ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・・・万葉集(〃)

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2051 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天原  徃射跡  白檀  挽而隠在  月人<壮>子

天の原 行きて射てむと 白真弓 引きて隠れる 月人壮士 

あまのはら ゆきていてむと [しらまゆみ] ひきてこもれる つきひとをとこ
・・・・・・・・
広大無辺の天の原で

なにを射ようというのでしょうか

白真弓をじっと引いている月人子よ
・・・・・・・・
* 月人壮子(月人壮士)は万葉仮名で単に「月人」とも、月人子とも書かれている。月を擬人化して表現しているとされている。



2052 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

此夕  零来雨者  男星之  早滂船之  賀伊乃散鴨

この夕 降りくる雨は 彦星の 早漕ぐ舟の 櫂の散りかも 

このゆふへ ふりくるあめは ひこほしの はやこぐふねの かいのちりかも
・・・・・・・・
この七夕に降る雨は

彦星が先を急いで漕ぐ舟の

櫂のしぶきなのだろうか きっと
・・・・・・・・
* 櫂(かい)は舟を進めるために水をかく道具。



2053 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天漢 八十瀬霧合 男星之 時待船 今滂良之

天の川 八十瀬霧らへり 彦星の 時待つ舟は 今し漕ぐらし 

あまのがは やそせきらへり ひこほしの ときまつふねは いましこぐらし
・・・・・・・・
天の川一面の瀬に霧が立ち込めた

彦星の川渡りの時を待っていた舟が

今こそ漕ぎだしたのだなぁ
・・・・・・・・



2054 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

風吹而  河浪起  引船丹  度裳来  夜不降間尓

風吹きて 川波立ちぬ 引き船に 渡りも来ませ 夜の更けぬ間に 

かぜふきて かはなみたちぬ ひきふねに わたりもきませ よのふけぬまに
・・・・・・・・
風が吹いて川が波立ってきた

引船できっとお渡りください

あまり夜の更けないうちに 
・・・・・・・・



2055 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天河  遠<渡>者  無友  公之舟出者  年尓社候

天の川 遠き渡りは なけれども 君が舟出は 年にこそ待て 

あまのがは とほきわたりは なけれども きみがふなでは としにこそまて
・・・・・・・・
天の川に渡し場はないけれど

あなた様の舟出は一年に一度

ひたすらお着きになるのを待つのみ
・・・・・・・・



2056 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天<漢>  打橋度  妹之家道  不止通  時不待友

天の川 打橋渡せ 妹が家道 やまず通はむ 時待たずとも 

あまのがは うちはしわたせ いもがいへぢ やまずかよはむ ときまたずとも
・・・・・・・・
天の川に橋を架けてしまおうか

そうすれば舟出を許された時を待たなくとも

いつだって妻の許に通うのに
・・・・・・・・



2057 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

月累  吾思妹  會夜者  今之七夕  續巨勢奴鴨

月重ね 我が思ふ妹に 逢へる夜は 今し七夜を 継ぎこせぬかも 

つきかさね あがおもふいもに あへるよは いましななよを つぎこせぬかも
・・・・・・・・
幾つもの月日を重ねて

愛しいあの娘に逢える夜が

せめてこれから七日七晩継ぎ足せないものか
・・・・・・・・



2058 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

年丹装  吾舟滂  天河  風者吹友  浪立勿忌

年に装る 我が舟漕がむ 天の川 風は吹くとも 波立つなゆめ 

としにかざる わがふねこがむ あまのがは かぜはふくとも なみたつなゆめ
・・・・・・・・
一年を飾りはれて天の川を舟漕ぎ渡たるぞ

さあ 追い風よ吹け 波は静まれ
・・・・・・・・



2059 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天河  浪者立友  吾舟者  率滂出  夜之不深間尓

