ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・・万葉集(〃)

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2392 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

中々  不見有  従相見  戀心  益念

なかなかに 見ずあらましを 相見てゆ 恋ほしき心 まして思ほゆ 

なかなかに みずあらましを あひみてゆ こほしきこころ ましておもほゆ
・・・・・・・・・
なかなか逢うことが出来ませんが

逢えば恋しい心がいっそう増すのでしょうにね
・・・・・・・・・



2393 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

玉桙  道不行為有者  惻隠  此有戀  不相

玉桙の 道行かずあらば ねもころの かかる恋には 逢はざらましを 

[たまほこの] みちゆかずあらば ねもころの かかるこひには あらざらましを
・・・・・・・・・
美しい鉾の立つ道で貴女に出会わなかったら

物思いにふさいでしまう気持ちで過ごす

このような恋をすることもなかったでしょうに
・・・・・・・・・
* 「ねもころ」(形動ナリ・副詞)心のこまかく行き渡るさま。



2394 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

朝影  吾身成  玉垣入  風所見  去子故

朝影に 我が身はなりぬ 玉かきる ほのかに見えて 去にし子ゆゑに 

あさかげに あがみはなりぬ [たまかきる] ほのかにみえて いにしこゆゑに
・・・・・・・・・
朝日(あさかげ)に私はなったのね

貴方は朝影の中に消えてしまったもの

玉がほのかに光る夜に見たお姿よ
・・・・・・・・・
* 「玉かぎる」は「夕」「ほのか」などにかかる枕詞。



2395 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

行々  不相妹故  久方  天露霜  <沾>在哉

行き行きて 逢はぬ妹ゆゑ ひさかたの 天露霜に 濡れにけるかも 

ゆきゆきて あはぬいもゆゑ [ひさかたの] あまつゆしもに ぬれにけるかも
・・・・・・・・・
夜にはるばる貴女に逢いに行っても

なかなか逢えない貴女のせいで

遥かな天の露霜で

すっかり濡れてしまったことよ
・・・・・・・・・



2396 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

玉坂  吾見人  何有  依以  亦一目見

たまさかに 我が見し人を いかならむ よしをもちてか また一目見む 

たまさかに わがみしひとを いかならむ よしをもちてか またひとめみむ
・・・・・・・・・
偶然に出逢ったあの人を

どんなきっかけをつくって

もう一度逢うことができるでしょうか
・・・・・・・・・
* 「たまさか」(形動ナリ)偶然に会うさま。



2397 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ

[題詞](正述心緒)

*  不見戀  吾妹  日々来  事繁

しましくも 見ぬば恋ほしき 我妹子を 日に日に来れば 言の繁けく 

しましくも みぬばこほしき わぎもこを ひにひにくれば ことのしげけく
・・・・・・・・・
少しの間も貴女に会わないと恋しい私の愛しい貴女

逢うその日がやって来たら

ああも言おう こうもしようと

想うことが色々とあります
・・・・・・・・・



2398 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,うわさ

[題詞](正述心緒)

