ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・万葉集(〃)

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3771作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,大赦,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

宮人能 夜須伊毛祢受弖 家布々々等 麻都良武毛能乎 美要奴君可聞

宮人の 安寐も寝ずて 今日今日と 待つらむものを 見えぬ君かも 

みやひとの やすいもねずて けふけふと まつらむものを みえぬきみかも
・・・・・・・・・・・・
大宮人たちが安眠もできずに

今日か今日かと待っているのに

姿をお見せにならない 貴方よ
・・・・・・・・・・・・




3772作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,大赦,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

可敝里家流 比等伎多礼里等 伊比之可婆 保等保登之尓吉 君香登於毛比弖

帰りける 人来れりと 言ひしかば ほとほと死にき 君かと思ひて 

かへりける ひときたれりと いひしかば ほとほとしにき きみかとおもひて
・・・・・・・・・・・・
帰ってきた人がいると云うのを聞いたので

喜びの余りほとんど死にそうになりました

あなたかと思って
・・・・・・・・・・・・
* 「ほとほと」→「ほとんど」の古形。




3773作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,大赦,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

君我牟多 由可麻之毛能乎 於奈自許等 於久礼弖乎礼杼 与伎許等毛奈之

君が共 行かましものを 同じこと 後れて居れど よきこともなし 

きみがむた ゆかましものを おなじこと おくれてをれど よきこともなし
・・・・・・・・・・・・
あなたと共に行きたかった 

同じことです

ここに残っていても

良いことはなにもありませんから
・・・・・・・・・・・・



3774作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,期待,大赦,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

和我世故我 可反里吉麻佐武 等伎能多米 伊能知能己佐牟 和須礼多麻布奈

吾が背子が 帰り来まさむ 時のため 命残さむ 忘れたまふな 

わがせこが かへりきまさむ ときのため いのちのこさむ わすれたまふな
・・・・・・・・・・・・
あなたがお帰りになる時のために

私は命を残しておきます

決してそのことをお忘れにならないでくださいな
・・・・・・・・・・・・



3775作者:中臣宅守,恋,悲別,女歌,心変わり,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安良多麻能 等之能乎奈我久 安波射礼杼 家之伎己許呂乎 安我毛波奈久尓

