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2392 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 中々 不見有 従相見 戀心 益念 なかなかに みずあらましを あひみてゆ こほしきこころ ましておもほゆ ・・・・・・・・・
なかなか逢うことが出来ませんが 逢えば恋しい心がいっそう増すのでしょうにね ・・・・・・・・・ 2393 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 玉桙 道不行為有者 惻隠 此有戀 不相 [たまほこの] みちゆかずあらば ねもころの かかるこひには あらざらましを ・・・・・・・・・
* 「ねもころ」(形動ナリ・副詞)心のこまかく行き渡るさま。美しい鉾の立つ道で貴女に出会わなかったら 物思いにふさいでしまう気持ちで過ごす このような恋をすることもなかったでしょうに ・・・・・・・・・ 2394 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 朝影 吾身成 玉垣入 風所見 去子故 あさかげに あがみはなりぬ [たまかきる] ほのかにみえて いにしこゆゑに ・・・・・・・・・
* 「玉かぎる」は「夕」「ほのか」などにかかる枕詞。朝日(あさかげ)に私はなったのね 貴方は朝影の中に消えてしまったもの 玉がほのかに光る夜に見たお姿よ ・・・・・・・・・ 2395 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 行々 不相妹故 久方 天露霜 <沾>在哉 ゆきゆきて あはぬいもゆゑ [ひさかたの] あまつゆしもに ぬれにけるかも ・・・・・・・・・
夜にはるばる貴女に逢いに行っても なかなか逢えない貴女のせいで 遥かな天の露霜で すっかり濡れてしまったことよ ・・・・・・・・・ 2396 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 玉坂 吾見人 何有 依以 亦一目見 たまさかに わがみしひとを いかならむ よしをもちてか またひとめみむ ・・・・・・・・・
* 「たまさか」(形動ナリ)偶然に会うさま。偶然に出逢ったあの人を どんなきっかけをつくって もう一度逢うことができるでしょうか ・・・・・・・・・ 2397 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ [題詞](正述心緒) * 不見戀 吾妹 日々来 事繁 しましくも みぬばこほしき わぎもこを ひにひにくれば ことのしげけく ・・・・・・・・・
少しの間も貴女に会わないと恋しい私の愛しい貴女 逢うその日がやって来たら ああも言おう こうもしようと 想うことが色々とあります ・・・・・・・・・ 2398 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,うわさ [題詞](正述心緒) <玉>切 及世定 恃 公依 事繁 [たまきはる] よまでとさだめ たのみたる きみによりてし ことのしげけく ・・・・・・・・・
この世に生きている間はと心に決め 頼りの貴方に寄り添うとすることが色々とあるので それが噂になっていやですねえ ・・・・・・・・・ 2399 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 朱引 秦不經 雖寐 心異 我不念 [あからひく] はだもふれずて いぬれども こころをけには わがおもはなくに ・・・・・・・・・
美しい肌にも触れずに寝たが それは決して心変わりなどではないからね ・・・・・・・・・ 2400 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 伊田何 極太甚 利心 及失念 戀故 いでなにか ここだはなはだ とごころの うするまでおもふ こひゆゑにこそ ・・・・・・・・・
さあ何なのだ これほどはっきり 冷静な気持ちを失くするほど思いつめる ただ貴女をかき抱きたいと思うため ・・・・・・・・・ 2401 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 戀死 戀死哉 我妹 吾家門 過行 こひしなば こひもしねとか わぎもこが わぎへのかどを すぎてゆくらむ ・・・・・・・・・