天の川 波は立つとも 我が舟は いざ漕ぎ出でむ 夜の更けぬ間に 

あまのがは なみはたつとも わがふねは いざこぎいでむ よのふけぬまに
・・・・・・・・
天の川に荒波が立とうとも

いざ この舟を漕ぎ出そう

あのこと逢える一年で一日だけの

この夜が更けてしまわないうちに
・・・・・・・・



2060 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

直今夜  相有兒等尓  事問母  未為而  左夜曽明二来

ただ今夜 逢ひたる子らに 言どひも いまだせずして さ夜ぞ明けにける 

ただこよひ あひたるこらに ことどひも いまだせずして さよぞあけにける
・・・・・・・・
年に一夜だけ逢える七夕子に

話も交わさない間に夜が明けてたまるか
・・・・・・・・



2061 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天河  白浪高  吾戀  公之舟出者  今為下

天の川 白波高し 我が恋ふる 君が舟出は 今しすらしも 

あまのがは しらなみたかし あがこふる きみがふなでは いましすらしも
・・・・・・・・
天の川に白波が高いけれども

いとしい君はきっと来てくれる

今 船出するのですね
・・・・・・・・



2038 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

不合者  氣長物乎  天漢  隔又哉  吾戀将居

逢はなくは 日長きものを 天の川 隔ててまたや 我が恋ひ居らむ 

あはなくは けながきものを あまのがは へだててまたや あがこひをらむ
・・・・・・・・
逢へぬ日々の時間は長いのに

天の川を隔ててまたも

恋うるばかりの身になるのでしょう
・・・・・・・・
* 「む」(助動四型)推量・・だろう、でしょう。
* 「また」(副詞)ふたたび、
* 「や」(係助)(間助)問い、疑問、詠嘆。



2039 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

戀家口  氣長物乎  可合有  夕谷君之  不来益有良武

恋しけく 日長きものを 逢ふべくある 宵だに君が 来まさずあるらむ 

こひしけく けながきものを あふべくある よひだにきみが きまさずあるらむ
・・・・・・・・
恋して待った長い日々なのに 

逢うべき今宵さえも 

どうして君はおみえにならないのでしょう
・・・・・・・・
* 「らむ」(助動四型)原因理由を想像推量、どうして・・しているのだろう。
「だに」は、副助詞。種々の語につき、それを最低限・最小限のものごととして提示する。 否定・反語と呼応して、「〜すら(ない)」の意に。



2040 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

牽牛  与織女  今夜相  天漢門尓  浪立勿謹

彦星と 織女と 今夜逢ふ 天の川門に 波立つなゆめ 

ひこほしと たなばたつめと こよひあふ あまのかはとに なみたつなゆめ
・・・・・・・・
彦星と棚機津女が逢う七夕の 

今宵は天の川面よ波穏やかであれ
・・・・・・・・



2041 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

秋風  吹漂蕩  白雲者  織女之  天津領巾毳

秋風の 吹きただよはす 白雲は 織女の 天つ領巾かも 

あきかぜの ふきただよはす しらくもは たなばたつめの あまつひれかも
・・・・・・・・
秋風が吹き漂わせる白雲は

織女の天の領巾でしょうか
・・・・・・・・
* 「領巾」は女性の首に掛ける長い布のこと。



2042 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

數裳  相不見君矣  天漢  舟出速為  夜不深間

しばしばも 相見ぬ君を 天の川 舟出早せよ 夜の更けぬ間に 

しばしばも あひみぬきみを あまのがは ふなではやせよ よのふけぬまに
・・・・・・・・
たまさかの逢ふ瀬七夕天の川 

はやく舟出よ夜の更けぬ間に
・・・・・・・・



2043 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

秋風之  清夕  天漢  舟滂度  月人<壮>子

秋風の 清き夕に 天の川 舟漕ぎ渡る 月人壮士 

あきかぜの きよきゆふへに あまのがは ふねこぎわたる つきひとをとこ
・・・・・・・・
秋風の清らかに吹くこの夕べ

天の川に織女のもとへと舟を漕ぐ月人壮子の姿は

颯爽としていることでしょう
・・・・・・・・
* 「渡る」は「川を越えて行く」の意。



2044 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天漢  霧立度  牽牛之  楫音所聞  夜深徃

