ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・・万葉集(〃)

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3124 女歌,恋

[題詞](問答歌)

雨毛零  夜毛更深利  今更  君将行哉  紐解設<名>

雨も降り 夜も更けにけり 今さらに 君去なめやも 紐解き設けなタ 

あめもふり よもふけにけり いまさらに きみいなめやも ひもときまけな
・・・・・・・・・・
雨が降っている

夜も更けてゆく

雨の中を今さら帰すなんて出来るでしょうか

下着のひもをゆるめて寝る支度をしましょう 
・・・・・・・・・・



3125 枕詞,恋,女歌

[題詞](問答歌)

久堅乃  雨零日乎  我門尓  蓑笠不蒙而  来有人哉誰

ひさかたの 雨の降る日を 吾が門に 蓑笠着ずて 来る人や誰れ 

[ひさかたの] あめのふるひを わがかどに みのかさきずて けるひとやたれ
・・・・・・・・・・
雨降りの日に吾が家の門口に

雨具蓑笠もなしで来ている男は誰なの
・・・・・・・・・・



サ3126 桜井,奈良,難渋,恋

[題詞](問答歌)

纒向之  病足乃山尓  雲居乍  雨者雖零  所<沾>乍<焉>来

巻向の 穴師の山に 雲居つつ 雨は降れども 濡れつつぞ来し 

[まきむくの] あなしのやまに くもゐつつ あめはふれども ぬれつつぞこし
・・・・・・・・・・
恋しさに

巻向の穴師山を雨雲が覆う

その痛足(あなし)の山を越えて

雨に濡れながらやってきたよ
・・・・・・・・・・
* 「巻向の穴師の山」は、奈良三輪町穴師にある山。
* 「雲居」は名詞。後に「つつ」で動詞「雲居る」となる。
* 「つつ」は継続の接続助詞。
* 「ども」は逆接の接続助詞  〜けれども
* 「ぞ」は強調の係助詞。
* 「来し」は、カ行変格活用動詞「来」の連用形「来(こ)」に、過去の助動詞「き」の連体形「し」で、「ぞ」の結び。   やって来た。





羇旅發思
<羇旅に思を発(おこ)す>





3127 作者:柿本人麻呂歌集,三重県,伊勢,序詞,恋

[題詞]羇旅發思

度會  大川邊  若歴木  吾久在者  妹戀鴨

度会の 大川の辺の 若久木 吾が久ならば 妹恋ひむかも 

[わたらひの おほかはのへの わかひさぎ] わがひさならば いもこひむかも
・・・・・・・・・・
度会大川の岸の若い芽の久木よ

わたくしの旅が久しく長くなったら

妻は恋しがるでしょうかね  わたしを
・・・・・・・・・・



3128 作者:柿本人麻呂歌集,奈良,恋

[題詞](羇旅發思)

吾妹子  夢見来  倭路  度瀬別  手向吾為

吾妹子を 夢に見え来と 大和道の 渡り瀬ごとに 手向けぞ吾がする 

わぎもこを いめにみえこと やまとぢの わたりぜごとに たむけぞわがする
・・・・・・・・・・
妻よ せめて夢にその姿を見せてよと

大和路の徒歩で渡ることのできる浅瀬ごとに

土地の神にお供えをして祈っているのだ
・・・・・・・・・・



3129 作者:柿本人麻呂歌集,恋

[題詞](羇旅發思)

櫻花  開哉散  <及>見  誰此  所見散行

桜花 咲きかも散ると 見るまでに 誰れかもここに 見えて散り行く 

さくらばな さきかもちると みるまでに たれかもここに みえてちりゆく
・・・・・・・・・・
桜の花が咲いて散るように

みなさんは誰なのでしょう

ここに集まっては

また散って行く人々は
・・・・・・・・・・



3130 作者:柿本人麻呂歌集,北九州市,序詞,恋

[題詞](羇旅發思)

豊洲  聞濱松  心<哀>  何妹  相云始

豊国の 企救の浜松 ねもころに 何しか妹に 相言ひそめけむ 

[とよくにの きくのはままつ ねもころに] なにしかいもに あひいひそめけむ
・・・・・・・・・・
豊国の企玖の浜松の根のように

相思相愛の深い間柄になって

根っから惚れてしまって忘れられない

今は旅空はるか 逢うことも叶わず
・・・・・・・・・・



3131 恋

[題詞](羇旅發思)

