ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

◎【万葉集再掲載】

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サ7 1099;雑歌,奈良、香芝市今泉

[題詞]詠岳

片岡之  此向峯  椎蒔者 今年夏之 陰尓将<化>疑

片岡の この向つ峰に 椎蒔かば 今年の夏の 蔭にならむか 
 
かたをかの このむかつをに しひまかば ことしのなつの かげにならむか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(真夏の日差しには参るから)

片岡のこの向こうの峯に椎を蒔いたならば

今年の夏は木陰になるだろうか

(吾が恋の成就はなるかなあ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<[志都美神社(奈良県香芝市)]誌より記事転載。>
*  「 片岡 」 は奈良県北葛城郡王寺町から香芝市の志都美地方にかけての地域で、志都美神社(しづみじんじゃ)本殿裏の森がこの歌を鑑賞するにふさわしい。
本殿裏は椎の木を中心とした原生林で奈良県指定の天然記念物に指定されています。
「 志都美(しづみ) 」 という地名も 「 椎摘み(しい つみ)」 が変化したように思え、椎の原生林ともかさね合せればこの附近ではないかと思われます。
大和志に「葛下郡片岡、在二片岡荘今泉村(今、香芝市今泉)一」とあります。

 「・・・椎蒔かば 今年の夏の 陰にならむか」という部分は、椎が蒔いた年にすぐ木陰を成すほどになる筈はないので、寓喩か、わらべうた風のものかといわれています。
この万葉歌の歌碑が神社参道入り口右側にあります。



<再掲載>


サ28;作者:持統天皇,飛鳥,枕詞

[題詞]藤原宮御宇天皇代[高天原廣野姫天皇 元年丁亥十一年譲位軽太子 <尊>号曰太上天皇] / 天皇御製歌

春過而  夏来良之  白妙能  衣乾有  天之香来山

はるすぎて なつきたるらし [しろたへの] ころもほしたり あめのかぐやま

春過ぎて 夏来るらし 白栲の 衣干したり 天の香具山 

・・・・・・・・・・・
春は過ぎ去って

夏がやって来たらしい

白い衣が乾してある

天の香具山に
・・・・・・・・・・・
春過而ーはるすぎてー春過ぎてー春は過ぎ去って、  
夏来良之ーなつきたるらしー夏来るらしー夏がやって来たらしい。 
白妙能ーしろたへのー白栲のー白い布でつくった、栲(たえ)で織りあげた白布で製った衣。栲は楮(こうぞ)などの樹皮から採った繊維。挽歌にも使われる語句。  
衣乾有ーころもほしたりー衣干したりー衣が乾してある。 
天之香来山ーあめのかぐやまー天の香具山ー奈良県橿原市南浦町。大和三山の一つ。天から降ってきた山であるとの伝承があり(伊予国風土記逸文)、それゆえ「天の」が付いた。
* 「らし」は推定の助動詞。
* 「たり」は存続の助動詞。
 
                    
 