恋い死にをするならご勝手にというつもりでか 恋仲のおれの家の門を知らん顔で通り過ぎていく ・・・・・・・・・ 2402 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 妹當 遠見者 恠 吾戀 相依無 いもがあたり とほくもみれば あやしくも あれはこふるか あふよしなしに ・・・・・・・・・
* 「あやし」(形シク)理解しがたい。奇怪だ。愛しい彼女の姿を遥か遠くに見ると どうして私は貴女に恋をするのか もう逢うことが出来ないのに ・・・・・・・・・ 2403 作者:柿本人麻呂歌集,京都 [題詞](正述心緒) 玉久世 清川原 身秡為 齊命 妹為 たまくせの きよきかはらに みそぎして いはふいのちは いもがためこそ ・・・・・・・・・
美しい久世の清らかな川原で 禊して祈る御言は 愛する貴女のためだけ ・・・・・・・・・ 2404 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 思依 見依 物有 一日間 忘念 おもひより みてはよりにし ものにあれば ひとひのあひだも わすれておもへや ・・・・・・・・・
心にも思い 逢っては身を寄せた その貴女の姿を 一日の間でも忘れたと思いますか ・・・・・・・・・ 2405 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ,枕詞 [題詞](正述心緒) 垣廬鳴 人雖云 狛錦 紐解開 公無 [かきほなす] ひとはいへども [こまにしき] ひもときあけし きみならなくに ・・・・・・・・・
人はあれこれとうわさしていますが 私の家で紐を解いて 衣を脱いだ貴方ではないのに ・・・・・・・・・ |
・・万葉集(〃)
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2380 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 早敷哉 誰障鴨 玉桙 路見遺 公不来座 はしきやし たがさふれかも [たまほこの] みちみわすれて きみがきまさぬ ・・・・・・・・・
ああ愛おしい 誰かが邪魔をしているのでしょうか 立派な桙の立つ宮かどの道を忘れたのか 貴方がやって来ません ・・・・・・・・・ 2381 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 公目 見欲 是二夜 千歳如 吾戀哉 きみがめを みまくほりして このふたよ ちとせのごとも あはこふるかも ・・・・・・・・・
貴方の目を見つめようと思って この二夜 まるで千年のように感じて待ち侘び 私は貴方を慕っているのですよ ・・・・・・・・・ サ2382 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 打日刺 宮道人 雖満行 吾念公 正一人 [うちひさす] みやぢをひとは みちゆけど あがおもふきみは ただひとりのみ ・・・・・・・・・
* 「打日刺」枕詞―うちひさす。 「うちひさす」は「うちひさつ」とも日に照り映える荘厳な宮殿への道を 人は溢れるように歩いて行くが 私のおもう人はただ一人 君 ただ一人のみ ・・・・・・・・・ 語義およびかかり方未詳。「宮」「都」にかかる。栄光にして荘厳の意とか。 『角川漢和中辞典』では、「都」は「総・ふさ」と同訓、同義でもあり、語源は「あつまる」。「まとめる、みやびやか〔都雅〕、うつくしい」の意味をもつ。 * 「打日刺」、それにしても痛々しい当て字と私は思う。 2383 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 世中 常如 雖念 半手不<忘> 猶戀在 よのなかは つねかくのみと おもへども はたたわすれず なほこひにけり ・・・・・・・・・
* 「はたたわすれず」・「かつてわすれず」世の中は常々このようなものかと思いはするが この恋心はどうしても忘れることが出来ず なおさらながら想いがつのることよ ・・・・・・・・・ (半手不<忘>)・(曽不忘) http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#535かつてわすれず(曽不忘) 2384 作者:柿本人麻呂歌集,女歌 [題詞](正述心緒) 我勢古波 幸座 遍来 我告来 人来鴨 わがせこは さきくいますと かへりくと あれにつげこむ ひともこぬかも ・・・・・・・・・
