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3631遣新羅使,山口,岩国,土地讃美,恋 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 伊都之可母 見牟等於毛比師 安波之麻乎 与曽尓也故非無 由久与思<乎>奈美 いつしかも みむとおもひし あはしまを よそにやこひむ ゆくよしをなみ ・・・・・・・・・・・
いつか見たいと思ってきた粟島を 遠くからしか見ることができません 恋しい粟島よ 行く方法がないのです ・・・・・・・・・・・ 3632遣新羅使,山口,岩国,土地讃美 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 大船尓 可之布里多弖天 波麻藝欲伎 麻里布能宇良尓 也杼里可世麻之 おほぶねに かしふりたてて はまぎよき まりふのうらに やどりかせまし ・・・・・・・・・・・
この大船からカシの棒杭を打ち立て 浜が清い麻里布の浦に 泊まってゆくことができないものか ・・・・・・・・・・・ 3633遣新羅使,岩国,山口,望郷,恋 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 安波思麻能 安波自等於毛布 伊毛尓安礼也 夜須伊毛祢受弖 安我故非和多流 [あはしまの] あはじとおもふ いもにあれや やすいもねずて あがこひわたる ・・・・・・・・・・・
粟島は逢はじということでしょうか 貴女のことを思い浮かべて 安眠することも出来ないでいます これが恋しているということなのか ・・・・・・・・・・・ 3634遣新羅使,岡山,山口,岩国,望郷,恋 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 筑紫道能 可太能於保之麻 思末志久母 見祢婆古非思吉 伊毛乎於伎弖伎奴 [つくしぢの かだのおほしま] しましくも みねばこひしき いもをおきてきぬ ・・・・・・・・・・・
筑紫路の可太の大島よ しばらくでも見ていないと恋しい妻を 私は郷へ置いてきてしまったのだ ・・・・・・・・・・・ 3635遣新羅使,天平8年,山口,岩国,望郷,恋,土地讃美 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 伊毛我伊敝治 知可久安里世婆 見礼杼安可奴 麻里布能宇良乎 見世麻思毛能乎 いもがいへぢ ちかくありせば みれどあかぬ まりふのうらを みせましものを ・・・・・・・・・・・
* 「見れど飽かぬ」は、土地神礼賛、安全祈願。土地讃美。妻の住む家が近くにあれば いくら見ていても飽くことのない麻里布の浦を 見せたいものですが ・・・・・・・・・・・ 3636遣新羅使,山口,上関町,望郷,掛詞 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 伊敝妣等波 可敝里波也許等 伊波比之麻 伊波比麻都良牟 多妣由久和礼乎 いへびとは かへりはやこと [いはひしま] いはひまつらむ たびゆくわれを ・・・・・・・・・・・
郷に残る家族たちは 伊波比島 その名のように 斎って待っているでしょう 旅を行く私の早い無事な帰りを ・・・・・・・・・・・ 3637遣新羅使,枕詞,山口,上関町,土地讃美,掛詞 [題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首) 久左麻久良 多妣由久比等乎 伊波比之麻 伊久与布流末弖 伊波比伎尓家牟 [くさまくら] たびゆくひとを [いはひしま] いくよふるまで いはひきにけむ ・・・・・・・・・・・
