ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・万葉集(〃)

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3811雑歌,枕詞,恋,女歌,歌物語,伝承,作者:車持娘子

[題詞]戀夫君歌一首[并短歌]

・・・・・・・・・・・
左耳通良布ーさ丹つらふー[さにつらふ]ー
君之三言等ー君がみ言とーきみがみこととー聞きたかった愛しの言葉
玉梓乃ー玉梓のー[たまづさの]ー
使毛不来者ー使も来ねばーつかひもこねばー伝える使いも来ないので
憶病ー思ひ病むーおもひやむー恋はつのり患う
吾身一曽ー吾が身ひとつぞーあがみひとつぞー私の身はただ独り
千<磐>破ー[ちはやぶる]ー
神尓毛莫負ー神にもな負ほせーかみにもなおほせー神のせいにはしない
卜部座ー占部据ゑー[うらへすゑ]ー
龜毛莫焼曽ー亀もな焼きそーかめもなやきそー亀の甲羅を焼くなどもしない
戀之久尓ー恋ひしくにーこひしくにー片恋するのが
痛吾身曽ー痛き我が身ぞーいたきあがみぞー痛ましい私の身の定め
伊知白苦ー[いちしろく]ー
身尓染<登>保里ー身にしみ通りーみにしみとほりー身に染み透り
村肝乃ー[むらきもの]ー
心砕而ー心砕けてーこころくだけてー心は張り裂けて
将死命ー死なむ命ーしなむいのちー死にいくこの命
尓波可尓成奴ーにはかになりぬー病は悪化していく
今更ー今さらにーいまさらにー今さらに
君可吾乎喚ー君か吾を呼ぶーきみかわをよぶー貴方は私を呼ぶでしょうか
足千根乃ー[たらちねの]ー
母之御事歟ー母のみ言かーははのみことかー母の行いか
百不足ー百足らずー[ももたらず]ー
八十乃衢尓ー八十の衢にーやそのちまたにー多くの辻に
夕占尓毛ー夕占にもー[ゆふけにも]ー
卜尓毛曽問ー占にもぞ問ふーうらにもぞとふー夕占に願を占う
應死吾之故ー死ぬべき吾がゆゑーしぬべきわがゆゑー死に行く私なのに
・・・・・・・・・・・
[左注](右傳云 時有娘子 姓車持氏也 其夫久逕年序不作徃来 于時娘子係戀傷心 沈臥痾エ 痩羸日異忽臨泉路 於是遣使喚其夫君来 而乃歔欷流な口号斯歌 登時逝歿也)



3812雑歌,恋情,女歌,歌物語,伝承,作者:車持娘子

[題詞](戀夫君歌一首[并短歌])反歌

卜部乎毛 八十乃衢毛 占雖問 君乎相見 多時不知毛

占部をも 八十の衢も 占問へど 君を相見む たどき知らずも 

うらへをも やそのちまたも うらとへど きみをあひみむ たどきしらずも
・・・・・・・・・・・
卜の斎瓮にも

八十辻占にも問うが

貴方に直逢うことすらの

手段を知ることがない
・・・・・・・・・・・




3813雑歌,歌物語,女歌,枕詞,恋,伝承,作者:車持娘子

[題詞](戀夫君歌一首[并短歌])或本反歌曰

吾命者 惜雲不有 散<追>良布 君尓依而曽 長欲為

吾が命は 惜しくもあらず さ丹つらふ 君によりてぞ 長く欲りせし 

わがいのちは をしくもあらず [さにつらふ] きみによりてぞ ながくほりせし
・・・・・・・・・・・
私の命は惜しくはありません

ただ 貴方に寄り添えてさえいれば

長く居たいと思うだけです
・・・・・・・・・・・
* 「さに‐つらう」[枕]「つらう」は「つら(頬)」の動詞化という。
赤く照り映える意で、「色」「黄葉(もみち)」「君」「妹」などにかかる。




3814雑歌,求婚,譬喩,歌物語,伝承,恋

[題詞]贈歌一首

真珠者 緒絶為尓伎登 聞之故尓 其緒復貫 吾玉尓将為

白玉は 緒絶えしにきと 聞きしゆゑに その緒また 貫き吾が玉にせむ 

しらたまは をだえしにきと ききしゆゑに そのをまたぬき わがたまにせむ
・・・・・・・・・・・
真珠を繋いでいた緒が切れてしまった

そう聞きました

その切れた緒をまた真珠に通して

改めて私の宝玉にしたいときめました
・・・・・・・・・・・




3815雑歌,譬喩,歌物語,伝承,恋

[題詞]答歌一首

白玉之 緒絶者信 雖然 其緒又貫 人持去家有

白玉の 緒絶えはまこと しかれども その緒また貫き 人持ち去にけり 

しらたまの をだえはまこと しかれども そのをまたぬき ひともちいにけり
・・・・・・・・・・・
白玉の緒が切れたことは本当です

でも その切れた緒を白玉に通しなおして

他の人がすでに持ち去りました
・・・・・・・・・・・
[左注]右傳云 時有娘子 夫君見棄改適他氏也 于時或有壮士 不知改適此歌贈 遣請誂於女之父母者 於是父母之意壮士未聞委曲之旨 乃作彼歌報送以顕改適之縁也



