ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・・万葉集(〃)

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3183 女歌,遊行女婦,恋

[題詞](悲別歌)

京師邊 君者去之乎 孰解可 言紐緒乃 結手懈毛

都辺に 君は去にしを 誰が解けか 吾が紐の緒の 結ふ手たゆきも

みやこへに きみはいにしを たがとけか わがひものをの ゆふてたゆきも
朝になれば君は都の方に去ってゆく

あたしが結んだ下紐を

どんな女が解くのかと思うと

紐を結ぶ手に力がはいらない



3184 枕詞,人目,うわさ,別れ,後悔,恋

[題詞](悲別歌)

草枕  <客>去君乎  人目多  袖不振為而  安萬田悔毛

草枕 旅行く君を 人目多み 袖振らずして あまた悔しも 

くさまくら たびゆくきみを ひとめおほみ そでふらずして あまたくやしも
旅行くあなたを

人目が多いからと噂を気にして

袖を振れなかった

それが悔しくて

はなはだしくつらいのです
* 「あまた」[副]。1 数量の多いさま。たくさん。多く。名詞的にも用いる。2 程度のはなはだしいさま。非常に。はなはだしく。



3185 序詞,恋,別れ

[題詞](悲別歌)

白銅鏡  手二取持而  見常不足  君尓所贈而  生跡文無

まそ鏡 手に取り持ちて 見れど飽かぬ 君に後れて 生けりともなし 

[まそかがみ てにとりもちて みれどあかぬ] きみにおくれて いけりともなし
手に手を取っていつも楽しいあなた

独り家に残って生きて行けるのでしょうか

私はとても心が苦しいです



3186 女歌,恋

[題詞](悲別歌)

陰夜之  田時毛不知  山越而  徃座君者  何時将待

曇り夜の たどきも知らぬ 山越えて います君をば いつとか待たむ 

[くもりよの たどきもしらぬ やまこえて] いますきみをば いつとかまたむ
辺りの様子も暗くてわかりずらい

夜の山路を越えて

いつ帰っておいでかと待とう
* 「たどき」〔たづき〕、「手(た)付(つ)き」の意。「たつき」とも
1 生活の手段。生計。
2 事をなすためのよりどころ。たより。よるべ。
3 ようす。状態。また、それを知る手がかり。
* 「い‐ま・す」坐す/在す。「い」は接頭語、「ます」は尊敬語動詞。
[動サ四]「あり」「居(お)り」の尊敬語。いらっしゃる。おありになる。


サ3187 別離,恋

[題詞](悲別歌)

<立>名付  青垣山之  隔者  數君乎  言不<問>可聞

たたなづく 青垣山の 隔なりなば しばしば君を 言問はじかも 

[たたなづく あをかきやまの へなりなば] しばしばきみを こととはじかも
幾重にもうねり重なる山並みに

隔てられていなければ

絶えずあなたをお訪ね出来るのに
(絶えずあなたはお訪ね下さるでしょうに)<女うたなら>
* 「たたな・づ・く」 (自カ四)幾重にもうねり重なる。その意から枕詞として「青垣」「青垣山」にかかる。
* 「隔なり・な・ば」「隔なる」の連用形+「なば」。隔てとなっていなければ・・隔てとなっているので。
 「な」活用語(已然形・命令形に接続の場合)、普通、決断・希望をあらわす。完了の意も表わす。
 「ば」は、順接の仮定条件を示す。「(もし)〜ならば」。
* 「しばしば」(副)たびたび、幾度も。 
* 「を」目的格・対象格・修飾格等の格助詞。動作や心情などの対象であることを示す。
* 「言問はじ」、「言問ふ」は「尋ねる」。
 「じ」は「む」の意の打消し、推量を表す。活用語の未然形につく。
* 「かも」終助詞「か」に、詠嘆の終助詞「も」のついたもの。疑問を含んだ詠嘆・感動に意を表す。で・・
○ 尋ねないことなどあろうか。(おいでにならないはずはない)
・・・・・・・・
「たたなづく 青垣・・・」は古事記にある倭健命が歌ったという 国偲び歌
 やまとは 国の まほろば たたなづく 青垣 山隠れる やまと し 美し
を連想する。この歌については、Yahooブログ[重陽の節句を祝う]の記事と、そのコメントにある(予知ダス)さんの記事にくわしい。
http://blogs.yahoo.co.jp/mizunoene17/39963845.html?type=folderlist
<抜粋転載>
<〜‘たた’の ‘た’ は、‘なづきの 田’ の ‘田’ なのではないか という風にも分かってきます。〜><〜たたなづく=延々と続く、青垣の「青」は国文学の解釈論では「やまと」に掛かる掛り詞であり、青々とした稲穂が、田だなづく、田んぼの稲穂となって延々と続いて、「垣」=やまとを取り囲む、山隠れる=倭健命は没するが、せめて、山隠れる地=大和三山と似た、朝廷所領の三重(亀山)の地で国を偲びて、やまと、し、美し=強調語の「し」を用いて、大和と倭健命の死=魂は、栄音に尊く、(称える英雄の死の姿であり)、やまとの稲穂がどこまでも、未来永劫に、山健命の死と引き換えに、永遠の実りある美しい姿であることを願って、この歌を英雄の死に捧げる。・・これが、実態でしょう。〜 >



