ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第六巻

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6 930;雑歌,作者:笠金村、,難波,大阪,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名,神亀2年10月,年紀

[題詞]((冬十月幸于難波宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首)

海末通女 棚無小舟 榜出良之 客乃屋取尓 梶音所聞

海人娘女 棚なし小舟 漕ぎ出らし 旅の宿りに 楫の音聞こゆ 

あまをとめ たななしをぶね こぎづらし たびのやどりに かぢのおときこゆ

海人の娘たちが棚無し小舟を漕ぎ出すらしい
旅寝の宿に櫓(ろ)の音が聞こえる
6 932;雑歌,作者:車持千年、難波,住吉,離宮,宮廷讃美,羈旅

[題詞](車持朝臣千年作歌一首[并短歌])反歌一首

白浪之 千重来縁流 住吉能 岸乃黄土粉 二寶比天由香名

白波の 千重に来寄する 住吉の 岸の埴生に にほひて行かな 

しらなみの ちへにきよする すみのえの きしのはにふに にほひてゆかな

白波が千重に繰返し打ち寄せる住吉
その岸辺の黄土粉
その美しい色に染まって行こう

* 「埴生」 赤土のとれる所。古くは土で衣を染める染色法があった。
* 「はに」は鉄分を多く含んだ黄赤色の粘りのある土、
* 「ふ」はその土を産する地をさす。
* 「はにふ」万葉集での原文は黄土、赤土、埴布、黄粉の字が当てられている。
* かつて住吉の海岸は赤土の露出する断崖をなしていたらしい。
 万葉集巻七には
「めづらしき 人を我ぎ家に 住吉の 岸の埴生を 見むよしもがも」
(人がみな愛でるあの娘を わが家へ住まわせるのは 住之江の岸の紅土を見るてだてがほしいように 無理なことかなあ )という歌があり、古くからその風光が愛でられたいた。
* 「住吉の埴生」は美しい女性を暗示し、伴に住むを懸ける。
* 住吉は唐津、博多と共に繁華な港町で遊び女も多かったといわれる。
* 「住吉の黄土」は砂と粘土との中間の細かさを有する土で、そのままでは陶土にはならず、そのシルトを染料にして絹を染めると絢爛たる黄金色になったことで、都の男達が憧れの女性を「住吉の岸の埴生」にたとえて、「染まりたい」と望んだ。
* 「にほふ・染める」は沖縄語で「肌を重ねる」という意味もある。
* 「にほひ・て・行か・な」美しい色に染まって行こう。
* 「て」接続助詞 継起・並列など。
活用語の連用形を承けて、その動作・状態がそこで一旦区切れることをあらわす。継起・並列・逆接など、さまざまな意味合いで用いられるが、「て」それ自体にそうした意味作用があるというより、前後の文脈からそのように判断されるということ。
* 「な」活用語の未然形に接続し、決意や希望をあらわす。この用法は助動詞「む」とほぼ同じ意味になる。話し手自身の行為について言う場合、「〜しよう」「〜したい」との自分の決意・希望をあらわす。
* 「にほふ」匂ふ。ハ行四段活用、にほ-ふ。(色などに)染まる。輝く。
* 「かをる」と「にほふ」
「香」と「色」の艶な美しさを述べるが、「かをる」は漂う「香」に、「にほふ」は「色」にあてる。
「かをる」は(香(か)・居る)で、「にほふ」は丹(に=赤土、赤色)ほ・ふ、艶のある感じ。他より抜きんでて表に現れること。(ふ)は活用語尾。視覚的な語。

* 「埴生」と「埴輪」
古代殉死風習を「日本書紀」垂仁天皇の時代(古墳時代)、野見宿禰が埴生で人馬や種々の物の形を造りそれを陸墓に立てて殉死に変えることを建議し採用された。墳墓の周りに輪のように立てたので埴輪という。

* 古代の住吉の三染色
黄土(はにふ)染め。
かきつばた染め(カキツバタの花のような色。鮮やかな紫がかかった青色。
真榛(ま「接頭」・はり)染め。

* 榛色(はしばみいろ)は、黄色系の色名であり、ハシバミ属(ヘーゼル)の実(ヘーゼルナッツ)の色に由来する。くすんだ赤みの黄色。黄色がかった薄茶色。日本では伝統色の1つ。<Wikipedia>

一般的な技法は、浸染めと摺染めで、染色材料は、植物染料が中心。
1、浸染めー染液に布を浸して染める。
2、摺染めー木や石の上に生地をおいて、草木の花や葉を直接すりつける。
3、夾纈(きょうけち)染め。すかし彫りをした板で生地を挟みつけて染める。

*古代「はにふ」は、後に農耕以外に使われる特別な土をいい、土器、瓦、壁、塗装、染料等に用いられ、それを扱う専門の技術集団は土師(はにし、はぜし)とよばれた。
6 939;雑歌,作者:山部赤人、播磨,羈旅,土地讃美

[題詞](山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首

奥浪 邊波安美 射去為登 藤江乃浦尓 船曽動流

沖つ波 辺波静けみ 漁りすと 藤江の浦に 舟ぞ騒ける 

おきつなみ へなみしづけみ いざりすと ふぢえのうらに ふねぞさわける

沖の波も岸辺の波も静かなので
漁をする藤江の浦は
舟が賑やかに行き交っている

* 「静けみ」は「静かなので」。「み」は接尾語で形容詞の語幹に付いて原因理由を表す。
* 「ける」は、過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」を受けて連体止め。
活気に満ちて賑やかなことだ。
6 940;雑歌,作者:山部赤人、播磨,羈旅,望郷

[題詞]((山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)

不欲見野乃 淺茅押靡 左宿夜之 氣長<在>者 家之小篠生

印南野の 浅茅押しなべ さ寝る夜の 日長くしあれば 家し偲はゆ 

いなみのの あさぢおしなべ さぬるよの けながくしあれば いへししのはゆ

印南野の浅茅を押し伏せて
旅寝する夜が幾日も続いたので
故郷の家が懐かしく思われてならない

* 「浅茅押しなべ」野宿の浜辺では、丈の低い茅(かや)を押し倒して、その中で寝たのだろう。
* 「日長く・し・あれ・ば」は「幾日も続いたので」
「ば」は、用言の已然形に接続し、既定条件による原因・理由(〜するので)、逆接(〜するのに)、または事柄の起こる場合(〜すると)を表す。
6 941;雑歌,作者:山部赤人、播磨,羈旅,望郷

[題詞]((山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)

明方 潮干乃道乎 従明日者 下咲異六 家近附者

明石潟 潮干の道を 明日よりは 下笑ましけむ 家近づけば 

あかしがた しほひのみちを あすよりは したゑましけむ いへちかづけば

明石潟の潮が引いて
そこに歩ける道ができたら
明日からは帰路だから
心ひそかに
微笑みがら歩いて行くだろう
妻の待つ家が近づくので

* 「明石潟」は明石の海岸。潮が引くと干潟が現れる遠浅の海岸が「潟」。
* 「下」は「心の中」

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