ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・・万葉集(〃)

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サ2896

[題詞](正述心緒)

歌方毛  曰管毛有鹿  吾有者  地庭不落  空消生

うたがたも 言ひつつもあるか 吾れならば 地には落ちず 空に消なまし 

うたがたも いひつつもあるか われならば つちにはおちず そらにけなまし
・・・・・・・・・・・
人を感動させる歌方も

きっとこう繰り返し言っているのだろうか

私なら地に降ったりはせずに

人知れずに空中で消えたでしょうに と
・・・・・・・・・・・
* 「うたがた」上代語。泡沫。「うたかた」とも。
* 副詞(打消しの語と対応して)けっして、ほんの少しも、きっと。かならず。
* 「つつ」は、接続助詞。反復・継続。動詞の連用形に付き、その動作・作用が反復・継続される意をあらわす。「何度も〜して」「ずっと〜して」「〜し続けて」「〜しながら」。
* 「も」は、係助詞。種々の語をうけ、それを取り立てて提示し、それについての説明・叙述を導くはたらきをするという点で「は」と共通する。しかし、「は」が確実な、選択された限定的な対象としてその語を示すのに対し、「も」は不確実な対象として、あるいはそれ一つとは限定されない対象として示すはたらきをする。
* 「ある」は、存在が認められないほど衰えてみすぼらしいさま。
* 「か」は、。叙情的表現による詠嘆か自問自答の反語的疑問を表す。
* 「ば」は、仮定条件(もし〜ならば)。
* 「消」は、下二動「消ゆ」の未然形・連用形の略。
* 「な」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形。
* 「まし」は、反実仮想の助動詞「まし」の未然形に接続して現実にはあり得ない、あるいは現実とは正反対の事態を仮定する。



2897

[題詞](正述心緒)

何  日之時可毛  吾妹子之  裳引之容儀  朝尓食尓将見

いかならむ 日の時にかも 吾妹子が 裳引きの姿 朝に日に見む 

いかならむ ひのときにかも わぎもこが もびきのすがた あさにけにみむ
・・・・・・・・・・・
どうしたものか

いつの日にか吾が妻の

裳の裾をひきずる姿を

朝にも日中にも見て暮らすには
・・・・・・・・・・・
* も【×裳】(大辞林)
1 古代、腰から下にまとった衣服の総称。
2 律令制の男子の礼服で、表袴(うえのはかま)の上につけたもの。
3 平安時代以後の女房の装束で、表着(うわぎ)や袿(うちき)の上に、腰部から下の後方だけにまとった服。
4 僧侶が腰につける衣。





2898 枕詞

[題詞](正述心緒)

獨居而  戀者辛苦  玉手次  不懸将忘  言量欲

ひとり居て 恋ふるは苦し 玉たすき 懸けず忘れむ 事計りもが 

ひとりゐて こふるはくるし [たまたすき] かけずわすれむ ことはかりもが
・・・・・・・・・・・
独りで恋をしていて苦しい

何とか忘れる方法を考えなければ
・・・・・・・・・・・



2899

[題詞](正述心緒)

中々二  黙然毛有申尾  小豆無  相見始而毛  吾者戀香

なかなかに 黙もあらましを あづきなく 相見そめても 吾れは恋ふるか 

なかなかに もだもあらましを あづきなく あひみそめても あれはこふるか
・・・・・・・・・・・
なまじっかどうせ添い遂げることは出来ないのに

吾を忘れてどうして逢い始めたのだろう

恋しいと焦がれる

逢っていても離れていても 吾れは
・・・・・・・・・・・



2900

[題詞](正述心緒)

吾妹子之  咲眉引  面影  懸而本名  所念可毛

我妹子が 笑まひ眉引き 面影に かかりてもとな 思ほゆるかも 

わぎもこが ゑまひまよびき おもかげに かかりてもとな おもほゆるかも
・・・・・・・・・・・
あの女が微笑みながら眉を引いていた面影は

一体誰を思ってのことだったのだろう

このようなことをわけもなく思い出すなんて

もうきみだけを思っているというのに
・・・・・・・・・・・
* 「もとな」は、 わけもなく、 しきりに。



2901 枕詞

[題詞](正述心緒)