3188 別離,恋,女歌

[題詞](悲別歌)

朝霞  蒙山乎  越而去者  吾波将戀奈  至于相日

朝霞 たなびく山を 越えて去なば 吾れは恋ひむな 逢はむ日までに 

あさがすみ たなびくやまを こえていなば あれはこひむな あはむひまでに
朝霞のたなびく山を越えて去るあなた

私は恋しくてならない 

逢うことのできるような日まで
* 「まで‐に」、副助詞「まで」+格助詞「に」
  動作・作用の至り及ぶ限度・範囲を表す。…に至るまで。…まで



3189 異伝,枕詞,恋,女歌

[題詞](悲別歌)

足桧乃  山者百重  雖隠  妹者不忘  直相左右二 [一云 雖隠 君乎思苦 止時毛無]

あしひきの 山は百重に 隠すとも 妹は忘れじ 直に逢ふまでに [一云  隠せども 君を思はく やむ時もなし]  

あしひきの やまはももへに かくすとも いもはわすれじ ただにあふまでに[かくせども きみをおもはく やむときもなし]
山は幾重にもあなたを隠すけど

私は忘れない

また直接会うまでは 
・・・・・
山が幾重にもあなたを隠しても

あなたへの思いは

止む時もない



3190 恋,別離

[題詞](悲別歌)

雲居<有>  海山超而  伊徃名者  吾者将戀名  後者相宿友

雲居なる 海山越えて い行きなば 吾れは恋ひむな 後は逢ひぬとも 

[くもゐなる] うみやまこえて いゆきなば あれはこひむな のちはあひぬとも
遥かな雲の彼方へ海山越えて行ってしまう

あなたが恋しくてならない

もしかしたら

再びお目に掛かることはできないかもしれない



3191 別離,恋

[題詞](悲別歌)

不欲恵八<師>  不戀登為杼  木綿間山  越去之公之  所念良國

よしゑやし 恋ひじとすれど 木綿間山 越えにし君が 思ほゆらくに 

よしゑやし こひじとすれど ゆふまやま こえにしきみが おもほゆらくに
どうなろうとも

もう恋はしまいと思うけど

木綿間山を越えて行くあなたを

思わずにはいられない
* 「よしゑやし」よしえ‐やし縦ゑやし。副詞「よしゑ」+間投助詞「や」「し」。1 たとえ。かりに。 2 ええままよ。どうなろうとも。 



3192 枕詞,恋,女歌

[題詞](悲別歌)

草蔭之  荒藺之埼乃  笠嶋乎  見乍可君之  山道超良無 [一云  三坂越良牟]

草蔭の 荒藺の崎の 笠島を 見つつか君が 山道越ゆらむ [一云 み坂越ゆらむ]  

[くさかげの] あらゐのさきの かさしまを みつつかきみが やまぢこゆらむ[みさかこゆらむ]
荒藺の崎の笠島を 

君は眺めながら 

山路を越えているのしょう
*、 「らむ」は、完了の助動詞「り」の未然形に、推量の助動詞「む」のついたもの。・・・ているであろう。



3193 異伝,女歌,恋

[題詞](悲別歌)

玉勝間  嶋熊山之  夕晩  獨可君之  山道将越 [一云  暮霧尓  長戀為乍  寐不勝可母]

玉かつま 島熊山の 夕暮れに ひとりか君が 山道越ゆらむ [一云  夕霧に 長恋しつつ 寐ねかてぬかも] 

[たまかつま] しまくまやまの ゆふぐれに ひとりかきみが やまぢこゆらむ[ゆふぎりに ながこひしつつ いねかてぬかも]
島熊山の夕暮れどき

あなたはたったひとりで

山道を越えているのですね
・・・・・
島熊山の夕暮れに

一人で君が山路を越えるのであろうか

一に言う、
夕霧につつまれて 長い間恋思いしながら 寝付かれないでしょうね
* 「たま‐かつま」 玉勝間 [名]かつまの美称。編み目の細かい竹籠。[枕]かつまの中子(なかご)と蓋。