月易而  君乎婆見登  念鴨  日毛不易為而  戀之重

月変へて 君をば見むと 思へかも 日も変へずして 恋の繁けむ 

つきかへて きみをばみむと おもへかも ひもかへずして こひのしげけむ
・・・・・・・・・・
あなたとは月を変えて逢えばいい

そう思っていたのに

毎日逢わなくては

収まらなくなってしまったわ
・・・・・・・・・・



サ3132 恋

[題詞](羇旅發思)

莫去跡  變毛来哉常  顧尓  雖徃不歸  道之長手矣

な行きそと 帰りも来やと かへり見に 行けど帰らず 道の長手を 

なゆきそと かへりもくやと かへりみに ゆけどかへらず みちのながてを
・・・・・・・・・・
行かないで

帰って来るのか 別れかも

振り返り振り返り行ってしまった

長い道のりを
・・・・・・・・・・



3133 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

去家而  妹乎念出  灼然  人之應知  <歎>将為鴨

旅にして 妹を思ひ出で いちしろく 人の知るべく 嘆きせむかも 

たびにして いもをおもひいで [いちしろく] ひとのしるべく なげきせむかも
・・・・・・・・・・
旅中で

恋人を思い出しただけ

それがどうして

はっきりと

周囲に知られたのか
・・・・・・・・・・



3134 恋,望郷

[題詞](羇旅發思)

里離  遠有莫國  草枕  旅登之思者  尚戀来

里離り 遠くあらなくに 草枕 旅とし思へば なほ恋ひにけり 

さとさかり とほくあらなくに [くさまくら] たびとしおもへば なほこひにけり
・・・・・・・・・・
里を離れ

それほど遠くへ来たわけではないが

旅の途中だと思えば

無性に妻が恋しいのだ
・・・・・・・・・・



3135 恋,望郷,うわさ

[題詞](羇旅發思)

近有者  名耳毛聞而  名種目津  今夜従戀乃  益々南

近くあれば 名のみも聞きて 慰めつ 今夜ゆ恋の いやまさりなむ 

ちかくあれば なのみもききて なぐさめつ こよひゆこひの いやまさりなむ
・・・・・・・・・・
近くにいれば噂も聞けて

寂しさを慰めてもくれようが

今夜からは恋しさが

まさり深まるばかりだろう
・・・・・・・・・・


3113 怨,恋

[題詞](問答歌)

在有而  後毛将相登  言耳乎  堅要管  相者無尓

ありありて 後も逢はむと 言のみを 堅く言ひつつ 逢ふとはなしに 

ありありて のちもあはむと ことのみを かたくいひつつ あふとはなしに
・・・・・・・・・・
ずっとこのままの状態でいて

後にも逢おうと言葉でかたく約束したのに

直接逢う事もなくなって
・・・・・・・・・・
* 動詞「あり」の連用形を重ねた「ありあり」+接続助詞「て」。
 ずっとこのままの状態でいて、 このまま生き長らえて。



3114 恋,うわさ,女歌

[題詞](問答歌)

極而  吾毛相登  思友  人之言社  繁君尓有

ありありて 吾れも逢はむと 思へども 人の言こそ 繁き君にあれ 

ありありて われもあはむと おもへども ひとのことこそ しげききみにあれ
・・・・・・・・・・
ずっとこのままでいて

私も逢おうと思うけれど

他の人から

とかく恋の噂の絶えないあなたですから
・・・・・・・・・・



3115 恋

[題詞](問答歌)

氣緒尓  言氣築之  妹尚乎  人妻有跡  聞者悲毛

息の緒に 吾が息づきし 妹すらを 人妻なりと 聞けば悲しも 

いきのをに わがいきづきし いもすらを ひとづまなりと きけばかなしも
・・・・・・・・・・
命のかぎり私は精一杯に息をしとめたよ

愛するひとが人妻だったなんて

そんなことを聞けば悲しくて
・・・・・・・・・・
* 「いき‐の‐お」息の緒    いのち。たまのお。魂。
 ふつう「息の緒に」の形で、命のかぎりの意に用いる。



3116 恋,慰め,女歌

[題詞](問答歌)

吾故尓  痛勿和備曽  後遂  不相登要之  言毛不有尓

吾がゆゑに いたくなわびそ 後つひに 逢はじと言ひし こともあらなくに 

わがゆゑに いたくなわびそ のちつひに あはじといひし こともあらなくに
・・・・・・・・・・
私のことでひどく哀しまないで

最後まであなたと会わないなんて

言ったことはありませんよ
・・・・・・・・・・



3117 恋

[題詞](問答歌)