<玉>切  及世定  恃  公依  事繁

たまきはる 世までと定め 頼みたる 君によりてし 言の繁けく 

[たまきはる] よまでとさだめ たのみたる きみによりてし ことのしげけく
・・・・・・・・・
この世に生きている間はと心に決め

頼りの貴方に寄り添うとすることが色々とあるので

それが噂になっていやですねえ
・・・・・・・・・



2399 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

朱引  秦不經  雖寐  心異  我不念

赤らひく 肌も触れずて 寐ぬれども 心を異には 我が思はなくに 

[あからひく] はだもふれずて いぬれども こころをけには わがおもはなくに
・・・・・・・・・
美しい肌にも触れずに寝たが

それは決して心変わりなどではないからね
・・・・・・・・・



2400 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

伊田何  極太甚  利心  及失念  戀故

いで何か ここだはなはだ 利心の 失するまで思ふ 恋ゆゑにこそ 

いでなにか ここだはなはだ とごころの うするまでおもふ こひゆゑにこそ
・・・・・・・・・
さあ何なのだ

これほどはっきり

冷静な気持ちを失くするほど思いつめる

ただ貴女をかき抱きたいと思うため
・・・・・・・・・



2401 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

戀死  戀死哉  我妹  吾家門  過行

恋ひ死なば 恋ひも死ねとか 我妹子が 我家の門を 過ぎて行くらむ 

こひしなば こひもしねとか わぎもこが わぎへのかどを すぎてゆくらむ
・・・・・・・・・
恋い死にをするならご勝手にというつもりでか

恋仲のおれの家の門を知らん顔で通り過ぎていく
・・・・・・・・・



2402 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

妹當  遠見者  恠  吾戀  相依無

妹があたり 遠くも見れば あやしくも 我れは恋ふるか 逢ふよしなしに 

いもがあたり とほくもみれば あやしくも あれはこふるか あふよしなしに
・・・・・・・・・
愛しい彼女の姿を遥か遠くに見ると

どうして私は貴女に恋をするのか

もう逢うことが出来ないのに
・・・・・・・・・
* 「あやし」(形シク)理解しがたい。奇怪だ。


2403 作者:柿本人麻呂歌集,京都

[題詞](正述心緒)

玉久世  清川原  身秡為  齊命  妹為

玉くせの 清き川原に みそぎして 斎ふ命は 妹がためこそ 

たまくせの きよきかはらに みそぎして いはふいのちは いもがためこそ
・・・・・・・・・
美しい久世の清らかな川原で

禊して祈る御言は

愛する貴女のためだけ
・・・・・・・・・



2404 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

思依  見依  物有  一日間  忘念

思ひ寄り 見ては寄りにし ものにあれば 一日の間も 忘れて思へや 

おもひより みてはよりにし ものにあれば ひとひのあひだも わすれておもへや
・・・・・・・・・
心にも思い

逢っては身を寄せた

その貴女の姿を

一日の間でも忘れたと思いますか
・・・・・・・・・



2405 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ,枕詞

[題詞](正述心緒)

垣廬鳴  人雖云  狛錦  紐解開  公無

垣ほなす 人は言へども 高麗錦 紐解き開けし 君ならなくに 

[かきほなす] ひとはいへども [こまにしき] ひもときあけし きみならなくに
・・・・・・・・・
人はあれこれとうわさしていますが

私の家で紐を解いて

衣を脱いだ貴方ではないのに
・・・・・・・・・


2380 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

早敷哉  誰障鴨  玉桙  路見遺  公不来座

はしきやし 誰が障ふれかも 玉桙の 道見忘れて 君が来まさぬ 

はしきやし たがさふれかも [たまほこの] みちみわすれて きみがきまさぬ
・・・・・・・・・
ああ愛おしい

誰かが邪魔をしているのでしょうか

立派な桙の立つ宮かどの道を忘れたのか

貴方がやって来ません
・・・・・・・・・



2381 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

公目 見欲 是二夜 千歳如 吾戀哉

君が目を 見まく欲りして この二夜 千年のごとも 我は恋ふるかも 

きみがめを みまくほりして このふたよ ちとせのごとも あはこふるかも
・・・・・・・・・
貴方の目を見つめようと思って

この二夜

まるで千年のように感じて待ち侘び

私は貴方を慕っているのですよ
・・・・・・・・・



サ2382 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

打日刺  宮道人  雖満行  吾念公  正一人

うち日さす 宮道を人は 満ち行けど 我が思ふ君は ただひとりのみ 

[うちひさす] みやぢをひとは みちゆけど あがおもふきみは ただひとりのみ
・・・・・・・・・
日に照り映える荘厳な宮殿への道を

人は溢れるように歩いて行くが

私のおもう人はただ一人

君 ただ一人のみ
・・・・・・・・・
* 「打日刺」枕詞―うちひさす。 「うちひさす」は「うちひさつ」とも
語義およびかかり方未詳。「宮」「都」にかかる。栄光にして荘厳の意とか。
『角川漢和中辞典』では、「都」は「総・ふさ」と同訓、同義でもあり、語源は「あつまる」。「まとめる、みやびやか〔都雅〕、うつくしい」の意味をもつ。
* 「打日刺」、それにしても痛々しい当て字と私は思う。




2383 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

世中 常如  雖念  半手不<忘>  猶戀在

世の中は 常かくのみと 思へども はたた忘れず なほ恋ひにけり 

よのなかは つねかくのみと おもへども はたたわすれず なほこひにけり
・・・・・・・・・
世の中は常々このようなものかと思いはするが

この恋心はどうしても忘れることが出来ず

なおさらながら想いがつのることよ
・・・・・・・・・
* 「はたたわすれず」・「かつてわすれず」
(半手不<忘>)・(曽不忘) 
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#535かつてわすれず(曽不忘)