草枕で旅ゆく人の 無事を祈ってきたという その伊波比島 幾代の昔から 斎い続けて来たのだろう ・・・・・・・・・・・ 3638遣新羅使,土地讃美,山口,大畠瀬戸,叙景,追想 [題詞]過大嶋鳴門而經再宿之後追作歌二首 巨礼也己能 名尓於布奈流門能 宇頭之保尓 多麻毛可流登布 安麻乎等女杼毛 これやこの なにおふなるとの うづしほに たまもかるとふ あまをとめども ・・・・・・・・・・・
これがまあ 名高い鳴門の渦潮に 美しい藻を刈るという海女の娘たちなのか ・・・・・・・・・・・ 3639遣新羅使,羈旅,山口,大畠瀬戸,追想 [題詞](過大嶋鳴門而經再宿之後追作歌二首) 奈美能宇倍尓 宇伎祢世之欲比 安杼毛倍香 許己呂我奈之久 伊米尓美要都流 なみのうへに うきねせしよひ あどもへか こころがなしく いめにみえつる ・・・・・・・・・・・
波の上で浮き寝をした夜 どうして思ったのか 心悲しく 妻の姿が夢に見えた ・・・・・・・・・・・ 3640遣新羅使,羽栗,枕詞,山口,上関町,望郷 [題詞]熊毛浦舶泊之夜作歌四首 美夜故邊尓 由可牟船毛我 可里許母能 美太礼弖於毛布 許登都ん夜良牟 みやこへに ゆかむふねもが [かりこもの] みだれておもふ ことつげやらむ ・・・・・・・・・・・
都の方に行く船が欲しい 刈り薦のように乱れ散る この思いを妻に言告げしたい ・・・・・・・・・・・ |
・万葉集(〃)
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3628遣新羅使,望郷,岡山,倉敷,広島,倉橋島,孤独 [題詞](属物發思歌一首[并短歌])反歌二首 多麻能宇良能 於伎都之良多麻 比利敝礼杼 麻多曽於伎都流 見流比等乎奈美 たまのうらの おきつしらたま ひりへれど またぞおきつる みるひとをなみ ・・・・・・・・・・・
玉の浦の沖から打ち寄せられた白玉を拾ったけれど また浜の砂のなかへ還えしてしまった 見せる妻もいないので ・・・・・・・・・・・ 3629遣新羅使,望郷,広島,倉橋島,孤独 [題詞]((属物發思歌一首[并短歌])反歌二首) 安伎左良婆 和<我>布祢波弖牟 和須礼我比 与世伎弖於家礼 於伎都之良奈美 あきさらば わがふねはてむ わすれがひ よせきておけれ おきつしらなみ ・・・・・・・・・・・
秋になったら私の船を再びここに泊めよう 物思いを忘れさせる忘れ貝を 波にのせ寄せて置いといてくれ 沖に立つ白波よ ・・・・・・・・・・・ 3630遣新羅使,天平8年,土地讃美,山口,岩国 [題詞]周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首 真可治奴伎 布祢之由加受波 見礼杼安可奴 麻里布能宇良尓 也杼里世麻之乎 まかぢぬき ふねしゆかずは [みれどあかぬ] まりふのうらに やどりせましを ・・・・・・・・・・・
ふなばたに立派な櫂を取り付けた官船でなければ 見ていて飽きない麻里布の浦に泊まりましょうものを 素通りする無礼を麻里布の神よお赦しあれ ・・・・・・・・・・・ |
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3621遣新羅使,広島,倉橋島,土地讃美 [題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首) 和我伊能知乎 奈我刀能之麻能 小松原 伊久与乎倍弖加 可武佐備和多流 [わがいのちを] なが]とのしまの こまつばら いくよをへてか かむさびわたる ・・・・・・・・・・・