門立而  戸毛閇而有乎  何處従鹿  妹之入来而  夢所見鶴

門立てて 戸も閉したるを いづくゆか 妹が入り来て 夢に見えつる 

かどたてて ともさしてあるを いづくゆか いもがいりきて いめにみえつる
・・・・・・・・・・
門を閉じて戸締りもしたのに

どこからか愛人が部屋の中に

入って来る夢を見てしまう
・・・・・・・・・・
* 「妹」…いも…恋人…愛人…妻




3118 恋,女歌

[題詞](問答歌)

門立而  戸者雖闔  盗人之  穿穴従  入而所見牟

門立てて 戸は閉したれど 盗人の 穿れる穴より 入りて見えけむ 

かどたてて とはさしたれど ぬすびとの ほれるあなより いりてみえけむ
・・・・・・・・・・
門を閉じ戸締りもしたのでしょうが

私は盗人が掘った穴にもぐって

あなたを見ていたのですよ
・・・・・・・・・・
* 「けむ」 過去の助動詞「き」の未然形の古形「け」+推量の助動詞「む」から活用語の連用形に付く。
過去の事実についての推量を表す。…ただろう。…だったろう。




3119 恋

[題詞](問答歌)

従明日者  戀乍将<去>  今夕弾  速初夜従  綏解吾妹

明日よりは 恋ひつつ行かむ 今夜だに 早く宵より 紐解け吾妹 

あすよりは こひつつゆかむ こよひだに はやくよひより ひもとけわぎも
・・・・・・・・・・
明日になればおまえを恋つつの旅立ちなんだ

だからまだ早いけれど今宵ばかりは

ひもを解いてさあ思いっきり抱き合おう 
・・・・・・・・・・



3120 女歌,恋

[題詞](問答歌)

今更  将寐哉我背子  荒田<夜>之  全夜毛不落  夢所見欲

今さらに 寝めや吾が背子 新夜の 一夜もおちず 夢に見えこそ 

いまさらに ねめやわがせこ あらたよの ひとよもおちず いめにみえこそ
・・・・・・・・・・
今さら抱き合ってもあなたは明け方には行ってしまう

夜毎ひと晩も絶やさず夢に出てきてよね
・・・・・・・・・・



3121 女歌,恋

[題詞](問答歌)

吾<勢>子之  使乎待跡  笠不著  出乍曽見之  雨零尓

吾が背子が 使を待つと 笠も着ず 出でつつぞ見し 雨の降らくに 

わがせこが つかひをまつと かさもきず いでつつぞみし あめのふらくに
・・・・・・・・・・
愛する人からの連絡を待って

雨具も無しで

外で見てたの雨が降る中を
・・・・・・・・・・



3122 人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

無心  雨尓毛有鹿  人目守  乏妹尓  今日谷相<乎>

心なき 雨にもあるか 人目守り 乏しき妹に 今日だに逢はむを 

こころなき あめにもあるか ひとめもり ともしきいもに けふだにあはむを
・・・・・・・・・・
心無い雨であることよ

人目を避けてめったに逢えないあの娘に

きょうこそ逢おうというのに
・・・・・・・・・・


3123 枕詞,恋

[題詞](問答歌)

直獨  宿杼宿不得而  白細  袖乎笠尓著  沾乍曽来

ただひとり 寝れど寝かねて 白栲の 袖を笠に着 濡れつつぞ来し 

ただひとり ぬれどねかねて しろたへの そでをかさにき ぬれつつぞこし
・・・・・・・・・・
独り寝がどうしても出来なくて

袖を笠にして難渋したけど

雨に濡れながら飛んできたよ
・・・・・・・・・・


3102 歌垣,枕詞,求婚拒否

[題詞](問答歌)

足千根乃  母之召名乎  雖白  路行人乎  孰跡知而可

たらちねの 母が呼ぶ名を 申さめど 道行く人を 誰れと知りてか 

[たらちねの] ははがよぶなを まをさめど みちゆくひとを たれとしりてか
・・・・・・・・・・・
素敵なあなたは ただの行きずりの人

母だけが呼ぶ私の名をお教えしたいけれども

通りすがりのあなたが誰かも知らずに

たとえ高貴なお方でも お教えできませんことよ
・・・・・・・・・・・



3103 女歌,恋,枕詞

[題詞](問答歌)

