ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第一巻

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12;雑歌,作者:中皇命:間人皇女,紀州,異伝,魂触り

[題詞](中皇命徃于紀温泉之時御歌)

吾欲之 野嶋波見世追 底深伎 阿胡根能浦乃 珠曽不拾 [或頭云 吾欲 子嶋羽見遠]

吾が欲りし 野島は見せつ 底深き 阿胡根の浦の 玉ぞ拾はぬ [或頭云 我が欲りし 子島は見しを] 

わがほりし のしまはみせつ そこふかき あごねのうらの たまぞひりはぬ
[わがほりし こしまはみしを]

・・・・・・・・・・・
私が見たいと願っていた野島は見せていただきました
けれど深い阿胡根の浦の底にあるという
真珠はまだ拾っていません
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[左注]右檢山上憶良大夫類聚歌林曰 天皇御製歌[云々](【補記】万葉集の左注に「山上憶良の『類聚歌林』によればこれらの歌は斉明天皇の御製である」旨ある。)

吾欲之ーわがほりしー我が欲りしー見たいと思っていた、  
野嶋波見世追ーのしまはみせつー野島は見せつー「野島」和歌山県御坊市名田町野島。海浜の地。  見せていただきました。
「せ」は、使役の助動詞「す」の未然形・連用形。[為(す)] [他サ変・未然形] ある動作を行う・様々な他の他動詞の代用。
「つ」 [助動詞・つ] [完了(強意)・終止形] 必ず〜・確かに〜・〜てしまう 連用形に。
底深伎ーそこふかきー底深き、 
阿胡根能浦乃ーあごねのうらのー阿胡根の浦のー所在未詳。野島付近の海を言うか。  
珠曽不拾ーたまぞひりはぬー玉ぞ拾はぬ
[或頭云 吾欲 子嶋羽見遠]ー,[わがほりし, こしまはみしを]ー [或頭云 我が欲りし 子島は見しを]

【主な派生歌】高市黒人「万葉」3-279
わぎもこに 猪名野は見せつ 名次(なすき)山 角の松原 いつか示さむ
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(白鳳時代の人)

中皇命 なかつすめらみこと 生没年未詳
旧くは「中皇女」あるいは「中皇女命」の誤りとして「なかちひめみこ」等と訓み、間人皇女(孝徳天皇の皇后)とする説が有力視されていた。中皇命を「なかつすめらみこと」と訓んだのは喜田貞吉が最初で、喜田博士は「なかつすめらみこと」は『続日本紀』などによれば中継の女帝を指す普通名詞であるから、舒明朝の「中皇命」と斉明朝の「中皇命」は別人とし、万葉集1-3・4は斉明天皇(宝皇女)作、巻1-10・11・12は倭姫王作とする説を唱えた。ほかに全て斉明天皇作とする説などもある。万葉集巻一に歌5首。


倭姫王 やまとのひめみこ 生没年未詳
舒明天皇の孫。古人大兄皇子の子。「倭」の名は、百済武寧王の後裔を称する渡来氏族の倭(やまと)氏に養育をうけた故であろう。天智七年(668)二月、大后となる。天智天皇の危篤および崩御の際に詠んだ歌4首が万葉集に収められている。
13;作者:中大兄,三山歌,兵庫,妻争い,伝説

[題詞]中大兄[近江宮御宇天皇]<三山歌>

高山波 雲根火雄男志等 耳梨與 相諍競伎 神代従 如此尓有良之 古昔母  然尓有許曽 虚蝉毛 嬬乎 相<挌>良思吉

かぐやまは うねびををしと みみなしと あひあらそひき かむよより かくにあるらし いにしへも しかにあれこそ うつせみも つまを あらそふらしき

香具山は  畝傍を愛しと  耳成と  相争ひき  神代より  かくにあるらし  古も  しかにあれこそ  うつせみも  妻を争ふらしき 

・・・・・・・・・・
畝傍山を愛しいと思い
香具山と耳成山は争ったという
神代からこうであるらしい
昔もこんな具合だったからこそ
うつせみの人も
愛しい人をめぐり争うのだよ
・・・・・・・・・・