3172 序詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

浦廻榜  <熊>野舟附  目頬志久  懸不思  月毛日毛無

浦廻漕ぐ 熊野舟つき めづらしく 懸けて思はぬ 月も日もなし 

[うらみこぐ くまのぶねつき めづらしく] かけておもはぬ つきもひもなし
・・・・・・・・・・・
入江を漕ぎ巡る熊野舟はいつ見てもめずらしいように

郷里の愛ずらしい妻を心に懸けて思わぬ月日はない
・・・・・・・・・・・




3173 大阪,望郷,序詞,恋

[題詞](羇旅發思)

松浦舟  乱穿江之  水尾早  楫取間無  所念鴨

松浦舟 騒く堀江の 水脈早み 楫取る間なく 思ほゆるかも 

[まつらぶね さわくほりえの みをはやみ] かぢとるまなく おもほゆるかも
・・・・・・・・・・・
松浦の舟が波音も激しい堀江の潮の流れの速さに難航している

それとも郷里に残した妻を楫を取る間もなく想ってか
・・・・・・・・・・・



3174 序詞,恋,遊行女婦

[題詞](羇旅發思)

射去為  海部之楫音  湯<按>干  妹心  乗来鴨

漁りする 海人の楫音 ゆくらかに 妹は心に 乗りにけるかも 

[いざりする あまのかぢおと ゆくらかに] いもはこころに のりにけるかも
・・・・・・・・・・・
漁をする漁師の舟の楫の音が

ゆらりゆらり揺れるように聞こえる

あの女が乗り移ったかのように
・・・・・・・・・・・
* 「ゆくら‐ゆくら」[形動ナリ]揺れ動くさま。ゆらりゆらり。



3175 和歌山,異伝,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

若乃浦尓  袖左倍<沾>而  忘貝  拾杼妹者  不所忘尓

和歌の浦に 袖さへ濡れて 忘れ貝 拾へど妹は 忘らえなくに [忘れかねつも] 

わかのうらに そでさへぬれて わすれがひ ひりへどいもは わすらえなくに[わすれかねつも]
・・・・・・・・・・・
和歌の浦で袖までぬらして

恋人を忘れるために

忘れ貝をさがして拾ったが

どうしても忘れることができない 
・・・・・・・・・・・



3175S 異伝,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)[或本歌末句云]

[忘可祢都母]

[忘れかねつも]  

[わすれかねつも]
・・・・・・・・・・・
忘れられない
・・・・・・・・・・・



3176 枕詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

草枕  羈西居者  苅薦之  擾妹尓  不戀日者無

草枕 旅にし居れば 刈り薦の 乱れて妹に 恋ひぬ日はなし 

[くさまくら] たびにしをれば かりこもの] みだれていもに こひぬひはなし
・・・・・・・・・・・
旅の草枕に束ねたり床に散らす

その刈り薦の積まれ乱れる中で

妻を恋い乱れない日はないことよ
・・・・・・・・・・・



3177 福岡,序詞,女歌,遊行女婦

[題詞](羇旅發思)

然海部之  礒尓苅干  名告藻之  名者告手師乎  如何相難寸

志賀の海人の 礒に刈り干す なのりその 名は告りてしを 何か逢ひかたき 

[しかのあまの いそにかりほす なのりその] なはのりてしを なにかあひかたき
・・・・・・・・・・・
志賀島の漁師が磯で刈り取って干す海草

その“なのりそ”の掟を破って

私は名を告げたのに

あの男はなかなか会ってくれなくなった

やはり 秘密にしておいたほうがいいのね
・・・・・・・・・・・
なのりそ=ホンダワラ



3178 女歌,旅立ち,恋

[題詞](羇旅發思)

國遠見  念勿和備曽  風之共  雲之行如  言者将通

国遠み 思ひなわびそ 風の共 雲の行くごと 言は通はむ 

くにとほみ おもひなわびそ かぜのむた くものゆくごと ことはかよはむ
・・・・・・・・・・・
国が遠いって心配しないでね

風に乗って雲が行くように

私の言葉はあなたに通うはずです 
・・・・・・・・・・・
* 「むた」与/共
名詞または代名詞に格助詞「の」「が」が付いた形に接続して、
…とともに、…のままに、の意の副詞句をつくる。