2384 作者:柿本人麻呂歌集,女歌

[題詞](正述心緒)

我勢古波  幸座  遍来  我告来  人来鴨

我が背子は 幸くいますと 帰り来と 我れに告げ来む 人も来ぬかも 

わがせこは さきくいますと かへりくと あれにつげこむ ひともこぬかも
・・・・・・・・・
大切な貴方が無事で居ますよ

無事にお帰りになりますよと

私に告げに来る人は来ないようですねえ
・・・・・・・・・



2385 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

<麁>玉  五年雖經  吾戀  跡無戀  不止恠

あらたまの 五年経れど 我が恋の 跡なき恋の やまなくあやし 

[あらたまの] いつとせふれど あがこひの あとなきこひの やまなくあやし
・・・・・・・・・
年が新らたまりつつ五年過ごしたが

実際に愛し抱き合うことの出来ないそんな恋

なのに止むことがない恋の不思議さよ
・・・・・・・・・



2386 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

石尚  行應通  建男  戀云事  後悔在

巌すら 行き通るべき ますらをも 恋といふことは 後悔いにけり 

いはほすら ゆきとほるべき ますらをも こひといふことは のちくいにけり
・・・・・・・・・
巌であっても踏破して当然の男児なのに

相手が恋となるとひるんで後になって悔いることよ
・・・・・・・・・



2387 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ

[題詞](正述心緒)

日<位>  人可知  今日  如千歳  有与鴨

日並べば 人知りぬべし 今日の日は 千年のごとも ありこせぬかも 

ひならべば ひとしりぬべし けふのひは ちとせのごとも ありこせぬかも
・・・・・・・・・
このような日が続くと人が貴方と私の仲を気づくでしょう

今日の一日は千年のように長くならないでしょうか
・・・・・・・・・



2388 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

立座  <態>不知  雖念  妹不告  間使不来

立ちて居て たづきも知らず 思へども 妹に告げねば 間使も来ず 

たちてゐて たづきもしらず おもへども いもにつげねば まつかひもこず
・・・・・・・・・
居ても立ってもこの恋を表す方法がわからない

いくら貴女を慕っていても

それを告げなくては

貴女からの使いも来ませんね
・・・・・・・・・



2389 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,女歌,後朝

[題詞](正述心緒)

烏玉  是夜莫明  朱引  朝行公  待苦

ぬばたまの この夜な明けそ 赤らひく 朝行く君を 待たば苦しも 

[ぬばたまの] このよなあけそ あからひく あさゆくきみを またばくるしも
・・・・・・・・・
この夜よ明け白むな 

知るや暁の中をゆく君を送るつらさを

朱に染まっている私の体が

次に逢うときまで待つのが辛いと疼く
・・・・・・・・・



2390 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

戀為  死為物  有<者>  我身千遍  死反

恋するに 死するものに あらませば 我が身は千たび 死にかへらまし 

こひするに しにするものに あらませば あがみはちたび しにかへらまし
・・・・・・・・・
抱かれてそのために死ぬのでしたら

私の体は千遍も死んで生き還りましょう
・・・・・・・・・



2391 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

玉響  昨夕  見物  今朝  可戀物

玉かぎる 昨日の夕 見しものを 今日の朝に 恋ふべきものか 

[たまかぎる] きのふのゆふへ みしものを けふのあしたに こふべきものか
・・・・・・・・・
玉がほのかに光り

触れ合うかすかな音

昨夜にお会いした貴方なのに

今朝には面影が棲みついて

もう私は恋におちてしまいました
・・・・・・・・・


正述心緒(正(ただ)に心緒(おもひ)を述ぶ)


<寄物陳思・正述心緒とはなにか>
http://neige7.hp.infoseek.co.jp/kibutu.html


2368 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞]正述心緒

垂乳根乃  母之手放  如是許  無為便事者  未為國

たらちねの 母が手離れ かくばかり すべなきことは いまだせなくに 

[たらちねの] ははがてはなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに
・・・・・・・・・
物心がついて