赤根指  日之暮去者  為便乎無三  千遍嘆而  戀乍曽居

あかねさす 日の暮れゆけば すべをなみ 千たび嘆きて 恋ひつつぞ居る 

[あかねさす] ひのくれゆけば すべをなみ ちたびなげきて こひつつぞをる
・・・・・・・・・・・
日暮れの頃になると

どうしようもなく

千度も深いため息をついて

ただあなたのことを恋しく思っています
・・・・・・・・・・・


2902

[題詞](正述心緒)

吾戀者  夜晝不別  百重成  情之念者  甚為便無

吾が恋は 夜昼わかず 百重なす 心し思へば いたもすべなし 

あがこひは よるひるわかず [ももへなす] こころしおもへば いたもすべなし
・・・・・・・・・・・
私の恋は昼夜の別もありません

百重も重なった私のこの思いを

もうどうすることもできません
・・・・・・・・・・・




2903

[題詞](正述心緒)

五十殿寸太  薄寸眉根乎  徒  令掻管  不相人可母

いとのきて 薄き眉根を いたづらに 掻かしめつつも 逢はぬ人かも 

いとのきて うすきまよねを いたづらに かかしめつつも あはぬひとかも
・・・・・・・・・・・
ことのほか

薄い眉毛を

むだに

掻かせておきながら

会ってもくれない

そんな人なんだけどなあ
・・・・・・・・・・・



サ12 2904

[題詞](正述心緒)

戀々而  後裳将相常  名草漏  心四無者  五十寸手有目八面

恋ひ恋ひて 後も逢はむと 慰もる 心しなくは生 きてあらめやも 

こひこひて のちもあはむと なぐさもる こころしなくは いきてあらめやも
・・・・・・・・・・・
恋焦がれていれば

きっとまた逢えると

自分を慰める強く思う心がないと

わたしは

どうして生きていられるでしょうか
・・・・・・・・・・・
* 「恋」は相手と離れて、逢いたいと願う苦しみをいい、愛しい相手と逢っている時は「恋」はない。
* 「む」(む、む、め)は、推量・意志を表わす。上代両者の区別があったかは疑問。連体形を用いて仮定を、 「こそ」の結びとして已然形を用いて適当・当然・歪曲な命令・勧誘を、 已然形「め」が疑問の助詞「や」「か」をともなって、反語の意を示す。
* 「し」は、副助詞。種々の語を承け、それを強く指示して強調する。 
* 「あら」はラ行変格活用「あり」の未然形で、順接の接続助詞「ば」を接して仮定条件。
* 「めやも」は、「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「やも」は反語の終助詞。「どうして〜するだろうか、そんなことはできない」という意。
<個別へ> http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32512933.html



2905

[題詞](正述心緒)

幾  不生有命乎  戀管曽  吾者氣衝  人尓不所知

いくばくも 生けらじ命を 恋ひつつぞ 吾れは息づく 人に知らえず 

いくばくも いけらじいのちを こひつつぞ われはいきづく ひとにしらえず
・・・・・・・・・・・
人はいくらも生きていられないのに

あの人がいればこそ

あの人を愛すればこそ

私は生きる力が湧くのさ

人知れずとも
・・・・・・・・・・・
*まなび http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31843743.html


2906

[題詞](正述心緒)

他國尓  結婚尓行而  大刀之緒毛  未解者  左夜曽明家流

他国に よばひに行きて 大刀が緒も いまだ解かねば さ夜ぞ明けにける 

ひとくにに よばひにゆきて たちがをも いまだとかねば さよぞあけにける
・・・・・・・・・・・
惚れたばかりに他国の女の元に妻問いに来たのに

大刀の緒すらもまだ解かずにいる

そろそろ夜も明けるというのに
・・・・・・・・・・・


2884 枕詞

[題詞](正述心緒)

戀管母  今日者在目杼  玉匣  将開明日  如何将暮

恋ひつつも 今日はあらめど 玉櫛笥 明けなむ明日を いかに暮らさむ

こひつつも けふはあらめど [たまくしげ] あけなむあすを いかにくらさむ
・・・・・・・・・・・
あなたと恋に浸って今日は過ごしましたが

明ける明日は一体どのように暮らせばいいのでしょう
・・・・・・・・・・・



2885 枕詞

[題詞](正述心緒)

