ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・万葉集(〃)

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3491 東歌,相聞,恋,女歌

[題詞]

楊奈疑許曽 伎礼波伴要須礼 余能比等乃 古非尓思奈武乎 伊可尓世余等曽

柳こそ 伐れば生えすれ 世の人の 恋に死なむを いかにせよとぞ 

やなぎこそ きればはえすれ よのひとの こひにしなむを いかにせよとぞ
・・・・・・・・・・・
柳なら伐ればまた生えるでしょう

この世の私が

恋の苦しさに死のうとしているのに

どうしろとおっしゃるのですか
・・・・・・・・・・・



サ3492 東歌,相聞,恋情

[題詞]

乎夜麻田乃 伊氣能都追美尓 左須楊奈疑 奈里毛奈良受毛 奈等布多里波母

小山田の 池の堤に さす柳 成りも成らずも 汝と二人はも 

[をやまだの いけのつつみに さすやなぎ] なりもならずも なとふたりはも
・・・・・・・・・・・
小山田の池の堤に

柳の挿し木をして根づくかつかないか 

でもこの恋が成るか成らないかは

あなたとの二人の心が決めることですね
・・・・・・・・・・・
* 「は‐も」係助詞「は」+係助詞「も」。感動・詠嘆を表す。…はまあ。…だなあ。
* 「楊奈疑」→柳。(春楊 葛山 發雲 立座 妹念(2453)→春柳 葛城山に 立つ雲の 立ちても居ても 妹をしぞ思ふ
 「發」→可須美多都・霞發
 「立つ」「居る(ゐる)」「いも」「思ふ」
 「葛山」→「葛城山」を漢文風に表記。)
* (人毛奈吉 空家者 草枕 旅尓益而 辛苦有家里(451)→人もなき 空しき家は 草枕 旅にまさりて 苦しくありけり)
* 漢字は、1字で1語を表し1音で読まれるものだが、語としての意味は捨てて、音を表す記号と化し、「表語文字」である漢字を「表音文字」として使っているのが「仮字」(「仮名」)で、後世のひらがなとは別ものだが、これらは、一般には万葉時代に用いられた仮名、すなわち「万葉仮名」と呼ばれる。この「万葉仮名」を草書体に崩したものが「草仮名」。さらに崩して、もはや漢字としての書体を越えたものが「ひらがな」となる。




3493 東歌,相聞,恋,異伝

[題詞]

於曽波夜母 奈乎許曽麻多賣 牟可都乎能 四比乃故夜提能 安比波多<我>波自

遅速も 汝をこそ待ため 向つ峰の 椎の小やで枝の 逢ひは違はじ 

おそはやも なをこそまため むかつをの しひのこやでの あひはたがはじ
・・・・・・・・・・・
来るのが遅くても早くても

あなただけを待っていよう

向かい峰の椎の小枝が

互い違いになっているみたいにならないでね
・・・・・・・・・・・



3493S 東歌,相聞,異伝,恋

[題詞]或本歌曰

於曽波夜毛 伎美乎思麻多武 牟可都乎能 思比乃佐要太能 登吉波須具登母

遅速も 君をし待たむ 向つ峰の 椎のさ枝の 時は過ぐとも 

おそはやも きみをしまたむ むかつをの しひのさえだの ときはすぐとも
・・・・・・・・・・・
ここに来るのが遅くても早くても もう気にしないわ

峰の椎の木の色だって移り変るのに

君をし待たむなんていわせて
・・・・・・・・・・・
* 「遅速」 緩急・遅いことと、速いこと。遅いか速いかの度合い。



3494 東歌,相聞,群馬県,子持村,恋

[題詞]

兒毛知夜麻 和可加敝流弖能 毛美都麻弖 宿毛等和波毛布 汝波安杼可毛布

子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと吾は思ふ 汝はあどか思ふ 

こもちやま わかかへるでの もみつまで ねもとわはもふ なはあどかもふ
・・・・・・・・・・・
子持山の楓の若葉が紅葉するまで

春から秋までずーっと俺と抱き合って過ごさないか

おまえは どう思う  ё
・・・・・・・・・・・



3495 東歌,相聞,恨,恋,女歌

[題詞]

伊波保呂乃 蘇比能和可麻都 可藝里登也 伎美我伎麻左奴 宇良毛等奈久文

巌ろの 沿ひの若松 限りとや 君が来まさぬ うらもとなくも 

いはほろの そひのわかまつ かぎりとや きみがきまさぬ うらもとなくも
・・・・・・・・・・・
巌かげの若松のように

なにかに邪魔されてか

これが最後だといって

あなたはおい出でにならない

心ぼそいことです
・・・・・・・・・・・
* 「ほろ」は隔てられている。
* 「沿ひ」反対側、うしろ。
* 「かぎ」へだてられている。
* 「や」は、強意。
* 「と」は、・・のように。
* 「き」→「く」(東国方言)
* 「うら‐もとな・し」心許無し。[形ク]気がかりで待ち遠しい。また、なんとなく不安で気がかりである。こころもとない。
* <[国語篇(その十)『万葉集』難解句]>より「うらもと(宇良毛等)」 http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/folder/844645.html