3816雑歌,作者:穂積皇子,宴席,伝承,誦詠,戯笑,恋

[題詞]穂積親王御歌一首

家尓有之 櫃尓カ刺 蔵而師 戀乃奴之 束見懸而

家にありし 櫃にかぎさし 蔵めてし 恋の奴の つかみかかりて 

いへにありし ひつにかぎさし をさめてし こひのやつこの つかみかかりて
・・・・・・・・・・・
家に置いてある櫃に鍵を掛けて

人目を避けて大切に納めておいた宝玉を

恋の奴が掴みかかってきて奪い去ったのだ
・・・・・・・・・・・
[左注]右歌一首穂積親王宴飲之日酒酣之時好誦斯歌以為恒賞也
【名歌鑑賞10】森 明著
<万葉集巻二:203歌・(巻八:1513・1514歌)・(巻十六:3816歌)>
http://f-kowbow.com/ron/meika10/meika10.htm





3817雑歌,作者:河村王,誦詠,伝承,宴席,戯笑,恋

[題詞]

可流羽須波 田廬乃毛等尓 吾兄子者 二布夫尓咲而 立麻為所見 [田廬者多夫世<反>]

かるうすは 田ぶせの本に 吾が背子は にふぶに笑みて 立ちませり見ゆ 
[田廬者多夫世<反>]

かるうすは たぶせのもとに わがせこは にふぶにゑみて たちませりみゆ
・・・・・・・・・・・
二人で搗く唐臼(からうす)は

田圃の伏屋の中にあると

愛しい貴方が

にこにこと微笑みながら

立っておいでになるのが見える
・・・・・・・・・・・

[左注](右歌二首河村王宴居之時弾琴而即先誦此歌以為常行也)



3818雑歌,作者:河村王,誦詠,伝承,宴席,戯笑,恋

[題詞]

朝霞 香火屋之下乃 鳴川津 之努比管有常 将告兒毛欲得

朝霞 鹿火屋が下の 鳴くかはづ 偲ひつつありと 告げむ子もがも 

[あさかすみ] かひやがしたの なくかはづ しのひつつありと つげむこもがも
・・・・・・・・・・・
朝霞の中

鹿火屋の下で鳴く蛙の啼き声のように

しのひつ しのひつと

忍びあう恋を告げてくれる

そんな娘がほしいなあ
・・・・・・・・・・・

[左注]右歌二首河村王宴居之時弾琴而即先誦此歌以為常行也



サ3819雑歌,作者:小鯛王,宴席,奈良,譬喩,恋,伝承,誦詠,置始工,置始多久美,遊行女婦

[題詞]
[左注](右歌二首小鯛王宴居之日取琴 登時必先吟詠此歌也 其小鯛王者更名置始多久美斯人也)

暮立之 雨打零者 春日野之 草花之末乃 白露於母保遊

夕立の 雨うち降れば 春日野の 尾花が末の 白露思ほゆ 

ゆふだちの あめうちふれば かすがのの をばながうれの しらつゆおもほゆ
・・・・・・・・・・・
夕立の雨が打ち降ったあとに

春日の野の尾花の穂先につく白露が

また物を思わせることよ
・・・・・・・・・・・
* 「夕立ち」は、タ行四段活用動詞「夕立つ」の連用形が名詞化したもの。* 「うち」は接頭語。
* 「降れ」は、ラ行四段活用動詞「降る」の已然形。
* 「ば」偶然条件の接続助詞。 
* 「尾花」は、すすきの花穂。
* 「末(うれ)」は、木の枝や草の葉の先端。
* 「思ほゆ」は、ハ行四段活用動詞「思ふ」の未然形。
* 「ゆ」は、(上代語)自発の助動詞。「おもはゆ」の転。 



3820雑歌,作者:小鯛王,置始工,置始多久美,誦詠,宴席,伝承,遊行女婦,恋

[題詞]

夕附日 指哉河邊尓 構屋之 形乎宜美 諾所因来

夕づく日 さすや川辺に 作る屋の 形をよろしみ うべ寄そりけり 

ゆふづくひ さすやかはへに つくるやの かたをよろしみ うべよそりけり
・・・・・・・・・・・
夕日が射している川辺の

そこにに建っている家の形が美しい

まことに 求めるものがあるのか

自然に引き寄せられることだなあ
・・・・・・・・・・・
[左注]右歌二首小鯛王宴居之日取琴 登時必先吟詠此歌也 其小鯛王者更名置始多久美斯人也
右の歌二首、小鯛王(こだひのおほきみ)、宴居の日に、 琴を取れば登時(そのとき)必ず先ず、この歌を吟詠す。 その小鯛王は更(また)の名を置始多久美(おきそめの たくみ)といふ、この人なり。


3803雑歌,歌物語,密会,婚姻,女歌,人目,作者:娘子

[題詞]
昔者有壮士與美女也[姓名未詳] 昔 男と美女がいた(その姓名は未だ詳しからず)。
不告二親竊為交接  両親に告げないまま密かに男女の交わりを行った
於時娘子之意欲親令知 その時、娘は親に二人の関係を知らせようと思った
因作歌詠送與其夫 そこで、歌を作ってその恋人に送り与えた

歌曰

隠耳 戀<者>辛苦 山葉従 出来月之 顕者如何

隠りのみ 恋ふれば苦し 山の端ゆ 出でくる月の 顕さばいかに 

こもりのみ こふればくるし やまのはゆ いでくるつきの あらはさばいかに
・・・・・・・・・・・
親に隠れて貴方に恋しているので苦しい

山の端から出てくる月のように

あからさまに知らせたらどうでしょうか
・・・・・・・・・・・

 