サ29;作者:柿本人麻呂,荒都歌,大津,鎮魂,枕詞,滋賀

[題詞]過近江荒都時柿本朝臣人麻呂作歌

玉手次ー玉たすきー[たまたすき]  
畝火之山乃ー畝傍の山のーうねびのやまのー畝傍の山の(橿原市大和三山の一)  
橿原乃ー橿原のーかしはらのー橿原の 
日知之御世従ーひじりの御代ゆーひじりのみよゆー聖天子の御代から。
「日知(ひじ)り」とは、神武天皇の事を指す。
[或云 自宮]ー[或云 宮ゆ]ー[みやゆ]ー聖天子の宮から  
阿礼座師ー生れまししーあれまししー御即位になられた 
神之<盡>ー神のことごとーかみのことごとー歴代の天子(=天皇)は   
樛木乃ー栂の木のー[つがのきの] 
弥継嗣尓ーいや継ぎ継ぎにーいやつぎつぎにー次々と  
天下ー天の下ーあめのしたー尊くも天下を 
所知食之乎ー知らしめししをーしらしめししをー治めてこられた
[或云 食来]ー[或云 めしける] 
 (ここまでは、近江遷都までの段。)
天尓満ー[そらにみつ]
倭乎置而ー大和を置きてーやまとをおきてー大和を置いて
青丹吉ー[あをによし] 
平山乎超ー奈良山を越えーならやまをこえー奈良山を越え
[或云 虚見 倭乎置 青丹吉 平山越而]ー[或云 そらみつ 大和を置き あをによし 奈良山越えて]ー[そらみつ やまとをおき あをによし ならやまこえて]ーその大和を置いて、奈良山を越え  
何方ーいかさまにーなぜか どのように  
御念食可ー思ほしめせかーおもほしめせかーお考えになったのだろう
[或云 所念計米可]ー[或云 思ほしけめか]ー[おもほしけめか] 
天離ー天離るーあまざかるー遠方の地  
夷者雖有ー鄙にはあれどーひなにはあれどー「夷」は、都の対極。  
石走ー石走るー[いはばしる]  
淡海國乃ー近江の国のーあふみのくにのー近江の國 
樂浪乃ー楽浪のー[ささなみの] 
大津宮尓ー大津の宮にーおほつのみやにー天智天皇近江大津宮に  
天下ー天の下ーあめのしたー天下を 
所知食兼ー知らしめしけむーしらしめしけむー治められた
 (以上天智天皇の近江遷都の段) 
天皇之ー天皇のーすめろきのー天皇の  
神之御言能ー神の命のーかみのみことのー神のみことの  
大宮者ー大宮はーおほみやはー皇居は 
此間等雖聞ーここと聞けどもーここときけどもーここと聞くが   
大殿者ー大殿はーおほとのはー御殿は  
此間等雖云ーここと言へどもーここといへどもーここと言うが
春草之ー春草のーはるくさのー今は春の草が 
茂生有ー茂く生ひたるーしげくおひたるー生い茂り  
霞立ー霞立つーかすみたつー霞む  
春日之霧流ー春日の霧れるーはるひのきれるー春の日に霧が立っている
[或云 霞立 春日香霧流 夏草香 繁成奴留]ー[或云 霞立つ 春日か霧れる 夏草か 茂くなりぬる]ー[かすみたつ はるひかきれる なつくさか しげくなりぬる]  
百礒城之ー[ももしきの]  
大宮處ー大宮ところーおほみやところー大宮どころの跡 
見者悲<毛>ー見れば悲しもーみればかなしもー見ると心うたれる
[或云 見者左夫思毛]ー[或云 見れば寂しも]ー[みればさぶしも]



サ30;作者:柿本人麻呂,荒都歌,大津,鎮魂,滋賀

[題詞](過近江荒都時柿本朝臣人麻呂作歌)反歌

樂浪之  思賀乃辛碕  雖幸有  大宮人之  船麻知兼津

ささなみの しがのからさき さきくあれど おほみやひとの ふねまちかねつ

楽浪の 志賀の辛崎 幸くあれど 大宮人の 舟待ちかねつ 

・・・・・・・・・・・・・
志賀の辛崎は

その名のように幸(さき)く

無事平穏であるけれど

大宮人の船はいくら待っても

もう来ない
・・・・・・・・・・・・・

<再掲載>


サ1884 春雑歌,移ろい,問答

[題詞]歎舊

寒過  暖来者  年月者  雖新有  人者舊去

冬過ぎて 春し来れば 年月は 新たなれども 人は古りゆく 

ふゆすぎて はるしきたれば としつきは あらたなれども ひとはふりゆく
・・・・・・・・・・・・・
冬が過ぎて春がやってくると

年月は新しくなるけれども

人は古くなっていくことよ
・・・・・・・・・・・・・
* 「来ぬれば」;来ると。
 「来」カ行変格活用動詞連用形。
 「ぬれ」完了助動詞「ぬ」の已然形。
 「ば」恒常条件の接続助詞。
*「ども」は接続助詞・逆接(〜けれども)。
<再掲載>


サ1883 春雑歌,野遊び,枕詞

[題詞](野遊)

百礒城之  大宮人者  暇有也  梅乎挿頭而  此間集有

ももしきの 大宮人は 暇あれや 梅をかざして ここに集へる 

[ももしきの] おほみやひとは いとまあれや うめをかざして ここにつどへる
・・・・・・・・・・・・・
宮仕えの大宮人は 

今日は暇であるらしい

楽しげに梅の髪飾をりして 

春日の野に集っている
・・・・・・・・・・・・・
* 『新古今集』に山部赤人の歌として、下の句を変えて、
「ももしきの 大宮人は暇あれや 桜かざして 今日も暮らしつ」(104)。
* 「百敷の」は「都」や「大宮」を言い出す枕詞。「大宮人」は「宮中にお仕えする人」。
* 「暇あるや」は、暇があると、暇があれば。


<再掲載>


サ1844 春雑歌,奈良

[題詞](詠霞)

寒過  暖来良思  朝烏指  滓鹿能山尓  霞軽引

冬過ぎて 春来るらし 朝日さす 春日の山に 霞たなびく 

ふゆすぎて はるきたるらし [あさひさす] かすがのやまに かすみたなびく
・・・・・・・・・
長かった冬が過ぎ

やっと春が来たようです

朝日をいち早く受ける春日の山に

はやくも春霞がたなびいています
・・・・・・・・・
* 立春から春になるとした。
* 「朝日さす」は枕詞で「豊」、「春日」にかかる。
* 「時候の挨拶」的な歌。



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