不相  然将有  玉<梓>之  使乎谷毛  待八金<手>六

逢はなくは しかもありなむ 玉梓の 使をだにも 待ちやかねてむ 

あはなくは しかもありなむ [たまづさの] つかひをだにも まちやかねてむ
・・・・・・・・・・・
逢えないのならそれはそれで忍びもしましょう

でも お便りを運ぶお使いさえも

待ちかねなければならないのでしょうか
・・・・・・・・・・・



3104 人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

将相者  千遍雖念  蟻通  人眼乎多  戀乍衣居

逢はむとは 千度思へど あり通ふ 人目を多み 恋つつぞ居る 

あはむとは ちたびおもへど [ありがよふ] ひとめをおほみ こひつつぞをる
・・・・・・・・・・・
逢いたいと幾度思うか知れないが

蟻が行き来するように人目が多くて

逢いにも行けず

一人で恋い焦がれているんだよ
・・・・・・・・・・・



3105 人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

人目太  直不相而  盖雲  吾戀死者  誰名将有裳

人目多み 直に逢はずて けだしくも 吾が恋ひ死なば 誰が名ならむも 

ひとめおほみ ただにあはずて けだしくも あがこひしなば たがなならむも
・・・・・・・・・・・
人目が多いからと

逢いに来てくれないままでは

私が恋い死にしたら

あなたの名がでて噂になるでしょう
・・・・・・・・・・・
* 「けだしく‐も」副詞「けだしく」+係助詞「も」から、
 1 (あとに推量または疑問の意味を表す語を伴って)
   おそらく。ひょっとしたら。
 2 (あとに仮定の意味を表す語を伴って)もしも。



3106 女歌,恋

[題詞](問答歌)

相見  欲為者  従君毛  吾曽益而  伊布可思美為也

相見まく 欲しきがためは 君よりも 吾れぞまさりて いふかしみする 

あひみまく ほしきがためは きみよりも われぞまさりて いふかしみする
・・・・・・・・・・・
逢いたい気持ちは

君よりも私の方が強いのに

訝しいことを言うものだね
・・・・・・・・・・・



3107 人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

空蝉之  人目乎繁  不相而  年之經者  生跡毛奈思

うつせみの 人目を繁み 逢はずして 年の経ぬれば 生けりともなし 

[うつせみの] ひとめをしげみ あはずして としのへぬれば いけりともなし
・・・・・・・・・・・
心の中ではあの娘のことを強く思っているけれど

この世の人たちの目にふれないようにしながら

年を重ねることは

生きた心地もしないことだなぁ
・・・・・・・・・・・



3108 枕詞,人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

空蝉之  人目繁者  夜干玉之  夜夢乎  次而所見欲

うつせみの 人目繁くは ぬばたまの 夜の夢にを 継ぎて見えこそ 

うつせみの ひとめしげくは [ぬばたまの] よるのいめにを つぎてみえこそ
・・・・・・・・・・・
この世の人たちの目にふれないように

夜の夢で絶えず逢いましょう 
・・・・・・・・・・・



3109 人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

慇懃  憶吾妹乎  人言之  繁尓因而  不通比日可聞

ねもころに 思ふ吾妹を 人言の 繁きによりて 淀むころかも 

ねもころに おもふわぎもを ひとごとの しげきによりて よどむころかも
・・・・・・・・・・・
親密な間柄のわが妻になかなか逢えない

人目陰口が煩くて水が淀むようなこの頃であるよ
・・・・・・・・・・・
* 「ねもころ」[形動ナリ]「ねんごろ」の古形。
 「ねもごろ」とも。  [副]も同じ。
1 心がこもっているさま。親身であるさま。
 「―にとむらう」「―なもてなし」
2 親しいさま。特に、男女の仲が親密であるさま。
 「―な間柄」[名]1 親密になる ...