天の川 霧立ちわたり 彦星の 楫の音聞こゆ 夜の更けゆけば 

あまのがは きりたちわたり ひこほしの かぢのおときこゆ よのふけゆけば
・・・・・・・・
天の川に霧が立ち渡って夜がふけてゆくと

彦星が漕ぐかじの音が聞こえます
・・・・・・・・



2045 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

君舟  今滂来良之  天漢  霧立度  此川瀬

君が舟 今漕ぎ来らし 天の川 霧立ちわたる この川の瀬に 

きみがふね いまこぎくらし あまのがは きりたちわたる このかはのせに
・・・・・・・・
愛しいあなたの漕ぐ舟が

今こちらに来つつあるようです

天の川の夜霧に包まれる逢瀬です
・・・・・・・・
* 「君」は「彦星」。
* 「来らし」→カ行変格活用動詞「来」の終止形+推定助動詞「らし」の終止形。
* 「渡る」は動作状態の広がる様を表し「一面に〜する」の意。



2046 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

秋風尓  河浪起  ○  八十舟津  三舟停

秋風に 川波立ちぬ しましくは 八十の舟津に み舟留めよ 

あきかぜに かはなみたちぬ しましくは やそのふなつに みふねとどめよ
・・・・・・・・
秋風に立つ波を避けて 

今しばしどこかの入り江に舟を留めよ
・・・・・・・・



2047 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天漢  <河>聲清之  牽牛之  秋滂船之  浪○香

天の川 川の音清し 彦星の 秋漕ぐ舟の 波のさわきか 

あまのがは かはのおときよし ひこほしの あきこぐふねの なみのさわきか
・・・・・・・・
天の川の音がさやかに聞こえる 

彦星の漕ぐ舟が立てる波の音か
・・・・・・・・



2048 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天漢  <河>門立  吾戀之  君来奈里  紐解待 [一云 天<河> <川>向立]

天の川 川門に立ちて 我が恋ひし 君来ますなり 紐解き待たむ [一云 天の川 川に向き立ち] 

あまのがは かはとにたちて あがこひし きみきますなり ひもときまたむ [あまのがは かはにむきたち]
・・・・・・・・
天の川の渡し場に佇んでは私が恋いつづけた君が

いよいよいらっしゃるらしい

着物の紐を解いてお待ちしよう
・・・・・・・・



2049 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

天漢  <河>門座而  年月  戀来君  今夜會可母

天の川 川門に居りて 年月を 恋ひ来し君に 今夜逢へるかも 

あまのがは かはとにをりて としつきを こひこしきみに こよひあへるかも
・・・・・・・・
年月を天の川原の渡しで 

恋い待つ君に今宵こそ逢えるでしょうね
・・・・・・・・



サ2050 秋雑歌,七夕

[題詞](七夕)

明日従者  吾玉床乎  打拂  公常不宿  孤可母寐

明日よりは 我が玉床を うち掃ひ 君と寐ねずて ひとりかも寝む 

あすよりは あがたまどこを うちはらひ きみといねずて ひとりかもねむ
・・・・・・・・
明日からは 

わたしの玉の床を払い落として 

また君のいない

ひとり寝ですごすのだなあ
・・・・・・・・
* 「たま‐どこ」【玉床】 ふしどの美称。ふし‐ど【臥し所】夜寝る所。寝所。寝床。ねや。
* 「うち掃ふ」(他ハ四)叩いて払い落とす。
* 「公常不宿・君と寐ねずて」「て」(接助)は、原因・理由を表す。
* 「ひとりかも寝む」「ひとり」(副詞)は、一人で。
 「か」は、疑問の係助詞。
 「も」は、強意の係助詞。
 「寝」は下二段活用動詞「ぬ」の已然形。
* 「かも」(係助)・・だろうか。結び「む」。推量・(意志)の助動詞。