3496 東歌,相聞,神奈川県,川崎市,恋

[題詞]

多知婆奈乃 古婆乃波奈里我 於毛布奈牟 己許呂宇都久思 伊弖安礼波伊可奈

橘の 古婆の放髪が 思ふなむ 心うつくし いで吾れは行かな 

たちばなの こばのはなりが おもふなむ こころうつくし いであれはいかな
・・・・・・・・・・・
橘の古婆にいる 

あのおさげ髪の子が

思ってくれる心根がいとしい

今にも逢いにいくとも
・・・・・・・・・・・



3497 東歌,相聞,恋,譬喩,うわさ

[題詞]

可波加美能 祢自路多可我夜 安也尓阿夜尓 左宿佐寐弖許曽 己登尓弖尓思可

川上の 根白高萱 あやにあやに さ寝さ寝てこそ 言に出にしか 

かはかみの ねじろたかがや あやにあやに さねさねてこそ ことにでにしか
・・・・・・・・・・・
根の白い萱のように 

その白肌に気が怪しくなって

何度も何度も共寝したので

噂になったんだろうな
・・・・・・・・・・・
* 「ねじろ‐たかがや」根白高萱  川水などに洗われて、根が白く高く現れた萱。



3498 東歌,相聞,譬喩,女歌,恨,恋

[題詞]

宇奈波良乃 根夜波良古須氣 安麻多安礼婆 伎美波和須良酒 和礼和須流礼夜

海原の 根柔ら小菅 あまたあれば 君は忘らす 吾れ忘るれや 

[うなはらの ねやはらこすげ] あまたあれば きみはわすらす われわするれや
・・・・・・・・・・・
若いいい子が大勢いるから 

あたしを忘れたの

だけどこっちはあなたを 

絶対 忘れないからね
・・・・・・・・・・・
* 「根柔ら小菅」は「根の柔らかい小さな菅」。恋人の浮気相手。
菅は湿地などに生えるので、ここでの「海原」は「沼沢地」。



3499 東歌,相聞,譬喩,恋,誘

[題詞]

乎可尓与西 和我可流加夜能 佐祢加夜能 麻許等奈其夜波 祢呂等敝奈香母

岡に寄せ 吾が刈る萱の さね萱の まことなごやは 寝ろとへなかも 

をかによせ わがかるかやの さねかやの まことなごやは ねろとへなかも
・・・・・・・・・・・
私が岡辺で柔らかな萱を引き寄せて

刈って作った見事な隠れ家を見て

にっこりウインクしてくれたあの子

しかし簡単には

寝ようとは言わないんだよなあ
・・・・・・・・・・・
* 「さ‐ね」【さ寝】動詞「さぬ」の連用形から》寝ること。特に、男女が共寝すること。
* 「なごや」〔名〕「や」は「にこや(柔─)」などの「や」と同じく、状態性の体言を作る接尾語。なごやかな状態、または物。
* 「へな」は、打消しの助動詞。
* 転載<[国語篇(その十)『万葉集』難解句]>より「へなかも(敝奈香母)」http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/29704423.html



3500 東歌,相聞,譬喩,恋

[題詞]

牟良佐伎波 根乎可母乎布流 比等乃兒能 宇良我奈之家乎 祢乎遠敝奈久尓

紫草は 根をかも終ふる 人の子の うら愛しけを 寝を終へなくに 

[むらさきは ね]をかもをふる ひとのこの うらがなしけを [ね]ををへなくに
・・・・・・・・・・・
紫草の根はすっかり刈採り尽くされた

いとおしく想うあの娘と

契ることもなかったというのに
・・・・・・・・・・・
* 紫草の根は、最上級の貴族の衣服(紫衣)を染める染料に使われた。
* 「紫」草の「根」は、「寝」とセットで見る癖を持っていたほうがいいようだ。<むらさきの にほへる妹を 憎くあらば>も同様。


3481 東歌,相聞,作者:柿本人麻呂歌集,重出,出発,別離,恋

[題詞]

安利伎奴乃 佐恵々々之豆美 伊敝能伊母尓 毛乃伊波受伎尓弖 於毛比具流之母

あり衣の さゑさゑしづみ 家の妹に 物言はず来にて 思ひ苦しも 

[ありきぬの] さゑさゑしづみ いへのいもに ものいはずきにて おもひぐるしも
・・・・・・・・・・・
衣ずれの音も出さないようそっと

家内に黙って家をあとにした

残してきた妻への思いに心が苦しい
・・・・・・・・・・・



3482 東歌,相聞,恋,序詞

[題詞]

可良許呂毛 須蘇乃宇知可倍 安波祢杼毛 家思吉己許呂乎 安我毛波奈久尓

韓衣 裾のうち交へ 逢はねども 異しき心を 吾が思はなくに 

[からころも] すそのうちかへ あはねども けしきこころを あがもはなくに
・・・・・・・・・・・
裾の重なり合うところがあわないけれど

あなたを恋しく想う心に変わりは無いよ
・・・・・・・・・・・



3482S 東歌,相聞,うわさ,恋,異伝


[題詞]或本歌曰

可良己呂母 須素能宇知可比 阿波奈敝婆 祢奈敝乃可良尓 許等多可利都母

韓衣 裾のうち交ひ 逢はなへば 寝なへのからに 言痛かりつも 

[からころも] すそのうちかひ あはなへば ねなへのからに ことたかりつも
・・・・・・・・・・・
着物はね

すきっと着こなしていないと

たとえ寝ていようと寝ていまいと

いろいろ勘ぐられて煩いものなのよ
・・・・・・・・・・・



3483 東歌,相聞,女歌,恋,妻問い

[題詞]