左夜深而  妹乎念出  布妙之  枕毛衣世二  <嘆>鶴鴨

さ夜更けて 妹を思ひ出で 敷栲の 枕もそよに 嘆きつるかも 

さよふけて いもをおもひいで [しきたへの] まくらもそよに なげきつるかも
・・・・・・・・・・・
夜が更けてあの子を忘れられず

枕も一緒に嘆いていることよ
・・・・・・・・・・・
* そよ[副]物が揺れてたてるかすかな音などを表す語
    [感]ふと思い出したときや、あいづちを打つときなどに用いる語。 


2886 うわさ

[題詞](正述心緒)

他言者  真言痛  成友  彼所将障  吾尓不有國

人言は まこと言痛く なりぬとも そこに障らむ 我れにあらなくに 

ひとごとは まことこちたくなりぬとも そこにさはらむ われにあらなくに
・・・・・・・・・・・
人の噂は本当に煩わしくても

それに妨げられる私ではないことよ
・・・・・・・・・・・



2887

[題詞](正述心緒)

立居  田時毛不知  吾意  天津空有  土者踐鞆

立ちて居て たどきも知らず 我が心 天つ空なり 地は踏めども 

たちてゐて たどきもしらず あがこころ あまつそらなり つちはふめども
・・・・・・・・・・・
君のことを想うと

立ったりすわったりして

どうしてよいか分からず

私の心なにもかもうわ空です

地を踏んではいるのですけど
・・・・・・・・・・・



2888

[題詞](正述心緒)

世間之  人辞常  所念莫  真曽戀之  不相日乎多美

世の中の 人のことばと 思ほすな まことぞ恋ひし 逢はぬ日を多み 

よのなかの ひとのことばと おもほすな まことぞこひし あはぬひをおほみ
・・・・・・・・・・・
ありふれた言葉だなんて思わないで下さい

本当にあなたのことが恋しくてたまりません

あなたにお逢いできない日があまりにも多いから

いっそ終わりにしましょうか
・・・・・・・・・・・



2889

[題詞](正述心緒)

乞如何  吾幾許戀流  吾妹子之  不相跡言流  事毛有莫國

いで如何に 吾がここだ恋ふる 我妹子が 逢はじと言へる こともあらなくに 

いでいかに あがここだこふる わぎもこが あはじといへる こともあらなくに
・・・・・・・・・・・
おいどうなってんだ

私がこんなに変わらず恋しているのに

あの子が会いたくないなんて

聞いたたこともないことだぞ
・・・・・・・・・・・



2890 枕詞

[題詞](正述心緒)

夜干玉之  夜乎長鴨  吾背子之  夢尓夢西  所見還良武

ぬばたまの 夜を長みかも 吾が背子が 夢に夢にし 見えかへるらむ 

[ぬばたまの] よをながみかも わがせこが いめにいめにし みえかへるらむ
・・・・・・・・・・・
長い夜にはねえ

私の女は夜どおし繰り返し繰り返し

夢の中で逢いにくるのさ

夢の中でね
・・・・・・・・・・・


2891 枕詞

[題詞](正述心緒)

荒玉之  年緒長  如此戀者  信吾命  全有目八面

あらたまの 年の緒長く かく恋ひば まこと我が命 全くあらめやも 

[あらたまの] としのをながく かくこひば まことわがいのち またくあらめやも
・・・・・・・・・・・
年々歳々恋の緒の

長く繋いだこの命

尽きる限りのその日まで

この愛はともにあるともよ きっと
・・・・・・・・・・・
* 
め や も( 連語 )
〔推量の助動詞「む」の已然形「め」に係助詞「や」,係助詞「も」の付いたもの。「や」は反語,「も」は詠嘆の意を表す〕
推量または意志を反語的に言い表し,それに詠嘆の意が加わったもの。…だろうか,いや,そんなことはないなあ。


2892

[題詞](正述心緒)

思遣  為便乃田時毛  吾者無  不相數多  月之經去者

思ひ遣る すべのたどきも 我れはなし 逢はずてまねく 月の経ぬれば 

おもひやる すべのたどきも われはなし あはずてまねく つきのへぬれば
・・・・・・・・・・・
物思いを晴らす方法もわからない

長く逢えずに月日はただ去って行くだけで
・・・・・・・・・・・
* 「思ひ遣る」は、古くは 「気を晴らす(=物思いをよそにやる)」という意で、古今の時代では 「思い」を「遣(つか)わす」。