母の手から離れると

これほどどうしようもない

未経験のめにあうのかしら

母を頼らないではいられない
・・・・・・・・・



2369作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

人所寐  味宿不寐  早敷八四  公目尚  欲嘆 [或本歌云 公矣思尓 暁来鴨]

人の寝る 味寐は寝ずて はしきやし 君が目すらを 欲りし嘆かむ [或本歌云 君を思ふに 明けにけるかも] 

ひとのぬる うまいはねずて はしきやし きみがめすらを ほりしなげかむ[きみをおもふに あけにけるかも]
・・・・・・・・・
君を思っているうちに夜が明けてしまう

人並みに寝て熟睡するようには寝ることが出来なくて

せめて夢の中で愛しい貴方の姿を見たいと思い嘆いても

・・・・・・・・・
* 「はしきやし」 いとおしい



2370作者:柿本人麻呂歌集,枕詞

[題詞](正述心緒)

戀死  戀死耶  玉鉾  路行人  事告<無>

恋ひしなば 恋ひも死ねとや 玉桙の 道行く人の 言も告げなく 

こひしなば こひもしねとや [たまほこの] みちゆくひとの こともつげなく
・・・・・・・・・
恋に苦しんで死ねば

もうその恋も無くなるではないか ですか

路行く人は勝手に焦れ死ねよと

そんな言づても告げてはくれない
・・・・・・・・・



2371作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

心  千遍雖念  人不云  吾戀つ  見依鴨

心には 千重に思へど 人に言はぬ 我が恋妻を 見むよしもがも 

こころには ちへにおもへど ひとにいはぬ あがこひづまを みむよしもがも
・・・・・・・・・
貴女を愛していると

心の中では千遍も思っていても

人には云いません

私の恋妻に逢う機会がないままかよ

なにか方法がないものかなあ
・・・・・・・・・




2372作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

是量  戀物  知者  遠可見  有物

かくばかり 恋ひむものぞと 知らませば 遠くも見べく あらましものを 

かくばかり こひむものぞと しらませば とほくもみべく あらましものを
・・・・・・・・・
このように貴女に恋するものだと知っていたら

初めに貴女の姿を見たとき

遠くからぼんやりと見るべきでした
・・・・・・・・・



2373作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

何時  不戀時  雖不有  夕方<任>  戀無乏

いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども 夕かたまけて 恋ひはすべなし 

いつはしも こひぬときとは あらねども ゆふかたまけて こひはすべなし
・・・・・・・・・
いつも貴女を恋い慕わないときはありませんが

夕方が近づくにつれて

恋心はもうどうしようもありません
・・・・・・・・・



2374作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

是耳  戀度  玉切  不知命  歳經管

かくのみし 恋ひやわたらむ たまきはる 命も知らず 年は経につつ 

かくのみし こひやわたらむ [たまきはる] いのちもしらず としはへにつつ
・・・・・・・・・
このように魂の極まる恋をし続けている

命も知らず年を過ごしている

そうとも 死が別つまでさ
・・・・・・・・・



2375作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

吾以後  所生人  如我  戀為道  相与勿湯目

我れゆ後 生まれむ人は 我がごとく 恋する道に あひこすなゆめ 

われゆのち うまれむひとは あがごとく こひするみちに あひこすなゆめ
・・・・・・・・・
後の世の人よ

私のような恋はし給うな

楽しい恋をすることだ

果てしない苦しみの恋には

ゆめ決して遭わないでほしい
・・・・・・・・・



2376作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

健男  現心  吾無  夜晝不云  戀度

ますらをの 現し心も 我れはなし 夜昼といはず 恋ひしわたれば 

ますらをの うつしごころも われはなし よるひるといはず こひしわたれば
・・・・・・・・・
立派な男だてを示す心意気は私にはありません

夜昼と云わずに貴女にべったり恋し続けている私には
・・・・・・・・・



2377作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

何為  命継  吾妹  不戀前  死物

何せむに 命継ぎけむ 我妹子に 恋ひぬ前にも 死なましものを 

なにせむに いのちつぎけむ わぎもこに こひぬさきにも しなましものを
・・・・・・・・・
どのように私の命を永らえましょう

愛しい貴女と恋の行為をする前に

もう苦しみに死んでしまいそうだ
・・・・・・・・・



2378作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

吉恵哉 不来座公 何為 不Q吾 戀乍居

よしゑやし 来まさぬ君を 何せむに いとはず我れは 恋ひつつ居らむ 

よしゑやし きまさぬきみを なにせむに いとはずあれは こひつつをらむ
・・・・・・・・・
いいですよかまいません

いらっしゃらない貴方を

厭わずそれでも私は貴方に恋し続けていますよ
・・・・・・・・・



2379作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](正述心緒)