比流等家波 等<家>奈敝比毛乃 和賀西奈尓 阿比与流等可毛 欲流等家也須家

昼解けば 解けなへ紐の 吾が背なに 相寄るとかも 夜解けやすけ 

ひるとけば とけなへひもの わがせなに あひよるとかも よるとけやすけ
・・・・・・・・・・・
昼間は解ことしても解けない紐が

夜にはあなたのそばにこう寄ると

何と解けやすいこと
・・・・・・・・・・・



3484 東歌,相聞,恋

[題詞]

安左乎良乎 遠家尓布須左尓 宇麻受登毛 安須伎西佐米也 伊射西乎騰許尓

麻苧らを 麻笥にふすさに 績まずとも 明日着せさめや いざせ小床に 

あさをらを をけにふすさに うまずとも あすきせさめや いざせをどこに
・・・・・・・・・・・
麻糸をそんなに笥一杯になるまで紡がなくても

明日がないではないから

さあ小床に行こうよ
・・・・・・・・・・・



3485 東歌,相聞,枕詞,恋

[題詞]

都流伎多知 身尓素布伊母乎 等里見我祢 哭乎曽奈伎都流 手兒尓安良奈久尓

剣大刀 身に添ふ妹を 取り見がね 音をぞ泣きつる 手児にあらなくに 

[つるぎたち] みにそふいもを とりみがね ねをぞなきつる てごにあらなくに
・・・・・・・・・・・
意中の女を自分の傍に置くことができなかった

声を上げて泣いてしまったぞ

幼子でもないのに
・・・・・・・・・・・
* 「取り見がね」は、自分のもとに置くことができなかった意。
* 「手児にあらなくに」幼子でもないのに。
* 「手児」は手に抱く子、幼子、手児名の「名」は愛称の接尾語。



3486 東歌,相聞,恋,逢会

[題詞]

可奈思伊毛乎 由豆加奈倍麻伎 母許呂乎乃 許登等思伊波婆 伊夜可多麻斯尓

愛し妹を 弓束並べ巻き もころ男の こととし言はば いや勝たましに 

かなしいもを ゆづかなべまき もころをの こととしいはば いやかたましに
愛しのおまえを
弓束に籐をしっかり巻くように
まき寝しているが
恋敵がおれに匹敵するというなら
もっと強く抱きしめてもいいのだよ
* 「かなし・いも・を」愛おしい娘を
* 「を」(格助詞)
・動作のおよぶ対象を示す。・・を。
・動作の起点・経過する場所・経過する時間等を示す。・・を。
・離別の対象を示す。・・から。 ・・に。
・動作の相手を示す。・・と。
・主語となる語に付く。
* 「ゆづか」《「ゆつか」とも》矢を射るとき)、左手で弓を握る部分。ゆみづか。また、そこに巻く革など。
* 「なべ 並べ」(接助)幾重にも。
* 「巻き」枕き(係る)
* 「もころ」【如/若】《上代語》同じような状態。よく似た状態。連体修飾語を受ける形で、副詞的に用いられる。
* 「もころ‐お」【如己男】自分と同等の男。自分に匹敵する相手。
* 「いや」(接頭)強意。もっと、ますます。
* 「かた・まし・に」「かた」は自動詞タ行四段「勝つ」の未然形。
* 「まし」は、推量・意志・反実仮想の助動詞。
* 「に」逆接条件を示すことも。「〜のに」。



3487 東歌,相聞,恋

[題詞]

安豆左由美 須恵尓多麻末吉 可久須酒曽 宿莫奈那里尓思 於久乎可奴加奴

梓弓 末に玉巻き かくすすぞ 寝なななりにし 奥をかぬかぬ 

[あづさゆみ] すゑにたままき かくすすぞ ねなななりにし おくをかぬかぬ
・・・・・・・・・・・
梓弓の端に玉を巻いて飾るように大切にして

共に寝ることもないままにした

将来のことを考えに考えて
・・・・・・・・・・・
* なな〔上代東国方言。上代における打ち消しの助動詞「ぬ」の未然形「な」の重複したもの〕…ないで。…ずに。
* 「奥」 は、将来。
* 「かぬ」先のことを考える。
* 「かぬ」(接尾)し続けることが出来ない。



3488 東歌,相聞,うわさ,不安,恋

[題詞]

於布之毛等 許乃母登夜麻乃 麻之波尓毛 能良奴伊毛我名 可多尓伊弖牟可母

生ふしもと この本山の ましばにも 告らぬ妹が名 かたに出でむかも 

[おふしもと] このもとやまの ましばにも のらぬいもがな かたにいでむかも
・・・・・・・・・・・
この本山の真柴にさえ

女の名は告げないのに

占いに現れたらどうしよう
・・・・・・・・・・・
* 「かた」 占いに現れたしるし



3489 東歌,相聞,枕詞,恋

[題詞]