2893 女歌

[題詞](正述心緒)

朝去而  暮者来座  君故尓  忌々久毛吾者  歎鶴鴨

朝去にて 夕は来ます 君ゆゑに ゆゆしくも吾は 嘆きつるかも 

あしたいにて ゆふへはきます きみゆゑに ゆゆしくもわは なげきつるかも
・・・・・・・・・・・
朝はお帰りになっても

夜にはまたおいでになるのに

あなたがいない昼間でも

狂おしいほどにあなたが欲しくなる

待ちきれないで嘆き悶える私であることよ
・・・・・・・・・・・
* 「ゆゆし」は、慎みも無く、憚らずという意も。




2894

[題詞](正述心緒)

従聞  物乎念者  吾者  破而摧而  鋒心無

聞きしより 物を思へば 吾が胸は 破れて砕けて 利心もなし 

ききしより ものをおもへば あがむねは われてくだけて とごころもなし
・・・・・・・・・・・
夫が誰かを好きになっているという噂を聞いて

物思いに落ち込み私の胸は張り裂けそうなの

もう理性なんかなくなりました
・・・・・・・・・・・



2895 うわさ

[題詞](正述心緒)

人言乎  繁三言痛三  吾妹子二  去月従  未相可母

人言を 繁み言痛み 吾妹子に 去にし月より いまだ逢はぬかも 

ひとごとを しげみこちたみ わぎもこに いにしつきより いまだあはぬかも
・・・・・・・・・・・
人のうわさがうるさくておたがいに辛かった

愛しかったあの子と別れたあの時

あれから幾年月も過ぎたのに

未だに逢えないのか
・・・・・・・・・・・
* 「人言(ひとごと)」は、人がうわさすること。恋の邪魔をすること。
* 「人言を繁み言痛み」は、「人のうわさがうるさくて辛い」という意。


2873 うわさ,人目

[題詞](正述心緒)

里人毛  謂告我祢  縦咲也思  戀而毛将死  誰名将有哉

里人も 語り継ぐがね よしゑやし 恋ひても死なむ 誰が名ならめや 

さとびとも かたりつぐがね よしゑやし こひてもしなむ たがなならめや
・・・・・・・・・・
もういいわ

里人もうわさに花を咲かせたいことでしょう

いったい誰の名で恋して死のうかしら
・・・・・・・・・・
** 「よしゑやし」は、「もういいわ」、というような意味。



2874

[題詞](正述心緒)

○  使乎無跡  情乎曽  使尓遣之  夢所見哉

確かなる 使をなみと 心をぞ 使に遣りし 夢に見えきや 

たしかなる つかひをなみと こころをぞ つかひにやりし いめにみえきや
・・・・・・・・・・
たしかな使いとして私の心を

あなたの元へ使いを送りました

きっと愛するあなたは夢に見てくれるはず
・・・・・・・・・・



2875

[題詞](正述心緒)

天地尓  小不至  大夫跡  思之吾耶  <雄>心毛無寸

天地に 少し至らぬ 大夫と 思ひし我れや 雄心もなき 

あめつちに すこしいたらぬ ますらをと おもひしわれや をごころもなき
・・・・・・・・・・
天地の大きさには少し足りないが

十分ますらおと思っていた

しかしあなたへの恋におちて

猛々しくも雄々しい心が腑抜けたようだ
・・・・・・・・・・



2876 うわさ,人目

[題詞](正述心緒)

里近  家<哉>應居  此吾目之  人目乎為乍  戀繁口

里近く 家や居るべき この吾が目の 人目をしつつ 恋の繁けく 

さとちかく いへやをるべき このわがめの ひとめをしつつ こひのしげけく
・・・・・・・・・・
人里に出て行くこともなかろうに

いったい人にどう思われたいのか

俺様がとじこもりの恋狂いとは
・・・・・・・・・・



2877

[題詞](正述心緒)

何時奈毛  不<戀>有登者  雖不有  得田直比来  戀之繁母

いつはなも 恋ひずありとは あらねども うたてこのころ 恋し繁しも 

いつはなも こひずありとは あらねども うたてこのころ こひししげしも
・・・・・・・・・・
通常なら

恋しくないわけではないのだが

この頃俺様は妙に変だ

何かにとりつかれている

世間が慎み忌む恋とやらにはまったか
・・・・・・・・・・



2878 枕詞

[題詞](正述心緒)

