ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

◎【万葉集再掲載】

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<個別再掲載>


8 1484 夏雑歌,作者:坂上郎女

[題詞]大伴坂上郎女歌一首

霍公鳥  痛莫鳴  獨居而  寐乃不所宿  聞者苦毛

霍公鳥 いたくな鳴きそ ひとり居て 寐の寝らえぬに 聞けば苦しも 

ほととぎす いたくななきそ ひとりゐて いのねらえぬに きけばくるしも

・・・・・・・・・・・・・・・・・
ほととぎすよ

そんなにまで鳴かないでよ

一人ぼっちで寝付けないのに

鳴声を聞くにつけて

よけいに辛くなるじゃないの
・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「に」は、活用語の連体形を承け、前後の文脈によって逆接・順接いずれにもなる。
○順接条件を示す。「〜につけて」などの意。
○逆接条件を示す。「〜のに」。
* 「も」は、ここでは文末についているので詠嘆を表す。
* 「寝・寐」(い)名詞。ねること。睡眠。朝寝・安寝やすい、などの熟語となるか、助詞を介して動詞「ぬ(寝・寐)」とともに用いられる。寐の寝らえずー寝ることが出来ない。寐も寝ずー寝ることもしない。
*(ね)祢、根、宿、鳴、哭、寐、泣、嶺、年、尼、音、啼、寝、姉、峯、喧
<個別欄へ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32967089.html
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サ4 617;相聞,作者:山口女王,大伴家持、恋情,贈答,序詞

[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)

従蘆邊  満来塩乃  弥益荷  念歟君之  忘金鶴

葦辺より 満ち来る潮の いや増しに 思へか君が 忘れかねつる 

[あしへより みちくるしほの] いやましに おもへ(か)きみが わすれかね(つる)

・・・・・・・・・・・・・・・
葦辺から潮が満ちて来るように

ますます募るのは恋の思いでしょうか

あなたのことが忘れられないでいます
・・・・・・・・・・・・・・・
出典・転載<和歌のための文語文法>
* 「か」は、係助詞。
* 疑問・反語をあらわし、連体形で結ぶ。
* 疑問をあらわす場合、「何か」「いつか」「誰か」「幾〜か」など、疑問詞を伴うことが多い(この点「や」とは異なる)。
* 反語をあらわす場合。
荒津の海 潮干潮満ち 時はあれど いづれの時(か) 我が恋ひざら(む)
 (万葉集、作者不詳)
* 「思へか」は「思へばか」の「ば」が略された形か。
  「思うので〜か」の意。「か」は係助詞で、結びは連体形「つる」。
* 【他の機能】
終助詞としてもはたらく。

* 【助詞との結合例】
「かも」 疑問の助詞「か」に詠嘆の助詞「も」が付いたもので、詠嘆を伴う疑問をあらわす。係助詞としてはたらく場合、連体形で結ぶ。(終助詞としても用いられる。)

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 独りかも寝む
 (拾遺集、柿本人麿)
誰しかも 尋(と)めて折りつる 春霞 立ちかくすらむ 山の桜を
 (古今集、紀貫之)

「かは」 疑問の助詞「か」に詠嘆の助詞「は」が付いたもの。詠嘆を伴う疑問の意をあらわす。連体形で結ぶ。(終助詞として文末に置かれる場合は反語の意をあらわす。)

何をかは 明くるしるしと 思ふべき 昼に変はらぬ夏 の夜の月
 (後拾遺、源資通)
今ははや 変はらぬ松も かげふりぬ 幾世かは経し 志賀の山寺
 (師兼千首、花山院師兼)
・・・・・・・
* 山口女王 やまぐちのおおきみ 生没年未詳、 伝不詳。

【主な派生歌】

下燃えに つのぐみわたる 葦辺より みちくる潮の 恋ひまさりつつ
 (藤原家隆)
夜な夜なは 身もうきぬべし 葦辺より みちくる潮の まさる思ひに
 (藤原定家)
いやましに ぬるる袖かな 葦辺より みちくる潮の からきうき世は
 (宗尊親王)
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サ332;雑歌,作者:大伴旅人,太宰府

[題詞](帥大伴卿歌五首)

吾命毛  常有奴可  昔見之  象<小>河乎  行見為

吾が命も 常にあらぬか 昔見し 象の小川を 行きて見むため 

わがいのちも つねにあらぬか むかしみし きさのをがはを ゆきてみむため
・・・・・・・・
いつまでも達者でいたいものだ 

昔見た象(きさ)の小川に

再び行って見なければ

そのためにも
・・・・・・・・・
* 「象の小河」は、「小路の小川」
この辺り、縄文から平安期の複合遺跡が発掘され、吉野離宮跡と推定されている。
* 「ぬか」は、打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」に付いて願望をあらわすことがある。「〜しないかなあ」。
* 係助詞としてもはたらく。
* 助詞「も」と呼応することが多い。特に万葉集では「〜も ある か」などと遣う例がしばしば見られ、後世の万葉調歌人にも愛用された。