2026 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

白雲  五百遍隠  雖遠  夜不去将見  妹當者

白雲の 五百重に隠り 遠くとも 宵さらず見む 妹があたりは 

しらくもの いほへにかくり とほくとも よひさらずみむ いもがあたりは
・・・・・・・・・
白雲が幾重にも囲い隠そうと

どんなに遠くて夜の帳が下りようと 

常に見ている妹が辺りを
・・・・・・・・・



2027 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

為我登  織女之  其屋戸尓  織白布  織弖兼鴨

我がためと 織女の そのやどに 織る白栲は 織りてけむかも 

あがためと たなばたつめの そのやどに おるしろたへは おりてけむかも
・・・・・・・・・
私のためにたなばたつめが

家で織っているという白妙衣は

もう織り上げられただろうか
・・・・・・・・・



2028 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

君不相  久時  織服  白栲衣  垢附麻弖尓

君に逢はず 久しき時ゆ 織る服の 白栲衣 垢付くまでに 

きみにあはず ひさしきときゆ おるはたの しろたへころも あかつくまでに
・・・・・・・・・
君が為にと

逢わずにいる間ずっと織り続けている白妙の衣が

垢づんでしまうほどになってしまったわ
・・・・・・・・・



2029 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天漢  梶音聞  孫星  与織女  今夕相霜

天の川 楫の音聞こゆ 彦星と 織女と 今夜逢ふらしも 

あまのがは かぢのおときこゆ ひこほしと たなばたつめと こよひあふらしも
・・・・・・・・・
天の川にかじの音が聞こえる

彦星と織女(たなばたつめ)は

待ち侘びた今夜こそ逢うようだなあ
・・・・・・・・・



2030 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

秋去者  <川>霧  天川  河向居而  戀夜多

秋されば 川霧立てる 天の川 川に向き居て 恋ふる夜ぞ多き 

あきされば かはぎりたてる あまのがは かはにむきゐて こふるよぞおほき
・・・・・・・・・
秋が来て川霧のたつ天の川

その両岸から向かい合って

晴れて逢えるその夜はあと幾日と

指折り数える二人です
・・・・・・・・・


2031 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

吉哉  雖不直  奴延鳥  浦嘆居  告子鴨

よしゑやし 直ならずとも ぬえ鳥の うら嘆げ居りと 告げむ子もがも 

よしゑやし ただならずとも [ぬえどりの] うらなげをりと つげむこもがも
・・・・・・・・・
ままよ直接逢えなくて 

天の川原のうら嘆く様を 

誰か誰か告げて欲しい
・・・・・・・・・
* 「よしゑやし」[副]《副詞「よし」+間投助詞「ゑ」+ 感動の助詞 「や」「し」がついたもの》1 たとえ。かりに。2 ええままよ。どうなろうとも。
* 「とも」接続助詞「と」に係助詞「も」のついたもの。逆説の仮定条件を表す。たとえ・・ても。


2032 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

一年邇  七夕耳  相人之  戀毛不<過>者  夜深徃久毛 [一云 不盡者 佐宵曽明尓来]

一年に 七日の夜のみ 逢ふ人の 恋も過ぎねば 夜は更けゆくも [一云  尽きねば さ夜ぞ明けにける]  

ひととせに なぬかのよのみ あふひとの こひもすぎねば よはふけゆくも[つきねば さよぞあけにける]
・・・・・・・・・
ひととせにただ一夜かぎりの逢ふ瀬なのに 

思ひが尽きるはずはないまま 

夜は更けて明けてしまうのだ
・・・・・・・・・



サ2033 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天漢  安川原  定而神競者磨待無

天の川 安の川原 定而神競者磨待無 

あまのがは やすのかはら* ***** ******* *******
・・・・・・・・・
安の川原で子供のように腹這いに横たわって

天の川の水を底まで呑み干すと

牽牛と織女を隔てていた禁忌から解放されて

二人が竈を一つにして同居することができるのに
・・・・・・・・・
* 国語篇(その七)より転載。
「定而 神競者 磨待無」
「さだまりて かみしきほえば ままたなくに」
さだまりて;「子供の・ように・(腹這いに)横たわって」
かみしきほえば ;「(天の川の水を)底まで・呑み・干す(と)」
ままたなくに; 「(牽牛と織女を隔てていた)禁忌から解放されて・(二人が)竈を一つにして・同居する(ことができるのに)」



サ2034 秋雑歌

[題詞](七夕)

