ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第四巻

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4 673;相聞,作者:坂上郎女、枕詞,後悔

[題詞]大伴坂上郎女歌二首

真十鏡  磨師心乎  縦者  後尓雖云  驗将在八方

まそ鏡 磨ぎし心を ゆるしてば 後に言ふとも 験あらめやも 

[まそかがみ] とぎしこころを ゆるしてば のちにいふとも しるしあらめやも
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
磨きあげた鋭い心をゆるめてしまったら

後で悔やんでみても甲斐があるでしょうか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* [まそかがみ] 枕詞。 清らかな鏡。



万葉集4 674;相聞,作者:坂上郎女、後悔,枕詞

[題詞](大伴坂上郎女歌二首)

真玉付  彼此兼手  言齒五十戸<常>  相而後社  悔二破有跡五十戸

真玉つく をちこち兼ねて 言は言へど 逢ひて後こそ 悔にはありといへ 

[またまつく] をちこちかねて ことはいへど あひてのちこそ くいにはありといへ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
末永くとは言うけれど

一旦契った後では後悔する

そおいうものだといわれていますよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
* [またまつく] 枕詞。美しい玉のような言葉で



4 675;相聞,作者:中臣女郎,大伴家持、恋情,奈良,序詞,贈答
<個別へ>
http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31884931.html

[題詞]中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首

娘子部四  咲澤二生流  花勝見  都毛不知  戀裳摺可聞

をみなへし 佐紀沢に生ふる 花かつみ かつても知らぬ 恋もするかも 

[をみなへし] さきさはにおふる [はなかつみ] かつてもしらぬ こひもするかも
・・・・・・・・・・・・・・・・・
かつて思い知らない恋

そんな恋をすることになってしまった
・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 676;相聞,作者:中臣女郎,大伴家持、恋情,枕詞,贈答

[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)

海底  奥乎深目手  吾念有  君二波将相  年者經十方

海の底 奥を深めて 我が思へる 君には逢はむ 年は経ぬとも 

[わたのそこ] おくをふかめて あがおもへる きみにはあはむ としはへぬとも
・・・・・・・・・・・・
海の底の奥深いように 

私が思う貴方に会いたい 

時は経ってもいつかきっと
・・・・・・・・・・・・


4 677;相聞,作者:中臣女郎,大伴家持、恨み,奈良,序詞,贈答

[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)

春日山 朝居雲乃 欝 不知人尓毛 戀物香聞

春日山 朝居る雲の おほほしく 知らぬ人にも 恋ふるものかも 

[かすがやま あさゐるくもの おほほしく] しらぬひとにも こふるものかも
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
春日山に朝かかっていた雲のように

ぼんやりと

心がはっきり分らない人にも恋するものかしら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 春日山       
 歌枕  春日野 (かすがの) は大和国の歌枕。春日山・若草山の麓の台地。
* おほほしく  (形シク)おぼおぼしの略。
 おぼろげ・心が晴れない・ゆううつである。
* 「居る」は「(雲・霞などが)かかる。「置く」の意。
* 「おほゝし」は「はっきりしない。心が晴れない」の意。
* 「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。
* 「かも」は詠嘆の終助詞。



4 678;相聞,作者:中臣女郎,大伴家持、枕詞,贈答
<個別再掲載>
http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31888956.html

[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)

直相而  見而者耳社  霊剋  命向  吾戀止眼

直に逢ひて 見てばのみこそ たまきはる 命に向ふ 我が恋やまめ 

ただにあひて みてばのみこそ [たまきはる] いのちにむかふ あがこひやまめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたにじかに逢えた

その時こそ

命をかけた私の恋はやむのでしょう
・・・・・・・・・・・・・・・・・
*  [たまきはる] 魂極る。 命・世・うち・吾などにかかる。
* 「恋」と「おもふ」(下記)

【主な派生歌】

夜もすがら 月にうれへて ねをぞなく いのちにむかふ 物おもふとて
 (藤原定家[続古今])

