の語幹に接尾語「み」の付いたもの)数が多いので。




3996 天平19年4月26日,作者:内蔵縄麻呂,宴席,餞別,羈旅,出発,大伴家持,大伴池主,恋情,悲別,高岡

[題詞](四月廿六日掾大伴宿祢池主之舘餞税帳使守大伴宿祢家持宴歌并古歌四首)

和我勢古我 久尓敝麻之奈婆 保等登藝須 奈可牟佐都奇波 佐夫之家牟可母

吾が背子が 国へましなば 霍公鳥 鳴かむ五月は 寂しけむかも 

わがせこが くにへましなば ほととぎす なかむさつきは さぶしけむかも

・・・・・・・・・・・・
親愛なるあなたが
故国奈良へおいでになってしまったら
霍公鳥が鳴く五月は寂しいものでしょう
・・・・・・・・・・・・



3997 天平19年4月26日,作者:大伴家持,唱和,宴席,餞別,羈旅,出発,大伴池主,内蔵縄麻呂,慰撫,高岡

[題詞](四月廿六日掾大伴宿祢池主之舘餞税帳使守大伴宿祢家持宴歌并古歌四首)

安礼奈之等 奈和備和我勢故 保登等藝須 奈可牟佐都奇波 多麻乎奴香佐祢

吾れなしと なわび吾が背子 霍公鳥 鳴かむ五月は 玉を貫かさね 

あれなしと なわびわがせこ ほととぎす なかむさつきは たまをぬかさね

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私がいないからと気落ちなさるな
霍公鳥が鳴く五月には
橘の花を緒に抜いて薬玉をお作りなさい
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3998 天平19年4月26日,大伴池主,伝誦,古歌,石川水通,宴席,餞別,出発,高岡

[題詞]石<川>朝臣水通橘歌一首

和我夜度能 花橘乎 波奈其米尓 多麻尓曽安我奴久 麻多婆苦流之美

吾が宿の 花橘を 花ごめに 玉にぞ吾が貫く 待たば苦しみ 

わがやどの はなたちばなを はなごめに たまにぞあがぬく またばくるしみ

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吾が家の庭の花橘を
花ごと緒に通して玉としましょう
実になるのを待っていたら
苦しいでしょうから
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* 「花ごめに」ーごめ【込め】[接尾]《動詞「こ(込)む」の連用形から》名詞に付いて、それを含めていっしょに、の意を表す。…ごと。…ぐるみ。 




3999 天平19年4月26日,作者:大伴家持,羈旅,出発,餞別,宴席,恋情,高岡

[題詞]守大伴宿祢家持舘飲宴歌一首[四月廿六日]

美夜故敝尓 多都日知可豆久 安久麻弖尓 安比見而由可奈 故布流比於保家牟

都辺に 立つ日近づく 飽くまでに 相見て行かな 恋ふる日多けむ 

みやこへに たつひちかづく あくまでに あひみてゆかな こふるひおほけむ

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都へと出発する日が近づきました
心行くまで皆さんのお顔を見て行きましょう
恋しい日が多いでしょうから
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