黒玉之  宿而之晩乃  物念尓  割西る者  息時裳無

ぬばたまの 寐ねてし宵の 物思ひに 裂けにし胸は やむ時もなし 

[ぬばたまの] いねてしよひの ものもひに さけにしむねは やむときもなし
・・・・・・・・・・
寝るって物思いなの

胸が裂けそうになって

寂しいの

あなたがいないとわたしはだめになる
・・・・・・・・・・



2879 うわさ

[題詞](正述心緒)

三空去  名之惜毛  吾者無  不相日數多  年之經者

み空行く 名の惜しけくも 吾れはなし 逢はぬ日まねく 年の経ぬれば 

みそらゆく なのをしけくも われはなし あはぬひまねく としのへぬれば
・・・・・・・・・・
あなたの名を伏せ

足は地を踏んではいるけれど

私はこの世に居ないみたいさ

ありもしない噂は勝手に空を飛ぶが

逢わないでいる月日は過ぎて

私はこの世に居ないのと同じことさ
・・・・・・・・・・



2880 異伝

[題詞](正述心緒)

得管二毛  今毛見<壮>鹿  夢耳  手本纒宿登  見者辛苦毛 [或本歌發<句>曰  吾妹兒乎]

うつつにも 今も見てしか 夢のみに 手本まき寝と 見るは苦しも [或本歌發<句>曰  我妹子を] 

うつつにも いまもみてしか いめのみに たもとまきぬと みるはくるしも[わぎもこを]
・・・・・・・・・・
夢の中じゃなくてね

今すぐに可愛いあの子に逢いたいんだよ

夢でしかあの子と一緒に寝ることができないなんて

残酷だよ 夢なんか見たくないよ
・・・・・・・・・・



2881 異伝

[題詞](正述心緒)

立而居  為便乃田時毛 今者無  妹尓不相而  月之經去者 [或本歌曰  君之目不見而  月之經去者]

立ちて居て すべのたどきも 今はなし 妹に逢はずて 月の経ぬれば [或本歌曰  君が目見ずて 月の経ぬれば] 

たちてゐて すべのたどきも いまはなし いもにあはずて つきのへぬれば[きみがめみずて つきのへぬれば]
・・・・・・・・・・
落ち着かなくて立ったりすわったりして

どうしてよいか分かりません

逢えないまま月日ばかりが過ぎていきます

私の心はまるで裂けてしまいそうです
・・・・・・・・・・
た‐どき【方便】「たずき」に同じ。


2882

[題詞](正述心緒)

不相而  戀度等母  忘哉  弥日異者  思益等母

逢はずして 恋ひわたるとも 忘れめや いや日に異には 思ひ増すとも 

あはずして こひわたるとも わすれめや いやひにけには おもひますとも
・・・・・・・・・・
お逢いできずただ恋しく思う時が過ぎていくだけですが

日々は思いを疎くすることなどありましょうか

それどころか恋しさは募り増していくばかりです
・・・・・・・・・・




2883 異伝

[題詞](正述心緒)

外目毛  君之光儀乎  見而者社  吾戀山目  命不死者 [一云 壽向  吾戀止目]

外目にも 君が姿を 見てばこそ 我が恋やまめ 命死なずは [一云 命に向ふ 我が恋やまめ] 

よそめにも きみがすがたを みてばこそ あがこひやまめ いのちしなずは[いのちにむかふ あがこひやまめ]
・・・・・・・・・・
離れた所から

ちらちらと君の姿を見てるだけさ

なのに俺の恋は心に満ち溢れて

もう死なずばなるまいと思うよになったよ
・・・・・・・・・・


2862 作者:柿本人麻呂歌集,序詞

[題詞](寄物陳思)

山川  水陰生  山草  不止妹  所念鴨

山川の 水陰に生ふる 山菅の やまずも妹は 思ほゆるかも 

[やまがはの みづかげにおふる やますげの] やまずもいもは おもほゆるかも
・・・・・・・・・・
山川の水辺の山菅は

いくら刈っても生えるつづけるように

私は貴女を慕っているのです
・・・・・・・・・・



2863 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,異伝

[題詞](寄物陳思)