安豆左由美 欲良能夜麻邊能 之牙可久尓 伊毛呂乎多弖天 左祢度波良布母

梓弓 欲良の山辺の 茂かくに 妹ろを立てて さ寝処払ふも 

[あづさゆみ] よらのやまへの しげかくに いもろをたてて さねどはらふも
・・・・・・・・・・・
欲良の山辺の茂みに

せがむ妻を立たせて草を払

即席の寝床をこしらえた
・・・・・・・・・・・



3490 東歌,相聞,人目,うわさ,枕詞,恋,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞]

安都左由美 須恵波余里祢牟 麻左可許曽 比等目乎於保美 奈乎波思尓於家礼

梓弓 末は寄り寝む まさかこそ 人目を多み 汝をはしに置けれ 

[あづさゆみ] すゑはよりねむ まさかこそ ひとめをおほみ なをはしにおけれ
・・・・・・・・・・・
あとでは寄り添って寝るのだが

今は人目が多いから悟られないように

君を端っこにおいておくんだよ
・・・・・・・・・・・


3471 東歌,相聞,恋,女歌

[題詞]

思麻良久波 祢都追母安良牟乎 伊米能未尓 母登奈見要都追 安乎祢思奈久流

しまらくは 寝つつもあらむを 夢のみに もとな見えつつ 吾を音し泣くる 

しまらくは ねつつもあらむを いめのみに もとなみえつつ あをねしなくる
・・・・・・・・・・・
しばらく微寝れば

しきりに夢に見えて

うつつに逢へぬ 

定めを知れと

わたしを泣かすのね 
・・・・・・・・・・・



3472 東歌,相聞,恨,恋

[題詞]

比登豆麻等 安是可曽乎伊波牟 志可良<婆>加 刀奈里乃伎奴乎 可里弖伎奈波毛

人妻と あぜかそを言はむ しからばか 隣の衣を 借りて着なはも 

ひとづまと あぜかそをいはむ しからばか となりのきぬを かりてきなはも
・・・・・・・・・・・
他人の妻だとうだうだ言うな 

隣から着物を借りて 

それを着ないで済ます男は

いないだろうぜ 
・・・・・・・・・・・



3473 東歌,相聞,群馬県,高崎市,栃木県,佐野市,旅,恋,序詞

[題詞]

左努夜麻尓 宇都也乎能登乃 等抱可騰母 祢毛等可兒呂賀 於<母>尓美要都留

左努山に 打つや斧音の 遠かども 寝もとか子ろが 面に見えつる 

[さのやまに うつやをのとの とほかども] ねもとかころが おもにみえつる
・・・・・・・・・・・
佐野山で打つ斧の音が遠ざかるように 

故郷は遠ざかる

共に寝起きしたあの娘の面影ばかり思われる 
・・・・・・・・・・・



3474 東歌,相聞,旅,別離,防人


[題詞]

宇恵太氣能 毛登左倍登与美 伊R弖伊奈婆 伊豆思牟伎弖可 伊毛我奈氣可牟

植ゑ竹の 本さへ響み 出でて去なば いづし向きてか 妹が嘆かむ 

[うゑだけの] もとさへとよみ いでていなば いづしむきてか いもがなげかむ
・・・・・・・・・・・
竹林の根元まで響くように大騒ぎして

私が旅立った後で

妻はさぞ嘆き悲しむだろう

どこを向いて妻は嘆くことだろう
・・・・・・・・・・・
* 「植竹」は竹林のこと。



3475 東歌,相聞,女歌,別離

[題詞]

古非都追母 乎良牟等須礼杼 遊布麻夜万 可久礼之伎美乎 於母比可祢都母

恋ひつつも 居らむとすれど 遊布麻山 隠れし君を 思ひかねつも 

こひつつも をらむとすれど ゆふまやま かくれしきみを おもひかねつも
・・・・・・・・・・・
恋い慕いながらあなたはきっと来ると

じっとして居ようとしても 

由布岳に隠れてしまったあなたを思うと

もうどうにもならないのですね
・・・・・・・・・・・
*まなび http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31849032.html
* 「ひとりしゆく」
http://blogs.yahoo.co.jp/sirius0426jp/9135986.html?vitality
 


サ3476 東歌,相聞,旅,恋

[題詞]