棚機之  五百機立而  織布之  秋去衣  孰取見

織女の 五百機立てて 織る布の 秋さり衣 誰れか取り見む 

たなばたの いほはたたてて おるぬのの あきさりごろも たれかとりみむ
・・・・・・・・・
機織り姫がたくさんの機を立てて織る布が

秋の衣になった時

彦星の君以外誰が手に取ってみることでしょうか
・・・・・・・・・
* 「五百」は「八百」などと同じで、「たくさん」の意味。
* 「秋さり衣」は「秋になって着る衣服」のこと。
* 「去る」は季節や時を表す語に付いて「近づく。来る」の意を表す。
* 「誰か取り見む」;
  「誰」不定称人称代名詞。「彦星」をさす。
  「か」係助詞、反語。結びは「む」
  「取り見」(手に取って見る)マ行上一段活用動詞未然形。
  「む」推量助動詞連体形。



2035 秋雑歌

[題詞](七夕)

年有而  今香将巻  烏玉之  夜霧隠  遠妻手乎

年にありて 今か巻くらむ ぬばたまの 夜霧隠れる 遠妻の手を 

としにありて いまかまくらむ [ぬばたまの] よぎりこもれる とほづまのてを
・・・・・・・・・
ひととせのうちにただ一夜

今こそしっかりとい抱き合おう

夜霧の衣に包まれた妻の手のなかで

今宵こそはれて共寝につこう 
・・・・・・・・・



2036 秋雑歌

[題詞](七夕)

吾待之  秋者来沼  妹与吾  何事在曽  紐不解在牟

我が待ちし 秋は来りぬ 妹と我れと 何事あれぞ 紐解かずあらむ 

わがまちし あきはきたりぬ いもとあれと なにことあれぞ ひもとかずあらむ
・・・・・・・・・
恋ひつづけて待った秋は来た 

妹と我とのみの

他人には解かぬと誓った 

だがいの紐を解いて相見よう
・・・・・・・・・



2037 秋雑歌

[題詞](七夕)

年之戀  今夜盡而  明日従者  如常哉  吾戀居牟

年の恋 今夜尽して 明日よりは 常のごとくや 我が恋ひ居らむ 

としのこひ こよひつくして あすよりは つねのごとくや あがこひをらむ
・・・・・・・・・
ひととせの恋の思ひを尽くして 

明日からはまた 

常のごとくに恋ふるばかりの独り身か
・・・・・・・・・



2014 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

吾等待之  白芽子開奴  今谷毛  尓寶比尓徃奈  越方人邇

我が待ちし 秋萩咲きぬ 今だにも にほひに行かな 彼方人に 

わがまちし あきはぎさきぬ いまだにも にほひにゆかな をちかたひとに
・・・・・・・・・・
待ちに待っていた秋萩が咲いた

今こそ 色に染まりに行こう

川向こうのあの人に逢い触れよう
・・・・・・・・・・
* 「にほひ」は愛しい人の香に染まる。つまり待ちに待った共寝への思いがこもった歌。


2015 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

吾世子尓  裏戀居者  天<漢>  夜船滂動  梶音所聞

我が背子に うら恋ひ居れば 天の川 夜舟漕ぐなる 楫の音聞こゆ 

わがせこに うらこひをれば あまのがは よふねこぐなる かぢのおときこゆ
・・・・・・・・・・
愛しい背の君を夜毎恋焦がれていると

夢かうつつか天の川から夜舟を漕いでくる櫓の音が聞こえる
・・・・・・・・・・


2016 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

真氣長  戀心自  白風  妹音所聴  紐解徃名

ま日長く 恋ふる心ゆ 秋風に 妹が音聞こゆ 紐解き行かな 

まけながく こふるこころゆ あきかぜに いもがおときこゆ ひもときゆかな
・・・・・・・・・・
幾日もずっと恋焦がれてきた心に

吹く秋風に乗ってあの子の気配が聞こえてくる

さあ 衣の紐を解いて行こうぞ
・・・・・・・・・・



2017 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

戀敷者  氣長物乎  今谷  乏<之>牟可哉  可相夜谷

恋ひしくは 日長きものを 今だにも ともしむべしや 逢ふべき夜だに 

こひしくは けながきものを いまだにも ともしむべしや あふべきよだに
・・・・・・・・・・
恋焦がれて長い日々を嘆き過ごしてきたのだもの

やっと逢えた今宵だけは私に物足りない思いをさせないでおくれ

晴れて逢えるこの夜だけでも
・・・・・・・・・・



2018 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天漢  去歳渡代  遷閇者  河瀬於踏  夜深去来