* 「経」は、ハ行下二段活用動詞「経(ふ)」の連用形「経(ふ)」わが命を長くと思い見る 長門の島の小松原は どれほどの年月を経て あたり一面に かくも神々しい姿になったのだろう ・・・・・・・・・・・ * 「て」は、完了助動詞「つ」の連用形。 * 「か」時間が経ってしまったのか。 * 「神さび」は「神々しい。おごそかである」。 * 「わたる」は補助動詞。「あたり一面に〜する。広く〜する」。 3622遣新羅使,船出,出発,広島,倉橋島 [題詞]従長門浦舶<出>之夜仰觀月光作歌三首 月余美乃 比可里乎伎欲美 由布奈藝尓 加古能己恵欲妣 宇良<未>許具可聞 [つくよみの] ひかりをきよみ ゆふなぎに かこのこゑよび うらみこぐかも ・・・・・・・・・・・
夕凪の中を水手が声を合わせて 浦に沿って付近を漕いでいるらしい ・・・・・・・・・・・ 3623遣新羅使,広島,倉橋島,叙景,船出 [題詞](従長門浦舶<出>之夜仰觀月光作歌三首) 山乃波尓 月可多夫氣婆 伊射里須流 安麻能等毛之備 於伎尓奈都佐布 やまのはに つきかたぶけば いざりする あまのともしび おきになづさふ ・・・・・・・・・・・
* 「つきかたぶけば」は、已然形+「ば」で、偶然条件「〜すると、たまたま…」。山の端に月が傾くと 漁をしている海人の灯火が沖にともって 波の間に見え隠れする ・・・・・・・・・・・ * 「なづさふ」は「水に浮かび漂う。水に浸る」。 3624遣新羅使,広島,倉橋島,出発,船出,叙景 [題詞](従長門浦舶<出>之夜仰觀月光作歌三首) 和礼乃未夜 欲布祢波許具登 於毛敝礼婆 於伎敝能可多尓 可治能於等須奈里 われのみや よふねはこぐと おもへれば おきへのかたに かぢのおとすなり ・・・・・・・・・・・
我々だけが夜船を漕ぐと思っていると 沖合からも船を漕ぐ楫の音が聞こえる ・・・・・・・・・・・ 3625遣新羅使,挽歌,古歌,作者:丹比大夫,笠麻呂,悲別,望郷,広島,倉橋島 [題詞]古挽歌一首[并短歌] ・・・・・・・・・・・
由布左礼婆ー夕さればーゆふさればー夕方になると 安之敝尓佐和伎ー葦辺に騒きーあしへにさわきー葦辺に鳴き騒ぎ 安氣久礼婆ー明け来ればーあけくればー夜が明けて来ると 於伎尓奈都佐布ー沖になづさふーおきになづさふー沖の波間に漂う 可母須良母ー鴨すらもーかもすらもー鴨でさえも 都麻等多具比弖ー妻とたぐひてーつまとたぐひてー妻と連れだって 和我尾尓波ー吾が尾にはーわがをにはー私の尾羽に 之毛奈布里曽等ー霜な降りそとーしもなふりそとー霜よ降るなと 之<路>多倍乃ー白栲のー[しろたへの]ー 波祢左之可倍弖ー羽さし交へてーはねさしかへてー白い羽をさし交わし 宇知波良比ーうち掃ひーうちはらひー霜を払い合って 左宿等布毛能乎ーさ寝とふものをーさぬとふものをー寝るというものを 由久美都能ー行く水のーゆくみづのー流れゆく水が 可敝良奴其等久ー帰らぬごとくーかへらぬごとくー戻らないように 布久可是能ー吹く風のーふくかぜのー吹く風が 美延奴我其登久ー見えぬがごとくーみえぬがごとくー目に見えないように 安刀毛奈吉ー跡もなきーあともなきー残る跡すらも無い 与能比登尓之弖ー世の人にしてーよのひとにしてー世の中の人として 和可礼尓之ー別れにしーわかれにしー死んで逝った 伊毛我伎世弖思ー妹が着せてしーいもがきせてしー貴女が着せてくれた 奈礼其呂母ーなれ衣ーなれごろもー着なれた衣 蘇弖加多思吉弖ー袖片敷きてーそでかたしきてー袖の片側を床に敷いて 比登里可母祢牟ーひとりかも寝むーひとりかもねむー私は一人で寝るのか ・・・・・・・・・・・ 3626遣新羅使,挽歌,古歌,作者:丹比大夫,笠麻呂,悲別,望郷,広島,倉橋島 [題詞](古挽歌一首[并短歌])反歌一首 多都我奈伎 安之<敝>乎左之弖 等妣和多類 安奈多頭多頭志 比等里佐奴礼婆 たづがなき あしへをさして とびわたる あなたづたづし ひとりさぬれば ・・・・・・・・・・・