あらたまの 年の緒長く 逢はざれど 異しき心を 吾が思はなくに 

[あらたまの] としのをながく あはざれど けしきこころを あがもはなくに
・・・・・・・・・・・ 
年の緒長く逢わないけれども

わたしの志は変わりはしない

年の緒一途に思っているよ
・・・・・・・・・・・・



3776作者:中臣宅守,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

家布毛可母 美也故奈里世婆 見麻久保里 尓之能御馬屋乃 刀尓多弖良麻之

今日もかも 都なりせば 見まく欲り 西の御馬屋の 外に立てらまし 

けふもかも みやこなりせば みまくほり にしのみまやの とにたてらまし
・・・・・・・・・・・・
今日もなあ

都にいたなら貴女に逢いたくて

いつもの西の御厩の前で

立って待っているだろうに
・・・・・・・・・・・・



3777作者:狭野弟上娘子,配流,恋,悲別,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

伎能布家布 伎美尓安波受弖 須流須敝能 多度伎乎之良尓 祢能未之曽奈久

昨日今日 君に逢はずて するすべの たどきを知らに 音のみしぞ泣く 

きのふけふ きみにあはずて するすべの たどきをしらに ねのみしぞなく
・・・・・・・・・・・・
昨日も今日も

貴方にお逢いすることが出来ないから

これはどうしたらいいのか

手立てが分からず

涙にくれております
・・・・・・・・・・・・



3778作者:狭野弟上娘子,枕詞,恋,期待,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

之路多<倍>乃 阿我許呂毛弖乎 登里母知弖 伊波敝和我勢古 多太尓安布末R尓

白栲の 吾が衣手を 取り持ちて 斎へ吾が背子 直に逢ふまでに 

[しろたへの] あがころもでを とりもちて いはへわがせこ ただにあふまでに
・・・・・・・・・・・・
私の形見の衣を手に

心身を清めて神にお祈りなさい

直接お逢い出来るその日があるように
・・・・・・・・・・・・



サ3779作者:中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

和我夜度乃 波奈多知<婆>奈波 伊多都良尓 知利可須具良牟 見流比等奈思尓

吾が宿の 花橘は いたづらに 散りか過ぐらむ 見る人なしに 

わがやどの はなたちばなは いたづらに ちりかすぐらむ みるひとなしに
・・・・・・・・・・・・
わが家の庭の花橘は

空しく散り過ぎただろうな

誰も見る人がいない中で
・・・・・・・・・・・・
* 「いたづらに」は、形容動詞「いたづらなり」の連用形。むなしい。はかない。
* 「か」は疑問の係助詞。
* 「らむ」は現在推量の助動詞。 今ごろは〜しているだろう。
* 「なし」は、形容詞。
* 「に」は、逆接の接続助詞。  ないのに。



3780作者:中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

古非之奈婆 古非毛之祢等也 保等登藝須 毛能毛布等伎尓 伎奈吉等余牟流

恋ひ死なば 恋ひも死ねとや 霍公鳥 物思ふ時に 来鳴き響むる 

こひしなば こひもしねとや ほととぎす ものもふときに きなきとよむる
・・・・・・・・・・・・
恋い死にするなら 

さあ恋諸共に死ねとか

ほととぎす

物思う時に来て鳴きたてることよ
・・・・・・・・・・・・


3761作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲嘆,自覚,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

与能奈可能 都年能己等和利 可久左麻尓 奈<里>伎尓家良之 須恵之多祢可良

世の中の 常のことわり かくさまに なり来にけらし すゑし種から 

よのなかの つねのことわり かくさまに なりきにけらし すゑしたねから
・・・・・・・・・・・
世の中の普通の道理は

かくの如しということにしよう

自分で蒔いた種とはいえ

恩赦にもれてしまった 
・・・・・・・・・・・



3762作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,滋賀県,大津市,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

和伎毛故尓 安布左可山乎 故要弖伎弖 奈伎都々乎礼杼 安布余思毛奈之

吾妹子に 逢坂山を 越えて来て 泣きつつ居れど 逢ふよしもなし 

わぎもこに あふさかやまを こえてきて なきつつをれど あふよしもなし
・・・・・・・・・・・
愛しい人に逢うという

坂や山を越えて来た

けれどもいない いなかった

だから寂しく泣き暮らしているのさ

逢う術もない毎日を
・・・・・・・・・・・



3763作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,自覚,悲嘆,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

多婢等伊倍婆 許<登>尓曽夜須伎 須敝毛奈久 々流思伎多婢毛 許等尓麻左米也母

旅と言へば 言にぞやすき すべもなく 苦しき旅も 言にまさめやも 

たびといへば ことにぞやすき すべもなく くるしきたびも ことにまさめやも
・・・・・・・・・・・
旅といえば簡単だが

流刑の暮らしはどうしようと

観光も恋もない暗闇ばかり

云いすぎかなあ
・・・・・・・・・・・



3764作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

山川乎 奈可尓敝奈里弖 等保久登母 許己呂乎知可久 於毛保世和伎母

山川を 中にへなりて 遠くとも 心を近く 思ほせ吾妹 

やまかはを なかにへなりて とほくとも こころをちかく おもほせわぎも
・・・・・・・・・・・
山川が間に割込んで遠くなっていますが

私の心はいつも近くにいると想っていてください
・・・・・・・・・・・



3765作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

麻蘇可我美 可氣弖之奴敝等 麻都里太須 可多美乃母能乎 比等尓之賣須奈

まそ鏡 懸けて偲へと まつり出す 形見のものを 人に示すな 

[まそかがみ] かけてしぬへと まつりだす かたみのものを ひとにしめすな
・・・・・・・・・・・
心に懸けて偲んで下さいと

差し上げた形見のまそ鏡は

決して他人に見せないでくださいね

二人の逢える日が遠ざからないように
・・・・・・・・・・・
* 「まつりだす」〔他サ四〕ものを尊貴の人などの前に出してさしあげる。献上する。たてまつる。進上する。