3804雑歌,歌物語,悲別,兵庫,挽歌,恨

[題詞]
昔者有壮士 昔 男がいた
新成婚礼也 新たに婚礼を行った
未經幾時忽為驛使被遣遠境  未だ幾らも経たない時に、急に駅使に任じられ、遠境に遣わされた
公事有限會期無日 公の仕事には規定があり私事で会う日は無い
於是娘子 そこで娘は
感慟悽愴沈臥疾エ 嘆き悲しみ病の床に伏した
累<年>之後壮士還来覆命既了 年を重ねた後に男が帰り任務完了の報告を既に終えた
乃詣相視而娘子之姿容疲羸甚異言語哽咽 そして娘の処来て互いに姿を見ると、娘の姿 顔形はやつれ果てて言葉はむせぶばかりであった
于時壮士哀嘆流涙裁歌口号  その時男は哀嘆の涙を流し歌を作り口ずさんだ

其歌一首

如是耳尓 有家流物乎 猪名川之 奥乎深目而 吾念有来

かくのみに ありけるものを 猪名川の 沖を深めて 吾が思へりける 

かくのみに ありけるものを ゐながはの おきをふかめて わがもへりける
・・・・・・・・・・・
仕事にかまけていても忘れたことはない

あなたがここにいると思えばこそやれた

猪名川の川底より深い悲しさ 

遠い沖を見るより辛かった

ずっとそばに居たかった

もうどこにも行かないからね
・・・・・・・・・・・



3805雑歌,枕詞,歌物語,女歌,恋,悲別,作者:娘子

[題詞]娘子臥聞夫君之歌従枕擧頭應聲和歌一首

[原文]烏玉之 黒髪所<沾>而 沫雪之 零也来座 幾許戀者

ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪の 降るにや来ます ここだ恋ふれば 

[ぬばたまの] くろかみぬれて あわゆきの ふるにやきます ここだこふれば
・・・・・・・・・・・
黒髪は濡れて

沫雪が降る

それでも貴方来ました

私がこれほどに慕っていたから
・・・・・・・・・・・



3806雑歌,歌物語,密会,結婚,墳墓,人目,女歌,恋,伝承,作者:娘子

[題詞]

[原文]事之有者 小泊瀬山乃 石城尓母 隠者共尓 莫思吾背

事しあらば 小泊瀬山の 石城にも 隠らばともに な思ひそ吾が背 

ことしあらば をばつせやまの いはきにも こもらばともに なおもひそわがせ
・・・・・・・・・・・
もし 何かがあって

小泊瀬山のお墓に入ることがあるなら

貴方と二人一緒です

そんなに色々と心配しないで

私の貴方
・・・・・・・・・・・



サ3807雑歌,歌物語,伝承,福島県,葛城王,女歌,橘諸兄,恋,序詞,作者:采女

[題詞]
[左注]右の歌は、伝へて云はく、「葛城王、陸奥の国に遣はさえける時に、国司の祇承、緩怠にあること異にはなはだし。時に、王の意悦びずして、怒りの色面に顕れぬ。飲饌を設くといへども、あへて宴楽せず。ここに前の采女あり。風流の娘子なり。左手に觴を捧げ、右手に水を持ち、王の膝を撃ちて、この歌を詠む。すなわち、王の意解け悦びて、楽飲すること終日なり」といふ。


安積香山 影副所見 山井之 淺心乎 吾念莫國

安積山 影さへ見ゆる 山の井の 浅き心を 吾が思はなくに 

[あさかやま かげさへみゆる やまのゐの] あさきこころを わがおもはなくに
・・・・・・・・・・・
安積山の影が写る泉のような浅い心で

貴方ををおもてなししょうとは

私は思わない

国の誰がそう思うとも
・・・・・・・・・・・
* 「安積山」は、福島郡山市の北部にある山。
* 「山の井」は、湧水がたまって、山中に自然にできた井戸。
* 「浅き」は、程度が軽いこと。
* 「吾が思はなくに」は、名詞「吾」、
* 「が」主格の格助詞。 
* 「思は」ハ行四段活用動詞「思ふ」の未然形、
* 「なく」打消の助動詞「ず」のク語法未然形、
 「ク語法」。「〜なく」 連体形の「ぬ」に「あく」を加えて名詞化する、和歌では動詞に付けて助詞「に」を添え、「飽かなくに」「思はなくに」などと遣うことが多い。
* 「に」逆接の接続助詞。 
(参照)http://blogs.yahoo.co.jp/rasa_20/54355559.html



3808雑歌,歌物語,伝承,歌垣,野遊び,妻讃美,住吉,大阪

[題詞]

墨江之 小集樂尓出而 寤尓毛 己妻尚乎 鏡登見津藻

住吉の 小集楽に出でて うつつにも おの妻すらを 鏡と見つも 

すみのえの をづめにいでて うつつにも おのづますらを かがみとみつも
・・・・・・・・・・・
墨江のちょっとした野良遊び

大勢寄った人の中でさえ

夢にもうつつにも自分の妻が

鏡のように輝いていると思えたよ
・・・・・・・・・・・

[左注]右傳云 昔者鄙人 姓名未詳也 于時郷里男女衆集野遊 是會集之中有鄙人 夫婦 其婦容姿端正秀於衆諸 乃彼鄙人之意弥増愛妻之情 而作斯歌賛嘆美皃也
右は伝えて云うに「昔 (鄙と 人ひと)田舎者がいた。姓名は未だ詳しくは判らない。時に、里の男女が寄り集まって野遊びをした。この集まった人々の中に田舎者の夫婦がいた。その妻の容姿の美しさは衆諸(もろひと)より秀でていた。そこで、その田舎者は、さらに妻を愛でる気持ちが増さり、そこでこの歌を作って、妻の美貌を賛嘆した」という。