鶴が鳴いて葦辺をさして渡ってゆくなあ 妻を呼んでいるのだろう ああ心細くおぼつかないことよ 一人寝をするということは ・・・・・・・・・・・ 3627遣新羅使,道行き,大阪,兵庫,岡山,広島,倉橋島,序詞,枕詞,望郷,孤独 [題詞]属物發思歌一首[并短歌] ・・・・・・・・・・・
安佐散礼婆ー朝さればーあささればー朝になれば 伊毛我手尓麻久ー妹が手にまくーいもがてにまくー妻が手にとる鏡 可我美奈須ー鏡なすー[かがみなす]ー 美津能波麻備尓ー御津の浜びにーみつのはまびにーそのミつの浜べで 於保夫祢尓ー大船にーおほぶねにー大船の舷側に 真可治之自奴伎ー真楫しじ貫きーまかぢしじぬきー櫂を並べて取り付け 可良久尓々ー韓国にーからくににー韓国(からくに)に 和多理由加武等ー渡り行かむとーわたりゆかむとー渡航しようと 多太牟可布ー直向ふーただむかふーまずは 美奴面乎左指天ー敏馬をさしてーみぬめをさしてー兵庫の敏馬をさして 之保麻知弖ー潮待ちてーしほまちてー潮を待って 美乎妣伎由氣婆ー水脈引き行けばーみをひきゆけばー海流にそって行くと 於伎敝尓波ー沖辺にはーおきへにはー沖合の 之良奈美多可美ー白波高みーしらなみたかみー高立つ白波を避けて 宇良<未>欲理ー浦廻よりーうらみよりー岸伝いに 許藝弖和多礼婆ー漕ぎて渡ればーこぎてわたればー漕ぎ渡ると 和伎毛故尓ー吾妹子にーわぎもこにーわが妻に 安波治乃之麻波ー淡路の島はーあはぢのしまはーアウとの淡路の島は 由布左礼婆ー夕さればーゆふさればー夕べには 久毛為可久里奴ー雲居隠りぬーくもゐかくりぬー雲居に隠れ 左欲布氣弖ーさ夜更けてーさよふけてー夜が更けると 由久敝乎之良尓ーゆくへを知らにーゆくへをしらにーゆくえも知れず 安我己許呂ー吾が心ーあがこころーわが心が 安可志能宇良尓ー明石の浦にーあかしのうらにー明るいという名の明石の浦に 布祢等米弖ー船泊めてーふねとめてー船を泊めて 宇伎祢乎詞都追ー浮寝をしつつーうきねをしつつー海上で浮寝をしながら 和多都美能ー[わたつみの]ー 於<枳>敝乎見礼婆ー沖辺を見ればーおきへをみればー海原の沖を見ると 伊射理須流ー漁りするーいざりするー漁をする 安麻能乎等女波ー海人の娘子はーあまのをとめはー海人の乙女は 小船乗ー小舟乗りーをぶねのりー小船を操り 都良々尓宇家里ーつららに浮けりーつららにうけりーずらりと並んで浮いている 安香等吉能ー暁のーあかときのー暁に 之保美知久礼婆ー潮満ち来ればーしほみちくればー潮が満ちて来ると 安之辨尓波ー葦辺にはーあしべにはー岸の葦辺に 多豆奈伎和多流ー鶴鳴き渡るーたづなきわたるー鶴が鳴き渡る 安左奈藝尓ー朝なぎにーあさなぎにー朝凪の中で 布奈弖乎世牟等ー船出をせむとーふなでをせむとー船を出そうと 船人毛ー船人もーふなびともー船頭も 鹿子毛許恵欲妣ー水手も声呼びーかこもこゑよびー水手も声を揃えて 柔保等里能ーにほ鳥のーにほどりのーカイツブリのように 奈豆左比由氣婆ーなづさひ行けばー波にゆられて行くと 伊敝之麻婆ー家島はーいへしまはー目指す家島は 久毛為尓美延奴ー雲居に見えぬーくもゐにみえぬー雲のかなたに見えてきた 安我毛敝流ー吾が思へるーあがもへるー家へのわが思いが 許己呂奈具也等ー心なぐやとーこころなぐやとー心慰められようかと 波夜久伎弖ー早く来てーはやくきてー一時も早く 美牟等於毛比弖ー見むと思ひてーみむとおもひてー見たいと思って 於保夫祢乎ー大船をーおほぶねをー大船を 許藝和我由氣婆ー漕ぎ吾が行けばーこぎわがゆけばー力一杯漕いで行くが 於伎都奈美ー沖つ波ーおきつなみー沖の波は 多可久多知伎奴ー高く立ち来ぬーたかくたちきぬーいよいよ高く立って来た 