宇倍兒奈波 和奴尓故布奈毛 多刀都久能 努賀奈敝由家婆 故布思可流奈母

うべ子なは 吾ぬに恋ふなも 立と月の ぬがなへ行けば 恋しかるなも 

うべこなは わぬにこふなも たとつくの ぬがなへゆけば こふしかるなも
・・・・・・・・・・・
いかにも私に恋焦がれているだろう

月が細くなり消えてゆくのを見ていれば

さぞ心細く 私を恋しがっているだろうが

心配するな私の心は月とはちう

私の君への恋心は

月のようには変わらないから

(とはいえ遠国赴任地は月より遠い)  
・・・・・・・・・・・
* 「うべ」は、肯定の意を表す語。いかにも。
* 「子な」は、上代東国方言、「子等」の訛り。
* 「わぬ」は、一人称の人代名詞。「われ」の上代東国方言。
* 「なも」[助動][○|○|なも|なも|○|○]《上代東国方言》動詞・動詞型活用語の終止形に付く。推量の助動詞「らむ」に同じ。現在推量・原因推量 上にくる語の活用形 終止形(ラ変は連体形)。・・・ているであろう。・・・しているだろう。
* 「たとつくの」月の時が流れ経つと
* 「立と」は、上代東国方言、「立つと・経つと」
* 「ぬがなへ行けば」奴我奈敝由家杼・「我(わぬ)がゆのへは」和奴賀由乃敝波、
或本歌末句曰、奴我奈敝由家杼 和努賀由乃敝波
 (或る本の歌の末の句に曰はく、流(のが)なへ行(ゆ)けど 吾(わぬ)が行(ゆ)のへば)
 時(月)が流れていくのに、私が逢いに行かなければ
《我が恋心は月とは違い、幸いにも・広く・確固と・なっている・ことは疑いもなく・明らかだ。》
* 我ゆか〈のへ〉ば、「のへ」上代東国語。「なへ」の転〕上代東国語の打ち消しの助動詞「なふ」の連体形・已然形「なへ」に同じ。
* 「こふし」は、「こひし」の上代東国方言〕恋しい。
* 「かる」 形容詞の語幹に付いて動詞化する。
* 「ぬながへゆけど」(奴我奈敝由家杼)」は「流れて行くけれども」の意。<[国語篇(その十)『万葉集』難解句]>参照。http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#584ぬながへゆけど(奴我奈敝由家杼)



3476S 東歌,相聞,恋,異伝

[題詞]或本歌末句曰

奴我奈敝由家杼 和<奴><由賀>乃敝波

ぬがなへ行けど 吾ぬ行がのへば 

ぬがなへゆけど わぬゆがのへば
・・・・・・・・・・・
過ぎてゆくが 私が行けばよいのだが

行きたくても わたしは行けない
・・・・・・・・・・・



3477 東歌,相聞,静岡県,蒲原町,旅,恋

[題詞]

安都麻道乃 手兒乃欲婢佐可 古要弖伊奈婆 安礼波古非牟奈 能知波安比奴登母

東路の 手児の呼坂 越えて去なば 吾れは恋ひむな 後は逢ひぬとも 

あづまぢの てごのよびさか こえていなば あれはこひむな のちはあひぬとも
・・・・・・・・・・・
東国へ行く道にある手児の呼坂を

あなたが越えてしまったら

私は恋しく辛い日々を過ごすでしょう

旅立ったあなたと

いつか再会できるとしても
・・・・・・・・・・・



3478 東歌,相聞,群馬県,白根山,石川県,白山,うわさ,恋

[題詞]

等保斯等布 故奈乃思良祢尓 阿抱思太毛 安波乃敝思太毛 奈尓己曽与佐礼

遠しとふ 故奈の白嶺に 逢ほしだも 逢はのへしだも 汝にこそ寄され 

とほしとふ こなのしらねに あほしだも あはのへしだも なにこそよされ
・・・・・・・・・・・
遠いという故奈の白嶺で

逢うときも

逢わないときも

おまえとの噂は立てられるよ
・・・・・・・・・・・
* 「故奈の白嶺」は、越の白峰、白山説、 越中の立山説、 上野国吾妻郡の白根山説、その他あって定説はない。
* 「のえ のへ」(助動)〔上代東国語。「なへ」の転〕打ち消しの助動詞「なふ」の連体形・已然形「なへ」に同じ。




3479 東歌,相聞,栃木県,佐野市,赤見町,恋

[題詞]

安可見夜麻 久左祢可利曽氣 安波須賀倍 安良蘇布伊毛之 安夜尓可奈之毛

安可見山 草根刈り除け 逢はすがへ 争ふ妹し あやに愛しも 

あかみやま くさねかりそけ あはすがへ あらそふいもし あやにかなしも
・・・・・・・・・・・
赤見山の草の根を一緒に刈って

逢引の場所まで作ったのに 

身を許さなかったあの子

その愛しさよ
・・・・・・・・・・・
* 「草刈り」は村の共同作業、人々が知合い好意もうまれよう。デートの名所、赤見山で草を刈り、あとで逢ってくれた。承知のはずが、なぜか女は抵抗する。でもそこがまた何とも可愛い。そういって情感を<あやに>と歌っている。
* 「あはすがへ」、「荒れ地の草を刈り開いた空き地」
* 「あらそふ」「その空き地への道を指し示す妹」



サ3480 東歌,相聞,防人,恋,出発,別離

[題詞]

於保伎美乃 美己等可思古美 可奈之伊毛我 多麻久良波奈礼 欲太知伎努可母

大君の 命畏み 愛し妹が 手枕離れ 夜立ち来のかも 

おほきみの みことかしこみ かなしいもが たまくらはなれ よだちきのかも
・・・・・・・・・・・
防人赴任の

大君のご命令をうけて

愛しい妻との添い寝の床をはなれ

旅立ってきたのは

ま夜中のことだったなあ
・・・・・・・・・・・


3461 東歌,相聞,女歌,恋,妻問い,恨

[題詞]