見度  近渡乎  廻  今哉来座  戀居

見わたせば 近き渡りを た廻り 今か来ますと 恋ひつつぞ居る 

みわたせば ちかきわたりを たもとほり いまかきますと こひつつぞをる
・・・・・・・・・
向こう岸まで見渡せば近いその辺を

わざと回り道して 

もうお見えになるかと 

貴方を恋い慕いながら待っています
・・・・・・・・・


2361 作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](旋頭歌)

天在  一棚橋  何将行  穉草  妻所云  足<壮>嚴

天なる 一つ棚橋 いかにか行かむ 若草の 妻がりと言はば 足飾りせむ 

あめなる ひとつたなはし いかにかゆかむ [わかくさの] つまがりといはば あしかざりせむ
・・・・・・・・・・・
天に一つしかないという

具足なども弱くて棚のような橋を

どうやって渡るのか

せめて妻のもとへ行って

美しい飾りをつけてあげよう

そうだよ そうだよ
・・・・・・・・・・・




サ2362 作者:柿本人麻呂歌集,京都,求婚

[題詞](旋頭歌)

開木代  来背若子  欲云余  相狭丸  吾欲云  開木代来背

山背の 久背の若子が 欲しと言ふ我れ あふさわに 我れを欲しと言ふ 山背の久世 

[やましろの] くせのわくごが ほしといふわれ あふさわに われをほしといふ やましろのくぜ
・・・・・・・・・・・
やましろの久背の若者が

私を見るなり妻に欲しいと言うの

やましろの久背の若者が

あふさわに  あふさわに
・・・・・・・・・・・
* 「あふさわに」(副詞)は、見るなりすぐに、また、逢う時の意の「あふさ」に、急にの意の「あわに」の付いた「あふさあわに」の音変化で、「会うとすぐに」と解釈。
* 「稚子」ワカコハは、男子。
* 「吾ほし」は、妻にほしと。





2363 古歌集

[題詞](旋頭歌)

岡前  多未足道乎  人莫通  在乍毛  公之来  曲道為

岡の崎 廻みたる道を 人な通ひそ ありつつも 君が来まさむ 避き道にせむ 

をかのさき たみたるみちを ひとなかよひそ ありつつも きみがきまさむ よきみちにせむ
・・・・・・・・・・・
岡の先を巡るこの道は 

人は通行止めよ 

我が君だけが通う道だから

人は通行止めよ

ああそうかい わかったよ  わかったよ
・・・・・・・・・・・
* 「たみたる道」とはまがり道。



サ2364 古歌集,勧誘

[題詞](旋頭歌)

玉垂  小簾之寸鶏吉仁  入通来根  足乳根之  母我問者  風跡将申

玉垂の 小簾のすけきに 入り通ひ来ね たらちねの 母が問はさば 風と申さむ 

[たまだれの] をすのすけきに いりかよひこね [たらちねの] ははがとはさば かぜとまをさむ
・・・・・・・・・・・
玉を垂らした簾のわずかな隙間から

そっと入って来てください

母がとがめて尋ねたら風のせいだというから
・・・・・・・・・・・
* 『古歌集』、万葉集編纂の資料になった歌集で、主に飛鳥・藤原京の時代の歌。
* 「すけき」は「すこき」小さい、わずかな。



2365 古歌集,枕詞

[題詞](旋頭歌)

内日左須  宮道尓相之  人妻<め>  玉緒之  念乱而  宿夜四曽多寸

うちひさす 宮道に逢ひし 人妻ゆゑに 玉の緒の 思ひ乱れて 寝る夜しぞ多き 

[うちひさす] みやぢにあひし ひとづまゆゑに [たまのをの] おもひみだれて ぬるよしぞおほき
・・・・・・・・・・・
宮道で出会ったひとが忘れられないんだ

胸が詰まって寝られない夜がつづいてるんだ

ああどうしょ どうしょ
・・・・・・・・・・・



2366 古歌集,枕詞

[題詞](旋頭歌)