淺葉野  立神古  菅根  惻隠誰故  吾不戀 [或本歌曰 誰葉野尓  立志奈比垂]

浅葉野に 立ち神さぶる 菅の根の ねもころ誰がゆゑ 我が恋ひなくに [或本歌曰 誰が葉野に 立ちしなひたる] 

[あさはのに たちかむさぶる すがのねの] ねもころたがゆゑ あがこひなくに[たがはのに たちしなひたる]
・・・・・・・・・・
浅葉野に神々しくさえ見える菅の根のように

わたしはねんごろな恋をしたい

それは誰でもない貴女との恋なのに

恋、、  愛

そのように愛する(した)ことができたろうか  わたしに
・・・・・・・・・・
* 「惻隠」の意は「あわれみいたむこと」。
* 「菅根」は「菅の根の」の二つの「の」を省略したものなのか。      「菅」が「根」を修飾し、「菅根」が「惻隠」の修飾関係なのか。
  連体格の「の」か連用格の「の」か。
  序詞を受け、つなぎことばとして機能しているのか。
* 「ねもころ」[形動ナリ]「ねんごろ」の古形。「ねもごろ」とも。
* 当て字の真意に迫ることは難しい。



正述心緒



2864 女歌

[題詞]正述心緒

吾背子乎  且今々々跡  待居尓  夜更深去者  嘆鶴鴨

我が背子を 今か今かと 待ち居るに 夜の更けゆけば 嘆きつるかも 

わがせこを いまかいまかと まちゐるに よのふけゆけば なげきつるかも
・・・・・・・・・・
夫が来るのをを今か今かと待ちわびているのに

夜は更けゆくばかりで嘆かわしいことです
・・・・・・・・・・



2865

[題詞](正述心緒)

玉釼  巻宿妹母  有者許増  夜之長毛  歡有倍吉

玉釧 まき寝る妹も あらばこそ 夜の長けくも 嬉しくあるべき 

たまくしろ まきぬるいもも あらばこそ よのながけくも うれしくあるべき
・・・・・・・・・・
玉釧を巻いた腕枕で

一緒に寝る妻がいるからこそ

いくら夜長でも嬉しいのだよ 
・・・・・・・・・・
* 「たま‐くしろ」玉釧。 [名]玉をつないで作った腕輪。 
 [枕]手に巻く意から、「まく」「手に取り持つ」にかかる。



2866 女歌,歌謡

[題詞](正述心緒)

人妻尓  言者誰事  酢衣乃  此紐解跡  言者孰言

人妻に 言ふは誰が言 さ衣の この紐解けと 言ふは誰が言 

ひとづまに いふはたがこと さごろもの このひもとけと いふはたがこと
・・・・・・・・・・
人妻に言い寄るなんて

どなたのおことばでしょうね

ましてや下着の紐を解いて

寝ようとは誰れのことばなのばなの
・・・・・・・・・・
* 紐を結び合うのは愛の行為、「紐解け」は共寝をしようという誘いかけ。
* 拒んでいるのか、じらしているのか。



2867 未練

[題詞](正述心緒)

如是許  将戀物其跡  知者  其夜者由多尓  有益物乎

かくばかり 恋ひむものぞと 知らませば その夜はゆたに あらましものを 

かくばかり こひむものぞと しらませば そのよはゆたに あらましものを
・・・・・・・・・・
恋がこんなに辛いものだと知っていたなら

その夜は上の空でぼんやりしていればよかったのに
・・・・・・・・・・




2868

[題詞](正述心緒)

戀乍毛  後将相跡  思許増  己命乎  長欲為礼

恋ひつつも 後も逢はむと 思へこそ おのが命を 長く欲りすれ 

こひつつも のちもあはむと おもへこそ おのがいのちを ながくほりすれ
・・・・・・・・・・
恋しく思いながらも

時を経ても後には きっとお逢いできると思うからこそ

こんな露のようにはかない命を

長くありたいと願っているのです
・・・・・・・・・・



2869

[題詞](正述心緒)