安是登伊敝可 佐宿尓安波奈久尓 真日久礼弖 与比奈波許奈尓 安家奴思太久流

あぜと言へか さ寝に逢はなくに ま日暮れて 宵なは来なに 明けぬしだ来る 

あぜといへか さねにあはなくに まひくれて よひなはこなに あけぬしだくる
・・・・・・・・・・・
どういうことなの

宵には来ないで

一緒に寝る時間がないじゃない

夜明けごろにのこのこやってきて
・・・・・・・・・・・



サ3462 東歌,相聞,枕詞,恋

[題詞]

安志比奇乃 夜末佐波妣登乃 比登佐波尓 麻奈登伊布兒我 安夜尓可奈思佐

あしひきの 山沢人の 人さはに まなと言ふ子が あやに愛しさ 

[あしひきの] やまさはびとの ひとさはに] まなといふこが あやにかなしさ
・・・・・・・・・・・
山の沢辺に住んでいる大勢の人たちが

かわいい子だと評判にしているあの娘は

まったくこの上もなく可愛く恋しいことだなあ
・・・・・・・・・・・
* 「山沢人は、」山の沢辺に住む人。
* 「の」は、格助詞 主格・修飾格。体言に付いて、それが主語であることを示す。「が」と異なるのは、従属節・疑問文・詠嘆文のみならず、終止形で言い切る文の主語ともなる。また「が」が主として人を指す語を承けるのに対し、「の」は語を選ばずに承ける。
* 「さは」<やまさはびとの ひとさはに>の重複的な言い回しは、単に「山沢人」と「さはに・人が沢山」でいいか。
* 「まな(麻奈)」は、「愛子(まなご)」の「まな(愛らしい)」とも、本来禁止の副詞と解する説や、予知霊力を持っている女子のこととも諸説あり。
* 「ま・な」 (愛・真) (名) かわいい子。いとしい女。
(接頭)で、 人を表す名詞に付いて、大切に育てている、特別にかわいがっているなどの意を表す。
* 「あやに」は、感動詞「あや」に、格助詞「に」のついたもの。なんともいいようがなく・驚くほど。また、わけもなく。
* 「愛しさ」の「さ」は、形容詞を名詞に変える。愛しさ、楽しさ、など。また詠嘆の接尾語。連体中止のような役目を持つ。「〜〜なことだなあ」という意味。






3463 東歌,相聞,人目,うわさ,恋,女歌

[題詞]

麻等保久能 野尓毛安波奈牟 己許呂奈久 佐刀乃美奈可尓 安敝流世奈可母

ま遠くの 野にも逢はなむ 心なく 里のみ中に 逢へる背なかも 

まとほくの のにもあはなむ こころなく さとのみなかに あへるせなかも
・・・・・・・・・・・
人気ない遠くの野で逢ってほしかった

思いやりもなく

こんな人里の真ん中で逢ってくださる あなたなのね
・・・・・・・・・・・



3464 東歌,相聞,恋,女歌

[題詞]

比登其登乃 之氣吉尓余里弖 麻乎其母能 於夜自麻久良波 和波麻可自夜毛

人言の 繁きによりて まを薦の 同じ枕は 吾はまかじやも 

ひとごとの しげきによりて まをごもの おやじまくらは わはまかじやも
・・・・・・・・・・・
周囲の噂がきびしいから

真麻で作ったおそろいの枕は

私は使いません
・・・・・・・・・・・



3465 東歌,相聞,恋,女歌

[題詞]

巨麻尓思吉 比毛登伎佐氣弖 奴流我倍尓 安杼世呂登可母 安夜尓可奈之伎

高麗錦 紐解き放けて 寝るが上に あどせろとかも あやに愛しき 

[こまにしき] ひもときさけて ぬるがへに あどせろとかも あやにかなしき
・・・・・・・・・・・
高麗錦の下着の紐を解き放ち

二人が結ばれている上に

さらにどうすればよいのかしら

この男のことが

無性にいとしくてたまらない
・・・・・・・・・・・



3466 東歌,相聞,うわさ,恋,女歌

[題詞]

麻可奈思美 奴礼婆許登尓豆 佐祢奈敝波 己許呂乃緒呂尓 能里弖可奈思母

ま愛しみ 寝れば言に出 さ寝なへば 心の緒ろに 乗りて愛しも 

まかなしみ ぬればことにづ さねなへば こころのをろに のりてかなしも
・・・・・・・・・・・
好きなあの子と寝れば噂にある

かといって一緒に寝ないと

心を押しつぶすほど

愛しくてたまらないの
・・・・・・・・・・・



3467 東歌,相聞,妻問い,恋

[題詞]

於久夜麻能 真木乃伊多度乎 等杼登之弖 和<我>比良可武尓 伊利伎弖奈左祢

奥山の 真木の板戸を とどとして 吾が開かむに 入り来て寝さね 

[おくやまの] まきのいたとを とどとして わがひらかむに いりきてなさね
・・・・・・・・・・・
ヒノキの板戸を叩いて

私が戸を開けたら

さっと中に入ってきて

寝てくださいな
・・・・・・・・・・・



3468 東歌,相聞,うわさ,恋,神祭り

[題詞]

