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サ2896 [題詞](正述心緒) 歌方毛 曰管毛有鹿 吾有者 地庭不落 空消生 うたがたも いひつつもあるか われならば つちにはおちず そらにけなまし ・・・・・・・・・・・
* 「うたがた」上代語。泡沫。「うたかた」とも。人を感動させる歌方も きっとこう繰り返し言っているのだろうか 私なら地に降ったりはせずに 人知れずに空中で消えたでしょうに と ・・・・・・・・・・・ * 副詞(打消しの語と対応して)けっして、ほんの少しも、きっと。かならず。 * 「つつ」は、接続助詞。反復・継続。動詞の連用形に付き、その動作・作用が反復・継続される意をあらわす。「何度も〜して」「ずっと〜して」「〜し続けて」「〜しながら」。 * 「も」は、係助詞。種々の語をうけ、それを取り立てて提示し、それについての説明・叙述を導くはたらきをするという点で「は」と共通する。しかし、「は」が確実な、選択された限定的な対象としてその語を示すのに対し、「も」は不確実な対象として、あるいはそれ一つとは限定されない対象として示すはたらきをする。 * 「ある」は、存在が認められないほど衰えてみすぼらしいさま。 * 「か」は、。叙情的表現による詠嘆か自問自答の反語的疑問を表す。 * 「ば」は、仮定条件(もし〜ならば)。 * 「消」は、下二動「消ゆ」の未然形・連用形の略。 * 「な」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形。 * 「まし」は、反実仮想の助動詞「まし」の未然形に接続して現実にはあり得ない、あるいは現実とは正反対の事態を仮定する。 2897 [題詞](正述心緒) 何 日之時可毛 吾妹子之 裳引之容儀 朝尓食尓将見 いかならむ ひのときにかも わぎもこが もびきのすがた あさにけにみむ ・・・・・・・・・・・
* も【×裳】(大辞林)どうしたものか いつの日にか吾が妻の 裳の裾をひきずる姿を 朝にも日中にも見て暮らすには ・・・・・・・・・・・ 1 古代、腰から下にまとった衣服の総称。 2 律令制の男子の礼服で、表袴(うえのはかま)の上につけたもの。 3 平安時代以後の女房の装束で、表着(うわぎ)や袿(うちき)の上に、腰部から下の後方だけにまとった服。 4 僧侶が腰につける衣。 [題詞](正述心緒) 獨居而 戀者辛苦 玉手次 不懸将忘 言量欲 ひとりゐて こふるはくるし [たまたすき] かけずわすれむ ことはかりもが ・・・・・・・・・・・
独りで恋をしていて苦しい 何とか忘れる方法を考えなければ ・・・・・・・・・・・ 2899 [題詞](正述心緒) 中々二 黙然毛有申尾 小豆無 相見始而毛 吾者戀香 なかなかに もだもあらましを あづきなく あひみそめても あれはこふるか ・・・・・・・・・・・
なまじっかどうせ添い遂げることは出来ないのに 吾を忘れてどうして逢い始めたのだろう 恋しいと焦がれる 逢っていても離れていても 吾れは ・・・・・・・・・・・ 2900 [題詞](正述心緒) 吾妹子之 咲眉引 面影 懸而本名 所念可毛 わぎもこが ゑまひまよびき おもかげに かかりてもとな おもほゆるかも ・・・・・・・・・・・
* 「もとな」は、 わけもなく、 しきりに。あの女が微笑みながら眉を引いていた面影は 一体誰を思ってのことだったのだろう このようなことをわけもなく思い出すなんて もうきみだけを思っているというのに ・・・・・・・・・・・ 2901 枕詞 [題詞](正述心緒) 赤根指 日之暮去者 為便乎無三 千遍嘆而 戀乍曽居 [あかねさす] ひのくれゆけば すべをなみ ちたびなげきて こひつつぞをる ・・・・・・・・・・・
日暮れの頃になると どうしようもなく 千度も深いため息をついて ただあなたのことを恋しく思っています ・・・・・・・・・・・ 2902 [題詞](正述心緒) 吾戀者 夜晝不別 百重成 情之念者 甚為便無 あがこひは よるひるわかず [ももへなす] こころしおもへば いたもすべなし ・・・・・・・・・・・
私の恋は昼夜の別もありません 百重も重なった私のこの思いを もうどうすることもできません ・・・・・・・・・・・ 2903 [題詞](正述心緒) 五十殿寸太 薄寸眉根乎 徒 令掻管 不相人可母 いとのきて うすきまよねを いたづらに かかしめつつも あはぬひとかも ・・・・・・・・・・・