3766作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

宇流波之等 於毛比之於毛<波婆> 之多婢毛尓 由比都氣毛知弖 夜麻受之努波世

愛しと 思ひし思はば 下紐に 結ひつけ持ちて やまず偲はせ 

うるはしと おもひしおもはば したびもに ゆひつけもちて やまずしのはせ
・・・・・・・・・・・
私を愛しいと思うならば

贈る形見のものを下紐で身に結び付けて

絶えることなく思い出してください
・・・・・・・・・・・



3767作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

多麻之比波 安之多由布敝尓 多麻布礼杼 安我牟祢伊多之 古非能之氣吉尓

魂は 朝夕に たまふれど 吾が胸痛し 恋の繁きに 

たましひは あしたゆふへに たまふれど あがむねいたし こひのしげきに
・・・・・・・・・・・
あなたのみ魂は朝な夕なに感じます

でも現身のあなたを求めて

わたしの胸は愛しさに痛みます
・・・・・・・・・・・



3768作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

己能許呂波 君乎於毛布等 須敝毛奈伎 古非能<未>之都々 <祢>能<未>之曽奈久

このころは 君を思ふと すべもなき 恋のみしつつ 音のみしぞ泣く 

このころは きみをおもふと すべもなき こひのみしつつ ねのみしぞなく
・・・・・・・・・・・
近頃は貴方のことを思うと

どうしようもありません

届かない恋を怨みながら泣いています
・・・・・・・・・・・



3769作者:狭野弟上娘子,枕詞,後悔,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉

ぬばたまの 夜見し君を 明くる朝 逢はずまにして 今ぞ悔しき 

ぬばたまの よるみしきみを あくるあした あはずまにして いまぞくやしき
・・・・・・・・・・・
あの夜せっかくお会いしたあなただのに

翌朝は会わずに別れてしまって

今となってとても後悔しています
・・・・・・・・・・・



3770作者:狭野弟上娘子,福井県,武生市,悲別,恋,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安治麻野尓 屋杼礼流君我 可反里許武 等伎能牟可倍乎 伊都等可麻多武

味真野に 宿れる君が 帰り来む 時の迎へを いつとか待たむ 

あぢまのに やどれるきみが かへりこむ ときのむかへを いつとかまたむ
・・・・・・・・・・・
越前あぢの群れが鳴き騒ぐ原野に

配流されて宿れるあなたあなたが 

赦されてお帰りになる日がいつになろうとも 

お待ちしておりますとも
・・・・・・・・・・・
* 「あぢ」はアジ鴨。「あぢ真野」アジ鴨の棲む原野。


3751作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,枕詞,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

之呂多倍能 安我之多其呂母 宇思奈波受 毛弖礼和我世故 多太尓安布麻弖尓

白栲の 吾下衣 失はず 持てれ吾が背子 直に逢ふまでに 

[しろたへの] あがしたごろも うしなはず もてれわがせこ ただにあふまでに
・・・・・・・・・・・
私の下衣をなくさずに

持っていて下さい あなた

直にお逢いする時まで
・・・・・・・・・・・
* 「れ」は完了存続の助動詞「り」の命令形
「り」完了・存続。
未然形ら
連用形り
終止形り
連体形る
已然形れ
命令形れ
【接続】
四段動詞・サ変動詞の命令形に付く。



3752作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

波流乃日能 宇良我奈之伎尓 於久礼為弖 君尓古非都々 宇都之家米也母

春の日の うら悲しきに 後れ居て 君に恋ひつつ うつしけめやも 

はるのひの うらがなしきに おくれゐて きみにこひつつ うつしけめやも
・・・・・・・・・・・
春の日の

このもの悲しさのなかに

残されて独りいる

貴方を恋しく思って

気が変になりそうよ
・・・・・・・・・・・



3753作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安波牟日能 可多美尓世与等 多和也女能 於毛比美太礼弖 奴敝流許呂母曽