大切な貴方が無事で居ますよ 無事にお帰りになりますよと 私に告げに来る人は来ないようですねえ ・・・・・・・・・ 2385 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) <麁>玉 五年雖經 吾戀 跡無戀 不止恠 [あらたまの] いつとせふれど あがこひの あとなきこひの やまなくあやし ・・・・・・・・・
年が新らたまりつつ五年過ごしたが 実際に愛し抱き合うことの出来ないそんな恋 なのに止むことがない恋の不思議さよ ・・・・・・・・・ 2386 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 石尚 行應通 建男 戀云事 後悔在 いはほすら ゆきとほるべき ますらをも こひといふことは のちくいにけり ・・・・・・・・・
巌であっても踏破して当然の男児なのに 相手が恋となるとひるんで後になって悔いることよ ・・・・・・・・・ 2387 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ [題詞](正述心緒) 日<位> 人可知 今日 如千歳 有与鴨 ひならべば ひとしりぬべし けふのひは ちとせのごとも ありこせぬかも ・・・・・・・・・
このような日が続くと人が貴方と私の仲を気づくでしょう 今日の一日は千年のように長くならないでしょうか ・・・・・・・・・ 2388 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 立座 <態>不知 雖念 妹不告 間使不来 たちてゐて たづきもしらず おもへども いもにつげねば まつかひもこず ・・・・・・・・・
居ても立ってもこの恋を表す方法がわからない いくら貴女を慕っていても それを告げなくては 貴女からの使いも来ませんね ・・・・・・・・・ 2389 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,女歌,後朝 [題詞](正述心緒) 烏玉 是夜莫明 朱引 朝行公 待苦 [ぬばたまの] このよなあけそ あからひく あさゆくきみを またばくるしも ・・・・・・・・・
この夜よ明け白むな 知るや暁の中をゆく君を送るつらさを 朱に染まっている私の体が 次に逢うときまで待つのが辛いと疼く ・・・・・・・・・ 2390 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 戀為 死為物 有<者> 我身千遍 死反 こひするに しにするものに あらませば あがみはちたび しにかへらまし ・・・・・・・・・
抱かれてそのために死ぬのでしたら 私の体は千遍も死んで生き還りましょう ・・・・・・・・・ 2391 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 玉響 昨夕 見物 今朝 可戀物 [たまかぎる] きのふのゆふへ みしものを けふのあしたに こふべきものか ・・・・・・・・・
玉がほのかに光り 触れ合うかすかな音 昨夜にお会いした貴方なのに 今朝には面影が棲みついて もう私は恋におちてしまいました ・・・・・・・・・ |
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2368 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞]正述心緒 垂乳根乃 母之手放 如是許 無為便事者 未為國 [たらちねの] ははがてはなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに ・・・・・・・・・
物心がついて 母の手から離れると これほどどうしようもない 未経験のめにあうのかしら 母を頼らないではいられない ・・・・・・・・・ 2369作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 人所寐 味宿不寐 早敷八四 公目尚 欲嘆 [或本歌云 公矣思尓 暁来鴨] ひとのぬる うまいはねずて はしきやし きみがめすらを ほりしなげかむ[きみをおもふに あけにけるかも] ・・・・・・・・・
* 「はしきやし」 いとおしい君を思っているうちに夜が明けてしまう 人並みに寝て熟睡するようには寝ることが出来なくて せめて夢の中で愛しい貴方の姿を見たいと思い嘆いても ・・・・・・・・・ 2370作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 戀死 戀死耶 玉鉾 路行人 事告<無> こひしなば こひもしねとや [たまほこの] みちゆくひとの こともつげなく ・・・・・・・・・