サ3809雑歌,歌物語,伝承,女歌,恨,失恋

[題詞]

商變 領為跡之御法 有者許曽 吾下衣 反賜米

商返し めすとの御法 あらばこそ 吾が下衣 返し給はめ 

あきかへし めすとのみのり あらばこそ あがしたごろも かへしたまはめ
・・・・・・・・・・・
買った品さえ事情次第で

商売がなかったことを許すという

御法があるのだから

貴方が抱いた下衣に包んだ私の体や思いを

元のようにして返してくださいな
・・・・・・・・・・・
* 「商返し」は、「借金は全部御破算にして、担保は全部持ち主に返すように」という、 「領為(めす・れい)との御法」状況の変化に基づいて大切な品物の返還要求ができるという法令。つまり徳政令。




3810雑歌,歌物語,伝承,恨,失恋,女歌

[題詞]

味飯乎 水尓醸成 吾待之 代者曽<无> 直尓之不有者

味飯を 水に醸みなし 吾が待ちし かひはかつてなし 直にしあらねば 

うまいひを みづにかみなし わがまちし かひはかつてなし ただにしあらねば
・・・・・・・・・・・
上等な飯を水と共に口醸みして

私が待っていた酒が出来上がる時に

貴方が現れないのでは

私が待っていた甲斐がまったくありませんよ
・・・・・・・・・・・


3794雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞]娘子等和歌九首

端寸八為 老夫之歌丹 大欲寸 九兒等哉 蚊間毛而将居 [一]

はしきやし 翁の歌に おほほしき 九の子らや 感けて居らむ 
[一]

はしきやし おきなのうたに おほほしき ここののこらや かまけてをらむ
・・・・・・・・・・・・
まあ素晴らしい

このおじいさんの歌に

ボンヤリした私達九人も

歌をお返しましょう 

愛すべき老人の歌に

塞ぎこん感動している九人の友よ
・・・・・・・・・・・・



3795雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

辱尾忍 辱尾黙 無事 物不言先丹 我者将依 [二]

恥を忍び 恥を黙して 事もなく 物言はぬさきに 吾れは寄りなむ 
[二]

はぢをしのび はぢをもだして こともなく ものいはぬさきに われはよりなむ
・・・・・・・・・・・・
女のわたしからいいだす

恥かしさを忍び押し隠して

事をあれこれ云うよりは

わたしは歌に靡き寄り添いましょう
・・・・・・・・・・・・



3796雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

否藻諾藻 随欲 可赦 皃所見哉 我藻将依 [三]

否も諾も 欲しきまにまに 許すべき 顔見ゆるかも 吾れも寄りなむ 
[三]

いなもをも ほしきまにまに ゆるすべき かほみゆるかも われもよりなむ
・・・・・・・・・・・・
いやといっても いいわと言っても

わたしの好きにしてくれそうなお顔だもの

わたしも歌を寄せます
・・・・・・・・・・・・



3797雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

死藻生藻 同心迹 結而為 友八違 我藻将依 [四]

死にも生きも 同じ心と 結びてし 友や違はむ 吾れも寄りなむ 
[四]

しにもいきも おなじこころと むすびてし ともやたがはむ われもよりなむ
・・・・・・・・・・・・
生死も共にと誓った仲だもの

その友に異を唱えましょうか

わたしも歌を寄せましょう
・・・・・・・・・・・・



3798雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

何為迹 違将居 否藻諾藻 友之波々 我裳将依 [五]

何すと 違ひは居らむ 否も諾も 友のなみなみ 吾れも寄りなむ 
[五]

なにすと たがひはをらむ いなもをも とものなみなみ われもよりなむ
・・・・・・・・・・・・
どうして異を唱えましょうか

否も諾もみんなと同じ

わたしも歌を寄せましょう
・・・・・・・・・・・・



3799雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

豈藻不在 自身之柄 人子之 事藻不盡 我藻将依 [六]

あにもあらじ おのが身のから 人の子の 言も尽さじ 吾れも寄りなむ 
[六]

あにもあらじ おのがみのから ひとのこの こともつくさじ われもよりなむ
・・・・・・・・・・・・
けっして異など唱えませんが

わたしの身の上で恋の思いを

人並みに云うことは出来ません

わたしなりに歌を寄せましょう
・・・・・・・・・・・・



3800雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

者田為々寸 穂庭莫出 思而有 情者所知 我藻将依 [七]

はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ  吾れも寄りなむ 
[七]

はだすすき ほにはないでそ おもひたる こころはしらゆ われもよりなむ
・・・・・・・・・・・・
はだすすきの穂のように取り立てて面に出さなくていいのです

爺さんを思っている皆さんの心の中は 

よくわかります

わたしも歌を寄せましょう
・・・・・・・・・・・・



3801雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,住吉,大阪,歌垣,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

墨之江之 岸野之榛丹 々穂所經迹 丹穂葉寐我八 丹穂氷而将居 [八]

