|
3771作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,大赦,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 宮人能 夜須伊毛祢受弖 家布々々等 麻都良武毛能乎 美要奴君可聞 みやひとの やすいもねずて けふけふと まつらむものを みえぬきみかも ・・・・・・・・・・・・
大宮人たちが安眠もできずに 今日か今日かと待っているのに 姿をお見せにならない 貴方よ ・・・・・・・・・・・・ 3772作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,大赦,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 可敝里家流 比等伎多礼里等 伊比之可婆 保等保登之尓吉 君香登於毛比弖 かへりける ひときたれりと いひしかば ほとほとしにき きみかとおもひて ・・・・・・・・・・・・
* 「ほとほと」→「ほとんど」の古形。帰ってきた人がいると云うのを聞いたので 喜びの余りほとんど死にそうになりました あなたかと思って ・・・・・・・・・・・・ 3773作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,大赦,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 君我牟多 由可麻之毛能乎 於奈自許等 於久礼弖乎礼杼 与伎許等毛奈之 きみがむた ゆかましものを おなじこと おくれてをれど よきこともなし ・・・・・・・・・・・・
あなたと共に行きたかった 同じことです ここに残っていても 良いことはなにもありませんから ・・・・・・・・・・・・ 3774作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,期待,大赦,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 和我世故我 可反里吉麻佐武 等伎能多米 伊能知能己佐牟 和須礼多麻布奈 わがせこが かへりきまさむ ときのため いのちのこさむ わすれたまふな ・・・・・・・・・・・・
あなたがお帰りになる時のために 私は命を残しておきます 決してそのことをお忘れにならないでくださいな ・・・・・・・・・・・・ 3775作者:中臣宅守,恋,悲別,女歌,心変わり,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 安良多麻能 等之能乎奈我久 安波射礼杼 家之伎己許呂乎 安我毛波奈久尓 [あらたまの] としのをながく あはざれど けしきこころを あがもはなくに ・・・・・・・・・・・
年の緒長く逢わないけれども わたしの志は変わりはしない 年の緒一途に思っているよ ・・・・・・・・・・・・ 3776作者:中臣宅守,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 家布毛可母 美也故奈里世婆 見麻久保里 尓之能御馬屋乃 刀尓多弖良麻之 けふもかも みやこなりせば みまくほり にしのみまやの とにたてらまし ・・・・・・・・・・・・
今日もなあ 都にいたなら貴女に逢いたくて いつもの西の御厩の前で 立って待っているだろうに ・・・・・・・・・・・・ 3777作者:狭野弟上娘子,配流,恋,悲別,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 伎能布家布 伎美尓安波受弖 須流須敝能 多度伎乎之良尓 祢能未之曽奈久 きのふけふ きみにあはずて するすべの たどきをしらに ねのみしぞなく ・・・・・・・・・・・・
昨日も今日も 貴方にお逢いすることが出来ないから これはどうしたらいいのか 手立てが分からず 涙にくれております ・・・・・・・・・・・・ 3778作者:狭野弟上娘子,枕詞,恋,期待,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 之路多<倍>乃 阿我許呂毛弖乎 登里母知弖 伊波敝和我勢古 多太尓安布末R尓 [しろたへの] あがころもでを とりもちて いはへわがせこ ただにあふまでに ・・・・・・・・・・・・
私の形見の衣を手に 心身を清めて神にお祈りなさい 直接お逢い出来るその日があるように ・・・・・・・・・・・・ サ3779作者:中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) [左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌) 和我夜度乃 波奈多知<婆>奈波 伊多都良尓 知利可須具良牟 見流比等奈思尓 わがやどの はなたちばなは いたづらに ちりかすぐらむ みるひとなしに ・・・・・・・・・・・・
* 「いたづらに」は、形容動詞「いたづらなり」の連用形。むなしい。はかない。わが家の庭の花橘は 空しく散り過ぎただろうな 誰も見る人がいない中で ・・・・・・・・・・・・ * 「か」は疑問の係助詞。 * 「らむ」は現在推量の助動詞。 今ごろは〜しているだろう。 * 「なし」は、形容詞。 * 「に」は、逆接の接続助詞。 ないのに。 3780作者:中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) [左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌) 古非之奈婆 古非毛之祢等也 保等登藝須 毛能毛布等伎尓 伎奈吉等余牟流 こひしなば こひもしねとや ほととぎす ものもふときに きなきとよむる ・・・・・・・・・・・・
