ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第七巻

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7 1091;雑歌

[題詞](詠雨)

可融 雨者莫零 吾妹子之 形見之服 吾下尓著有

通るべく 雨はな降りそ 我妹子が 形見の衣 我れ下に着り 

とほるべく あめはなふりそ わぎもこが かたみのころも あれしたにけり

からだに通るほど雨よ降らないでくれ
愛しい彼女の形見の衣を肌に着ているのだから

* 「べく」「べし」 
当然・推量・可能・意志 上にくる語の活用形 終止形(ラ変は連体形)
未然形―
連用形べく
終止形べし
連体形べき
已然形べけれ
命令形―
【接続】
動詞・助動詞の終止形に付く。
* 「あめは(な)ふり(そ)」な〜そ 禁止型。「雨は降るな」。
* 「形見の衣」はその人のことを思い出させてくれる大事な品物のこと。
通い婚時代の恋人や夫婦が、別れてまた逢うまでの間、互いに下着を交換して着ることがあったのを指している。
* 「けり」け・り 【着り・著り】 自動詞ラ行変格活用{ら/り/り/る/れ/れ}  着ている。ラ変動詞「あり」からなる「きあり」の変化した語。


7 1092;雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,巻向,奈良,枕詞

[題詞]詠山

動神之 音耳聞 巻向之 桧原山乎 今日見鶴鴨

鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の 桧原の山を 今日見つるかも 

[なるかみの] おとのみききし まきむくの ひはらのやまを けふみつるかも

[左注](右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)

噂には聞いていた
巻向の桧原の山を
今日見ましたよ

* 「鳴神」は「雷」のことで、「鳴神の」は「音」を言い出す枕詞。
* 「音に聞く」は「うわさに聞く」。
* 「のみ」は限定の副助詞。「〜だけ。〜ばかり」。
* 「つるかも」;
 「つる」完了の助動詞「つ」の連体形。
 「かも」詠嘆の終助詞。 〜たことだ。 
* 「巻向」は奈良桜井市。
* 「檜原」は「桧の林」のこと。
* 「巻向の檜原」は地名。
* 「桧原」は桧(ひのき)の生える原の意。


7 1093;雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,巻向,奈良,枕詞

[題詞](詠山)

三毛侶之 其山奈美尓 兒等手乎 巻向山者 継之宜霜

みつ諸の その山なみに 子らが手を 巻向山は 継ぎしよろしも 

みつもろの そのやまなみに こらがてを まきむくやまは つぎしよろしも

[左注](右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)

三輪山の山並に
あの可愛い人の手を巻くという名の
巻向山がうまくつながっているなあ

* 「巻向」は、奈良県桜井市の穴師(あなし)・巻向を中心とした一帯。
* 「三輪山は、桜井市の南東にそびえる山。三輪山、巻向山、初瀬山と連なる三山
* 「よろし」好ましい。満足できる。ふさわしい。
* 「も」 [終助詞] [感動・詠嘆] 〜よ・〜なあ 種々の語につく
7 1094;雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,三輪山,奈良,枕詞

[題詞](詠山)

我衣 色<取>染 味酒 三室山 黄葉為在

我が衣 色取り染めむ 味酒 三室の山は 黄葉しにけり 

あがころも いろどりそめむ [うまさけ] みむろのやまは もみちしにけり

[左注]右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出

自分の着物も真っ赤に染まるだろう
すっかり紅葉してしまった
あの三室の山に入っていったら

* 「うま−さけ」 【味酒・旨酒】枕詞。 味のよい上等な酒を「神酒(みわ)(=神にささげる酒)」にすることから、「神酒(みわ)」と同音の地名「三輪(みわ)」に、また、「三輪山」のある地名「三室(みむろ)」「三諸(みもろ)」などにかかる。「うまさけ三輪の山」
枕詞としては「うまさけの」「うまさけを」の形でも用いる。
* 「し」は、ある状態にある意を表すサ変動詞「す」の連用形。
* 「に−・けり」
〔「けり」が過去の意を表す場合〕…てしまった。…てしまったそうだ。
〔「けり」が気づき・詠嘆の意を表す場合〕…てしまったのだなあ。…しまったことだ。
なりたち;完了の助動詞「ぬ」の連用形+過去・詠嘆の助動詞「けり」
7 1095;雑歌,三輪山,奈良,枕詞

[題詞](詠山)

三諸就 三輪山見者 隠口乃 始瀬之桧原 所念鴨

三諸つく 三輪山見れば 隠口の 泊瀬の桧原 思ほゆるかも 

[みもろつく] みわやまみれば [こもりくの] はつせのひはら おもほゆるかも

神を祀る三輪山見れば
渓谷深く繁っているこもるくの
初瀬の檜原を思い出すことだ

* 「みもろつく」[枕]《「つく」は「築く」。一説に「斎(いつ)く」》その山に神を祭る意から、「三輪山(みわやま)」「鹿背山(かせやま)」にかかる。
* 「こもりくの」こもりくの【隠りくの】[枕]は、大和の泊瀬(はつせ)は山に囲ま れた所の意から、「泊瀬」にかかる。《「く」は所》
* 「初瀬」は古代大和朝廷の聖地であり、葬送の地でもあった。
天武天皇の時代に長谷寺が創建され、今なお信仰の地であり続けている。
* 「桧(ひ)」はヒノキが略されたもので、もとは「火の木」の意味。大昔の人がこの木をこすり合わせて火を起こしたことに由来する。日本特産の常緑樹で、山林の代表。
* 「かも」疑問を含まない単なる詠嘆(感動)をあらわす。「〜なのだなあ」「〜ことだ」。

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