恋に苦しんで死ねば もうその恋も無くなるではないか ですか 路行く人は勝手に焦れ死ねよと そんな言づても告げてはくれない ・・・・・・・・・ 2371作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 心 千遍雖念 人不云 吾戀つ 見依鴨 こころには ちへにおもへど ひとにいはぬ あがこひづまを みむよしもがも ・・・・・・・・・
貴女を愛していると 心の中では千遍も思っていても 人には云いません 私の恋妻に逢う機会がないままかよ なにか方法がないものかなあ ・・・・・・・・・ 2372作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 是量 戀物 知者 遠可見 有物 かくばかり こひむものぞと しらませば とほくもみべく あらましものを ・・・・・・・・・
このように貴女に恋するものだと知っていたら 初めに貴女の姿を見たとき 遠くからぼんやりと見るべきでした ・・・・・・・・・ 2373作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 何時 不戀時 雖不有 夕方<任> 戀無乏 いつはしも こひぬときとは あらねども ゆふかたまけて こひはすべなし ・・・・・・・・・
いつも貴女を恋い慕わないときはありませんが 夕方が近づくにつれて 恋心はもうどうしようもありません ・・・・・・・・・ 2374作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 是耳 戀度 玉切 不知命 歳經管 かくのみし こひやわたらむ [たまきはる] いのちもしらず としはへにつつ ・・・・・・・・・
このように魂の極まる恋をし続けている 命も知らず年を過ごしている そうとも 死が別つまでさ ・・・・・・・・・ 2375作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 吾以後 所生人 如我 戀為道 相与勿湯目 われゆのち うまれむひとは あがごとく こひするみちに あひこすなゆめ ・・・・・・・・・
後の世の人よ 私のような恋はし給うな 楽しい恋をすることだ 果てしない苦しみの恋には ゆめ決して遭わないでほしい ・・・・・・・・・ 2376作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 健男 現心 吾無 夜晝不云 戀度 ますらをの うつしごころも われはなし よるひるといはず こひしわたれば ・・・・・・・・・
立派な男だてを示す心意気は私にはありません 夜昼と云わずに貴女にべったり恋し続けている私には ・・・・・・・・・ 2377作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 何為 命継 吾妹 不戀前 死物 なにせむに いのちつぎけむ わぎもこに こひぬさきにも しなましものを ・・・・・・・・・
どのように私の命を永らえましょう 愛しい貴女と恋の行為をする前に もう苦しみに死んでしまいそうだ ・・・・・・・・・ 2378作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 吉恵哉 不来座公 何為 不Q吾 戀乍居 よしゑやし きまさぬきみを なにせむに いとはずあれは こひつつをらむ ・・・・・・・・・
いいですよかまいません いらっしゃらない貴方を 厭わずそれでも私は貴方に恋し続けていますよ ・・・・・・・・・ 2379作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 見度 近渡乎 廻 今哉来座 戀居 みわたせば ちかきわたりを たもとほり いまかきますと こひつつぞをる ・・・・・・・・・
向こう岸まで見渡せば近いその辺を わざと回り道して もうお見えになるかと 貴方を恋い慕いながら待っています ・・・・・・・・・ |
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2361 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](旋頭歌) 天在 一棚橋 何将行 穉草 妻所云 足<壮>嚴 あめなる ひとつたなはし いかにかゆかむ [わかくさの] つまがりといはば あしかざりせむ ・・・・・・・・・・・