恋い死にするなら さあ恋諸共に死ねとか ほととぎす 物思う時に来て鳴きたてることよ ・・・・・・・・・・・・ |
・万葉集(〃)
[ リスト | 詳細 ]
|
3761作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲嘆,自覚,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 与能奈可能 都年能己等和利 可久左麻尓 奈<里>伎尓家良之 須恵之多祢可良 よのなかの つねのことわり かくさまに なりきにけらし すゑしたねから ・・・・・・・・・・・
世の中の普通の道理は かくの如しということにしよう 自分で蒔いた種とはいえ 恩赦にもれてしまった ・・・・・・・・・・・ 3762作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,滋賀県,大津市,悲別,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 和伎毛故尓 安布左可山乎 故要弖伎弖 奈伎都々乎礼杼 安布余思毛奈之 わぎもこに あふさかやまを こえてきて なきつつをれど あふよしもなし ・・・・・・・・・・・
愛しい人に逢うという 坂や山を越えて来た けれどもいない いなかった だから寂しく泣き暮らしているのさ 逢う術もない毎日を ・・・・・・・・・・・ 3763作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,自覚,悲嘆,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 多婢等伊倍婆 許<登>尓曽夜須伎 須敝毛奈久 々流思伎多婢毛 許等尓麻左米也母 たびといへば ことにぞやすき すべもなく くるしきたびも ことにまさめやも ・・・・・・・・・・・
旅といえば簡単だが 流刑の暮らしはどうしようと 観光も恋もない暗闇ばかり 云いすぎかなあ ・・・・・・・・・・・ 3764作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 山川乎 奈可尓敝奈里弖 等保久登母 許己呂乎知可久 於毛保世和伎母 やまかはを なかにへなりて とほくとも こころをちかく おもほせわぎも ・・・・・・・・・・・
山川が間に割込んで遠くなっていますが 私の心はいつも近くにいると想っていてください ・・・・・・・・・・・ 3765作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 麻蘇可我美 可氣弖之奴敝等 麻都里太須 可多美乃母能乎 比等尓之賣須奈 [まそかがみ] かけてしぬへと まつりだす かたみのものを ひとにしめすな ・・・・・・・・・・・
* 「まつりだす」〔他サ四〕ものを尊貴の人などの前に出してさしあげる。献上する。たてまつる。進上する。心に懸けて偲んで下さいと 差し上げた形見のまそ鏡は 決して他人に見せないでくださいね 二人の逢える日が遠ざからないように ・・・・・・・・・・・ 3766作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,狭野弟上娘子 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 宇流波之等 於毛比之於毛<波婆> 之多婢毛尓 由比都氣毛知弖 夜麻受之努波世 うるはしと おもひしおもはば したびもに ゆひつけもちて やまずしのはせ ・・・・・・・・・・・
私を愛しいと思うならば 贈る形見のものを下紐で身に結び付けて 絶えることなく思い出してください ・・・・・・・・・・・ 3767作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 多麻之比波 安之多由布敝尓 多麻布礼杼 安我牟祢伊多之 古非能之氣吉尓 たましひは あしたゆふへに たまふれど あがむねいたし こひのしげきに ・・・・・・・・・・・
あなたのみ魂は朝な夕なに感じます でも現身のあなたを求めて わたしの胸は愛しさに痛みます ・・・・・・・・・・・ 3768作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 己能許呂波 君乎於毛布等 須敝毛奈伎 古非能<未>之都々 <祢>能<未>之曽奈久 このころは きみをおもふと すべもなき こひのみしつつ ねのみしぞなく ・・・・・・・・・・・
近頃は貴方のことを思うと どうしようもありません 届かない恋を怨みながら泣いています ・・・・・・・・・・・ 3769作者:狭野弟上娘子,枕詞,後悔,恋,悲別,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉 ぬばたまの よるみしきみを あくるあした あはずまにして いまぞくやしき ・・・・・・・・・・・
あの夜せっかくお会いしたあなただのに 翌朝は会わずに別れてしまって 今となってとても後悔しています ・・・・・・・・・・・ 3770作者:狭野弟上娘子,福井県,武生市,悲別,恋,女歌,中臣宅守 [題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌) 安治麻野尓 屋杼礼流君我 可反里許武 等伎能牟可倍乎 伊都等可麻多武 あぢまのに やどれるきみが かへりこむ ときのむかへを いつとかまたむ ・・・・・・・・・・・
* 「あぢ」はアジ鴨。「あぢ真野」アジ鴨の棲む原野。越前あぢの群れが鳴き騒ぐ原野に 配流されて宿れるあなたあなたが 赦されてお帰りになる日がいつになろうとも お待ちしておりますとも ・・・・・・・・・・・ |