3179 序詞,和歌山,吉野,奈良,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

留西  人乎念尓  蜒野  居白雲  止時無

留まりにし 人を思ふに 秋津野に 居る白雲の やむ時もなし 

[とまりにし ひとをおもふに あきづのに] ゐるしらくもの] やむときもなし
・・・・・・・・・・・
家に残してきた妻への思いは

秋津野にかかっている白雲のように

絶える時がない恋しさであることよ
・・・・・・・・・・・


悲別歌





3180 恋,後朝,旅立ち,女歌,別れ

[題詞]悲別歌

浦毛無  去之君故  朝旦  本名焉戀  相跡者無杼

うらもなく 去にし君ゆゑ 朝な朝な もとなぞ恋ふる 逢ふとはなけど 

うらもなく いにしきみゆゑ あさなさな もとなぞこふる あふとはなけど
・・・・・・・・・・・
恨みつらみもなくただ旅立った君が

朝になればむやみに恋しい

お帰りになる後姿を思い出して

もう逢うこともないのに
・・・・・・・・・・・



3181 枕詞,女歌,恋,別れ

[題詞](悲別歌)

白細之  君之下紐  吾<左>倍尓  今日結而名  将相日之為

白栲の 君が下紐 我れさへに 今日結びてな 逢はむ日のため 

[しろたへの] きみがしたびも われさへに けふむすびてな あはむひのため
・・・・・・・・・・・
あなたの肌着の紐を

私式に結んでおきます

また逢える日まで

貴方の心が変わらない様に
・・・・・・・・・・・
* 「さへに」は、副助詞「さへ」に「に」のついたもの。・・までも。



3182 枕詞,別れ,恋

[題詞](悲別歌)

白妙之  袖之別者  雖<惜>  思乱而  赦鶴鴨

白栲の 袖の別れは 惜しけども 思ひ乱れて 許しつるかも 

[しろたへの] そでのわかれは をしけども おもひみだれて ゆるしつるかも
・・・・・・・・・・・
愛するあまりに

失うことが忍びないのに

心が平静さを失い混乱したまま

別れを許してしまいました
・・・・・・・・・・・


3160 序詞,遊行女婦,恋

[題詞](羇旅發思)

奥浪  邊浪之来依  貞浦乃  此左太過而  後将戀鴨

沖つ波 辺波の来寄る 佐太の浦の このさだ過ぎて 後恋ひむかも 

[おきつなみ へなみのきよる さだのうらの] このさだすぎて のちこひむかも
・・・・・・・・・・
沖波が寄せる佐太の浦ではないが

恋愛沙汰の盛りの年齢を過ぎても

のちもなお こうも恋し続けるものか
・・・・・・・・・・



3161 枕詞,遊行女婦

[題詞](羇旅發思)

在千方  在名草目而  行目友  家有妹伊  将欝悒

在千潟 あり慰めて 行かめども 家なる妹い いふかしみせむ 

[ありちがた] ありなぐさめて ゆかめども いへなるいもい いふかしみせむ
・・・・・・・・・・
在千潟のようにあなたと一緒にあり続け

気持ちを慰めて行きたいが

家の女房が不審に思うだろうから
・・・・・・・・・・
* 一夜妻と別れる男の言い訳の歌。



3162 枕詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

水咫衝石  心盡而  念鴨  此間毛本名  夢西所見

みをつくし 心尽して 思へかも ここにももとな 夢にし見ゆる 
[みをつくし] こころつくして おもへかも ここにももとな いめにしみゆる
・・・・・・・・・・
身を尽くし 心を尽くし

旅の私を思っているからだろうなあ

しきりと妻の夢を見ることであるよ
・・・・・・・・・・
* 「みをつくし(澪標)」:海や川に立てならべ水路をあらわす杭。
「みをつくし」から「心尽くし」を。



3163 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

吾妹兒尓  觸者無二  荒礒廻尓  吾衣手者  所<沾>可母

吾妹子に 触るとはなしに 荒礒廻に 吾が衣手は 濡れにけるかも 

わぎもこに ふるとはなしに ありそみに わがころもでは ぬれにけるかも
・・・・・・・・・・
妻に触れるほどには近寄らないのに

荒波の打ち寄せる海岸で

私の衣は濡れてしまった
・・・・・・・・・・



3164 室津,兵庫県,金ヶ崎,君島,望郷,恋,掛詞

[題詞](羇旅發思)