天の川 去年の渡りで 移ろへば 川瀬を踏むに 夜ぞ更けにける 

あまのがは こぞのわたりで うつろへば かはせをふむに よぞふけにける
・・・・・・・・・・
天の川 

去年とは移ろい変わり瀬のさまを 

渡り惑へば夜もいたづらに更けて行く
・・・・・・・・・・



2019 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

自古  擧而之服  不顧  天河津尓  年序經去来

いにしへゆ あげてし服も 顧みず 天の川津に 年ぞ経にける 

いにしへゆ あげてしはたも かへりみず あまのかはづに としぞへにける
・・・・・・・・・・
太古なすいにしへから慣らひの機(はた)もうち捨てて

安の川原は年を経るばかり
・・・・・
神の衣を折り続けて幾光年

神は顧みずなお裂きてあり天の川

われらの恋は許されず
・・・・・・・・・・



2020 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天漢  夜船滂而  雖明  将相等念夜  袖易受将有

天の川 夜船を漕ぎて 明けぬとも 逢はむと思ふ夜 袖交へずあらむ 

あまのがは よふねをこぎて あけぬとも あはむとおもふよ そでかへずあらむ
・・・・・・・・・・
天の川を夜舟で漕ぎ渡り

たとえ明けてしまうとしても   

逢はんと思ふ今宵は 

袖も交えないことがありえようか
・・・・・・・・・・



2021 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

遥ほ等  手枕易  寐夜  鶏音莫動  明者雖明

遠妻と 手枕交へて 寝たる夜は 鶏がねな鳴き 明けば明けぬとも 

とほづまと たまくらかへて ねたるよは とりがねななき あけばあけぬとも
・・・・・・・・・・
久方の天の川原に逢う夜は 

鶏よ鳴くな朝に任せて
・・・・・・・・・・



2022 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

相見久  Q雖不足  稲目  明去来理  舟出為牟つ

相見らく 飽き足らねども いなのめの 明けさりにけり 舟出せむ妻 

あひみらく あきだらねども いなのめの あけさりにけり ふなでせむつま
・・・・・・・・・・
一夜では尽きせぬものと思へど 

夜もあけゆけば 

舟出し離れゆく君
・・・・・・・・・・



2023 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

左尼始而  何太毛不在者  白栲  帶可乞哉  戀毛不<過>者

さ寝そめて いくだもあらねば 白栲の 帯乞ふべしや 恋も過ぎねば 

さねそめて いくだもあらねば しろたへの おびこふべしや こひもすぎねば
・・・・・・・・・・
語りあう時も足りないのに 

白妙の帯取る間にも 

恋ひはつのりて
・・・・・・・・・・



2024 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

万世  携手居而  相見鞆  念可過  戀<尓>有莫國

万代に たづさはり居て 相見とも 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに 

よろづよに たづさはりゐて あひみとも おもひすぐべき こひにあらなくに
・・・・・・・・・・
一日一夜なりとも離れず 

思い消え行く程の恋ではないのか
・・・・・・・・・・



2025 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

万世  可照月毛  雲隠  苦物叙  将相登雖念

万代に 照るべき月も 雲隠り 苦しきものぞ 逢はむと思へど 

[よろづよに てるべきつきも くもがくり] くるしきものぞ あはむとおもへど
・・・・・・・・・・
万代に照り映えるはずの月も雲に隠れ

七夕の二神も天の川を渡り逢うことが出来るだろうか
・・・・・
照らすべきいつもの 月さへ雲隠れ 見届けたいと思けれど
・・・・・・・・・・
* 「べき」は助動詞「べし」の連体形。推量の意を表す。