与曽能<未>尓ー外のみにーよそのみにーやむなく遠くから 見都追須疑由伎ー見つつ過ぎ行きーみつつすぎゆきー見るばかりで過ぎ 多麻能宇良尓ー玉の浦にーたまのうらにー玉の浦に 布祢乎等杼米弖ー船を留めてーふねをとどめてー船を留めて 波麻備欲里ー浜びよりーはまびよりーその浜べから 宇良伊蘇乎見都追ー浦礒を見つつーうらいそをみつつーあたりの浦磯を眺めていると 奈久古奈須ー泣く子なすーなくこなすー子供のように涙流れ 祢能未之奈可由ー音のみし泣かゆーねのみしなかゆー泣き声が出てしまう 和多都美能ー[わたつみの]ーせめて海神が 多麻伎能多麻乎ー手巻の玉をーたまきのたまをー腕飾りにするという玉を 伊敝都刀尓ー家づとにーいへづとにー土産に 伊毛尓也良牟等ー妹に遣らむとーいもにやらむとー妻に持ち帰ろうと 比里比登里ー拾ひ取りーひりひとりー拾い 素弖尓波伊礼弖ー袖には入れてーそでにはいれてー袖に入れても 可敝之也流ー帰し遣るーかへしやるー家へ送り帰す 都可比奈家礼婆ー使ひなければーつかひなければー使もなければ 毛弖礼杼毛ー持てれどもーもてれどもー持っていても 之留思乎奈美等ー験をなみとーしるしをなみとー何の役にもたたないと 麻多於伎都流可毛ーまた置きつるかもーまたおきつるかもーまた海に返してしまった ・・・・・・・・・・・ |
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3611遣新羅使,作者:柿本人麻呂,古歌,七夕 [題詞]七夕歌一首 於保夫祢尓 麻可治之自奴伎 宇奈波良乎 許藝弖天和多流 月人乎登○ おほぶねに まかぢしじぬき うなはらを こぎでてわたる つきひとをとこ ・・・・・・・・・・・
* 「真楫」船縁に付けた舟を漕ぐ楫。大船の両舷いっぱいに ずらりと立派な艪を通して 天の河を漕ぎだし渡って行くのは 月人壮子の乗った舟ではありませんか ・・・・・・・・・・・ * 「繁貫く」は、「たくさん取り付ける」意。 3612遣新羅使,広島,三原,作者:壬生宇太麻呂,枕詞,旋頭歌,望郷 [題詞]備後國水調郡長井浦舶泊之夜作歌三首 安乎尓与之 奈良能美也故尓 由久比等毛我母 久左麻久良 多妣由久布祢能 登麻利都ん武仁 [旋頭歌也] [あをによし] ならのみやこに ゆくひともがも [くさまくら] たびゆくふねの とまりつげむに ・・・・・・・・・・・
麗しの奈良の都に行く人はいないか 旅行く夜の船泊りの様子を 妻に告げてほしいから ・・・・・・・・・・・ 3613遣新羅使,広島,三原,望郷 [題詞](備後國水調郡長井浦舶泊之夜作歌三首) 海原乎 夜蘇之麻我久里 伎奴礼杼母 奈良能美也故波 和須礼可祢都母 うなはらを やそしまがくり きぬれども ならのみやこは わすれかねつも ・・・・・・・・・・・
昼間は広い海原を 多くの島々に隠れながら来たけれど どうしても奈良の都が忘れられない ・・・・・・・・・・・ 3614遣新羅使,広島,三原,みやげ [題詞](備後國水調郡長井浦舶泊之夜作歌三首) 可敝流散尓 伊母尓見勢武尓 和多都美乃 於伎都白玉 比利比弖由賀奈 かへるさに いもにみせむに [わたつみの] おきつしらたま ひりひてゆかな ・・・・・・・・・・・
* 「かえる‐さ」 帰るさ。 帰る時。帰りがけ。帰ったときに妻に見せるのに 海神が水底におさめているという真珠を 海に潜り拾って行こう 新羅の土産に ・・・・・・・・・・・ 3615遣新羅使,広島,安芸津町,望郷 [題詞]風速浦舶泊之夜作歌二首 和我由恵仁 妹奈氣久良之 風早能 宇良能於伎敝尓 奇里多奈妣家利 わがゆゑに いもなげくらし かざはやの うらのおきへに きりたなびけり ・・・・・・・・・・・