住吉の 岸野の榛に にほふれど にほはぬ吾れや にほひて居らむ 
[八]

すみのえの きしののはりに にほふれど にほはぬわれや にほひてをらむ
・・・・・・・・・・・・
住吉の岸野の榛で衣を染め上げても

心に染まず切ないわたし

でも 住吉の岸野の榛の美しさは感じています
・・・・・・・・・・・・



3802雑歌,女歌,歌物語,竹取翁,神仙,作者:娘子

[題詞](娘子等和歌九首)

春之野乃 下草靡 我藻依 丹穂氷因将 友之随意 [九]

春の野の 下草靡き 吾れも寄り にほひ寄りなむ 友のまにまに 
[九]

はるののの したくさなびき われもより にほひよりなむ とものまにまに
・・・・・・・・・・・・
春の野の下草が靡き寄るように

私も従い染まりましょう

心を同じくする友と共に
・・・・・・・・・・・・


サ3791雑歌,歌物語,作者:竹取翁,神仙,枕詞,難訓,堺市,大阪,教訓,嘆老

[題詞]
昔有老翁 むかし翁あり
号曰竹取翁也 人は竹取の翁と呼んだ
此翁季春之月 この翁春の月に
登丘遠望 丘に登り遠くを見た
忽値煮羮之九箇女子也 おりしも若菜煮をしている九人の娘に出会った
百嬌無儔花容無止 愛嬌に満ちて花のような美しさは比べようがない
于時娘子等呼老翁嗤曰 その時娘らは翁をからかって言った
叔父来乎 吹此燭火也 おじいさん来てこの火を吹き立ててちょうだい
於是翁曰唯<々> 漸○徐行著接座上 そこで翁は「ハイ」と、そろりそろりと歩み寄って火の前に座った
良久娘子等皆共含咲相推譲之曰阿誰呼此翁哉尓乃 しばらくすると娘らは微笑して、互いに譲りあいながら だれがこの翁を呼んだのか と言った
竹取翁謝之曰 竹取の翁は畏れ入って
非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌]
 思いもかけず、仙女様に出逢いなれなれしくお側まで参りました罪を、歌で贖(あがな)いたいと願います。と言って作った歌一首と反歌。