今者吾者  将死与吾妹  不相而  念渡者  安毛無

今は吾は 死なむよ我妹 逢はずして 思ひわたれば 安けくもなし 

いまはわは しなむよわぎも あはずして おもひわたれば やすけくもなし
・・・・・・・・・・
もう私は死んでしまう方がましだよ

あなたを恋続けて日も夜も心の休まることがないのだもの
・・・・・・・・・・
「死なむよ」は、「死なむ」に詠歎の助詞「よ」のついたもの。「死にましょう」となる。この詠歎の助詞には特別の響きがある。女が男に言う方がいい。大伴坂上郎女の、「今は吾は死なむよ吾背生けりとも吾に縁(よ)るべしと言ふといはなくに」や、「よしゑやし死なむよ吾妹生けりとも斯くのみこそ吾が恋ひ渡りなめ」(巻十三・三二九八)は類歌。
* 「死」の字は「恋」の歌に多く使われている。何故か。



2870 女歌,怨

[題詞](正述心緒)

我背子之  将来跡語之  夜者過去  思咲八更々  思許理来目八面

我が背子が 来むと語りし 夜は過ぎぬ しゑやさらさら しこり来めやも 

わがせこが こむとかたりし よはすぎぬ しゑやさらさら しこりこめやも
・・・・・・・・・・
彼氏が今夜こそ会いに来ると言ってたのに

もう夜は明けてしまうわ

ままよ

なにかで来られないんだ
・・・・・・・・・・
* 「しこる」あやまつ、しそこなう。



2871 うわさ,枕詞

[題詞](正述心緒)

人言之  讒乎聞而  玉<桙>之  道毛不相常  云吾妹

人言の 讒しを聞きて 玉桙の 道にも逢はじと 言へりし我妹 

ひとごとの よこしをききて [たまほこの] みちにもあはじと いへりしわぎも
・・・・・・・・・・
悪意の根も葉もない噂が流れた

それを聞いて信じたのか

道で出会うのもいやだと彼女が言うんだよ
・・・・・・・・・・



2872 うわさ

[題詞](正述心緒)

不相毛  懈常念者  弥益二  人言繁  所聞来可聞

逢はなくも 憂しと思へば いや増しに 人言繁く 聞こえ来るかも 

あはなくも うしとおもへば いやましに ひとごとしげく きこえくるかも
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会わなくなって憂鬱な上

噂にもてあそばされてると思うと

一層噂が増して聞こえてくるようだ
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寄物陳思 物に寄せて思を陳(の)ぶ



2851 作者:柿本人麻呂歌集,人目,女歌

[題詞]寄物陳思

人所見 表結 人不見 裏紐開 戀日太

人の見る 上は結びて 人の見ぬ 下紐開けて 恋ふる日ぞ多き 

ひとのみる うへはむすびて ひとのみぬ したひもあけて こふるひぞおほき
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人が見る上着の紐はきちんと結んでおき

人が見ることの出来ない下着の紐をあけておいて

夜の夢で貴方と恋ができる日が多いことです
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恋人に逢うためのおまじないに自分でわざと紐を解いておく。



2852 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](寄物陳思)

人言  繁時  吾妹  衣有  裏服矣

人言の 繁き時には 我妹子し 衣にありせば 下に着ましを 

ひとごとの しげきときには わぎもこし ころもにありせば したにきましを
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人の噂があまりうるさいと

惚れたあの女の衣を

人目が付かないように

上着の下に着るようにしようさ
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2853 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](寄物陳思)

真珠<服>  遠兼  念  一重衣  一人服寐

真玉つく をちをし兼ねて 思へこそ 一重の衣 ひとり着て寝れ 

[またまつく] をちをしかねて おもへこそ ひとへのころも ひとりきてぬれ
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恋心を凝らして貴方を想いながら

寝間着一枚を独りで掛けて寝ます
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2854 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](寄物陳思)

白細布  吾紐緒  不絶間  戀結為  及相日

白栲の 吾が紐の緒の 絶えぬ間に 恋結びせむ 逢はむ日までに 

[しろたへの]  わがひものをの たえぬまに こひむすびせむ あはむひまでに
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恋の成就のおまじないに巻いた

手首の紐の緒を

またあらためて結びます

私の恋が絶えないように
・・・・・・・・・・
紐や草木などを結び、自然にほどけると恋人に会える前兆とされた。



2855 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,うわさ

[題詞](寄物陳思)