天に一つしかないという 具足なども弱くて棚のような橋を どうやって渡るのか せめて妻のもとへ行って 美しい飾りをつけてあげよう そうだよ そうだよ ・・・・・・・・・・・ [題詞](旋頭歌) 開木代 来背若子 欲云余 相狭丸 吾欲云 開木代来背 [やましろの] くせのわくごが ほしといふわれ あふさわに われをほしといふ やましろのくぜ ・・・・・・・・・・・
* 「あふさわに」(副詞)は、見るなりすぐに、また、逢う時の意の「あふさ」に、急にの意の「あわに」の付いた「あふさあわに」の音変化で、「会うとすぐに」と解釈。やましろの久背の若者が 私を見るなり妻に欲しいと言うの やましろの久背の若者が あふさわに あふさわに ・・・・・・・・・・・ * 「稚子」ワカコハは、男子。 * 「吾ほし」は、妻にほしと。 [題詞](旋頭歌) 岡前 多未足道乎 人莫通 在乍毛 公之来 曲道為 をかのさき たみたるみちを ひとなかよひそ ありつつも きみがきまさむ よきみちにせむ ・・・・・・・・・・・
* 「たみたる道」とはまがり道。岡の先を巡るこの道は 人は通行止めよ 我が君だけが通う道だから 人は通行止めよ ああそうかい わかったよ わかったよ ・・・・・・・・・・・ サ2364 古歌集,勧誘 [題詞](旋頭歌) 玉垂 小簾之寸鶏吉仁 入通来根 足乳根之 母我問者 風跡将申 [たまだれの] をすのすけきに いりかよひこね [たらちねの] ははがとはさば かぜとまをさむ ・・・・・・・・・・・
* 『古歌集』、万葉集編纂の資料になった歌集で、主に飛鳥・藤原京の時代の歌。玉を垂らした簾のわずかな隙間から そっと入って来てください 母がとがめて尋ねたら風のせいだというから ・・・・・・・・・・・ * 「すけき」は「すこき」小さい、わずかな。 2365 古歌集,枕詞 [題詞](旋頭歌) 内日左須 宮道尓相之 人妻<め> 玉緒之 念乱而 宿夜四曽多寸 [うちひさす] みやぢにあひし ひとづまゆゑに [たまのをの] おもひみだれて ぬるよしぞおほき ・・・・・・・・・・・
宮道で出会ったひとが忘れられないんだ 胸が詰まって寝られない夜がつづいてるんだ ああどうしょ どうしょ ・・・・・・・・・・・ 2366 古歌集,枕詞 [題詞](旋頭歌) 真十鏡 見之賀登念 妹相可聞 玉緒之 絶有戀之 繁比者 [まそかがみ] みしかとおもふ いももあはぬかも [たまのをの] たえたるこひの しげきこのころ ・・・・・・・・・・・
なぜ 逢えなくなったのか あの人かと見て追えば人違い 命に代えてもさ 逢いたい恋人なんだ 恋人なんだ ・・・・・・・・・・・ 2367 古歌集,枕詞 [題詞](旋頭歌) 海原乃 路尓乗哉 吾戀居 大舟之 由多尓将有 人兒由恵尓 うなはらの みちにのりてや あがこひをらむ [おほぶねの] ゆたにあるらむ ひとのこゆゑに ・・・・・・・・・・・
人の子としての行末も思わず 海原の道に心をのせて 他になびくこともない わが恋はかたし おほぶねだ おほぶねだ ・・・・・・・・・・・ |
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第十一巻 旋頭歌 サ2351作者:柿本人麻呂歌集,求婚 [題詞]旋頭歌 新室 壁草苅邇 御座給根 草如 依逢未通女者 公随 にひむろの かべくさかりに いましたまはね くさのごと よりあふをとめは きみがまにまに ・・・・・・・・・・
新築の家の壁草刈りに招かれた若者は、(新室の神事のために)集まって来る娘子を意のままにできる意の歌。新築のめでたい壁草刈りにおいでください その草刈りに寄り合うのは 選り抜きの乙女子ばかり もう御意のままですよ ・・・・・・・・・・ サ2352作者:柿本人麻呂歌集,求婚 [題詞](旋頭歌) 新室 踏静子之 手玉鳴裳 玉如 所照公乎 内等白世 にひむろを ふみしづむこが ただまならすも たまのごと てらせるきみを うちにとまをせ ・・・・・・・・・・
* 当時の庶民の家壁は、草を垂らすだけで、固い土の壁ではなかった。出来あがった家の中で、歌って足踏みするのは、タタキ(三和土)で床ではなく、たたき固めて仕上げた土間。時代が下ると石灰や水をまぜて練ったものを塗りった。新しい家を造る地鎮の祭りで 足踏み歌をうたう大勢の乙女らが 手飾りの玉を調子よく鳴らしている あの玉のような立派な男子を この新しい家に入るように申し上げよ ・・・・・・・・・・ * 新築の時地面を踏み鎮める神事を行う娘子に、立派な若者を家の中へ招き入れさせる意。前歌と共に豊穣の意を含んだ「新室寿ぎの歌」とされる。 2353作者:柿本人麻呂歌集,隠妻,枕詞,奈良 [題詞](旋頭歌) 長谷 弓槻下 吾隠在妻 赤根刺 所光月夜邇 人見點鴨 [一云 人見豆良牟可] はつせの ゆつきがしたに わがかくせるつま [あかねさし] てれるつくよに ひとみてむかも[ひとみつらむか] ・・・・・・・・・・