室之浦之  湍戸之埼有  鳴嶋之  礒越浪尓  所<沾>可聞

室の浦の 瀬戸の崎なる 鳴島の 磯越す波に 濡れにけるかも 

むろのうらの せとのさきなる [なきしまの] いそこす[なみに ぬれ]にけるかも
・・・・・・・・・・
室の浦の瀬戸の崎にある鳴島の

磯越す波に濡れてしまったよ

涙かしぶきか事なきか妻
・・・・・・・・・・



サ3165 枕詞,福岡県,北九州市,戸畑,序詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

霍公鳥  飛幡之浦尓  敷浪乃  屡君乎  将見因毛鴨

霍公鳥 飛幡の浦に しく波の しくしく君を 見むよしもがも 

[ほととぎす] とばたのうらに しくなみの] しくしくきみを みむよしもがも
・・・・・・・・・・
ホトトギス飛ぶ飛幡の浦に

絶え間なく寄せては返す波のように

君に逢える手だてはないものか
・・・・・・・・・・
* 「しくしく」[副]動詞「し(頻)く」を重ねたものから、絶え間なく。しきりに。
* 「敷浪」は「次々と寄せてくる波」。
* 「よし」は「方法・手段」。
* 「もがな」は希望の終助詞。 「〜があったらなあ。〜があればなあ」




3166 北陸,石川,富山,恋,遊行女婦

[題詞](羇旅發思)

吾妹兒乎  外耳哉将見  越懈乃  子難<懈>乃  嶋楢名君

吾妹子を 外のみや見む 越の海の 子難の海の 島ならなくに 

わぎもこを よそのみやみむ こしのうみの こがたのうみの しまならなくに
・・・・・・・・・・
吾がい抱いたひとを

外ながらに見るしかない

越の子難海の島ではないのに
・・・・・・・・・・



3167 序詞,うわさ,恋

[題詞](羇旅發思)

浪間従  雲位尓所見  粟嶋之  不相物故  吾尓所依兒等

波の間ゆ 雲居に見ゆる 粟島の 逢はぬものゆゑ 吾に寄そる子ら 

[なみのまゆ くもゐにみゆる あはしまの] あはぬものゆゑ わによそるこら
・・・・・・・・・・
波間の空に見える淡路島の会わじではないが

一度も会ったこともないのに

私と深い仲という噂を立てられた娘よ

逢ったら本当に靡くかもしれませんよ
・・・・・・・・・・



3168 枕詞,和歌の浦,和歌山,序詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

衣袖之  真若之浦之  愛子地  間無時無  吾戀钁

衣手の 真若の浦の 真砂地 間なく時なし 吾が恋ふらくは 

[ころもでの まわかのうらの まなごつち] まなくときなし あがこふらくは
・・・・・・・・・・
真若の浦の真砂の地でも

絶え間なく恋する吾が心
・・・・・・・・・・



3169 能登,石川,遊行女婦,誘い歌

[題詞](羇旅發思)

能登海尓  釣為海部之  射去火之  光尓伊徃  月待香光

能登の海に 釣する海人の 漁り火の 光りにいませ 月待ちがてり 

[のとのうみに つりするあまの いざりひの] ひかりにいませ つきまちがてり
・・・・・・・・・・
能登の海で釣りをする漁師の漁り火ではありませんが

淡い光のなかにおいでなさい

いまかいまかとお待ちしたあなた

月を眺めながらお待ちしたあなたさまよ
・・・・・・・・・・
* 「がてり」は、「がてら」の音変化とも。
[接助]動詞、および動詞型活用語の連用形に付いて、ある事柄をするときに、それを機会に他の事柄をもする意を表す。…のついでに。…かたがた。…しながら、その一方で。 
[副助](多く動作性の意をもつ名詞に付く)…のついでに。…を兼ねて。…かたがた。




3170 福岡,序詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

思香乃白水郎乃  <釣>為燭有  射去火之  髣髴妹乎  将見因毛欲得

志賀の海人の 釣りし燭せる 漁り火の ほのかに妹を 見むよしもがも 

[しかのあまの つりしともせる いざりひの] ほのかにいもを みむよしもがも
・・・・・・・・・・
志賀島の漁師が

釣りのおりに灯す漁火に

仄かにでも妻を

見るだてがほしい
・・・・・・・・・・



3171 大阪,序詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

難波方  水手出船之  遥々  別来礼杼  忘金津毛

難波潟 漕ぎ出る舟の はろはろに 別れ来ぬれど 忘れかねつも 

[なにはがた こぎづるふねの はろはろに] わかれきぬれど わすれかねつも
・・・・・・・・・・
難波潟から漕ぎ出した舟は

はるばると旅路を行く

郷里の妻と別れて来たが

寸時も忘れることはない
・・・・・・・・・・
* 「はろはろに」遥遥に。 (副) はるかに。はるばると。


3148 枕詞,恋,望郷,臨場表現

[題詞](羇旅發思)

