ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第八巻

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8 1447;春雑歌,作者:坂上郎女

[題詞]大伴坂上郎女歌一首

尋常 聞者苦寸 喚子鳥 音奈都炊 時庭成奴

世の常に 聞けば苦しき 呼子鳥 声なつかしき 時にはなりぬ 

よのつねに きけばくるしき よぶこどり こゑなつかしき ときにはなりぬ

[左注]右一首天平四年三月一日佐保宅作

いつもでしたらちょっとでも
聞き苦しい呼子鳥の声
その声すら懐かしい時になりました


春相聞


8 1448;春相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,恋情

[題詞]大伴宿祢家持贈坂上家之大嬢歌一首

吾屋外尓 蒔之瞿麥 何時毛 花尓咲奈武 名蘇經乍見武

吾がやどに 蒔きしなでしこ いつしかも 花に咲きなむ なそへつつ見む 

わがやどに まきしなでしこ いつしかも はなにさきなむ なそへつつみむ

私の庭に蒔いた撫子の花はいつ咲くでしょうか
花が咲いたら手折って一目見せてあげたい
あなたがいたらいいのにと思いながら見ている

* 「なそへつつ」、「なぞらえて」


8 1449;春相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,恋情

[題詞]大伴田村家<之>大嬢與妹坂上大嬢歌一首

茅花抜 淺茅之原乃 都保須美礼 今盛有 吾戀苦波

茅花抜く 浅茅が原の つほすみれ 今盛りなり 吾が恋ふらくは 

[つばなぬく] あさぢがはらの つほすみれ いまさかりなり あがこふらくは

浅茅が原のすみれは
今が盛りです
あなたを思う恋のように

* 茅花(つばな):チガヤの花穂。「茅」は薄・菅・荻・茅など、屋根を葺く材料となる草の名。
* 浅茅(あさじ):まばらに生えたチガヤの原
* 「壺菫」は「菫スミレ」のこと。
* 「恋ふらくは」は、 
 「恋ふ」は、四段活用動詞「恋ふ」の連体形。
 「らく」は、活用語について名詞化する働きの接尾語。
 「は」は、感動の終助詞。




8 1450;春相聞,作者:坂上郎女,恋情

[題詞]大伴宿祢坂上郎女歌一首

情具伎 物尓曽有鶏類 春霞 多奈引時尓 戀乃繁者

心ぐき ものにぞありける 春霞 たなびく時に 恋の繁きは 

こころぐき ものにぞありける はるかすみ たなびくときに こひのしげきは

心が晴れ晴れしないものね 
春の霞がたなびく頃
激しく恋するのは

* 「心ぐき」こころぐき  心ぐし・こころぐし = 心が晴れ晴れしない、せつない、なやましい 
* 「しげき」。「恋の繁き」は、次第に恋しさが募り、しきりと恋心に襲われる・・・。


8 1451;春相聞,作者:笠郎女,大伴家持,贈答,恋情

[題詞]笠女郎贈大伴家持歌一首

水鳥之 鴨乃羽色乃 春山乃 於保束無毛 所念可聞

水鳥の 鴨の羽色の 春山の おほつかなくも 思ほゆるかも 

[みづどりの] かものはいろの はるやまの おほつかなくも おもほゆるかも

水鳥の鴨の羽の色のような春の山
霞みがかって覚つかなく
この恋のゆくえの予感がする

* 「おほつかなく」は、はっきりしない、芽吹き始めた春の山が、ぼうっと霞んだように見える様。
恋人を思って胸のふさがる心情の喩え。

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