かはれただ わかるる道の 野べの露 命にむかふ 物も思はじ 
 (定家)
・・・・・・・・・・・・・・・・


4 679;相聞,作者:中臣女郎,大伴家持、恋情,枕詞,贈答

[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)

不欲常云者  将強哉吾背  菅根之  念乱而  戀管母将有

いなと言はば 強ひめや我が背 菅の根の 思ひ乱れて 恋ひつつもあらむ 

いなといはば しひめやわがせ [すがのねの] おもひみだれて こひつつもあらむ
・・・・・・・・・・・・・・
いやなら無理強いはしません 

あなた

菅の根のように思い乱れて

私は恋い焦れるばかりなのね
・・・・・・・・・・・・・・
中臣女郎 なかとみのいらつめ 生没年未詳伝不詳。
「中臣女郎」は中臣氏出身の令嬢に対する敬称。
万葉集巻四に五首掲載。いずれも大伴家持に贈った歌。
4 680;相聞,作者:大伴家持、交遊,怨恨,うわさ

[題詞]大伴宿祢家持与交遊(とも)別歌三首
  (大伴宿祢家持が、友と別れた歌三首)

盖毛  人之中言  聞可毛  幾許雖待  君之不来益

けだしくも 人の中言 聞かせかも ここだく待てど 君が来まさぬ 

けだしくも ひとのなかごと きかせかも ここだくまてど きみがきまさぬ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
たぶん 他人の中傷を 聞かれたからだろう 

こんなに 待っても 貴方はおいでにならない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 681;相聞,作者:大伴家持、交遊,恋情

[題詞](大伴宿祢家持与交遊別歌三首)

中々尓  絶年云者  如此許  氣緒尓四而  吾将戀八方

なかなかに 絶ゆとし言はば かくばかり 息の緒にして 我れ恋ひめやも 

なかなかに たゆとしいはば かくばかり いきのをにして あれこひめやも
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いっそ 仲を断つというのなら 

このように 命を賭して 私が慕うことなどあろうか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 682;相聞,作者:大伴家持、交遊,恋情

[題詞](大伴宿祢家持与交遊別歌三首)

将念  人尓有莫國  懃  情盡而  戀流吾毳

思ふらむ 人にあらなくに ねもころに 心尽して 恋ふる我れかも 

おもふらむ ひとにあらなくに ねもころに こころつくして こふるあれかも
・・・・・・・・・・・・・・・・・
思って下さる 人でもないのに 

真心を尽くして慕う私であることよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・


683;相聞,作者:坂上郎女、うわさ,枕詞

[題詞]大伴坂上郎女歌七首

言言之  恐國曽  紅之  色莫出曽  念死友

言ふ言の 畏き国ぞ 紅の 色にな出でそ 思ひ死ぬとも 

いふことの かしこきくにぞ [くれなゐの] いろにないでそ おもひしぬとも
・・・・・・・・・・・・・・・
人の言葉の恐ろしい国ですから

素振りにも出さないで下さい

人に悟られてはこまります

たとえ死ぬほど想い焦がれても
・・・・・・・・・・・・・・・


684;相聞,作者:坂上郎女、怨恨

[題詞](大伴坂上郎女歌七首)

今者吾波  将死与吾背  生十方  吾二可縁跡  言跡云莫苦荷

今は我は 死なむよ我が背 生けりとも 我れに依るべし と言ふといはなくに 

いまはわは しなむよわがせ いけりとも われによるべし といふといはなくに
・・・・・・・・・・・・・・
私はもう死にますよ 貴方

生きていても 

私に心を寄せていると 

言ってくれることはもうないから
・・・・・・・・・・・・・・
* 「なむ」は、種々の語に付き、それを強調する。
* 「よ」は、強調の終助詞。
* 「けり」は、助動詞ラ変型」。今気付いて述べる意。
* 「とも」は、動詞・助動詞の終止形に付いて、逆接の仮定条件を示す。「たとえ〜しても」。
* 「に」は、格助詞。
* 「依る」は、心を寄せる意。
* 「べし」可能性を推定する意を表す。
* 「と」は、格助詞。
* 「いはなくに」あなたは言わないのだから。
* 「に」は、・・なので。