ことのほか 薄い眉毛を むだに 掻かせておきながら 会ってもくれない そんな人なんだけどなあ ・・・・・・・・・・・ サ12 2904 [題詞](正述心緒) 戀々而 後裳将相常 名草漏 心四無者 五十寸手有目八面 こひこひて のちもあはむと なぐさもる こころしなくは いきてあらめやも ・・・・・・・・・・・
* 「恋」は相手と離れて、逢いたいと願う苦しみをいい、愛しい相手と逢っている時は「恋」はない。恋焦がれていれば きっとまた逢えると 自分を慰める強く思う心がないと わたしは どうして生きていられるでしょうか ・・・・・・・・・・・ * 「む」(む、む、め)は、推量・意志を表わす。上代両者の区別があったかは疑問。連体形を用いて仮定を、 「こそ」の結びとして已然形を用いて適当・当然・歪曲な命令・勧誘を、 已然形「め」が疑問の助詞「や」「か」をともなって、反語の意を示す。 * 「し」は、副助詞。種々の語を承け、それを強く指示して強調する。 * 「あら」はラ行変格活用「あり」の未然形で、順接の接続助詞「ば」を接して仮定条件。 * 「めやも」は、「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「やも」は反語の終助詞。「どうして〜するだろうか、そんなことはできない」という意。 <個別へ> http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32512933.html 2905 [題詞](正述心緒) 幾 不生有命乎 戀管曽 吾者氣衝 人尓不所知 いくばくも いけらじいのちを こひつつぞ われはいきづく ひとにしらえず ・・・・・・・・・・・
*まなび http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31843743.html人はいくらも生きていられないのに あの人がいればこそ あの人を愛すればこそ 私は生きる力が湧くのさ 人知れずとも ・・・・・・・・・・・ 2906 [題詞](正述心緒) 他國尓 結婚尓行而 大刀之緒毛 未解者 左夜曽明家流 ひとくにに よばひにゆきて たちがをも いまだとかねば さよぞあけにける ・・・・・・・・・・・
惚れたばかりに他国の女の元に妻問いに来たのに 大刀の緒すらもまだ解かずにいる そろそろ夜も明けるというのに ・・・・・・・・・・・ |
・・万葉集(〃)
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2884 枕詞 [題詞](正述心緒) 戀管母 今日者在目杼 玉匣 将開明日 如何将暮 こひつつも けふはあらめど [たまくしげ] あけなむあすを いかにくらさむ ・・・・・・・・・・・
あなたと恋に浸って今日は過ごしましたが 明ける明日は一体どのように暮らせばいいのでしょう ・・・・・・・・・・・ 2885 枕詞 [題詞](正述心緒) 左夜深而 妹乎念出 布妙之 枕毛衣世二 <嘆>鶴鴨 さよふけて いもをおもひいで [しきたへの] まくらもそよに なげきつるかも ・・・・・・・・・・・
* そよ[副]物が揺れてたてるかすかな音などを表す語夜が更けてあの子を忘れられず 枕も一緒に嘆いていることよ ・・・・・・・・・・・ [感]ふと思い出したときや、あいづちを打つときなどに用いる語。 2886 うわさ [題詞](正述心緒) 他言者 真言痛 成友 彼所将障 吾尓不有國 ひとごとは まことこちたくなりぬとも そこにさはらむ われにあらなくに ・・・・・・・・・・・
人の噂は本当に煩わしくても それに妨げられる私ではないことよ ・・・・・・・・・・・ 2887 [題詞](正述心緒) 立居 田時毛不知 吾意 天津空有 土者踐鞆 たちてゐて たどきもしらず あがこころ あまつそらなり つちはふめども ・・・・・・・・・・・
君のことを想うと 立ったりすわったりして どうしてよいか分からず 私の心なにもかもうわ空です 地を踏んではいるのですけど ・・・・・・・・・・・ 2888 [題詞](正述心緒) 世間之 人辞常 所念莫 真曽戀之 不相日乎多美 よのなかの ひとのことばと おもほすな まことぞこひし あはぬひをおほみ ・・・・・・・・・・・