2003 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

吾等戀  丹穂面  今夕母可  天漢原  石枕巻

我が恋ふる 丹のほの面わ こよひもか 天の川原に 石枕まかむ 

あがこふる にのほのおもわ こよひもか あまのかはらに いしまくらまかむ

・・・・・・・・・
ほのかに紅さすわがいとしこ思い

今宵もひとり天の川原で石枕だろうことよ
・・・・・・・・・


2004 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

己つ 乏子等者 竟津 荒礒巻而寐 君待難

己夫に ともしき子らは 泊てむ津の 荒礒巻きて寝む 君待ちかてに 

おのづまに ともしきこらは はてむつの ありそまきてねむ きみまちかてに

・・・・・・・・・
逢うことがまれで愛しいつまよ

無数の荒磯をめぐる舟泊まりで

今宵も寝ることだなあ

君を待つことが出来ないままに
・・・・・・・・・



2005 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天地等  別之時従  自つ  然叙<年>而在  金待吾者

天地と 別れし時ゆ 己が妻 しかぞ年にある 秋待つ我れは 

あめつちと わかれしときゆ おのがつま しかぞかれてあり あきまつわれは
・・・・・・・・・
天地の分かれたときから

わが妻は天の川の向こう岸に去り

年に一夜だけの逢瀬を待つばかりのわれ



天と地が別れ、この世界が創られたはるかな昔から、
私は、わが妻とこのように別れ別れに暮らしている
それゆえに、妻に逢える唯一の秋を、ひたすら待っている
この私は
・・・・・・・・・
* 「しかぞかれてあり」しかぞ年にある→しかぞ手にある
* 「かれ て あり」→「(天の川の)岸」対岸。
* 「しかぞ・かくぞ「(て)」にある」(然叙「手(て)」而在) 
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#529かくぞとしにある(然叙年而在)
* あめつちと [天地等] 天と地に  
* わかれしときゆ [別之時従] 
 わかれ [別る・分かる] [自ラ下二・連用形] 分離する・別々になる・死に(生き)別れる
 し [助動詞・き] [過去・連体形] 〜た 連用形につく
 ゆ [上代、格助詞] [起点] 〜から・〜以来 体言につく
* おのがつま [自□] [□女偏に麗] 
 おのが [己が] 私の・自分自身の・私が・自分自身が・各自が
〔成立〕代名詞「おの」(普通「おのが」の形で、私・我)に、格助詞「が」
しかぞかれてあり [然叙年而在] 
 しか [副詞] [前述されたことをさして] そのように・そのとおりに
 ぞ [係助詞] [強調] 〜が・〜を 〔接続〕種々の助詞などにつく
 かれ [離(か)る] [自ラ下二・連用形] 離れる・遠ざかる・間をおく
 て [接続助詞] [補足(状態)] 〜のさまで・〜の状態で 連用形につく
 あり [有り・在り] [補動ラ変・終止形] 〜いる・〜ある
(助詞「て・つつ」の付いた語の下につき、動作・作用の存続の状態を表す)
* あきまつわれは [金待吾者] 「金」は五行説を四季に配すると、「秋」は「金」になるらしい




2006 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

孫星 嘆須つ 事谷毛 告<尓>叙来鶴 見者苦弥

彦星は 嘆かす妻に 言だにも 告げにぞ来つる 見れば苦しみ 

ひこほしは なげかすつまに ことだにも つげにぞきつる みればくるしみ
・・・・・・・・・
彦星は嘆いている妻に

言葉だけでもとやって来る

逢い見ると苦しさがつのるばかりだろうからね
・・・・・・・・・



サ2007 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

久方 天印等 水無<川> 隔而置之 神世之恨

ひさかたの 天つしるしと 水無し川 隔てて置きし 神代し恨めし 

[ひさかたの] あまつしるしと みなしがは へだてておきし かむよしうらめし
・・・・・・・・・
天空を隔てのる標識として

水のない「天の川」を置いた

神代の頃がたいそう恨めしいことよ
・・・・・・・・・
* 「久方の」は「光」や「天」の枕詞。
* 「天つ印」は「天に設けられた標識」。
* 「水無し川」は水のない川「天の川」。
* 「置きし」; 置いた
 「置き」は、カ行四段活用動詞「置く」の連用形。
 「し」は、過去の助動詞「き」の連体形。
* 「神代し」の「し」は強調の副助詞。