3110 人目,うわさ,恋

[題詞](問答歌)

人言之  繁思有者  君毛吾毛  将絶常云而  相之物鴨

人言の 繁くしあらば 君も吾れも 絶えむと言ひて 逢ひしものかも 

ひとごとの しげくしあらば きみもあれも たえむといひて あひしものかも
・・・・・・・・・・・
人目陰口が煩くて逢えないという

あなたと私は切れ切れになると言いながら

いつも逢ってきたのかしら
・・・・・・・・・・・



3111 恋,女歌

[題詞](問答歌)

為便毛無  片戀乎為登  比日尓  吾可死者  夢所見哉

すべもなき 片恋をすと この頃に 吾が死ぬべきは 夢に見えきや 

すべもなき かたこひをすと このころに わがしぬべきは いめにみえきや
・・・・・・・・・・・
どうしようもなく恋ひ恋ふ私の片想い

その恋ゆえに死にそうになっているのに

あなたの夢にさえ現れないのでしょうか
・・・・・・・・・・・



3112 恋

[題詞](問答歌)

夢見而  衣乎取服  装束間尓  妹之使曽  先尓来

夢に見て 衣を取り着 装ふ間に 妹が使ぞ 先立ちにける 

いめにみて ころもをとりき よそふまに いもがつかひぞ さきだちにける
・・・・・・・・・・・
正に夢に見たからこそ

衣を取り出して身支度をしている時に

愛しいあなたからの使いが先に来たのですよ
・・・・・・・・・・・



3091 恋

[題詞](寄物陳思)

鴨尚毛  己之妻共  求食為而  所遺間尓  戀云物乎

鴨すらも おのが妻どち あさりして 後るる間に 恋ふといふものを 

かもすらも おのがつまどち あさりして おくるるあひだに こふといふものを
・・・・・・・・・・
鴨ですら連れ合いどうしで

餌をあさるうちに 

ちょっと離ればなれになっても

恋しがるというのに
・・・・・・・・・・
* 「あさる」…漁る…えさを捜し求める…むさぼる…あざる…狂る…とり乱す。
* 「どち」動作・性質・状態などにおいて、互いに共通点を持っている人。同じ仲間。名詞の下に付いて、接尾語的にも用いる。
* 「後るる間に」ちょっと遅れて間が離れる意。



3092 枕詞,恋,序詞

[題詞](寄物陳思)

白檀  斐太乃細江之  菅鳥乃  妹尓戀哉  寐宿金鶴

白真弓 斐太の細江の 菅鳥の 妹に恋ふれか 寐を寝かねつる 

[しらまゆみ] ひだのほそえの すがどりの] いもにこふれか いをねかねつる
・・・・・・・・・・
白真弓の生える斐太の細江に住む菅鳥のように

妻に恋い焦がれているせいで 

夜毎なかなか寝つかれない
・・・・・・・・・・



3093 序詞,恋

[題詞](寄物陳思)

小竹之上尓  来居而鳴<鳥>  目乎安見  人妻め尓  吾戀二来

小竹の上に 来居て鳴く鳥 目を安み 人妻ゆゑに 吾れ恋ひにけり 

[しののうへに きゐてなくとり めをやすみ] ひとづまゆゑに あれこひにけり
・・・・・・・・・・
篠の上に来て鳴く鳥が

見た目の感じがとてもいいので

人妻なのに恋してしまいました
・・・・・・・・・・
* 「篠」は、群がって生える細く小さな竹の総称。
* 「こひ」…恋い…乞い…求める。



3094 恋

[題詞](寄物陳思)

物念常  不宿起有  旦開者  和備弖鳴成  鶏左倍

物思ふと 寐ねず起きたる 朝明には わびて鳴くなり 庭つ鳥さへ 

ものもふと いねずおきたる あさけには わびてなくなり にはつとりさへ
・・・・・・・・・・
あなたを思って眠むれず

夜明けの鶏の声さえ

侘しく聞こえる
・・・・・・・・・・
* 「もの思う」…何かに悩む…言い難いことを思う…情欲にふける。
* 「あさけ」朝明 「あさあけ」の音変化、 夜明け。
* 「にわ‐つ‐とり」庭つ鳥。[名]ニワトリの古名。 
  [枕]庭に飼う鳥の意から、「鶏(かけ)」にかかる。



3095 女歌,後朝

[題詞](寄物陳思)

朝烏  早勿鳴  吾背子之  旦開之容儀  見者悲毛

朝烏 早くな鳴きそ 吾が背子が 朝明の姿 見れば悲しも 

あさがらす はやくななきそ わがせこが あさけのすがた みればかなしも
・・・・・・・・・・
夜明けを告げる朝烏よ 

そんなに早くから鳴かないでおくれ

あの方が朝帰りなさる姿を

見るのが悲しくてつらいもの
・・・・・・・・・・



3096 序詞,恋

[題詞](寄物陳思)