降る雪の 白髪までに 大君に 仕へまつれば 貴くもあるか
 (万葉集、橘諸兄)
吹く風の 涼しくもあるか おのづから 山の蝉鳴きて 秋は来にけり
 (金槐和歌集、源実朝)
<和歌のための文語文法>より転載。
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/intro/josi05.html#ab01
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サ20 4371;作者:占部廣方,防人歌

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

[左注]右一首助丁(すけのよぼろ)占部廣方
( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)

多知波奈乃  之多布久可是乃  可具波志伎  都久波能夜麻乎  古比須安良米可毛

橘の 下吹く風の かぐはしき 筑波の山を 恋ひずあらめかも

たちばなの したふくかぜの かぐはしき つくはのやまを こひずあらめかも

橘の木陰を吹く風がかぐわしかった

あの筑波山を恋い偲ばずにいられようか 

この時期にはとくに
* 「めかも」は、 推量の助動詞「む」の已然形「め」に付いて、反語の意をあらわす。「〜ものか」。
・・・・・・・・

歌枕紀行 筑波山
―つくばのやま― より(抜粋)

昔、筑波山は関東平野のどこからでもよく見えたらしい。海抜800メートル程度の山に過ぎないが、広大な平野が東北方向に尽きるあたり、平坦な台地の上にいきなりその秀麗な山容を顕しているからである。
 筑波はどこから見ても姿のよい山であるが、ことに常陸国府のあった石岡市方面から、すなわち山の東側から眺めるのが美しい。男山と女山、双つの嶺がぴったりと寄り添って見えるのである。それはまるで大地に横たわった巨大な女神の乳房のようだ。常陸の古老が、駿河の富士と比べた筑波山の情の篤さを讃美している(常陸国風土記)のも、尤もだと肯かれるのである。
 筑波はエロティックな饗宴の山であった。

鷲の棲む 筑波の山の 裳羽服津(もはきつ)の その津の上に
率(あども)ひて 未通女(をとめ)壮士(をとこ)の 行き集ひ かがふかがひに
人妻に 吾(あ)も交はらむ わが妻に 人も言問へ
この山を うしはく神の 昔より 禁(いさ)めぬわざぞ
今日のみは めぐしもな見そ 言(こと)もとがむな
   反歌
男神(をのかみ)に 雲立ちのぼり 時雨ふり 濡れとほるとも 吾帰らめや

「筑波嶺に登りてカガヒせし日に作れる歌」と題された、高橋連虫麻呂歌集出典の万葉歌である。カガヒは歌垣(うたがき)と同じことを指しているらしい。常陸国風土記の寒田郎子と安是嬢子の伝説にみられるように、未婚の男女が歌をやりとりすることで、求婚相手を見つける集いの場であった。気の合ったカップルは、そのまま歌垣の場を抜け出し、木陰などに隠れて共に一晩を過ごしたのである。上の虫麻呂歌集の歌からは乱婚パーティーのような印象も受けるが、そうした風聞もあったのだろうか。おそらくこれは、筑波のカガヒの噂だけ聞き知っていた都人士を娯しませるための、専門歌人によるサービス過剰な(?)誇張表現だったのではないかと思われるのだが。
万葉時代の都人にとって遥かな東国の果てであった筑波山が、すでに伝説の山であり、一種の名所となっていたことは確かである。たまたま常陸に赴任する機会を得た官人たちは、苦労を厭わず筑波に登り、その感懐をいくつかの歌に残している。(後略)
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/utamaku/tukuba_u.html
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サ267;雑歌,作者:志貴皇子,猟

[題詞]志貴皇子御歌一首

牟佐々婢波  木末求跡  足日木乃  山能佐都雄尓  相尓来鴨

むささびは 木末求むと あしひきの 山のさつ男に あひにけるかも 

むささびは こぬれもとむと [あしひきの] やまのさつをに あひにけるかも
・・・・・・・・・・
むささびは大木を求め

その梢へ登り移ろうとして

山の猟師に見つかってしまったよ
・・・・・・・・・・
* 「と」は、格助詞 修飾格。活用語の終止形に付いて、動機・理由を示す。
* 「かも」は、終助詞「か」に、詠嘆の終助詞「も」のついたもの。疑問を含んだ詠嘆・感動に意を表す。体言または活用語の連体形を承ける。
 「〜だろうか」「〜なのかなあ」。




万葉集では人麻呂の名歌
淡海の海 夕波千鳥 汝が鳴けば…と並んで載り、前後には旅の歌が多い。
よってこの歌も旅先での嘱目詠か。
但し「此御歌は人の強たる物ほしみして身を亡すに譬給へるにや」(萬葉集略解)と寓喩を探る説もある。<出典・転載(千人万首)より>
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枕詞「あしひきの」の転用例

ほととぎす 鳴きつつ出づる あしひきの やまとなでしこ 咲きにけらしも 『新古今集』大中臣能宣

あしひきの やまひ止むてふ はうのかは 吹き寄る風も あらじとぞおもふ 『賀茂保憲女集』

あしひきの 山のしづくに 妹待つと 我たちぬれぬ 山のしづくに 
 『万葉集』大津皇子

○ あしひきの 峰(を) 本来「山」の枕詞である「あしひきの」を同じような意味の語「峰」の枕詞に転用した。
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