玉釼  巻寝志妹乎  月毛不經  置而八将越  此山岫

玉釧 まき寝し妹を 月も経ず 置きてや越えむ この山の崎 

[たまくしろ] まきねしいもを つきもへず おきてやこえむ このやまのさき
・・・・・・・・・・
「“玉釧”(腕にしたまま)眠る妻と(結ばれてから)まだ日も経っていないのに。(妻を古里に)置いて、この山あいを超えてきた」
・・・・・・・・・・
* 「玉釧」:玉をつないで作った腕輪。「手に巻く」の意味から、「まく」「手に取り持つ」にかかる枕詞。
* 「玉」 すばらしいものにつく接頭語…魂…命…玉。




3149 枕詞,女歌,遊行女婦

[題詞](羇旅發思)

梓弓  末者不知杼  愛美  君尓副而  山道越来奴

梓弓 末は知らねど 愛しみ 君にたぐひて 山道越え来ぬ 

[あづさゆみ] すゑはしらねど うるはしみ きみにたぐひて やまぢこえきぬ
・・・・・・・・・・
「“梓弓”(この恋の行く)末は知らないわ。惚れた男が手繰り寄せられるように、(あたしの許まで)山道を越えてやってきたの
・・・・・・・・・・



3150 恋

[題詞](羇旅發思)

霞立  春長日乎  奥香無  不知山道乎  戀乍可将来

霞立つ 春の長日を 奥処なく 知らぬ山道を 恋ひつつか来む 

[かすみたつ] はるのながひを おくかなく しらぬやまぢを こひつつかこむ
・・・・・・・・・・
3150 霞が立つ春の長い日を、奥深く知らない山道を、(古里を)恋しく思いつつ歩を進めるんです
 霞(かすみ)の立(た)つ春の長い一日を、どこまで続くか分からない山道を、(家のことを)恋しく思いながら行くのです
・・・・・・・・・・
* 「奥処なく」 どこまで続くか分からない。



3151 枕詞,遊行女婦,恋

[題詞](羇旅發思)

外耳  君乎相見而  木綿牒  手向乃山乎  明日香越将去

外のみに 君を相見て 木綿畳 手向けの山を 明日か越え去なむ 

よそのみに きみをあひみて [ゆふたたみ] たむけのやまを あすかこえいなむ
・・・・・・・・・・
遠くから、きみ(のこと)を見ていた。“木綿畳”峠のある山を、明日にでも越えて(きみの住むまちから)去ってゆく
・・・・・・・・・・
* 「外のみに 君を相見て」人に知られないように、無表情に見て。
* 「木綿畳」[名]木綿(ゆう)をたたむこと。また、たたんだもの。神事に用いる。 [枕]神に手向(たむ)ける意で、「たむけ」に、また「た」を含む地名「たなかみ」にかかる。




3152 枕詞,孤独

[題詞](羇旅發思)

玉勝間  安倍嶋山之  暮露尓  旅宿得為也  長此夜乎

玉かつま 安倍島山の 夕露に 旅寝えせめや 長きこの夜を 

[たまかつま] あへしまやまの ゆふつゆに たびねえせめや ながきこのよを
・・・・・・・・・・
あへ島山におりる夕露の下で

旅の野宿せねばなるまいか

この秋の夜長を
・・・・・・・・・・
* 「玉勝間」:(たまは美称)[名]かつまの美称。編み目の細かい竹籠。
[枕]かつまの中子(なかご)と蓋(ふた)が合い、その編み目が締まっている意から、「あふ」「しま」にかかる。




3153 石川,富山,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

三雪零  越乃大山  行過而  何日可  我里乎将見

み雪降る 越の大山 行き過ぎて いづれの日にか 吾が里を見む 

みゆきふる こしのおほやま ゆきすぎて いづれのひにか わがさとをみむ
・・・・・・・・・・
降り積もる深い雪

北陸道の大山を行き過ぎて

いつの日にかまた

吾が郷里を見るのだろうか
・・・・・・・・・・
* 「越(越国)」:北陸道(若狭、越前、加賀、能登、越中、越後、佐渡) 福井県敦賀市〜山形県庄内地方の一部。



3154 和歌山,望郷,恋

[題詞](羇旅發思)