夜麻杼里乃 乎呂能<波>都乎尓 可賀美可家 刀奈布倍美許曽 奈尓与曽利鶏米

山鳥の 峰ろのはつをに 鏡懸け 唱ふべみこそ 汝に寄そりけめ 

[やまとりの] をろのはつをに かがみかけ となふべみこそ なによそりけめ
・・・・・・・・・・・
山鳥の尾のように長い初麻を鏡にかけて

唱えて占ったからこそ

今こうしてあなたと寄り添えるのよ
・・・・・・・・・・・
* 「はつを(初麻)」は、麻でつくった繊維を苧(を)といい、初めての苧の意。苧に鏡をかけるという民間信仰の慣習。



3469 東歌,相聞,女歌,妻問い,恋

[題詞]

由布氣尓毛 許余比登乃良路 和賀西奈波 阿是曽母許与比 与斯呂伎麻左奴

夕占にも 今夜と告らろ 我が背なは あぜぞも今夜 寄しろ来まさぬ 

ゆふけにも こよひとのらろ わがせなは あぜぞもこよひ よしろきまさぬ
・・・・・・・・・・・
夕べの占いにも今夜来ると告げられた 

なのに夫はどうして今夜来られないの
・・・・・・・・・・・



3470 東歌,相聞,女歌,恋,作者:柿本人麻呂歌集

[題詞]

安比見弖波 千等世夜伊奴流 伊奈乎加<母> 安礼也思加毛布 伎美末知我弖尓

相見ては 千年やいぬる いなをかも 吾れやしか思ふ 君待ちがて 

あひみては ちとせやいぬる いなをかも あれやしかもふ きみまちがてに
・・・・・・・・・・・
逢ってから千年も経つみたい

違うというの?

自分だけがそんな風に思うのだろうか

貴方を待ちわびて
・・・・・・・・・・・


3451 東歌,雑歌,女歌,宴席

[題詞]

左奈都良能 乎可尓安波麻伎 可奈之伎我 <古>麻波多具等毛 和波素登毛波自

左奈都良の 岡に粟蒔き 愛しきが 駒は食ぐとも 吾はそとも追じ 

さなつらの をかにあはまき かなしきが こまはたぐとも わはそともはじ
・・・・・・・・・・
左奈都良の丘に粟を蒔いて

恋人の馬がそれを食べても

私はそれを外へと追うことはすまい
・・・・・・・・・・
* [左奈都良]が「酒列」であれば、恋人または夫の馬がただの馬ではなく、「ヤンサマチ競馬」に参加するための訓練中のものであったという解釈もできる。
「左奈都良」は「さかつら=酒列」だとする学者もいる。加茂真渕、釈超空らである。
「酒列」は「ヤンサマチ競馬」のゴールの地名である。古来四月九日の『まつり』の日に旧地方制四十八ヶ村の各鎮守の神輿がそれぞれの氏子民によって、磯崎浦ヘ『やんさこら』の掛け声も勇ましく繰り出したことに由来すると言われる。
この祭りには、神輿が御渡りする『浜降り(磯出祭礼)』の神事と、村々の名馬が村松大神宮から酒列磯前神社までの二里八町を競走し、豊年満作を祈った神事『競馬祭』の二つの神事があります。



サ3452東歌,雑歌,野焼き

[題詞]

於毛思路伎 野乎婆奈夜吉曽 布流久左尓 仁比久佐麻自利 於非波於布流我尓

おもしろき 野をばな焼きそ 古草に 新草交り 生ひは生ふるがに 

おもしろき のをばなやきそ ふるくさに にひくさまじり おひはおふるがに
・・・・・・・・・・
趣き深い

この野を焼きなさるな

ほら 古草の中から

新草が生えてきているでしょう
・・・・・・・・・・
* 「おも‐しろ」おもしろ・ し[ク]は、目の前が明るくなる感じをいった語。興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。
* 「き」は、動作・状態が完了して、その結果が存在している意。
* 「な〜そ」は、禁止(〜)。
* 「にい‐くさ〔にひ‐〕」【新草】 春先に芽を出した草。若草。
* 「がに」は、理由・目的の接続助詞。動詞・助動詞の連体形に付く。
  〜するだろうから、〜するように。
* 普通文末に用いる。「がに」は「がね」の上代東国方言で、平安時代には京でも用いられた。




3453 東歌,雑歌,枕詞,望郷

[題詞]

可是<能>等能 登抱吉和伎母賀 吉西斯伎奴 多母登乃久太利 麻欲比伎尓家利

風の音の 遠き吾妹が 着せし衣 手本のくだり まよひ来にけり 

[かぜのとの] とほきわぎもが きせしきぬ たもとのくだり まよひきにけり
・・・・・・・・・・
遠い郷里に残した妻が

最後に着せてくれた衣の

袂のほうが

だんだんとほつれてきたよ
・・・・・・・・・・



3454 東歌,雑歌,恋

[題詞]