私のために妻が嘆いている 風早の浦の沖に 霧がたなびいている ・・・・・・・・・・・ 3616遣新羅使,広島,安芸津町,望郷 [題詞](風速浦舶泊之夜作歌二首) 於伎都加是 伊多久布伎勢波 和伎毛故我 奈氣伎能奇里尓 安可麻之母能乎 おきつかぜ いたくふきせば わぎもこが なげきのきりに あかましものを ・・・・・・・・・・・
風よもっとしっかり吹け 沖でたゆたう妻の嘆きの霧の中に わたしを包みこむんだ 飽きるほどしっかりと 包まれてしまいたいから ・・・・・・・・・・・ サ3617天平八年遣新羅使,望郷,広島,倉橋島,作者:大石蓑麻呂 [題詞]安藝國長門嶋(今の広島県呉市の倉橋島)舶泊礒邊作歌五首 伊波婆之流 多伎毛登杼呂尓 鳴蝉乃 許恵乎之伎氣婆 京師之於毛保由 [いはばしる たきもとどろに] なくせみの こゑをしきけば みやこしおもほゆ ・・・・・・・・・・・
* 「石走る」は枕詞。「滝」「垂水」などにかかる。岩根を逆巻き下る水轟きにも劣らず 響きわたる蝉の声を聞くと おのずと奈良の都を思い出させる ・・・・・・・・・・・ * 「瀧」は、急流・激流を意味する。 * 「とどろ(轟)に」は、副詞。響きわたる音を表す。「鳴く蝉」の比喩。 * 「し」は強調の副助詞。 * 「聞け」は、カ行四段活用動詞「聞く」の已然形。 * 「ば」は、偶然条件の接続助詞。聞くと。 * 「思ほ」は、ハ行四段活用動詞「思ふ」の未然形。 * 「ゆ」は、自発の助動詞(上代)が転じたもの。おのずと思い起こされる。 * 「瀧と蝉」は、船旅に必要な「水」の補給が出来る場所での風景。 サ3618遣新羅使,広島,倉橋島,望郷 [題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首) 夜麻河<泊>能 伎欲吉可波世尓 安蘇倍杼母 奈良能美夜故波 和須礼可祢都母 やまがはの きよきかはせに あそべども ならのみやこは わすれかねつも ・・・・・・・・・・・
* 「ども」は逆接の接続助詞で「〜けれども」。長門の倉橋島の 流れる山川の瀬は清く 遊べば楽しい それでも心は奈良の都から離れない ・・・・・・・・・・・ * 「忘れ」は、ラ行下二段活用動詞「忘る」の連用形。 * 「かね」は、補助動詞「かぬ」の未然形。 * 「つ」は、確定の助動詞。 * 「も」は、詠嘆の終助詞。 忘れかねることですよ。 3619遣新羅使,広島,倉橋島,望郷 [題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首) 伊蘇乃麻由 多藝都山河 多延受安良婆 麻多母安比見牟 秋加多麻氣弖 いそのまゆ たぎつやまがは たえずあらば またもあひみむ あきかたまけて ・・・・・・・・・・・
* 「ま-く」 推量の助動詞「む」の未然形「ま」に,活用語を名詞化する接尾語「く」が連なったもの。未来の推量を表す。・・だろうこと。・・しようとすること,の意。岩の間を激しく流れる山の水が絶えないなら また還って再び見よう 秋になるころに ・・・・・・・・・・・ * 「かたまけて」 秋 片設けて(副詞)秋になって。 3620遣新羅使,広島,倉橋島,望郷 [題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首) 故悲思氣美 奈具左米可祢弖 比具良之能 奈久之麻可氣尓 伊保利須流可母 こひしげみ なぐさめかねて ひぐらしの なくしまかげに いほりするかも ・・・・・・・・・・・
妻恋しの想いに耐えかねてながら ひぐらしの鳴く島蔭で仮の廬りをしよう ・・・・・・・・・・・ |