逢はむ日の 形見にせよと たわや女の 思ひ乱れて 縫へる衣ぞ 

あはむひの かたみにせよと たわやめの おもひみだれて ぬへるころもぞ
・・・・・・・・・・・
再び逢う日までの形見にして下さいと

かよわい女の身で

思い乱れながら縫ったものです

あはむひの かたみにせよと たわやめの 

おもひみだれて ぬへるころもぞ
・・・・・・・・・・・
* 「たわや女」 もともと「たおやかな女」「若々しくしなやかな女」などの讃め詞だが、のち「手弱(たよわ)き」「た童(わらは)」等と音が似ていることから「手弱女」すなわち力の弱い女の意にも用いられた。



サ3754作者:中臣宅守,贈答,恋,悲別,女歌,難訓,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

過所奈之尓 世伎等婢古由流 保等登藝須 多我子尓毛 夜麻受可欲波牟

過所なしに 関飛び越ゆる 霍公鳥 多我子尓毛 止まず通はむ 

[くゎそなしに せきとびこゆる ほととぎす] ******* やまずかよはむ
・・・・・・・・・・・
通行手形もなしに

関所を飛び越えるほととぎすのように

私も愛しいあの子の許には

誰が止めようとしても絶えず通いつめよう
・・・・・・・・・・・
* 「過所(かしょ)」 官人の関所の律令制時通行許可証。

* 以下<国語篇(その七)より転載>
『「多我子尓毛」を7音の句と考え、通常の万葉仮名の読み方に従い、
「おほわがしにも」と訓むこととします。

「おほわがしにも」「オホ・ワ(ン)ガ・チニ・モ」
OHO-WHANGA-TINI-MO
(oho=arise,begin;whanga=wait;tini=very many,host;mo=for,against)
「(飛んで行くほととぎすを止めようと)突然起こる・(関所)役人達の・待てとの制止(の声)・に反して」
(「ワ(ン)ガ」のNG音がG音に変化して「ワガ」となった) の転訛と解します。
 したがつてこの歌は、
「手形なしに関所を飛び越えるホトトギスは、まき起こる関所の役人達の制止を無視して通うことだろう
(私も周囲の反対をものともせずに娘子の所に通つて行こう)」の意と解します。』



3755作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

宇流波之等 安我毛布伊毛乎 山川乎 奈可尓敝奈里弖 夜須家久毛奈之

愛しと 吾が思ふ妹を 山川を 中にへなりて 安けくもなし 

うるはしと あがもふいもを やまかはを なかにへなりて やすけくもなし
・・・・・・・・・・・
うるわしいと思う貴女を 

山や川が目隠しするようにさえぎるので

私の心は安らかではいられないのですよ
・・・・・・・・・・・



3756作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

牟可比為弖 一日毛於知受 見之可杼母 伊等波奴伊毛乎 都奇和多流麻弖

向ひ居て 一日もおちず 見しかども 厭はぬ妹を 月わたるまで 

むかひゐて ひとひもおちず みしかども いとはぬいもを つきわたるまで
・・・・・・・・・・・
向かい合い一日も欠かさず見ていても 

飽きることのない貴女だったのに

お逢いできないでもう幾月もたちました 
・・・・・・・・・・・



3757作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安我<未>許曽 世伎夜麻<故>要弖 許己尓安良米 許己呂波伊毛尓 与里尓之母能乎

吾が身こそ 関山越えて ここにあらめ 心は妹に 寄りにしものを 

あがみこそ せきやまこえて ここにあらめ こころはいもに よりにしものを
・・・・・・・・・・・
私の身体こそ関所の山を越えて 

こんな所に居るが
    
心はいつでも貴女に寄り添って居るよ
・・・・・・・・・・・



3758作者:中臣宅守,枕詞,贈答,配流,恨,異伝,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

佐須太氣能 大宮人者 伊麻毛可母 比等奈夫理能<未> 許能美多流良武 [一云 伊麻左倍也]

さす竹の 大宮人は 今もかも 人なぶりのみ 好みたるらむ 
[一云 今さへや]