* 「大和三山」(高山/香具山・雲根火/畝傍山・耳梨/耳成山)
* 「雄男志等」雄々しく思って・愛しいと思い・善(え)しと。
香具山 奈良県橿原市南浦町にある小さな丘。
畝傍山 橿原市にある死火山。標高199メートル。山麓に橿原神宮がある。
耳成山 橿原市木原町にある山。標高140メートル。別名青菅(あおすが)山・梔子(くちなし)山。
* 「き」は体験した過去のことについていう助動詞。
*  神代より 耳成と香具が(畝傍の嬬になろうとして)相争ってきたらしい。
* 「香具山・耳成山」が同性で「畝傍山」めぐって相争った。
* 「競」は、「きそう」「争う」の意。
* 「相争ひ」は、一語として解釈。 
* 「古昔母」ーいにしへもー古も、
* 「然尓有許曽」ーしかにあれこそー昔もこんな具合だったから(こそ)
* 「こそ」は、順接の係助詞で結びは、連体形の「らしき」。 
取り立てて強調。 
「こそ」と已然形との係り結びで、逆接の条件句を作ることがある。
* 「虚蝉毛」ーうつせみもー今の世も。 
* 「嬬乎」ーつまをー妻をー 褄ー 性を問わず、結婚相手を言う。 
* 「相<挌>良思吉」ーあらそふらしきー争ふ(らしき)。愛しい人をめぐり争う。
14;作者:中大兄,三山歌,兵庫,妻争い,伝説

[題詞](中大兄[近江宮御宇天皇]<三山歌>)反歌

高山与 耳梨山与 相之時 立見尓来之 伊奈美國波良

かぐやまと みみなしやまと あひしとき たちてみにこし いなみくにはら

香具山と 耳成山と 闘ひし時 立ちて見に来し 印南国原 

・・・・・・・・・・
香具山と耳梨山とが争った時
出雲の阿菩大神が立ち上がって
見に来たという印南国原だよ
・・・・・・・・・・

高山与ーかぐやまとー香具山と 
耳梨山与ーみみなしやまとー耳成山と 
相之時ーあひしときー闘ひし時ー原文は「相之時」。長歌において香具山・耳成山を男、畝傍山を女と解した場合、この「あひ」は「戦う」意に取らざるを得ない。  
立見尓来之ーたちてみにこしー立ちて見に来しー『播磨国風土記』によれば、大和三山の争いを諌めようと、出雲の阿菩大神がみこしを上げたが、播磨国揖保郡の上岡までやって来た時、争いがやんだと聞いて、その地に鎮まったという。  
伊奈美國波良ーいなみくにはらー印南国原ー播磨国印南郡の平野。今の加古川市から明石市あたり。

15;作者:中大兄,三山歌,兵庫,妻争い

[題詞]((中大兄[近江宮御宇天皇]<三山歌>)反歌)

わたつみの とよはたくもに いりひさし こよひのつくよ さやけくありこそ

海神の 豊旗雲に 入日さし 今夜の月夜 さやけくありこそ


・・・・・・・・・・
はてしない海原の上に
夕日に輝きながらたなびく豊旗雲
豊かになびく雲に
入る日を見た今宵の月夜よ
清らかであれ
・・・・・・・・・・


* 「皇子」を付さないのが正しい用い方。

渡津海乃ーわたつみのー海神のー海を支配する神。海そのものをも言う。  
豊旗雲尓ーとよはたくもにー豊旗雲にー「豊旗雲」未詳。旗のように横に長くたなびく雲のこと。「豊」は美称、「旗雲」は旗(吹き流し)のように水平方向にたなびく雲であろう。 
伊理比<紗>之ーいりひさしー入日さし 
今夜乃月夜ーこよひのつくよー今夜の月夜  
清明己曽ーさやけくありこそー↓