・・・・・・・・・・・・・・・
緑子之ーみどり子のーみどりこのー生まれたての 
若子蚊見庭ー若子髪にはーわかごかみにはー赤ちゃん髪のころには
垂乳為ー[たらちし]ー
母所懐ー母に抱かえーははにむだかえー母に抱かれて
○襁ー[ひむつきの]ーおしめをつけた
平<生>蚊見庭ー稚児が髪にはーちごがかみにはー稚児髪のころには
結經方衣ー木綿肩衣ーゆふかたぎぬー木綿の袖無しに
水津裏丹縫服ー純裏に縫ひ着ーひつらにぬひきー総裏を縫いつけて包まれ
頚著之ー頚つきのー[うなつきの]
童子蚊見庭ー童髪にはーわらはかみにはー童子頭のころには 
結幡ー結ひはたのーゆひはたのーくくり染めの
袂著衣ー袖つけ衣ーそでつけごろもー袖つき衣を
服我矣ー着し我れをーきしわれをー着ていた私
丹因ー丹よれるーによれるー艶やかな 
子等何四千庭ー子らがよちにはーこらがよちにはーおまえさん方の年頃には
三名之綿ー蜷の腸ー[みなのわた]ー
蚊黒為髪尾ーか黒し髪をーかぐろしかみをー真っ黒な髪を
信櫛持ーま櫛持ちーまくしもちー立派な櫛で梳いて
於是蚊寸垂ーここにかき垂れーここにかきたれー肩まで垂らしたり
取束ー取り束ねーとりつかねー取り束ばねて
擧而裳纒見ー上げても巻きみーあげてもまきみーあげまきにしたり
解乱ー解き乱りーときみだりー解き乱して ざんばらにしたり
童兒丹成見ー童になしみーわらはになしみー年に似合う髪形にしていた
羅丹津蚊經ーさ丹つかふー[さにつかふ]ー
色丹名著来ー色になつけるーいろになつけるー赤い色をさした頬に
紫之ー紫のー[むらさきの]ー
大綾之衣ー大綾の衣ーおほあやのきぬー似合った紫の大綾の模様
墨江之ー住吉のー[すみのえの]ー
遠里小野之ー遠里小野のーとほさとをののー遠里小野の
真榛持ーま榛持ちーまはりもちー榛の木で
丹穂之為衣丹ーにほほし衣にーにほほしきぬにー染め上げた衣を着
狛錦ー高麗錦ーこまにしきー高麗錦を
紐丹縫著ー紐に縫ひつけーひもにぬひつけー紐にして縫いつけ
刺部重部ー*****ーすごく目立つひらひらとした外観の(衣)<出典・転載[国語篇七]>
波累服ーなみ重ね着てーなみかさねきてー粋に重ね着をした
打十八為ー打麻やしー[うちそやし]ー
麻續兒等ー麻続の子らーをみのこらー麻績の娘や
蟻衣之ーあり衣のー[ありきぬの]ー
寶之子等蚊ー財の子らがーたからのこらがー財の娘らが
打栲者ー打ちし栲ーうちしたへー楮を打ち
經而織布ー延へて織る布ーはへておるぬのー延ばして織り上げた生地の
日曝之ー日さらしのーひさらしのー白く日晒しした
朝手作尾ー麻手作りをーあさてづくりをー手織りの麻布を
信巾裳成者之寸丹取為支屋所ー*****,*******,*****ー目ばたきを止める(注目する)ほど輝いているような(美女)で実にふるいつきたくなるような輝きを(身に)付けていた <出典・転載[国語篇七]>
稲寸丁女蚊ー稲置娘子がーいなきをとめがー稲置のおとめが
妻問迹ー妻どふとーつまどふとー妻問えよと
我丹所来為ー我れにおこせしーわれにおこせしー私に贈ってきた
彼方之ー彼方のー[をちかたの]ー
二綾裏沓ー二綾下沓ーふたあやしたぐつー二色交ぜ織りの足袋を履き
飛鳥ー飛ぶ鳥ー[とぶとり]ー
飛鳥壮蚊ー明日香壮士がーあすかをとこがーこの明日香の男が
霖禁ー長雨禁へーながめさへー長雨の中でも大丈夫な
縫為黒沓ー縫ひし黒沓ーぬひしくろぐつー縫い上げた黒い沓を
刺佩而ーさし履きてーさしはきてー履いて
庭立住ー庭にたたずみーにはにたたずみー女の庭に立っていると
退莫立ー退けな立ちーそけなたちー親に追い払われた
禁尾迹女蚊ー禁娘子がーいさめをとめがー稲置の乙女が
髣髴聞而ーほの聞きてーほのききてーこっそり聞いて 
我丹所来為ー我れにおこせしーわれにおこせしーわしに賜った
水縹ー水縹のーみなはだのー水色の
絹帶尾ー絹の帯をーきぬのおびをー絹帯だった
引帶成ー引き帯なすーひきおびなすーそれを付け紐風の
韓帶丹取為ー韓帯に取らしーからおびにとらしー韓帯みたいにして
海神之ー[わたつみの]ー
殿盖丹ー殿の甍にーとののいらかにー神社の甍(いらか)に
飛翔ー飛び翔けるーとびかけるー飛び翔ける
為軽如来ーすがるのごときーすがる蜂のような
腰細丹ー腰細にーこしほそにー腰細に
取餝氷ー取り装ほひーとりよそほひーきちんと付けて
真十鏡ーまそ鏡ー[まそかがみ]ー
取雙懸而ー取り並め懸けてーとりなめかけてー鏡を並べ懸けて
己蚊果ーおのがなりー自分の顔や身なりを
還氷見乍ーかへらひ見つつーかへらひみつつー何度もほれぼれと見たよ
春避而ー春さりてーはるさりてー春が来て
野邊尾廻者ー野辺を廻ればーのへをめぐればー野辺を廻ると
面白見ーおもしろみー面白い
我矣思經蚊ー我れを思へかーわれをおもへかー趣でもあるのか
狭野津鳥ーさ野つ鳥ー[さのつとり]ー
来鳴翔經ー来鳴き翔らふーきなきかけらふー野の鳥まで鳴いて飛び回り
秋僻而ー秋さりてーあきさりてー秋が来て
山邊尾徃者ー山辺を行けばーやまへをゆけばー山辺を行けば
名津蚊為迹ーなつかしとー懐かしいのか
我矣思經蚊ー我れを思へかーわれをおもへかー心ひかれてか
天雲裳ー天雲もー[あまくもも]ー
行田菜引ー行きたなびくーゆきたなびくー天雲さえも来て棚引く
還立ーかへり立ちーかへりたちー帰途につこうと
路尾所来者ー道を来ればーみちをくればー都大路に来ると
打氷<刺>ー[うちひさす]ー
宮尾見名ー宮女ーみやをみなー女官達も 
刺竹之ーさす竹のー[さすたけの]ー
舎人壮裳ー舎人壮士もーとねりをとこもー舎人達も
忍經等氷ー忍ぶらひーしのぶらひーこっそりと
還等氷見乍ーかへらひ見つつーかへらひみつつー振り返り
誰子其迹哉ー誰が子ぞとやーたがこぞとやーどこの若君かと
所思而在ー思はえてあるーおもはえてあるー思われていたものさ
如是ーかくのごとーかくは  
所為故為ー*******ー不快そうな声でほんのちょっと騒ぎ立てる<出典・転載[国語篇七]>
古部ーいにしへーはるか昔は
狭々寸為我哉ーささきし我れやーささきしわれやーもてはやされたわしであったが
端寸八為ー[はしきやし]ー ああ いとおしいかな
今日八方子等丹ー今日やも子らにーけふやもこらにー今日になると
五十狭邇迹哉ーいさとやーさあどうだろう 変な爺さんだと
所思而在ー思はえてあるーおもはえてあるー思われているでしょう
如是ーかくのごとーこう歳をとると邪険にされる
所為故為ー*******ー不快そうな声でほんのちょっと騒ぎ立てる<出典・転載[国語篇七]>
古部之ーいにしへのー古の
賢人藻ー賢しき人もーさかしきひともー賢人はね
後之世之ー後の世のーのちのよのー後の世の
堅監将為迹ー鑑にせむとーかがみにせむとー鑑になればと
老人矣ー老人をーおいひとをー老いた人を
送為車ー送りし車ーおくりしくるまー姨捨の車に乗せて山を登ったが
持還来ー持ち帰りけりーもちかへりけりー老いた人を捨てずに帰ってきたんだよ
<持還来>ー持ち帰りけりーもちかへりけりー持ち帰ってきたんだよ 子に見せようと
・・・・・・・・・・・・・・・
以下<国語篇(その七)>より転載。
『23[16-3791]「刺部重部」「信巾裳成者之寸丹取為支屋所経」「如是所為故為」