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3598 遣新羅使 奴波多麻能 欲波安氣奴良之 多麻能宇良尓 安佐里須流多豆 奈伎和多流奈里 [ぬばたまの] よはあけぬらし たまのうらに あさりするたづ なきわたるなり ・・・・・・・・・・・
暗い夜はやっと明けるらしい 倉敷の玉の浦で 餌をあさっていた鶴の 鳴き声が聞こえていたが 今は飛んでいくようだ ・・・・・・・・・・・ 3599遣新羅使,広島,福山市,羈旅 月余美能 比可里乎伎欲美 神嶋乃 伊素<未>乃宇良由 船出須和礼波 つくよみの ひかりをきよみ かみしまの いそみのうらゆ ふなですわれは ・・・・・・・・・・・
月の光が清らかなので 神島の磯廻の浦から 船出をするよ 私たちは ・・・・・・・・・・・ 3600遣新羅使,羈旅,福山,広島 波奈礼蘇尓 多弖流牟漏能木 宇多我多毛 比左之伎時乎 須疑尓家流香母 はなれそに たてるむろのき うたがたも ひさしきときを すぎにけるかも ・・・・・・・・・・・
* 「うたがた‐も」[副]《平安時代以後「うたかたも」とも》 必ず。きっと。離れ島の磯に立っているあのむろの木は きっと途方もなく久しい年月を 神とともに過ごして来たのだろうな ・・・・・・・・・・・ * 「むろの木」 杜松(ネズ) 3601遣新羅使,羈旅,福山,広島 之麻思久母 比等利安里宇流 毛能尓安礼也 之麻能牟漏能木 波奈礼弖安流良武 しましくも ひとりありうる ものにあれや しまのむろのき はなれてあるらむ ・・・・・・・・・・・
暫くでも独りでいられない 独りで生きる そんなことが出来るのだろうか だが 島の杜松(としよう)の大木は ひとり離れて立っている ・・・・・・・・・・・ 3602遣新羅使,古歌,枕詞,望郷 安乎尓余志 奈良能美夜古尓 多奈妣家流 安麻能之良久毛 見礼杼安可奴加毛 [あをによし] ならのみやこに たなびける あまのしらくも みれどあかぬかも ・・・・・・・・・・・
* 「見れど飽かぬかも」は「地霊」への祈祷文。「地霊」は、土地の精霊や神をいう。その代表的神格が地母神である。一般に、大地の神は女性神と考えられており、アフリカやアメリカ、ポリネシアなど各地に、大地(女神)が天(男神)と結合して自然界の万物を産み出したとする。 奈良の都にたなびく白雲は いくら見ていても飽きることはありません ・・・・・・・・・・・ 3603遣新羅使,古歌,望郷,恋 安乎<楊>疑能 延太伎里於呂之 湯種蒔 忌忌伎美尓 故非和多流香母 あをやぎの えだきりおろし ゆだねまき ゆゆしききみに こひわたるかも ・・・・・・・・・・・
* 「斎種」 斎み清めた種。多く稲の種についていう。「ゆ」は「五百」で多くの種をいうとも。青楊の枝を伐って 木鍬を作り斎種を播く 祭の神事を行う貴女に 心引かれています ・・・・・・・・・・・ * 「たねまき」種蒔き/種播き[名](スル)1 田や畑に植物の種をまくこと。播種(はしゅ)。種おろし。2 八十八夜の前後に、稲のもみを苗代にまくこと * 「ゆゆし」由由・忌忌〔形シク〕ゆゆしい。 〔形口〕ゆゆし〔形シク〕触れると重大な結果をもたらすので、触れてはならない。はばかるべきである。神聖であるので触れてはならない。恐れつつしむべきである。恐れ多い。恐ろしい。 3604遣新羅使,古歌,恋,望郷 妹我素弖 和可礼弖比左尓 奈里奴礼杼 比登比母伊毛乎 和須礼弖於毛倍也 いもがそで わかれてひさに なりぬれど ひとひもいもを わすれておもへや ・・・・・・・・・・・
あなたと袖を交えることから 久しく別れていますが 一日たりとも私が あなたを忘れたと思いますか ・・・・・・・・・・・ 3605遣新羅使,古歌,枕詞,恋,望郷,兵庫,姫路,船場川 和多都美乃 宇美尓伊弖多流 思可麻河<泊> 多延無日尓許曽 安我故非夜麻米 [わたつみの] うみにいでたる しかまがは たえむひにこそ あがこひやまめ ・・・・・・・・・・・