真十鏡  見之賀登念  妹相可聞  玉緒之  絶有戀之  繁比者

まそ鏡 見しかと思ふ 妹も逢はぬかも 玉の緒の 絶えたる恋の 繁きこのころ 

[まそかがみ] みしかとおもふ いももあはぬかも [たまのをの] たえたるこひの しげきこのころ
・・・・・・・・・・・
なぜ 逢えなくなったのか

あの人かと見て追えば人違い

命に代えてもさ

逢いたい恋人なんだ 恋人なんだ
・・・・・・・・・・・

2367 古歌集,枕詞

[題詞](旋頭歌)

海原乃  路尓乗哉  吾戀居  大舟之  由多尓将有  人兒由恵尓

海原の 道に乗りてや 我が恋ひ居らむ 大船の ゆたにあるらむ 人の子ゆゑに 

うなはらの みちにのりてや あがこひをらむ [おほぶねの] ゆたにあるらむ ひとのこゆゑに

・・・・・・・・・・・
人の子としての行末も思わず

海原の道に心をのせて

他になびくこともない

わが恋はかたし

おほぶねだ  おほぶねだ
・・・・・・・・・・・


第十一巻
旋頭歌



サ2351作者:柿本人麻呂歌集,求婚

[題詞]旋頭歌

新室  壁草苅邇  御座給根  草如  依逢未通女者  公随

新室の 壁草刈りに いましたまはね 草のごと 寄り合ふ娘子は 君がまにまに 

にひむろの かべくさかりに いましたまはね くさのごと よりあふをとめは きみがまにまに
・・・・・・・・・・
新築のめでたい壁草刈りにおいでください

その草刈りに寄り合うのは

選り抜きの乙女子ばかり 

もう御意のままですよ
・・・・・・・・・・
新築の家の壁草刈りに招かれた若者は、(新室の神事のために)集まって来る娘子を意のままにできる意の歌。



サ2352作者:柿本人麻呂歌集,求婚

[題詞](旋頭歌)

新室  踏静子之  手玉鳴裳  玉如  所照公乎  内等白世

新室を 踏み鎮む子が 手玉鳴らすも 玉のごと 照らせる君を 内にと申せ 

にひむろを ふみしづむこが ただまならすも たまのごと てらせるきみを うちにとまをせ
・・・・・・・・・・
新しい家を造る地鎮の祭りで

足踏み歌をうたう大勢の乙女らが

手飾りの玉を調子よく鳴らしている

あの玉のような立派な男子を

この新しい家に入るように申し上げよ
・・・・・・・・・・
* 当時の庶民の家壁は、草を垂らすだけで、固い土の壁ではなかった。出来あがった家の中で、歌って足踏みするのは、タタキ(三和土)で床ではなく、たたき固めて仕上げた土間。時代が下ると石灰や水をまぜて練ったものを塗りった。
* 新築の時地面を踏み鎮める神事を行う娘子に、立派な若者を家の中へ招き入れさせる意。前歌と共に豊穣の意を含んだ「新室寿ぎの歌」とされる。



2353作者:柿本人麻呂歌集,隠妻,枕詞,奈良

[題詞](旋頭歌)

長谷  弓槻下  吾隠在妻  赤根刺  所光月夜邇  人見點鴨 [一云 人見豆良牟可]

泊瀬の 斎槻が下に 我が隠せる妻 あかねさし 照れる月夜に 人見てむかも [一云 人見つらむか]  

はつせの ゆつきがしたに わがかくせるつま [あかねさし] てれるつくよに ひとみてむかも[ひとみつらむか]
・・・・・・・・・・
初瀬のこんもり茂る神聖な槻の木の下に

隠しておいた妻よ

月の光が明るい晩には

誰か他の男に見つかるかもしれない

ああ心配なことよ目立って美しい妻を持つと
・・・・・・・・・・
* 「ゆつき」はたくさんの枝がある槻(けやき)のこと。


2354作者:柿本人麻呂歌集,隠妻

[題詞](旋頭歌)

健男之 念乱而 隠在其妻 天地 通雖<光> 所顕目八方 [一云 大夫乃 思多鶏備弖]

ますらをの 思ひ乱れて 隠せるその妻 天地に 通り照るとも あらはれめやも [一云 ますらをの 思ひたけびて]