乞吾駒  早去欲  亦打山  将待妹乎  去而速見牟

いで吾が駒 早く行きこそ 真土山 待つらむ妹を 行きて早見む 

いであがこま はやくゆきこそ [まつちやま] まつらむいもを ゆきてはやみむ
・・・・・・・・・・
さあ吾が馬よ早く走れ

帰りを待つ妻の元に

早く行って会いたい
・・・・・・・・・・
* 「真土山」 奈良県五條市と和歌山県橋本市との境にある山。吉野川(紀ノ川)北岸にある。[枕]同音の「待つ」にかかる。



3155 福岡県,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

悪木山  木<末>悉  明日従者  靡有社  妹之當将見

悪木山 木末ことごと 明日よりは 靡きてありこそ 妹があたり見む 

[あしきやま] こぬれことごと あすよりは なびきてありこそ いもがあたりみむ
・・・・・・・・・・
意地悪く遮る蘆城山よ

木々の梢までが邪魔をしている

明日からは靡き伏しておれ

妻が住む家の辺りを見るから
・・・・・・・・・・



3156 三重県,恋

[題詞](羇旅發思)

鈴鹿河  八十瀬渡而  誰故加  夜越尓将越  妻毛不在君

鈴鹿川 八十瀬渡りて 誰がゆゑか 夜越えに越えむ 妻もあらなくに 

[すずかがは やそせわたりて たがゆゑか] よごえにこえむ つまもあらなくに

・・・・・・・・・・
鈴鹿川の多くの渡り瀬を

誰のために夜中に越えて行こうか

待っていてくれる妻もいないのに
・・・・・・・・・・



3157 滋賀,序詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

吾妹兒尓  又毛相海之  安河  安寐毛不宿尓  戀度鴨

吾妹子に またも近江の 安の川 安寐も寝ずに 恋ひわたるかも 

[わぎもこに またもあふみの やすのかは] やすいもねずに こひわたるかも
・・・・・・・・・・
つれあいにまた会うという近江の野洲の川か

安眠など出来ないで

ただ妻恋をし続けるだけだよ
・・・・・・・・・・
* 「安寝(やすい)」安眠、独り寝。対語「味寝(うまい)」男女の共寝。




3158 遊行女婦,鬱屈,恋

[題詞](羇旅發思)

客尓有而  物乎曽念  白浪乃  邊毛奥毛  依者無尓

旅にありて ものをぞ思ふ 白波の 辺にも沖にも 寄るとはなしに 

たびにありて ものをぞおもふ [しらなみの] へにもおきにも よるとはなしに
・・・・・・・・・・
旅に出てあれこれと思い悩むのは

白波が沖に浜に寄せては返す

そのようなものであるよ
・・・・・・・・・・



3159 遊行女婦,序詞,恋

[題詞](羇旅發思)

<湖>轉尓  満来塩能  弥益二  戀者雖剰  不所忘鴨

港廻に 満ち来る潮の いや増しに 恋はまされど 忘らえぬかも 

[みなとみに みちくるしほの いやましに] こひはまされど わすらえぬかも
・・・・・・・・・・
船だまりの港に満潮が高まるように

一夜の相手に恋が増して忘れられない
・・・・・・・・・・


3136 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

客在而  戀者辛苦  何時毛  京行而  君之目乎将見

旅にありて 恋ふれば苦し いつしかも 都に行きて 君が目を見む 

たびにありて こふればくるし いつしかも みやこにゆきて きみがめをみむ
・・・・・・・・
旅にいてあなたを思う恋は苦しいものです

早く都に帰ってあなたの瞳を見たいのです
・・・・・・・・
* 「いつしかも」何時しかも;いつになったら。代名詞「いつ」に、強めの副助詞「し」、疑問の係助詞「か」+「も」。 過去・未来の不定の時を表す。どの時かに。



3137 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

遠有者  光儀者不所見  如常  妹之咲者  面影為而

遠くあれば 姿は見えず 常のごと 妹が笑まひは 面影にして 

とほくあれば すがたはみえず つねのごと いもがゑまひは おもかげにして
・・・・・・・・
遠くにいるので姿は見えないが

いつもいつも妻の微笑む面影が浮かぶ
・・・・・・・・
* 「常のごと」; いつものように、いつもいつも。
* 「にして」;断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞「して」。
  …であって。