[さすだけの] おほみやひとは いまもかも ひとなぶりのみ このみたるらむ[いまさへや]
・・・・・・・・・・・
大宮人は今も昔も 

人をなぶりものにするのが 

好きであろうか
・・・・・・・・・・・
* 「たるらむ」 完了の助動詞「たり」の連体形「たる」+推量の助動詞「らむ」。「〜しているだろう」の意。




3759作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,孤独,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

多知可敝里 奈氣杼毛安礼波 之流思奈美 於毛比和夫礼弖 奴流欲之曽於保伎

たちかへり 泣けども吾れは 験なみ 思ひわぶれて 寝る夜しぞ多き 

たちかへり なけどもあれは しるしなみ おもひわぶれて ぬるよしぞおほき
・・・・・・・・・・・
繰り返し泣いている私だが

これという心休まる実感がなくて

ただ思い悲しんで寝る夜が多いことです
・・・・・・・・・・・



3760作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

左奴流欲波 於保久安礼杼母 毛能毛波受 夜須久奴流欲波 佐祢奈伎母能乎

さ寝る夜は 多くあれども 物思はず 安く寝る夜は さねなきものを 

さぬるよは おほくあれども ものもはず やすくぬるよは さねなきものを
・・・・・・・・・・・
寝る夜は幾夜もありますが

物思いせずに心安らかに寝る夜は

まったくありません
・・・・・・・・・・・



3741作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,異伝,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

伊能知乎之 麻多久之安良婆 安里伎奴能 安里弖能知尓毛 安波射良米也母 [一云 安里弖能乃知毛]

命をし 全くしあらば あり衣の ありて後にも 逢はざらめやも 
[一云 ありての後も]

いのちをし またくしあらば [ありきぬの] ありてのちにも あはざらめやも[ありてののちも]
・・・・・・・・・・・
命を大切にして

無事であったなら 

頂いた衣の色が果てた後にも

あなたに逢えないことなど

どうしてあるでしょうか 
・・・・・・・・・・・



3742作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安波牟日乎 其日等之良受 等許也未尓 伊豆礼能日麻弖 安礼古非乎良牟

逢はむ日を その日と知らず 常闇に いづれの日まで 吾れ恋ひ居らむ 

あはむひを そのひとしらず [とこやみに] いづれのひまで あれこひをらむ
・・・・・・・・・・・
貴女に逢える日

その日はいつとも知れない 

まるで無限の闇の中で

私はいつまでも

虚しく恋しさまよう
・・・・・・・・・・・



3743作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

多婢等伊倍婆 許等尓曽夜須伎 須久奈久毛 伊母尓戀都々 須敝奈家奈久尓

旅といへば 言にぞやすき すくなくも 妹に恋ひつつ すべなけなくに 

たびといへば ことにぞやすき すくなくも いもにこひつつ すべなけなくに
・・・・・・・・・・・
旅とだけなら言葉は簡単ですが

貴女との恋を裂かれ 

引き離される私には 

旅などというものではないのです
・・・・・・・・・・・



3744作者:中臣宅守,贈答,配流,枕詞,恋,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

和伎毛故尓 古布流尓安礼波 多麻吉波流 美自可伎伊能知毛 乎之家久母奈思

吾妹子に 恋ふるに吾れは たまきはる 短き命も 惜しけくもなし 

わぎもこに こふるにあれは [たまきはる] みじかきいのちも をしけくもなし
・・・・・・・・・・・
命の限りに恋しい 

もし逢えるなら 

こんな短い命など 

惜しくはない
・・・・・・・・・・・



3745作者:狭野弟上娘子,贈答,配流,悲別,慰撫,恋,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