* 「こそ」は他に誂え望む終助詞。スミアカクコソ・アキラケクコソ・キヨクテリコソなどの訓み方がある。いずれにしても、夜の航海が安全であれ。安全であるようにして欲しいものよ。の意。
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天智天皇 てんじてんのう 推古三四〜天智一〇(626〜671) 諱:葛城皇子 略伝
舒明天皇の皇子。母は斉明天皇。大海人皇子・間人皇女(孝徳天皇皇后)の同母兄。倭姫王(古人大兄の子)を正室とする。大友皇子・大田皇女・菟野皇女(持統天皇)・建皇子・川島皇子・御名部皇女・阿閉皇女(元明天皇)・志貴皇子らの父。
斉明七年(661)、百済救援を目的とする斉明天皇の新羅征討に同行するが、天皇は筑紫で崩じたため、即位の式をあげぬまま皇位を継承した。

天智元年(662)、近江令を制定(『藤氏家伝』)。翌年、兵を新羅に派遣するが、白村江の戦で唐軍に大敗し、百済は滅亡した。
同三年、唐・新羅の侵攻に備え、防人を置き、筑紫に水城を築造する。
同六年、近江大津宮に遷都。翌年、即位。
同九年、日本最初の全国的な戸籍「庚午年籍」を作成する。
同十年、大友皇子を太政大臣に任命する。
同年十二月三日、崩御。四十六歳。

その皇統は壬申の乱によってひとたび途絶えたが、奈良朝末期、志貴皇子の子白壁王が即位して(光仁天皇)復活し、その子桓武天皇が平安京を開くに至る。以後も皇位は天智天皇の系譜が引き継がれることとなった。
(出典・記事転載元)[千人万首]。
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【名歌鑑賞1−1】森 明著
(万葉集1・15)
http://f-kowbow.com/ron/meika01/meika01.htm

16;雑歌,作者:額田王,近江朝,大津,春秋優劣,枕詞

[題詞]近江大津宮御宇天皇代 [天命開別天皇謚曰天智天皇] / 天皇詔内大臣藤原朝臣競憐春山萬花之艶秋山千葉之彩時額田王以歌判之歌

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↓[原文]ー[訓読]ー[仮名]ー

冬木成ー冬こもりー[ふゆこもり]ー「春」にかかる枕詞<冷える冬はこもります・・・>
春去来者ー春さり来ればーはるさりくればー春がやってくると <「さる」は移動する、近づくなどの意。春になる。「波流佐礼(ハルサレ)ばまづ咲く宿の梅の花ひとり見つつや春日暮らさむ〈山上憶良〉」>
不喧有之ー鳴かずありしーなかずありしー冬の間鳴かなかった
鳥毛来鳴奴ー鳥も来鳴きぬーとりもきなきぬー鳥もやって来て鳴く
不開有之ー咲かずありしーさかずありしー咲かなかった
花毛佐家礼抒ー花も咲けれどーはなもさけれどー花も咲いているけれど
山乎茂ー山を茂みーやまをしみー山の木々が茂っていて
入而毛不取ー入りても取らずーいりてもとらずー分け入っても取ることもしない
草深ー草深みーくさふかみー草も深いので
執手母不見ー取りても見ずーとりてもみずー手に取っても見ることもしない
秋山乃ー秋山のーあきやまのー秋山の
木葉乎見而者ー木の葉を見てはーこのはをみてはー木の葉を見ると
黄葉乎婆ー黄葉をばーもみちをばー紅葉したのは<「を」は強調。>
取而曽思努布ー取りてぞ偲ふーとりてぞしのふー取って美しいと思う<「ぞ」は、事柄を取り立てて強調する。結びは連体形になる。古くは清音(そ)であった。>
青乎者ー青きをばーあをきをばー青いのは
置而曽歎久ー置きてぞ嘆くーおきてぞなげくーそのままに嘆く
曽許之恨之ーそこし恨めしーそこしうらめしーその点は残念です (「し」は、副助詞。種々の語に付き、それを強く指示して強調する。時代が下るにつれて用例が限定されるようになり、現代口語には「定めし」「果てしない」などに化石的に残るのみである。)  
秋山吾者ー秋山吾はーあきやまわれはー秋の山 私は
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* ブログ《neige9》一日一首 「なげけども」
http://blogs.yahoo.co.jp/sirius0426jp/9213452.html?vitality


【名歌鑑賞 3】森 明著
<万葉集巻一・16>
http://f-kowbow.com/ron/meika03/meika03.htm

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