「刺部重部」
「さすへしげへ」
「タツ・ハエ・チ(ン)ゲイ・ハエ」
「すごく・目立つ・ひらひらとした・外観の(衣)」
(「ハエ」のAE音がE音に変化して「ヘ」と、「チ(ン)ゲイ」のNG音がG音に、EI音がE音に変化して「チゲ」から「シゲ」なった)   

「信巾裳成者之寸丹取為支屋所経」    
「しなきもなすはのきにとらすきやそへ」
「チナ・キモ・ナ・ツワ・ノ・キニ・トラ・ツキ・イア・トヘ」  
「目ばたきを・止める(注目する)ほど・輝いている・ような・(美女)で・実に・ふるいつきたく・なるような・輝きを・(身に)付けていた(稲置娘子)」
(「ツワ」のWH音がH音に変化して「ハ」となった)

「如是所為故為」
「かくそしこし」
「カク・トチカ・ウチ」
「不快そうな声で・ほんのちょっと・騒ぎ立てる」
(「トチカ」の語尾のA音と「ウチ」の語頭のU音が連結して「トチコチ」から「ソシコシ」となった)
の転訛と解します。』



 
3792雑歌,歌物語,物語,作者:竹取翁,神仙,嘆老

死者木苑 相不見在目 生而在者 白髪子等丹 不生在目八方

死なばこそ 相見ずあらめ 生きてあらば 白髪子らに 生ひずあらめやも 

しなばこそ あひみずあらめ いきてあらば しろかみこらに おひずあらめやも
・・・・・・・・・・
若死にしたら見ずに済んだろう

あんたらも長生きしたら

白髪が生えてくるんだよ
・・・・・・・・・・




3793雑歌,歌物語,物語,作者:竹取翁,神仙,嘆老

白髪為 子等母生名者 如是 将若異子等丹 所詈金目八

白髪し 子らに生ひなば かくのごと 若けむ子らに 罵らえかねめや 

しろかみし こらにおひなば かくのごと わかけむこらに のらえかねめや

・・・・・・・・・・
白髪があんたがたにも生えてきたら

こんな風に若い連中に莫迦にされるんだよ

だれでもいつかは白髪になるのにさ

今の若い連中は苦労が多いから

俺より早く白髪になるだろうな
・・・・・・・・・・


3781作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

多婢尓之弖 毛能毛布等吉尓 保等登藝須 毛等奈那難吉曽 安我古非麻左流

旅にして 物思ふ時に 霍公鳥 もとなな鳴きそ 吾が恋まさる 

たびにして ものもふときに ほととぎす もとなななきそ あがこひまさる
・・・・・・・・・・・・
旅空で物思いする時に 

ほととぎすよ

みだりに鳴くな

想いが乱れて纏まらない
・・・・・・・・・・・・




3782作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

安麻其毛理 毛能母布等伎尓 保等登藝須 和我須武佐刀尓 伎奈伎等余母須

雨隠り 物思ふ時に 霍公鳥 吾が住む里に 来鳴き響もす 

あまごもり ものもふときに ほととぎす わがすむさとに きなきとよもす
・・・・・・・・・・・・
雨に降られて物思いする時に 

ほととぎすが飛んで来ては 

寂しげに昔を思い出させる
・・・・・・・・・・・・




3783作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

多婢尓之弖 伊毛尓古布礼婆 保登等伎須 和我須武佐刀尓 許<欲>奈伎和多流

旅にして 妹に恋ふれば 霍公鳥 吾が住む里に こよ鳴き渡る 

たびにして いもにこふれば ほととぎす わがすむさとに こよなきわたる
・・・・・・・・・・・・
旅の中あの子を想えば 

ほととぎすがやって来て

私の帰り住む都の方に鳴き渡っていく
・・・・・・・・・・・・




3784作者:中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

許己呂奈伎 登里尓曽安利家流 保登等藝須 毛能毛布等伎尓 奈久倍吉毛能可

心なき 鳥にぞありける 霍公鳥 物思ふ時に 鳴くべきものか 

こころなき とりにぞありける ほととぎす ものもふときに なくべきものか
・・・・・・・・・・・・
無情の鳥でしかないのだなあ
 
ほととぎすは物思いする時ばかり 

鳴くものであるのだろうか
・・・・・・・・・・・・



3785作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注]右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌

保登等藝須 安比太之麻思於家 奈我奈氣婆 安我毛布許己呂 伊多母須敝奈之

霍公鳥 間しまし置け 汝が鳴けば 吾が思ふ心 いたもすべなし 

ほととぎす あひだしましおけ ながなけば あがもふこころ いたもすべなし
・・・・・・・・・・・・
ほととぎすよ

間をしばらく置いてくれ

お前が鳴くと私の恋しく思う心が増さってどうしようもない
・・・・・・・・・・・・
<出典・転載、以下[竹取翁と万葉集のお勉強]より。>

花鳥の使ひの歌七首

天平宝字二年(758)二月に万葉集後編「宇梅乃波奈」が完成したとしますと、政治情勢からその万葉集の中でそれと判るように橘諸兄とその子の橘奈良麻呂、また丹比一族や大伴一族の関係者を、歌を詠って悼むことは出来ません。擬(なぞら)えて詠うだけです。
狭野弟上娘子への贈答歌五十六首が、擬えて丹比国人への万葉集後編「宇梅乃波奈」の編纂を引き受けた時の編纂の思いとしますと、花鳥の使ひの歌七首はその万葉集後編「宇梅乃波奈」の編纂がなった後に「寄花鳥陳思」と記すように花と鳥に何かを擬えて想いを詠う歌です。その時、擬ふ花は橘の花で、鳥は過去の時代を乞う霍公鳥(ほととぎす)です。
先の「長屋王の変」のときに大伴旅人と藤原房前の擬える相手が長屋王一族や元正上皇であるならば、「橘奈良麻呂の変」のときに花鳥の使ひの歌七首の擬える相手は橘一族と孝謙上皇ではないでしょうか。そして、万葉集です。 




第十六巻
有由縁并雜歌




3786雑歌,歌語り,櫻児,恋,二男一女,悲嘆,譬喩

[題詞]昔物有娘子 字曰櫻兒也 于時有二壮子 共誂此娘而捐生挌<競>貪死相敵 於是娘子戯欷曰 従古<来>今未聞未見一女之見徃適二門矣 方今壮子之意有難和平 不如妾死相害永息 尓乃尋入林中懸樹經死 其兩壮子不敢哀慟血泣漣襟 各陳心緒作歌二首
・・・・・
むかし 娘がいた 名を桜兒(さくらのこ)といった
ときに二人の若者がいて ともにこの娘に言い寄った
命がけで死も辞さず張り合った

娘は泣きじゃくりながら言った
 古から今にいたるまで見もせず聞いたこともありません
 一人の女の身で二人の方に連れ添うなど
 今はもうあのお二人の気持ちを収めることはできないでしょう
 わたしの命を絶ってあの殺し合いをお終いにするしかありまんせん
 
と言って林に入って首をくくって死んでしまった
二人の若者は悲しみ血の涙を襟に流し
おのおのの思いをのべてそれぞれ一首の歌を詠んだ
・・・・・
            
 
春去者 挿頭尓将為跡 我念之 櫻花者 散去流香聞 [其一]

春さらば かざしにせむと 吾が思ひし 桜の花は 散りにけるかも 

はるさらば かざしにせむと わがもひし さくらのはなは ちりにけるかも
・・・・・・・・・・・・
春が来たら

かざし(挿頭)にすると

わが心にきめていたあの桜の花は

咲くこともなく散ってしまった
・・・・・・・・・・・・




3787雑歌,歌語り,恋,櫻児,二男一女,悲嘆,譬喩

[題詞妹之名尓 繋有櫻 花開者 常哉将戀 弥年之羽尓 [其二]

妹が名に 懸けたる桜 花咲かば 常にや恋ひむ いや年のはに 

いもがなに かけたるさくら はなさかば つねにやこひむ いやとしのはに
・・・・・・・・・・・・
あの愛し子の名にゆかりの桜よ

その桜花が咲くときには

あの子を恋い焦がれよう年毎に
・・・・・・・・・・・・



3788雑歌,歌語り,恋,三男一女,悲嘆,奈良,橿原

[題詞]或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也]
・・・
或いは曰く、昔、三人の若者が、一人の娘に求婚した。【娘の字(な)は、葛児(かずらこ)といった】
娘は困惑し、ひとりの女の身は、儚く露のようなものなのに、三人の男から求婚されて、みな意志の固さは石のよう。そう云って池のほとりをさまよい、とうとう水底に沈んだ。
 三人の若者たちは、悲しみあえいだ。
各々は所心(おもい)を陳(の)べて歌三首を作った。 
・・・

無耳之 池羊蹄恨之 吾妹兒之 来乍潜者 水波将涸 [一]

耳成の 池し恨めし 吾妹子が 来つつ潜かば 水は涸れなむ 
[一]

みみなしの いけしうらめし わぎもこが きつつかづかば みづはかれなむ
・・・・・・・・・・・・
耳成の池は恨めしいものよ

恋する人が池に身を投げたのなら

なぜ水を涸らして助けてくれなかったのだ
・・・・・・・・・・・・



3789雑歌,枕詞,歌物語,三男一女,悲嘆,恋

[題詞

足曳之 山イ之兒 今日徃跡 吾尓告世婆 還来麻之乎 [二]

あしひきの 山縵の子 今日行くと 吾れに告げせば 帰り来ましを 
[二]

[あしひきの] やまかづらのこ けふゆくと われにつげせば かへりきましを
・・・・・・・・・・・・
山縵の子よ わからないんだよ

今日死ぬなんて

知らせてくれれば

何を置いてもおまえの元に駆けつけたものを
・・・・・・・・・・・・



3790雑歌,枕詞,歌物語,三男一女,悲嘆,恋

[題詞

足曳之 玉イ之兒 如今日 何隈乎 見管来尓監 [三]

あしひきの 玉縵の子 今日のごと いづれの隈を 見つつ来にけむ 
[三]

[あしひきの] たまかづらのこ けふのごと いづれのくまを みつつきにけむ
・・・・・・・・・・・・
葛児よ

あとを追おうと彷徨えば

いづれの曲がり角も暗くて寂しい

どんな気持ちで果てたのか
・・・・・・・・・・・・



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