海神の海にそそぐ飾磨川の流れが もしも絶えるようなことがあれば それが貴女との恋の終わる時です ・・・・・・・・・・・ 3606遣新羅使,古歌,柿本人麻呂,枕詞,兵庫,淡路,道行き 多麻藻可流 乎等女乎須疑弖 奈都久佐能 野嶋我左吉尓 伊保里須和○波 たまもかる をとめをすぎて [なつくさの] のしまがさきに いほりすわれは ・・・・・・・・・・・
美しい藻を刈る乙女を見て行き過ぎ 夏草の茂る野島崎を船宿りにときめた わたしたちです ・・・・・・・・・・・ 3606S遣新羅使,古歌,作者:柿本人麻呂,兵庫,道行き 敏馬乎須疑弖 布祢知可豆伎奴 みぬめをすぎて ふねちかづきぬ ・・・・・・・・・・・
* 「敏馬」 神戸市東部、灘区の西郷川河口付近の古地名。敏馬を過ぎて 夏草の 野島が崎に 船は近づく ・・・・・・・・・・・ 3607遣新羅使,古歌,枕詞,兵庫,明石,柿本人麻呂 之路多倍能 藤江能宇良尓 伊<射>里須流 安麻等也見良武 多妣由久和礼乎 [しろたへの] ふぢえのうらに いざりする あまとやみらむ たびゆくわれを ・・・・・・・・・・・
白栲葛(ふぢ)の その藤江の浦で漁をする 海人だろうと思うだろう 旅を行く私を ・・・・・・・・・・・ 3607S遣新羅使,古歌,作者:柿本人麻呂,枕詞 安良多倍乃 須受吉都流 安麻登香見良武 [あらたへの] すずきつる あまとかみらむ ・・・・・・・・・・・
鱸でも釣っている 漁師さんに見えるだろうな ・・・・・・・・・・・ 3608遣新羅使,古歌,柿本人麻呂,明石,兵庫,望郷 安麻射可流 比奈乃奈我道乎 孤悲久礼婆 安可思能門欲里 伊敝乃安多里見由 [あまざかる] ひなのながちを こひくれば あかしのとより いへのあたりみゆ ・・・・・・・・・・・
ひなびた田舎から 帰る長い道のり わが家を恋しく思っていると 明石海峡から見えてきたよ 懐かしい大和の家のあたりが ・・・・・・・・・・・ 3608S遣新羅使、古歌,作者:柿本人麻呂,大和,奈良,明石,望郷 [題詞](當所誦詠古歌)柿本朝臣人麻呂歌曰 夜麻等思麻見由 やまとしまみゆ ・・・・・・・・・・・
大和の国が 見える ・・・・・・・・・・・ 3609遣新羅使,古歌,西宮,兵庫,柿本人麻呂,叙景,土地讃美 武庫能宇美能 尓波余久安良之 伊射里須流 安麻能都里船 奈美能宇倍由見由 むこのうみの にはよくあらし いざりする あまのつりぶね なみのうへゆみゆ ・・・・・・・・・・・
武庫の海はよい漁場らしい 海人の釣船が 波の上に見え隠れして 海いっぱいに集っているのが見える ・・・・・・・・・・・ 3609S遣新羅使,古歌,誦詠,枕詞,作者:柿本人麻呂,叙景,土地讃美,淡路,兵庫, 氣比乃宇美能 可里許毛能 美<太>礼弖出見由 安麻能都里船 けひのうみの [かりこもの] みだれていづみゆ あまのつりぶね ・・・・・・・・・・・
笥飯の海かあ 海一面に刈り薦を散らすように 漁師達の舟が大漁目指して出て行くよ ・・・・・・・・・・・ 3610遣新羅使,古歌,柿本人麻呂 安胡乃宇良尓 布奈能里須良牟 乎等女良我 安可毛能須素尓 之保美都良武賀 あごのうらに ふなのりすらむ をとめらが あかものすそに しほみつらむか ・・・・・・・・・・・
安胡の浦で船遊びをしているかな 娘子の赤い裳裾に 潮が満ちてきて しぶきで濡れているだろうな ・・・・・・・・・・・ 3610S遣新羅使,古歌,三重県,作者:柿本人麻呂 あみのうら たまものすそに ・・・・・・・・・・・
安胡の浦 娘子の美しい裳裾に ・・・・・・・・・・・ |