ありふれた言葉だなんて思わないで下さい 本当にあなたのことが恋しくてたまりません あなたにお逢いできない日があまりにも多いから いっそ終わりにしましょうか ・・・・・・・・・・・ 2889 [題詞](正述心緒) 乞如何 吾幾許戀流 吾妹子之 不相跡言流 事毛有莫國 いでいかに あがここだこふる わぎもこが あはじといへる こともあらなくに ・・・・・・・・・・・
おいどうなってんだ 私がこんなに変わらず恋しているのに あの子が会いたくないなんて 聞いたたこともないことだぞ ・・・・・・・・・・・ 2890 枕詞 [題詞](正述心緒) 夜干玉之 夜乎長鴨 吾背子之 夢尓夢西 所見還良武 [ぬばたまの] よをながみかも わがせこが いめにいめにし みえかへるらむ ・・・・・・・・・・・
長い夜にはねえ 私の女は夜どおし繰り返し繰り返し 夢の中で逢いにくるのさ 夢の中でね ・・・・・・・・・・・ 2891 枕詞 [題詞](正述心緒) 荒玉之 年緒長 如此戀者 信吾命 全有目八面 [あらたまの] としのをながく かくこひば まことわがいのち またくあらめやも ・・・・・・・・・・・
* 年々歳々恋の緒の 長く繋いだこの命 尽きる限りのその日まで この愛はともにあるともよ きっと ・・・・・・・・・・・ め や も( 連語 ) 〔推量の助動詞「む」の已然形「め」に係助詞「や」,係助詞「も」の付いたもの。「や」は反語,「も」は詠嘆の意を表す〕 推量または意志を反語的に言い表し,それに詠嘆の意が加わったもの。…だろうか,いや,そんなことはないなあ。 2892 [題詞](正述心緒) 思遣 為便乃田時毛 吾者無 不相數多 月之經去者 おもひやる すべのたどきも われはなし あはずてまねく つきのへぬれば ・・・・・・・・・・・
* 「思ひ遣る」は、古くは 「気を晴らす(=物思いをよそにやる)」という意で、古今の時代では 「思い」を「遣(つか)わす」。物思いを晴らす方法もわからない 長く逢えずに月日はただ去って行くだけで ・・・・・・・・・・・ 2893 女歌 [題詞](正述心緒) 朝去而 暮者来座 君故尓 忌々久毛吾者 歎鶴鴨 あしたいにて ゆふへはきます きみゆゑに ゆゆしくもわは なげきつるかも ・・・・・・・・・・・
* 「ゆゆし」は、慎みも無く、憚らずという意も。朝はお帰りになっても 夜にはまたおいでになるのに あなたがいない昼間でも 狂おしいほどにあなたが欲しくなる 待ちきれないで嘆き悶える私であることよ ・・・・・・・・・・・ 2894 [題詞](正述心緒) 従聞 物乎念者 吾者 破而摧而 鋒心無 ききしより ものをおもへば あがむねは われてくだけて とごころもなし ・・・・・・・・・・・
夫が誰かを好きになっているという噂を聞いて 物思いに落ち込み私の胸は張り裂けそうなの もう理性なんかなくなりました ・・・・・・・・・・・ 2895 うわさ [題詞](正述心緒) 人言乎 繁三言痛三 吾妹子二 去月従 未相可母 ひとごとを しげみこちたみ わぎもこに いにしつきより いまだあはぬかも ・・・・・・・・・・・
* 「人言(ひとごと)」は、人がうわさすること。恋の邪魔をすること。人のうわさがうるさくておたがいに辛かった 愛しかったあの子と別れたあの時 あれから幾年月も過ぎたのに 未だに逢えないのか ・・・・・・・・・・・ * 「人言を繁み言痛み」は、「人のうわさがうるさくて辛い」という意。 |
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2862 作者:柿本人麻呂歌集,序詞 [題詞](寄物陳思) 山川 水陰生 山草 不止妹 所念鴨 [やまがはの みづかげにおふる やますげの] やまずもいもは おもほゆるかも ・・・・・・・・・・
山川の水辺の山菅は いくら刈っても生えるつづけるように 私は貴女を慕っているのです ・・・・・・・・・・ 2863 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,異伝 [題詞](寄物陳思) [あさはのに たちかむさぶる すがのねの] ねもころたがゆゑ あがこひなくに[たがはのに たちしなひたる] ・・・・・・・・・・