○○越尓  麦咋駒乃  雖詈  猶戀久  思不勝焉

馬柵越しに 麦食む駒の 罵らゆれど 猶し恋しく 思ひかねつも 

[ませごしに むぎはむこまの のらゆれど] なほしこひしく おもひかねつも
・・・・・・・・・・
馬柵越しに首を伸ばして

隣りの麦を食う子馬が叱られるように

親にどんなに叱られても

いっそう恋しく思ってしまう
・・・・・・・・・・



サ3097 明日香,奈良,恋,歌垣

[題詞](寄物陳思)

左桧隈  <桧隈>河尓  駐馬  馬尓水令飲  吾外将見

さ桧隈 桧隈川に 馬留め 馬に水飼へ 吾れ外に見む 

[さひのくま] ひのくまかはに うまとどめ うまにみづかへ われよそにみむ
・・・・・・・・・・
檜隈を流れる檜隈川に馬を留めて

馬に水を飲ませてくださいな 

あなたの姿をこっそりと見たいから
・・・・・・・・・・
* 「檜の隈川」は、奈良明日香の「檜前」を流れる川。
* 「飼へ」は、動詞「飼ふ」の已然・命令形。 動物に食物などをを与えること。水を飲ませてくださいな 
* 「外」は名詞(遠く離れたところ)。
* 「に」は、場所の格助詞。
* 「見」は、マ行上一段活用動詞「見る」の未然形。
* 「む」は、意志の助動詞。 遠いところで見ることにしよう。




3098 紀皇女,高安王,平群文屋益人,怨,伝承,歌語り

[題詞](寄物陳思)

於能礼故  所詈而居者  ○馬之  面高夫駄尓  乗而應来哉

おのれゆゑ 罵らえて居れば 青馬の 面高夫駄に 乗りて来べしや 

おのれゆゑ のらえてをれば あをうまの おもたかぶだに のりてくべしや
・・・・・・・・・・
あなたのために罵られていますのに

雑役の馬で無思慮にも

乗ってこられるなんて
・・・・・・・・・・
<高安王にひそかに嫁して非難されているところへ、高安王が馬に乗って得意そうに来たのをたしなめた、ということ>。
 


3099 恋

[題詞](寄物陳思)

紫草乎  草跡別々  伏鹿之  野者殊異為而  心者同

紫草を 草と別く別く 伏す鹿の 野は異にして 心は同じ 

むらさきを くさとわくわく ふすしかの のはことにして こころはおやじ
・・・・・・・・・・
鹿は紫草を他の草と区別して臥所にするように

私たちが愛を語る場は別でも 

ほかの男には目もくれない心は同じです
・・・・・・・・・・



サ3100 怨,皮肉,恋,橿原市,奈良

[題詞](寄物陳思)

不想乎  想常云者  真鳥住  卯名手乃<社>之  神<思>将御知

思はぬを 思ふと言はば 真鳥住む 雲梯の杜の 神し知らさむ 

おもはぬを おもふといはば [まとりすむ] うなてのもりの かみししらさむ
・・・・・・・・・・
思ってもいないのに

思っていると偽るなら

鷲の住む雲梯の杜の神様に知れて

必ず偽りごとをお裁きになるでしょう
・・・・・・・・・・
* 「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形。
* 「を」は逆接助詞。
* 「言は」は、ハ行四段活用動詞「言ふ」の未然形。
* 「ば」は、仮定条件の接続助詞。 言ったとすれば。
* 「真鳥」は、立派な鳥。鷲の異名。
* 「卯名手の杜」は奈良橿原の雲梯(うなて)にある神社。
* 「し」は強調副助詞。
* 「知ら」は、ラ行四段活用動詞「知る」の未然形。
* 「さ」は、尊敬の助動詞「す」の未然形。
* 「む」は、推量の助動詞。 お知りになって
 



問答歌



3101 奈良,桜井,歌垣,染色,問いかけ,求婚

[題詞]問答歌

紫者  灰指物曽  海石榴市之  八十街尓  相兒哉誰

紫は 灰さすものぞ 海石榴市の 八十の街に 逢へる子や誰れ 

むらさきは はひさすものぞ [つばいちの] やそのちまたに あへるこやたれ
・・・・・・・・・・
紫は灰を加えて美しくなるもの

その名も海石榴市の

八方に通じる広場の歌垣で出会ったおまえ 

名を告げて私の妻になっておくれ

私が美しく染め上げてあげたい
・・・・・・・・・・


3079 序詞,恋,女歌

[題詞](寄物陳思)

