ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

◎【万葉集再掲載】

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14 3576 東歌,譬喩歌,植物,恋情

[題詞]

[原文]
奈波之呂乃 <古>奈宜我波奈乎 伎奴尓須里 奈流留麻尓末仁 安是可加奈思家

[訓読]
苗代の 小水葱が花を 衣に摺り なるるまにまに あぜか愛しけ 

なはしろのこなぎがはなをきぬにすり なるるまにまにあぜかかなしけ

苗代田で育てている
小水葱の花を
衣にこすり付けたら
着慣れるにつれて
愛しくなってくる
・・・・・
大切に育てられた娘さんを妻にした
新婚当時は気恥ずかしかったが
月日を経るにつれ
愛しくてたまらない

* 「苗代(なわしろ)」は、稲の籾(もみ)を発芽させて、田植えができるようになるまで苗(なえ)を育てるところのこと。豊富な水が必要で、湧き水や、川の水を引いて苗代にした。
* 「こ‐なぎ」 【小▽水×葱/小菜×葱】 ミズアオイ科の一年草。水田や池に生え、ミズアオイに似るが全体に小さい。夏から秋、青紫色の花を開く。花を染料に用いた。みずなぎ。ささなぎ。《季 春 花=秋》
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* 「なる・る」生む・成長する・・に、自然、自発動作の「る」。慣れる」に掛ける。
* 「まにま‐に」【随に】[連語]《「に」は格助詞》
1 他人の意志や事態の成り行きに任せて行動するさま。ままに。まにま。「波の―漂う」
2 ある事柄が、他の事柄の進行とともに行われるさま。…につれて。…とともに。
* 「あぜか」上代東国方言。何か、どうしてなのか。
* 「かなしけ」上代東国方言。「かなし」の連体形「かなしき」の転。かわいい、いとしい、恋しい。

16 3888 雑歌,宴席,恐怖,異界,誦詠

[題詞](怕物歌三首)

[原文]奥國 領君之 <と>屋形 黄<と>乃屋形 神之門<渡>

沖つ国 うしはく君の 塗り屋形 丹塗りの屋形 神の門渡る 

おきつくに うしはくきみの ぬりやかた にぬりのやかた かみのとわたる

はるか沖の国を領有する君の塗屋形の船
黄に塗った屋形船が神の海峡を渡って逝く

* 「奥つ国」は奥津城(おはか)、
塗・黄塗の船は、異界を。
 「神の海峡を」は三途の川か。
染屋形とは、棺に布を掛けた状態を示す
* 「うし‐は・く」領く[動カ四]
 主(うし)として領有する意から領地として治める。支配する。

<個別へ> http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32158659.html
<十六巻へ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31925133.html
17 4030 作者:大伴家持,動物,怨恨,季節,風物

[題詞]怨鴬晩哢歌一首

[原文]
宇具比須波 伊麻波奈可牟等 可多麻*<婆> 可須美多奈妣吉 都奇波倍尓都追

鴬は 今は鳴かむと 片待てば 霞たなびき 月は経につつ 

うぐひすはいまはなかむとかたまてばかすみたなびきつきはへにつつ

鴬はもう鳴くだろうとひたすら待っていると
春の霞がたなびき
月は過ぎて行こうとしている

* 「かたまつ」片待つ[動タ四]ひたすら待つ。

18 4137 天平勝宝2年1月5日,作者:大伴家持,年紀,宴席,久米広縄,賀歌,寿歌,富山,高岡

[題詞]<判>官久米朝臣廣縄之舘宴歌一首

[原文]牟都奇多都 波流能波自米尓 可久之都追 安比之恵美天婆 等枳自母

[左注]同月五日守大伴宿祢家持作之

正月立つ 春の初めに かくしつつ 相し笑みてば 時じけめやも 

むつきたつ はるのはじめに かくしつつ あひしゑみてば ときじけめやも

正月に替わる初春にあって
こうして相集って頬笑みあっているのですから
まことに時節柄ふさわしいことではありませんか

* 「時じけ」は形容詞「時じ」の未然形。「時じ」は、時を定めない・季節外れの、などの意。
* 「やも」は強い否定を伴う反語で、「時じけめやも」は、「時節はずれであろうか、いや全く時節に相応しいことである」
<個別へ> http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32099530.html
19 4291 天平勝宝5年2月23日,年紀,作者:大伴家持,依興,植物

[題詞](廿三日依興作歌二首)

[原文]和我屋度能 伊佐左村竹 布久風能 於等能可蘇氣伎 許能由布敝可母

吾が宿の い笹群竹 吹く風の 音のかそけき この夕かも 

わがやどのいささむらたけふくかぜのおとのかそけきこのゆふへかも

わが家の庭のささ竹群を
吹きわたる風の音が
かすかに聞こえるこの夕暮れよ

* 「いささ群竹」は難解。イササを細波(ささなみ)などのササ(小さい意)と同根とし、ささやかな竹の群と解する説が有力だが、「五十竹葉」で竹の葉の多い意とする説(『萬葉集古義』)、「斎笹(ゆささ)」(10/2336)と同じで神聖な笹の葉の意とする説なども捨てがたい気がします。
* 上二首の題詞に「興に依け」(依興)とあり、家持において「目を属(つ)けて」(属目)と対比的に用いられ、題詞はこれらが実景を目にしての作でない ―想像裡の作である― ことに注意。


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