 

685;相聞,作者:坂上郎女、枕詞,うわさ,恋情、

[題詞](大伴坂上郎女歌七首)

人事  繁哉君<之>  二鞘之  家乎隔而  戀乍将座

人言を 繁みか君が 二鞘の 家を隔てて 恋ひつつまさむ 

ひとごとを しげみかきみが [ふたさやの] いへをへだてて こひつつまさむ
・・・・・・・・・・・・・・
人の噂がうるさいので

家を隔て

恋い焦がれていらっしゃる
・・・・・・・・・・・・・・


686;相聞,作者:坂上郎女、恋情

[題詞](大伴坂上郎女歌七首)

比者  千歳八徃裳  過与  吾哉然念  欲見鴨

このころは 千年や行きも 過ぎぬると 我れやしか思ふ 見まく欲りかも 

このころは ちとせやゆきも すぎぬると われかしかおもふ みまくほりかも
・・・・・・・・・・・・・・
千年も過ぎたと思うこの頃

貴方にお逢いしたいものですよ
・・・・・・・・・・・・・・


687;相聞,作者:坂上郎女、恋情

[題詞](大伴坂上郎女歌七首)

愛常  吾念情  速河之  雖塞々友  猶哉将崩

うるはしと 我が思ふ心 速川の 塞きに塞くとも なほや崩えなむ 

うるはしと あがもふこころ はやかはの せきにせくとも なほやくえなむ
・・・・・・・・・・・・・・・・
愛しいと思う私の心は急流のよう

どんな堰で塞き止めようとしても

それを崩してしまうことでしょう
・・・・・・・・・・・・・・・・


688;相聞,作者:坂上郎女、うわさ,序詞

[題詞](大伴坂上郎女歌七首)

青山乎  横○雲之  灼然  吾共咲為而  人二所知名

青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れと笑まして 人に知らゆな 

[あをやまを よこぎるくもの いちしろく] われとゑまして ひとにしらゆな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青山を横切る雲は白く目に立つもの

一人微笑んで 他人に悟られてはいけませんよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


689;相聞,作者:坂上郎女、恋情

[題詞](大伴坂上郎女歌七首)

海山毛  隔莫國  奈何鴨  目言乎谷裳  幾許乏寸

海山も 隔たらなくに 何しかも 目言をだにも ここだ乏しき 

うみやまも へだたらなくに なにしかも めごとをだにも ここだともしき
・・・・・・・・・・・・・・・・
うみやまほどの想いがあるのに

うみやまほど隔たり

言葉を交わす機会さえ

なぜこれほど少ないのでしょう
・・・・・・・・・・・・・・・・


万葉集 690

4 690;相聞,作者:大伴三依、離別,悲別

[題詞]大伴宿祢三依悲別歌一首
   大伴宿祢三依が、別れを悲しんだ歌一首

照<月>乎  闇尓見成而  哭涙  衣<沾>津  干人無二

照る月を 闇に見なして 泣く涙 衣濡らしつ 干す人なしに 

てるつきを やみにみなして なくなみだ ころもぬらしつ ほすひとなしに
・・・・・・・・・・・・・・
照る月も闇と泣く涙は

衣を濡らす

乾かしてくれる人もなくて
・・・・・・・・・・・・・・



万葉集 691・692

4 691;相聞,作者:大伴家持,娘子、恋情,枕詞,贈答

[題詞]大伴宿祢家持贈娘子歌二首

百礒城之  大宮人者  雖多有  情尓乗而  所念妹

ももしきの 大宮人は 多かれど 心に乗りて 思ほゆる妹

[ももしきの] おほみやひとは おほかれど こころにのりて おもほゆるいも
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
立派な大宮仕えの官女はたくさんいるけれど

心をとらえて離さないあなたであることよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 692;相聞,作者:大伴家持、娘子,怨恨,贈答

[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌二首)