海若之  奥津玉藻乃  靡将寐  早来座君  待者苦毛

わたつみの 沖つ玉藻の 靡き寝む 早来ませ君 待たば苦しも 

[わたつみの おきつたまもの なびきねむ] はやきませきみ またばくるしも
・・・・・・・・・・
大海原の沖合いに漂う玉藻のように

靡き寄り添いながら寝ましょう

すぐいらしてください  あなた 

これ以上待たせてわたしを苦しめないで
・・・・・・・・・・



3080 序詞,恋

[題詞](寄物陳思)

海若之  奥尓生有  縄<乗>乃  名者曽不告  戀者雖死

わたつみの 沖に生ひたる 縄海苔の 名はかつて告らじ 恋ひは死ぬとも 

[わたつみの おきにおひたる なはのりの] なはかつてのらじ こひはしねとも
・・・・・・・・・・
大海原の沖に生えている縄のりが

切れて絶えないようにように

あなたの名はだれにも告げますまい

恋い死ぬことがあっても
・・・・・・・・・・
* 「わたつみ」は、神の意味と、海そのものの意として捉える。



3081 序詞,恋

[題詞](寄物陳思)

玉緒乎  片緒尓搓而  緒乎弱弥  乱時尓  不戀有目八方

玉の緒を 片緒に縒りて 緒を弱み 乱るる時に 恋ひずあらめやも  

[たまのをを かたをによりて ををよわみ] みだるるときに こひずあらめやも
・・・・・・・・・・
縒り合わす別の糸がなければ

強い糸が出来ないように

片思いに心乱れて

あなたを恋せずにいられましょうか
・・・・・・・・・・
* 「片緒(糸)」は、2本の糸をより合わせて1本にするときの、その片方の糸。多く片思い、弱い、はかないの意をこめて使われる。



3082 女歌,枕詞,恋

[題詞](寄物陳思)

君尓不相  久成宿  玉緒之  長命之  惜雲無

君に逢はず 久しくなりぬ 玉の緒の 長き命の 惜しけくもなし 

きみにあはず ひさしくなりぬ [たまのをの] ながきいのちの をしけくもなし
・・・・・・・・・・
君知るや 逢わない時の長さを

こんな苦しい想いをするくらいなら

私は命も惜しいことはない
・・・・・・・・・・



3083 枕詞,恋

[題詞](寄物陳思)

戀事  益今者  玉緒之  絶而乱而  可死所念

恋ふること まされる今は 玉の緒の 絶えて乱れて 死ぬべく思ほゆ 

こふること まされるいまは [たまのをの] たえてみだれて しぬべくおもほゆ
・・・・・・・・・・
恋しくて恋しくて気が狂いそう

もう死んでしまいたいくらいですよ
・・・・・・・・・・
* 「玉の緒」は霊魂が宿るという信仰の一種の祭器であったらしい。
「タマ」という音が「魂」に通じる。「玉の緒」は、玉と玉を糸で繋いだもので、切れやすく、すぐにバラバラになってしまう。ここから「絶ゆ」「乱る」「継ぐ」などにかかり、玉を貫き通す紐の長いことから「長き」にかかる。
生命の意から「現し心」に、緒と同音であることから「惜し」にもかかる。 
また、「魂・寿命」が儚く短いものであることから「短い」意を持つ。



3084 序詞,恋

[題詞](寄物陳思)

海處女  潜取云  忘貝  代二毛不忘  妹之容儀者

海人娘子 潜き採るといふ 忘れ貝 世にも忘れじ 妹が姿は 

[あまをとめ かづきとるといふ わすれがひ] よにもわすれじ いもがすがたは
・・・・・・・・・・
忘れ貝は海人娘子が

潜水して採る二枚貝

浜辺でその貝殻の片方を拾うと

恋を忘れるそうな

でもねえ その貝殻が 

あの人を忘れさせてくれるかなぁ

後々の世までも

忘れることはないと思うけど
・・・・・・・・・・



3085 枕詞,恋

[題詞](寄物陳思)

朝影尓  吾身者成奴  玉蜻  髣髴所見而  徃之兒故尓

朝影に 吾が身はなりぬ 玉かぎる ほのかに見えて 去にし子ゆゑに 

あさかげに あがみはなりぬ [たまかぎる] ほのかにみえて いにしこゆゑに
・・・・・・・・・・
朝日の中の影ぼうし

私は細長く伸びた影ぼうし

僅かな間居てどこかへ去った娘を

思い詰めてる影ぼうし
・・・・・・・・・・



3086 恋

[題詞](寄物陳思)