* 「惻隠」の意は「あわれみいたむこと」。浅葉野に神々しくさえ見える菅の根のように わたしはねんごろな恋をしたい それは誰でもない貴女との恋なのに 恋、、 愛 そのように愛する(した)ことができたろうか わたしに ・・・・・・・・・・ * 「菅根」は「菅の根の」の二つの「の」を省略したものなのか。 「菅」が「根」を修飾し、「菅根」が「惻隠」の修飾関係なのか。 連体格の「の」か連用格の「の」か。 序詞を受け、つなぎことばとして機能しているのか。 * 「ねもころ」[形動ナリ]「ねんごろ」の古形。「ねもごろ」とも。 * 当て字の真意に迫ることは難しい。 正述心緒 2864 女歌 [題詞]正述心緒 吾背子乎 且今々々跡 待居尓 夜更深去者 嘆鶴鴨 わがせこを いまかいまかと まちゐるに よのふけゆけば なげきつるかも ・・・・・・・・・・
夫が来るのをを今か今かと待ちわびているのに 夜は更けゆくばかりで嘆かわしいことです ・・・・・・・・・・ 2865 [題詞](正述心緒) 玉釼 巻宿妹母 有者許増 夜之長毛 歡有倍吉 たまくしろ まきぬるいもも あらばこそ よのながけくも うれしくあるべき ・・・・・・・・・・
* 「たま‐くしろ」玉釧。 [名]玉をつないで作った腕輪。 玉釧を巻いた腕枕で 一緒に寝る妻がいるからこそ いくら夜長でも嬉しいのだよ ・・・・・・・・・・ [枕]手に巻く意から、「まく」「手に取り持つ」にかかる。 2866 女歌,歌謡 [題詞](正述心緒) 人妻尓 言者誰事 酢衣乃 此紐解跡 言者孰言 ひとづまに いふはたがこと さごろもの このひもとけと いふはたがこと ・・・・・・・・・・
* 紐を結び合うのは愛の行為、「紐解け」は共寝をしようという誘いかけ。人妻に言い寄るなんて どなたのおことばでしょうね ましてや下着の紐を解いて 寝ようとは誰れのことばなのばなの ・・・・・・・・・・ * 拒んでいるのか、じらしているのか。 2867 未練 [題詞](正述心緒) 如是許 将戀物其跡 知者 其夜者由多尓 有益物乎 かくばかり こひむものぞと しらませば そのよはゆたに あらましものを ・・・・・・・・・・
恋がこんなに辛いものだと知っていたなら その夜は上の空でぼんやりしていればよかったのに ・・・・・・・・・・ 2868 [題詞](正述心緒) 戀乍毛 後将相跡 思許増 己命乎 長欲為礼 こひつつも のちもあはむと おもへこそ おのがいのちを ながくほりすれ ・・・・・・・・・・
恋しく思いながらも 時を経ても後には きっとお逢いできると思うからこそ こんな露のようにはかない命を 長くありたいと願っているのです ・・・・・・・・・・ 2869 [題詞](正述心緒) 今者吾者 将死与吾妹 不相而 念渡者 安毛無 いまはわは しなむよわぎも あはずして おもひわたれば やすけくもなし ・・・・・・・・・・
「死なむよ」は、「死なむ」に詠歎の助詞「よ」のついたもの。「死にましょう」となる。この詠歎の助詞には特別の響きがある。女が男に言う方がいい。大伴坂上郎女の、「今は吾は死なむよ吾背生けりとも吾に縁(よ)るべしと言ふといはなくに」や、「よしゑやし死なむよ吾妹生けりとも斯くのみこそ吾が恋ひ渡りなめ」(巻十三・三二九八)は類歌。もう私は死んでしまう方がましだよ あなたを恋続けて日も夜も心の休まることがないのだもの ・・・・・・・・・・ * 「死」の字は「恋」の歌に多く使われている。何故か。 2870 女歌,怨 [題詞](正述心緒) 我背子之 将来跡語之 夜者過去 思咲八更々 思許理来目八面 わがせこが こむとかたりし よはすぎぬ しゑやさらさら しこりこめやも ・・・・・・・・・・
* 「しこる」あやまつ、しそこなう。彼氏が今夜こそ会いに来ると言ってたのに もう夜は明けてしまうわ ままよ なにかで来られないんだ ・・・・・・・・・・ 2871 うわさ,枕詞 [題詞](正述心緒) 人言之 讒乎聞而 玉<桙>之 道毛不相常 云吾妹 ひとごとの よこしをききて [たまほこの] みちにもあはじと いへりしわぎも ・・・・・・・・・・
悪意の根も葉もない噂が流れた それを聞いて信じたのか 道で出会うのもいやだと彼女が言うんだよ ・・・・・・・・・・ 2872 うわさ [題詞](正述心緒) 不相毛 懈常念者 弥益二 人言繁 所聞来可聞 あはなくも うしとおもへば いやましに ひとごとしげく きこえくるかも ・・・・・・・・・・
会わなくなって憂鬱な上 噂にもてあそばされてると思うと 一層噂が増して聞こえてくるようだ ・・・・・・・・・・ |