得羽重無  妹二毛有鴨  如此許  人情乎  令盡念者

うはへなき 妹にもあるかも かくばかり 人の心を 尽さく思へば 

うはへなき いもにもあるかも かくばかり ひとのこころを つくさくおもへば
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
薄情なあなたであることだなあ

これほどあれこれ思い尽させるんだから
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


万葉集 693

4 693;相聞,作者:大伴千室、吉野,序詞,恋情

[題詞]大伴宿祢千室歌一首 [未詳]

如此耳  戀哉将度  秋津野尓  多奈引雲能  過跡者無二

かくのみし 恋ひやわたらむ 秋津野に たなびく雲の 過ぐとはなしに 

[かくのみし こひやわたらむ あきづのに] たなびくくもの すぐとはなしに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつまでもこんなに 恋い続けていくのだろうか

秋津野にたなびく雲も いつか過ぎ去るのに

この恋の想いが消えることはないのだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


万葉集 694 ・695

694;相聞,作者:廣河女王、恋情,比喩

[題詞]廣河女王歌二首 [穂積皇子之孫女上道王之女也]

戀草呼  力車二  七車  積而戀良苦  吾心柄

恋草を 力車に 七車 積みて恋ふらく 我が心から 

こひくさを ちからくるまに ななくるま つみてこふらく わがこころから
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
恋草を刈り取って

力車七台にも積んで曳くように

そんな苦しい思いをするのも

かってに自分の心のなせるわざなのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「恋草」 草が繁るさまに譬える恋情のつのり。
* 「力車」 力夫の引く車。
* 「らく」は、体言化の接尾語とする説もある。「あく」が上の活用語の語尾「る」と結合した「るあく」が変化したもの。(く)。  ・・すること、・・するところ。・・するとき、など。
* 「我が心から」は、 自業自得である、といった気持。
* 「から」は、体言に付いて、原因・理由などを示す。〜ゆえに、〜によって、〜のせいで。


【主な派生歌】

七車 積むともつきじ 思ふにも 言ふにもあまる わが恋草は 
 ([狭衣物語])

七車 つむ恋草の おもければ うしとみれども やるかたもなし
 (大江匡房)

人しれぬ わが恋草の 七車 思ひみだれて やる方もなし
 (後村上院[新葉])

恋草の ちから車を 引く牛の くるしむいきを 我がむねにして
 (肖柏)



695;相聞,作者:廣河女王、自嘲

[題詞](廣河女王歌二首 [穂積皇子之孫女上道王之女也])

戀者今葉  不有常吾羽  念乎  何處戀其  附見繋有

恋は今は あらじと我れは 思へるを いづくの恋ぞ つかみかかれる 

こひはいまは あらじとわれは おもへるを いづくのこひぞ つかみかかれる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もう恋なんかしたくない

縁がないと思っていたのに

どこにひそんでいたのか

恋がこの胸をつかんで放さない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「れ」は、助動詞「り」の已然形(命令形)。
* 「る」は、助動詞下二、受身の意を表す。


広河女王 ひろかわのおおきみ
上道王の息女。穂積皇子の孫。
天平宝字七年(763)一月、従五位下に初叙されている。
万葉集巻四に2首載る。



万葉集 696

4 696;相聞,作者:石川廣成、京都,恋情

[題詞]石川朝臣廣成歌一首 [後賜<姓>高圓朝臣氏也]

家人尓 戀過目八方 川津鳴 泉之里尓 年之歴去者

家人に 恋過ぎめやも かはづ鳴く 泉の里に 年の経ぬれば 

いへびとに こひすぎめやも かはづなく いづみのさとに としのへぬれば
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家で待つ人を恋しく思わないことなどあろうか

河鹿の鳴くこの里で

年がまた過ぎてしまう
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「泉の里」  山城国相楽郡、泉川(京都府相楽郡の木津川沿いの地域)
  恭仁京(くにきょう)の所在地。