3138 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

年毛不歴  反来甞跡  朝影尓  将待妹之  面影所見

年も経ず 帰り来なむと 朝影に 待つらむ妹し 面影に見ゆ 

としもへず かへりこなむと [あさかげに] まつらむいもし おもかげにみゆ
・・・・・・・・
一年も経たずに 

赴任先から帰るはずなのにと

朝蔭のように痩せ細って

私の帰郷を待つ妻の姿が目に浮かぶ
・・・・・・・・



3139 枕詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

玉桙之  道尓出立  別来之  日従于念  忘時無

玉桙の 道に出で立ち 別れ来し 日より思ふに 忘る時なし 

[たまほこの] みちにいでたち わかれこし ひよりおもふに わするときなし
・・・・・・・・
都への旅装束で道に出て

古里の妻と別れて来た

その日から毎日妻を思い

忘れる時はない
・・・・・・・・



3140 恋,遊行女婦,望郷

[題詞](羇旅發思)

波之寸八師  志賀在戀尓毛  有之鴨  君所遺而  戀敷念者

[はしきやし] しかある恋にも ありしかも 君に後れて 恋しき思へば 

はしきやし しかあるこひに ありしかも きみにおくれて こほしきおもへば
・・・・・・・・
いとおしいなんて

恋だなんていえないことなのに

あなたが旅立ってしまってから

恋しいなんて思う

割り切れなくてどうかしてるわ
・・・・・・・・



3141 枕詞,恋,遊行女婦

[題詞](羇旅發思)

草枕  客之悲  有苗尓  妹乎相見而  後将戀可聞

草枕 旅の悲しく あるなへに 妹を相見て 後恋ひむかも 

[くさまくら] たびのかなしく あるなへに いもをあひみて のちこひむかも
・・・・・・・・
一人旅が空しくもあるのは

行きずりの出会いで一夜を過ごし

また旅に出て恋に気づくからだ
・・・・・・・・



3142 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

國遠  直不相  夢谷  吾尓所見社  相日左右二

国遠み 直には逢はず 夢にだに 吾れに見えこそ 逢はむ日までに 

くにとほみ ただにはあはず いめにだに われにみえこそ あはむひまでに
・・・・・・・・
故郷は遠く

もう直には逢えない

せめて夢に見たい

再び逢うだろう日まで
・・・・・・・・



3143 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

如是将戀  物跡知者  吾妹兒尓  言問麻思乎  今之悔毛

かく恋ひむ ものと知りせば 吾妹子に 言問はましを 今し悔しも 

かくこひむ ものとしりせば わぎもこに こととはましを いましくやしも
・・・・・・・・
こんなに恋していたのなら

何故もっと話をしておかなかったのか

そうしたら この旅空もこんなに辛くはなかったろうに
・・・・・・・・
* 「問はましものを"」の 「まし」は反実仮想の助動詞「まし」の連体形。
 様子を尋ねもするだろうに



3144 枕詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

客夜之  久成者  左丹頬合  紐開不離  戀流比日

旅の夜の 久しくなれば さ丹つらふ 紐解き放けず 恋ふるこのころ 

たびのよの ひさしくなれば [さにつらふ] ひもときさけず こふるこのころ
・・・・・・・・
旅の夜が長くなれば

行きずりのひとに

衣の紐を解くわけにもいかず

郷里の妻が恋しくてならないこの頃であるよ
・・・・・・・・



3145 枕詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

吾妹兒之  阿<乎>偲良志  草枕  旅之丸寐尓  下紐解

吾妹子し 吾を偲ふらし 草枕 旅のまろ寝に 下紐解けぬ 

わぎもこし あをしのふらし [くさまくら] たびのまろねに したびもとけぬ
・・・・・・・・
妻が家で私を偲んでいるらしい

旅で丸寝をしていると

下着の紐がほどけてしまう
・・・・・・・・
* 「まろ寝」 衣服は昼の格好のまま眠ること。



3146 枕詞,恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

草枕  旅之衣  紐解  所念鴨  此年比者

草枕 旅の衣の 紐解けて 思ほゆるかも この年ころは 

[くさまくら] たびのころもの ひもとけて おもほゆるかも このとしころは
・・・・・・・・
旅装束の下着の紐が解ける

郷里の妻が私に会いたがっているからだ

この頃は特に妻を思う
・・・・・・・・



3147 枕詞,望郷,恋

[題詞](羇旅發思)

草枕  客之紐解  家之妹志  吾乎待不得而  歎良霜

草枕 旅の紐解く 家の妹し 吾を待ちかねて 嘆かふらしも 

[くさまくら] たびのひもとく いへのいもし わをまちかねて なげかふらしも
・・・・・・・・
旅装束の紐がほどけるのは

郷里の妻が私の帰郷を待ちかねて

泣き嘆いているからに違いない
・・・・・・・・



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