伊能知安良婆 安布許登母安良牟 和我由恵尓 波太奈於毛比曽 伊能知多尓敝波

命あらば 逢ふこともあらむ 吾がゆゑに はだな思ひそ 命だに経ば 

いのちあらば あふこともあらむ わがゆゑに はだなおもひそ いのちだにへば
・・・・・・・・・・・
命があれば

逢うこともありましょう

私のために

そんなにくよくよしないで下さい

命を大切にしてほしい

また逢う日のために
・・・・・・・・・・・



3746作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

<比>等能宇々流 田者宇恵麻佐受 伊麻佐良尓 久尓和可礼之弖 安礼波伊可尓勢武

人の植うる 田は植ゑまさず 今さらに 国別れして 吾れはいかにせむ 

ひとのううる たはうゑまさず いまさらに くにわかれして あれはいかにせむ
・・・・・・・・・・・
人皆が田植えをする季節に

いつもなら

貴方が植える田なのに

今は国を遠く離れておいでです

私はどうすればよいのでしょうか
・・・・・・・・・・・



3747作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

和我屋度能 麻都能葉見都々 安礼麻多無 波夜可反里麻世 古非之奈奴刀尓

吾が宿の 松の葉見つつ 吾れ待たむ 早帰りませ 恋ひ死なぬとに 

わがやどの まつのはみつつ あれまたむ はやかへりませ こひしなぬとに
・・・・・・・・・・・
家の庭の松の葉を見ながら

その名の通り

私は待っていましょう

早く帰って来て下さい

恋して恋死をしないうちに
・・・・・・・・・・・



3748作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

比等久尓波 須美安之等曽伊布 須牟也氣久 波也可反里万世 古非之奈奴刀尓

他国は 住み悪しとぞ言ふ 速けく 早帰りませ 恋ひ死なぬとに 

ひとくには すみあしとぞいふ すむやけく はやかへりませ こひしなぬとに
・・・・・・・・・・・
異国は何かと住みにくいでしょう

すみやかに

早くお帰り下さいませんか

私が恋い死にしてしまわないうちに
・・・・・・・・・・・
* 他動詞の「います」(「いさせる」意の尊敬語)は下二段活用。(いませ-いませ-います-いまする-いますれ-いませよ)
 



3749作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

比等久尓々 伎美乎伊麻勢弖 伊<都><麻>弖可 安我故非乎良牟 等伎乃之良奈久

他国に 君をいませて いつまでか 吾が恋ひ居らむ 時の知らなく 

ひとくにに きみをいませて いつまでか あがこひをらむ ときのしらなく
・・・・・・・・・・・
他国にあなたを行かせて

いつまで

私は恋いながらおりましょうか

どれほどの時なのか

分からないのです
・・・・・・・・・・・



3750作者:狭野弟上娘子,贈答,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安米都知乃 曽許比能宇良尓 安我其等久 伎美尓故布良牟 比等波左祢安良自

天地の 底ひのうらに 吾がごとく 君に恋ふらむ 人はさねあらじ 

あめつちの そこひのうらに あがごとく きみにこふらむ ひとはさねあらじ
・・・・・・・・・・・
天地をひっくり返し

表も裏も探しても

私ほど

あなたを恋している女は

決していないでしょう
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3731作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

於毛布恵尓 安布毛能奈良婆 之末思久毛 伊母我目可礼弖 安礼乎良米也母

思ふゑに 逢ふものならば しましくも 妹が目離れて 吾れ居らめやも 

おもふゑに あふものならば しましくも いもがめかれて あれをらめやも
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思い慕いあえば逢えるものなら

どうして逢えないのだろう

嫁さまの目から離れて

私はどこにいることが出来るだろう

片時の間も忘れない貴女なのに
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* 「しまし‐く」暫  〔副〕「く」は副詞語尾。多く下に助詞「も」を伴って用いる。  しばらく。少しの間。しまし。



3732作者:中臣宅守,贈答,恋情,枕詞,恋,配流,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安可祢佐須 比流波毛能母比 奴婆多麻乃 欲流波須我良尓 祢能<未>之奈加由

あかねさす 昼は物思ひ ぬばたまの 夜はすがらに 音のみし泣かゆ 

[あかねさす] ひるはものもひ [ぬばたまの] よるはすがらに ねのみしなかゆ
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昼はあなたを偲んで物思いに沈み

夜は一晩中声をあげて忍び泣いているんだ
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* 「すがらに」 (副) ずっと通して。始めから終わりまで。




3733作者:中臣宅守,贈答,恋,配流,孤独,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

和伎毛故我 可多美能許呂母 奈可里世婆 奈尓毛能母弖加 伊能知都我麻之

吾妹子が 形見の衣 なかりせば 何物もてか 命継がまし 

わぎもこが かたみのころも なかりせば なにものもてか いのちつがまし
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愛しい貴女がくれたこの形見の衣 