中々二  人跡不在者  桑子尓毛  成益物乎  玉之緒<許>

なかなかに 人とあらずは 桑子にも ならましものを 玉の緒ばかり 

なかなかに ひととあらずは くはこにも ならましものを たまのをばかり
・・・・・・・・・・
かえって 人でないなら

蚕にでも生まれたらよかった

蚕が短い命だとしても

これほど恋が苦しいものなら
・・・・・・・・・・
* 「玉の緒」は、ここでは「短い間でも」「ほんのしばらくの間でも」の意。「桑子」は、桑を食べる蚕のこと。



サ3087 枕詞,序詞,奈良,恋

[題詞](寄物陳思)

真菅吉  宗我乃河原尓  鳴千鳥  間無吾背子  吾戀者

ま菅よし 宗我の川原に 鳴く千鳥 間なし吾が背子 吾が恋ふらくは 

[ますげよし] そがのかはらに なくちどり] まなしわがせこ あがこふらくは
・・・・・・・・・・
真菅が生える宗我の川原に鳴く千鳥のように

私も絶え間なく夫を恋い慕っています
・・・・・・・・・・
* ク語法  活用語に準体言詞「く」「らく」の付いた形をク語形(法)という。
 「く」は四段・ラ変の未然形、形容詞「−ケ」「−シケ」の未然形、助動詞「り」の未然形、「ず」「む」「けり」の未然形に付く。また「き」の連体形につく。
 「らく」は上一段の未然形と上二段・下二段・カ変・サ変およびに助動詞「しむ」「ゆ」「つ」「ぬ」などの終止形につく。
「く」「らく」は接続の仕方は異なるが「こと」という意味を表す点では同じである。普通上接の活用語を体言化する接尾語として扱われる。
「恋ふらく」なり「有らく」なりは一語の体言となる。(接尾語という品詞は存在しない)



3088 奈良,掛詞,序詞,恋

[題詞](寄物陳思)

戀衣  著<楢>乃山尓  鳴鳥之  間無<時無>  吾戀良苦者

恋衣 着奈良の山に 鳴く鳥の 間なく時なし 吾が恋ふらくは 

[こひごろも きならのやまに なくとりの] まなくときなし あがこふらくは
・・・・・・・・・・
愛しいあなた

私の恋する気持ちは

絶え間もなく

奈良の山に鳴く鳥の声よ
・・・・・・・・・・



サ3089 枕詞,序詞,奈良,恋

[題詞](寄物陳思)

遠津人  猟道之池尓  住鳥之  立毛居毛  君乎之曽念

遠つ人 狩道の池に 住む鳥の 立ちても居ても 君をしぞ思ふ 

[とほつひと] かりぢのいけに すむとりの] たちてもゐても きみをしぞおもふ
・・・・・・・・・・
猟道の池に住む鳥のように

立っていても座っていても

いつも一途に貴方だけを思い続けています
・・・・・・・・・・
* 「遠つ人」は、雁(猟)を言い出す枕詞。
* 「狩道の池」は奈良桜井の鹿路にある池。
* 「君」は人称名詞。
* 「を」は、対象の格助詞。
* 「し」は、強調の副助詞。
* 「ぞ」は、強調の係助詞。
* 「思ふ」は、ハ行四段活用動詞の連体形。(「ぞ」の結び)
  一途に貴方だけを思い続ける。



サ3090 序詞,うわさ,恋

[題詞](寄物陳思)

葦邊徃  鴨之羽音之  聲耳  聞管本名  戀度鴨

葦辺行く 鴨の羽音の 音のみに 聞きつつもとな 恋ひわたるかも 

[あしへゆく かものはおとの おとのみに] ききつつもとな こひわたるかも
・・・・・・・・・・
葦辺を飛んでゆく鴨の羽音のように

うわさだけ聞いて

お会いすることもできず

ただいたづらに

あなたを恋し続けるのでしょうか
・・・・・・・・・・
* 「もと‐な」[副]「もと」は根本の意。「な」は形容詞「無し」の語幹。  わけもなく。みだりに。
* 「音に聞く」は、うわさに聞く。
* 「わたる」は、動詞の連用形に付いて、 ずっと〜し続ける。
* 「かも」は詠嘆の終助詞。



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