2008 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

黒玉  宵霧隠  遠鞆  妹傳  速告与

ぬばたまの 夜霧に隠り 遠くとも 妹が伝へは 早く告げこそ 

[ぬばたまの] よぎりにこもり とほくとも いもがつたへは はやくつげこそ

・・・・・・・・・
夜霧に隠れて忍び合うことも出来ない

遠い遠い彼方に離れていても

恋慕うこの思いはいつも絶えることなく伝わってくれよ
・・・・・・・・・
* 「こそ」[終助]《上代語》用言の連用形に付く。願望を表す。…てほしい。…てくれ。



2009 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

汝戀  妹命者  飽足尓  袖振所見都  及雲隠

汝が恋ふる 妹の命は 飽き足らに 袖振る見えつ 雲隠るまで 

ながこふる いものみことは あきだらに そでふるみえつ くもがくるまで
・・・・・・・・・
あなたが慕う織姫は

恋しい気持ちを抑えられなくて

袖を振っていましたよ

雲に隠れてしまうまで
・・・・・・・・・


2010 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

夕星毛 徃来天道 及何時鹿 仰而将待 月人<壮>

夕星も 通ふ天道を いつまでか 仰ぎて待たむ 月人壮士 

ゆふつづも かよふあまぢを いつまでか あふぎてまたむ つきひとをとこ
・・・・・・・・・
宵の明星も行き通う天空の道を

一体いつまで仰ぎ見て待ち続けるというのですか

月の舟の漕ぎ手よ早く愛しの人のもとに漕ぎ出しなさい
・・・・・・・・・
* 「夕星」は「宵の明星」のこと。
* 「月人壮士」は「月を舟に見立てその舟をこぐ人」か「彦星」自身。



2011 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天漢  已向立而  戀等尓  事谷将告  つ言及者

天の川 い向ひ立ちて 恋しらに 言だに告げむ 妻と言ふまでは 

あまのがは いむかひたちて こひしらに ことだにつげむ つまといふまでは
・・・・・・・・・
天の川をはさんで向かい合うしかないが

恋しさをこめてせめて告げたい

逢いに行ける日が来るまでは
・・・・・・・・・
* 接頭辞「イ」。「或る点への移行・連続」
* 「こいしらに」 恋しらに (連語)〔「ら」は接尾語〕恋しくて。恋しさに。
「天漢」は漢水(揚子江の支流)を天上に移行させた文字。漢水は遡れば天界に続くと考えられていたようです
* 七夕の前に、せめて使者を通して消息だけでも通じたいと願う。



2012 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

水良玉  五百<都>集乎  解毛不<見>  吾者干可太奴  相日待尓

白玉の 五百つ集ひを 解きもみず 我は干しかてぬ 逢はむ日待つに 

しらたまの いほつつどひを ときもみず わはほしかてぬ(うかたぬ) あはむひまつに
・・・・・・・・・
無数の宝玉を束ねた緒を解きほぐすように

私はじっと息をこらえて

ただ七夕の夜を待っているのですよ
・・・・・・・・・
* 「うかたぬ」→「息を止めて・じっとしている」
* 「白玉の 五百つ集ひを」、たくさんの真珠を連ねた織姫の首飾か。
* 「解きもみず」は共寝をすることもない、帯を解くの意味を兼ねている。
* 「ありかてぬ・ほしかてぬ」(在・干可太奴) 
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#530ありかてぬ(在可太奴)




2013 秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](七夕)

天漢  水陰草  金風  靡見者  時来之

天の川 水蔭草の 秋風に 靡かふ見れば 時は来にけり 

あまのがは みづかげくさの あきかぜに なびかふみれば ときはきにけり
・・・・・・・・・
天の川のほとり水影に生える草の 

秋風になびくあうのを見れば 

その時は来たのだということよ 
・・・・・・・・・



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