もしこれがなかったら

私の命は何のためにあるのか 

分からなくなったろう
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3734作者:中臣宅守,配流,恋情,異伝,贈答,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

等保伎山 世伎毛故要伎奴 伊麻左良尓 安布倍伎与之能 奈伎我佐夫之佐 [一云 左必之佐]

遠き山 関も越え来ぬ 今さらに 逢ふべきよしの なきが寂しさ 
[一云 さびしさ]

とほきやま せきもこえきぬ いまさらに あふべきよしの なきがさぶしさ,[さびしさ]
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遠い山も関所も越えて来た

もう今となっては

あなたに逢う手だてがないのが寂しい
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* 詞書によれば、狹野茅上娘子は後宮の蔵部に属していた女官であったらしい。その女と結婚したときに、男が罪を得たと書いてある。文面からは即重婚とは受け取れぬので、重婚ではなく、たまたま結婚の時期に別の罪に問われたのだとする見解もある。



3735作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

於毛波受母 麻許等安里衣牟也 左奴流欲能 伊米尓毛伊母我 美延射良奈久尓

思はずも まことあり得むや さ寝る夜の 夢にも妹が 見えざらなくに 

おもはずも まことありえむや さぬるよの いめにもいもが みえざらなくに
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貴女を思わないでいることが

本当にありうることか

寝る夜の夢にさえ貴女が 

現れない事はないのに
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3736作者:中臣宅守,贈答,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

等保久安礼婆 一日一夜毛 於<母>波受弖 安流良牟母能等 於毛保之賣須奈

遠くあれば 一日一夜も 思はずて あるらむものと 思ほしめすな 

とほくあれば ひとひひとよも おもはずて あるらむものと おもほしめすな
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遠く離れているからと 

私が貴女の事を

一日一夜のうちの僅かな間でも
 
忘れることがあろうなどと

ゆめにもお思いにならないでください
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3737作者:中臣宅守,配流,贈答,恋,悲別,恨,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

比等余里波 伊毛曽母安之伎 故非毛奈久 安良末<思>毛能乎 於毛波之米都追

人よりは 妹ぞも悪しき 恋もなく あらましものを 思はしめつつ 

ひとよりは いもぞもあしき こひもなく あらましものを おもはしめつつ
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私より貴女の方が悪いのです

恋などなければ

このように貴女のことばかり

思いはしないのに
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3738作者:贈答,配流,恋,悲別,枕詞,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

於毛比都追 奴礼婆可毛<等>奈 奴婆多麻能 比等欲毛意知受 伊米尓之見由流

思ひつつ 寝ればかもとな ぬばたまの 一夜もおちず 夢にし見ゆ 

おもひつつ ぬればかもとな [ぬばたまの] ひとよもおちず いめにしみゆる
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あなたを思いながら寝るからか

一夜も欠けることなく

あなたを夢に見る
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3739作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,後悔,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

可久婆可里 古非牟等可祢弖 之良末世婆 伊毛乎婆美受曽 安流倍久安里家留

かくばかり 恋ひむとかねて 知らませば 妹をば見ずぞ あるべくありける 

かくばかり こひむとかねて しらませば いもをばみずぞ あるべくありける
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こんなにも恋しくなるなら 

あなたと出逢わなければ良かった
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3740作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安米都知能 可未奈伎毛能尓 安良婆許曽 安我毛布伊毛尓 安波受思仁世米

天地の 神なきものに あらばこそ 吾が思ふ妹に 逢はず死にせめ  

[あめつちの] かみなきものに あらばこそ あがもふいもに あはずしにせめ
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世の中に神々がおられないのなら 

恋しい貴女に逢わずに死ぬだろうが

神々いてくださるから

きっと逢えますとも
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* 「あら ば こそ」(条件句を構成して、これを受ける句に推量の助動詞を伴うのが普通)もしあれば。…であれば。全体で、「ないのだから(…ではないのだから)…しない」という反語的な気持を表わす。



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