ますらをの おもひみだれて かくせるそのつま あめつちに とほりてるとも あらはれめやも[ますらをの おもひたけびて]
・・・・・・・・・・
男子たるものがちぢに思い乱れて

人の目に隠している大切な妻だから

月の光が天地をくまなく照り輝かせることがあろうと

人に見つかることなどあってたまるか
・・・・・・・・・・



2355作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](旋頭歌)

恵得  吾念妹者  早裳死耶  雖生  吾邇應依  人云名國

愛しと 我が思ふ妹は 早も死なぬか 生けりとも 我れに寄るべしと 人の言はなくに 

うつくしと あがおもふいもは はやもしなぬか いけりとも われによるべしと ひとのいはなくに
・・・・・・・・・・
愛しく思うあの女は

いっそのこと死ねばいい

生きていても

自分に靡き寄る見込みがないのだから
・・・・・・・・・・
* 「なくに」は一括して打消・感動の終助詞。・・・ナイコトダガナア。
上代の打消助動詞未然形「な」に、体言的ないを添える接尾語「く」、「に」は感動の終助詞。




2356作者:柿本人麻呂歌集,比喩,女歌

[題詞](旋頭歌)

狛錦  紐片<叙>  床落邇祁留  明夜志  将来得云者  取置<待>

高麗錦 紐の片方ぞ 床に落ちにける 明日の夜し 来なむと言はば 取り置きて待たむ 

こまにしき ひものかたへぞ とこにおちにける あすのよし きなむといはばとりおきてまたむ
・・・・・・・・・・
結んだはずの高麗錦の紐の片方が床に落ちていましたわ

紐が 片一方では世間体がわるいでしょう

明日の夜また来て下さるなら取って置きますけど
・・・・・・・・・・
* 相手にやんわりと証拠品として持っているわと言っている。


2357作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](旋頭歌)

朝戸出  公足結乎  閏露原  早起  出乍吾毛  裳下閏奈

朝戸出の 君が足結を 濡らす露原 早く起き 出でつつ我れも 裳裾濡らさな 

あさとでの きみがあゆひを ぬらすつゆはら はやくおき いでつつわれも もすそぬらさな
・・・・・・・・・・
朝戸を開けて

早くにお帰りになるあなたの足結をぬらす露原よ

私も早く起きてその露原でご一緒に裳の裾をぬらしましょう

人目なんか気にならないほど一緒にいたいから
・・・・・・・・・・
* 「足結」は、袴の膝下のあたりをくくる紐のこと。古代妻問い婚が一般的で、別れの早朝、一夜を共にした女性が人に気付かれて噂にならないよう、戸口まで見送る。




2358作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](旋頭歌)

何為  命本名  永欲為  雖生  吾念妹  安不相

何せむに 命をもとな 長く欲りせむ 生けりとも 我が思ふ妹に やすく逢はなくに 

なにせむに いのちをもとな ながくほりせむ いけりとも あがおもふいもに やすくあはなくに
・・・・・・・・・・
いのち長かれと祈って何としょ

こうして生きていたって思うあの子に

なかなか逢えないこの苦労

こんなことなら生きていたって何としょ
・・・・・・・・・・



2359作者:柿本人麻呂歌集

[題詞](旋頭歌)

息緒  吾雖念  人目多社  吹風  有數々  應相物

息の緒に 我れは思へど 人目多みこそ 吹く風に あらばしばしば 逢ふべきものを 

いきのをに われはおもへど ひとめおほみこそ ふくかぜに あらばしばしば あふべきものを
・・・・・・・・・・
息も絶えだえに死ぬ想いで

あの人のことを思っているけれど

人目が多くて逢えもしない

いっそ吹く風になりたい

風になって吹いて行きたやあの人の懐へ
・・・・・・・・・・



2360作者:柿本人麻呂歌集,序詞

[題詞](旋頭歌)

人祖  未通女兒居  守山邊柄  朝々  通公  不来哀

人の親 処女児据ゑて 守山辺から 朝な朝な 通ひし君が 来ねば悲しも 

ひとのおや をとめこすゑて もるやまへから あさなさな かよひしきみが こねばかなしも
・・・・・・・・・・
人の子の親なれば娘を守り大切にしてきた

大切に守るという名の守山のあたりから

毎日通ってきた婿が

このごろ見えないのでせつないよ

娘の 姿を見ると せつないよ
・・・・・・・・・・


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