尓波尓多都 安佐提古夫須麻 許余比太尓 都麻余之許西祢 安佐提古夫須麻

庭に立つ 麻手小衾 今夜だに 夫寄しこせね 麻手小衾 

[にはにたつ] あさでこぶすま こよひだに つまよしこせね あさでこぶすま
・・・・・・・・・・
庭に植えた麻でつくった麻手小衾よ

今夜だけでも愛しいあの人を呼んでくれないか

ね 呼び寄せてよ 麻手小衾
・・・・・・・・・・
* 「ふすま」衾。 布などで長方形に作り、寝るときにからだに掛ける夜具。綿を入れるのを普通とするが、袖や襟を加えたものもある。現在の掛け布団にあたる。



相聞




3455 東歌,相聞,女歌,恋

[題詞]相聞

古非思家婆 伎麻世和我勢古 可伎都楊疑 宇礼都美可良思 和礼多知麻多牟

恋しけば 来ませ吾が背子 垣つ柳 末摘み枯らし 吾れ立ち待たむ 

こひしけば きませわがせこ かきつやぎ うれつみからし われたちまたむ
・・・・・・・・・・
恋しいとおっしゃるなら

会いに来てくださいな

愛しいあなた

来る 来ない

垣根の柳の若芽を摘み枯らすまで 

私は立ち続けてお待ちしています
・・・・・・・・・・
心に残る名言、和歌・俳句鑑賞
https://blogs.yahoo.co.jp/sakuramitih15/40722237.html?vitality



3456 東歌,相聞,うわさ,恋,女歌

[題詞]

宇都世美能 夜蘇許登乃敝波 思氣久等母 安良蘇比可祢弖 安乎許登奈須那

うつせみの 八十言のへは 繁くとも 争ひかねて 吾を言なすな 

[うつせみの] やそことのへは しげくとも あらそひかねて あをことなすな
・・・・・・・・・・
世間でどんなにうるさく噂されても

根負けして私のことを云ってはいけません
・・・・・・・・・・



3457 東歌,相聞,恋愛,別離,女歌

[題詞]

宇知日佐須 美夜能和我世波 夜麻<登>女乃 比射麻久其登尓 安乎和須良須奈

うちひさす 宮の吾が背は 大和女の 膝まくごとに 吾を忘らすな 

[うちひさす] みやのわがせは やまとめの ひざまくごとに あをわすらすな
・・・・・・・・・・
宮廷に出仕する夫が

大和の女の膝を枕にすることも

でも 里の妻を忘れないでください
・・・・・・・・・・




3458 東歌,相聞,恋,後朝,女歌

[題詞]

奈勢能古夜 等里乃乎加恥志 奈可太乎礼 安乎祢思奈久与 伊久豆君麻弖尓

汝背の子や 等里の岡道し なかだ折れ 吾を音し泣くよ 息づくまでに 

なせのこや とりのをかちし なかだをれ あをねしなくよ いくづくまでに
・・・・・・・・・・
愛しいあなたよ

等里の岡道が途中で折れ曲っているから

お姿が見えなくなる

その時には

私は声をあげて泣いています

息が苦しくなるほどに
・・・・・・・・・・
* 「汝」対象の人代名詞。おまえ、なんじ。なれ。
* 「せのこ」の「せ」は、女性から男性に親しんで呼ぶ語。「せの」は、敬称、深い情愛込める。「こ」は、人を親しんでいう語。
* 「や」は、体言に付いて呼びかけの対象であることを示す。
* 「し」は、副助詞。種々の語を承け、それを強く指示して強調する。
* 「なかだをれ」は、道が折れ曲がって、そのまま行けば道の壁にぶつかるから。
* 「等里の岡道」未詳。
* 「息づく」嗚咽、吐き出す。
* 「まで」程度をあらわす。「〜ほど」「〜ほどまで」の意。
* 「に」は、動作作用の結果、変化、・・と。




3459 東歌,相聞,女歌,作業歌,恋

[題詞]

伊祢都氣波 可加流安我<手>乎 許余比毛可 等能乃和久胡我 等里弖奈氣可武

稲つけば かかる吾が手を 今夜もか 殿の若子が 取りて嘆かむ 

いねつけば かかるあがてを こよひもか とののわくごが とりてなげかむ
・・・・・・・・・・
稲をついてあかぎれのした私の手を

今夜も大家の若様が手にとって

かわいそうと嘆いてくださるかしら 
・・・・・・・・・・
* 「殿」; 庶民は竪穴住居に住んでいたが、富裕層は高床の屋敷に住んでいたことから。




3460 東歌,相聞,女歌,新嘗,咎め歌,妻問い

[題詞]

多礼曽許能 屋能戸於曽夫流 尓布奈未尓 和<我>世乎夜里弖 伊波布許能戸乎

誰れぞこの 屋の戸押そぶる 新嘗に 吾が背を遣りて 斎ふこの戸を 

たれぞこの やのとおそぶる にふなみに わがせをやりて いはふこのとを
・・・・・・・・・・
誰ですか家の戸を押し揺するのは

新嘗の祭りに夫さえ送り出し

潔斎して神様を祭るこの家の戸を押すのは
・・・・・・・・・・
* 「ぞ」は、体言、活用語の連体形、助詞などに付く。疑問語と共に用いて、疑問の意を表す、疑問語の下に付いて、不定の意を表すこともある。
* 「にふなみ」の原形は、「にひ(新)」の「あへ(饗)」で、新穀を祝う神事かとされている。


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