* 平城京に家族をおいて、単身赴任をしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
石川広成 いしかわのひろなり 生没年未詳
父母等は未詳。
天平十五年(743)頃、内舎人の地位にあった(万葉集巻八)。
天平宝字二年(758)八月、従六位上より従五位下。この頃但馬介。
同四年二月、高円朝臣を賜姓される(万葉巻四所載歌の左注にも「後賜姓高円朝臣氏也」とある)。
同月、文部少輔。
万葉集には三首、巻四の696番、巻八の1600・1601番。



万葉集 697・698・699


4 697;相聞,作者:大伴像見、恋情,枕詞

[題詞]大伴宿祢像見歌三首

吾聞尓  繋莫言  苅薦之  乱而念  君之直香曽

吾が聞きに 懸けてな言ひそ 刈り薦の 乱れて思ふ 君が直香ぞ 

わがききに かけてないひそ [かりこもの] みだれておもふ きみがただかぞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私に聞こえる様に言わないでください

噂を聞くだけでも心が乱れる

慕わしいあの方のお姿よ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・


サ4 698;相聞,作者:大伴像見、恋情,奈良,序詞

[題詞](大伴宿祢像見歌三首)

春日野尓  朝居雲之  敷布二  吾者戀益  月二日二異二

春日野に 朝居る雲の しくしくに 我れは恋ひ増す 月に日に異に 

かすがのに あさゐるくもの しくしくに あれはこひます つきにひにけに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
春日野の朝たなびく雲が幾重にも重なっているように

日毎月毎に幾重にも重なって増してゆく 私の恋は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 699;相聞,作者:大伴像見、序詞,恋愛


[題詞](大伴宿祢像見歌三首)

一瀬二波  千遍障良比  逝水之  後毛将相  今尓不有十方

一瀬には 千たび障らひ 行く水の 後にも逢はむ 今にあらずとも 

ひとせには ちたびさはらひ ゆくみづの のちにもあはむ いまにあらずとも
・・・・・・・・・・・・・・・・・
川の瀬では障害物だらけの流れでも

後にはかならず合流しよう

今は逢えずとも
・・・・・・・・・・・・・・・・・
* 「には」は、場所、状況の格助詞「に」に、強調の係助詞「は」がついて、ただ一つの瀬において
* 「逢ひなむ」;きっと出会うだろう。
 「逢ひ」は、ハ行四段活用動詞「逢ふ」の連用形。
 「な」は、確定の助動詞「ぬ」の未然形。
 「む」は、推量の助動詞終止形。



万葉集 700・701・702

4 700;相聞,作者:大伴家持,娘子、怨恨

[題詞]大伴宿祢家持到娘子之門作歌一首
  (大伴家持、娘子の門に至りて作る歌一首)

如此為而哉  猶八将退  不近  道之間乎  煩参来而

かくしてや なほや罷らむ 近からぬ 道の間を なづみ参ゐ来て 

かくしてや なほやまからむ ちかからぬ みちのあひだを なづみまゐきて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このように門前から

やはり帰るのでしょうか

遠い道のりを難儀してやっと来たのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 701;相聞,作者:河内百枝娘子,大伴家持、恋情

[題詞]河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首
  (河内百枝(かふちのももえ)娘子、大伴家持に贈る歌二首)

波都波都尓  人乎相見而  何将有  何日二箇  又外二将見

はつはつに 人を相見て いかにあらむ いづれの日にか また外に見む 

はつはつに ひとをあひみて いかにあらむ いづれのひにか またよそにみむ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ほんのわずかしか貴方を見ることが出来ず残念です

いつの日にかどこかで

またお逢いできるのでしょうか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


4 702;相聞,作者:河内百枝娘子,大伴家持、恋情,枕詞

[題詞](河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首)

夜干玉之 其夜乃月夜 至于今日 吾者不忘 無間苦思念者

ぬばたまの その夜の月夜 今日までに 我れは忘れず 間なくし思へば 

[ぬばたまの] そのよのつくよ けふまでに われはわすれず まなくしおもへば
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたを照らしたあの夜の月か
 
絶え間なくあなたを思いつづけているわたし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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