新<治> 今作路 清 聞鴨 妹於事矣

新治の 今作る道 さやかにも 聞きてけるかも 妹が上のことを 

[にひはりの いまつくるみち さやかにも] ききてけるかも いもがうへのことを
・・・・・・・・・・
新しく切り開いて今作った道が清らかであるように

そのようにはっきりと聞きましたよ

貴女がよき時を迎えた女性になったという身の上の事を
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サ2856 作者:柿本人麻呂歌集,京都府,伏見

[題詞](寄物陳思)

山代 石田<社> 心鈍 手向為在 妹相難

山背の 石田の社に 心おそく 手向けしたれや 妹に逢ひかたき 
やましろの いはたのもりに こころおそく たむけしたれや いもにあひかたき
・・・・・・・・・・
山城の石田の杜の神に

心働きがよくなかったらしい

手向けのお賽銭が少なかったせいで

恋人になかなか逢えないんだな 
・・・・・・・・・・
* 「山背」は「山城」。
* 「石田の森」は、京都山科の南、石田にあったという森。
* 「心鈍(おそ)く」は、心働きが悪い。気が利かない意。
* 「手向け」は、神仏に幣帛(へいはく)・花・香などを供えること。
* 「や」は、疑問の係助詞。
* 「がたき」は、形容詞「難し」の連体形。結び。



2857 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](寄物陳思)

菅根之  惻隠々々  照日  乾哉吾袖  於妹不相為

菅の根の ねもころごろに 照る日にも 干めや我が袖 妹に逢はずして 

[すがのねの] ねもころごろに てるひにも ひめやわがそで いもにあはずして
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かんかんに照りつける日ざしにも

乾かないだろうなあ私の抽は

恋人に逢わずにいるからね
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「ねもころ」は誠心誠意といった意味だが、ここでは太陽が照りつける意で用いられている。



2858 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](寄物陳思)

妹戀  不寐朝  吹風  妹經者  吾与經

妹に恋ひ 寐ねぬ朝明に 吹く風は 妹にし触れば 我れさへに触れ 

いもにこひ いねぬあさけに ふくかぜは いもにしふれば われさへにふれ
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あの娘に恋して眠れない朝に吹いてくる風よ

あの娘に触れて来たのなら

私にも触れてくれ
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2859 作者:柿本人麻呂歌集,奈良県,川渡り,難渋

[題詞](寄物陳思)

飛鳥川  高川避紫  越来  信今夜  不明行哉

明日香川 高川避かし 越ゑ来しを まこと今夜は 明けずも行かぬか 

あすかがは たかがはよさし こゑこしを まことこよひは あけずもゆかぬか
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飛鳥川の増水した淵をよけて

わざわざ遠回りしてきたんだよ

本当に今宵はいつまでも明けないでくれないか
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2860 作者:柿本人麻呂歌集,奈良県,異伝,序詞

[題詞](寄物陳思)

八<釣>川  水底不絶  行水  續戀  是比歳 [或本歌曰 水尾母不絶]

八釣川 水底絶えず 行く水の 継ぎてぞ恋ふる この年ころを [或本歌曰 水脈も絶えせず] 

やつりがは みなそこたえず ゆくみづの つぎてぞこふる このとしころを[みをもたえせず]
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八釣川の川底を絶え間なく流れる水のように

ひたすらに貴女に恋しているこの年月です
(或本歌曰 水脈も絶えることなく)
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2861 作者:柿本人麻呂歌集,人目,うわさ,序詞

[題詞](寄物陳思)

礒上  生小松  名惜  人不知  戀渡鴨

礒の上に 生ふる小松の 名を惜しみ 人に知らえず 恋ひわたるかも 

いそのうへに おふるこまつの なををしみ ひとにしらえず こひわたるかも
・・・・・・・・・・
礒の上の松の若木は秘めた人の名を伏せて

人に知られず名誉を重んじて恋し続ける
・・・・・・・・・・
* 『松』・『待つ』ー『女性』



2861S 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,人目,うわさ,異伝

[題詞](寄物陳思)或本歌曰

巌上尓  立小松  名惜  人尓者不云  戀渡鴨

岩の上に 立てる小松の 名を惜しみ 人には言はず 恋ひわたるかも 

いはのうへに てるこまつの なををしみ ひとにはいはず こひわたるかも
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岩の上の松の若木は泰然自若として

人にはいわず恋し続ける
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