* 「ゆつき」はたくさんの枝がある槻(けやき)のこと。初瀬のこんもり茂る神聖な槻の木の下に 隠しておいた妻よ 月の光が明るい晩には 誰か他の男に見つかるかもしれない ああ心配なことよ目立って美しい妻を持つと ・・・・・・・・・・ 2354作者:柿本人麻呂歌集,隠妻 [題詞](旋頭歌) 健男之 念乱而 隠在其妻 天地 通雖<光> 所顕目八方 [一云 大夫乃 思多鶏備弖] ますらをの おもひみだれて かくせるそのつま あめつちに とほりてるとも あらはれめやも[ますらをの おもひたけびて] ・・・・・・・・・・
男子たるものがちぢに思い乱れて 人の目に隠している大切な妻だから 月の光が天地をくまなく照り輝かせることがあろうと 人に見つかることなどあってたまるか ・・・・・・・・・・ 2355作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](旋頭歌) 恵得 吾念妹者 早裳死耶 雖生 吾邇應依 人云名國 うつくしと あがおもふいもは はやもしなぬか いけりとも われによるべしと ひとのいはなくに ・・・・・・・・・・
* 「なくに」は一括して打消・感動の終助詞。・・・ナイコトダガナア。愛しく思うあの女は いっそのこと死ねばいい 生きていても 自分に靡き寄る見込みがないのだから ・・・・・・・・・・ 上代の打消助動詞未然形「な」に、体言的ないを添える接尾語「く」、「に」は感動の終助詞。 2356作者:柿本人麻呂歌集,比喩,女歌 [題詞](旋頭歌) 狛錦 紐片<叙> 床落邇祁留 明夜志 将来得云者 取置<待> こまにしき ひものかたへぞ とこにおちにける あすのよし きなむといはばとりおきてまたむ ・・・・・・・・・・
* 相手にやんわりと証拠品として持っているわと言っている。結んだはずの高麗錦の紐の片方が床に落ちていましたわ 紐が 片一方では世間体がわるいでしょう 明日の夜また来て下さるなら取って置きますけど ・・・・・・・・・・ 2357作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](旋頭歌) 朝戸出 公足結乎 閏露原 早起 出乍吾毛 裳下閏奈 あさとでの きみがあゆひを ぬらすつゆはら はやくおき いでつつわれも もすそぬらさな ・・・・・・・・・・
* 「足結」は、袴の膝下のあたりをくくる紐のこと。古代妻問い婚が一般的で、別れの早朝、一夜を共にした女性が人に気付かれて噂にならないよう、戸口まで見送る。朝戸を開けて 早くにお帰りになるあなたの足結をぬらす露原よ 私も早く起きてその露原でご一緒に裳の裾をぬらしましょう 人目なんか気にならないほど一緒にいたいから ・・・・・・・・・・ 2358作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](旋頭歌) 何為 命本名 永欲為 雖生 吾念妹 安不相 なにせむに いのちをもとな ながくほりせむ いけりとも あがおもふいもに やすくあはなくに ・・・・・・・・・・
いのち長かれと祈って何としょ こうして生きていたって思うあの子に なかなか逢えないこの苦労 こんなことなら生きていたって何としょ ・・・・・・・・・・ 2359作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](旋頭歌) 息緒 吾雖念 人目多社 吹風 有數々 應相物 いきのをに われはおもへど ひとめおほみこそ ふくかぜに あらばしばしば あふべきものを ・・・・・・・・・・
息も絶えだえに死ぬ想いで あの人のことを思っているけれど 人目が多くて逢えもしない いっそ吹く風になりたい 風になって吹いて行きたやあの人の懐へ ・・・・・・・・・・ 2360作者:柿本人麻呂歌集,序詞 [題詞](旋頭歌) 人祖 未通女兒居 守山邊柄 朝々 通公 不来哀 ひとのおや をとめこすゑて もるやまへから あさなさな かよひしきみが こねばかなしも ・・・・・・・・・・
人の子の親なれば娘を守り大切にしてきた 大切に守るという名の守山のあたりから 毎日通ってきた婿が このごろ見えないのでせつないよ 娘の 姿を見ると せつないよ ・・・・・・・・・・ |



