ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第八巻

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8 1425;春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩

[題詞](山部宿祢赤人歌四首)

足比奇乃 山櫻花 日並而 如是開有者 甚戀目夜裳

あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば いたく恋ひめやも 

[あしひきの] やまさくらばな ひならべて かくさきたらば いたくこひめやも

山桜が幾日も変わらず咲き続けるなら
こんなに恋うことがあろうか

* 「たら・ば」: 完了・存続「たり」は動詞の連用形に付く。
  「ば」は、「たり」の未然形に付いて順接の仮定条件・恒常条件を表す。  「つ」「ぬ」と同じく、将来の事態につき、既定の事実であるかのように仮想して言う場合にも用いられる。
8 1426;春雑歌,作者:山部赤人,野遊び

[題詞](山部宿祢赤人歌四首)

吾勢子尓 令見常念之 梅花 其十方不所見 雪乃零有者

我が背子に 見せむと思ひし 梅の花 それとも見えず 雪の降れれば 

わがせこに みせむとおもひし うめのはな それともみえず ゆきのふれれば

あなたに見せようと思った梅の花なのに
雪が降ってそれとも見分けがつかなくなってしまった

* 「む」は助動詞・意志。
* 「それ」は「梅の花を指す」と決めつけない。
* 「降れれば」;  雪が降ってしまったので。
 「降れ」は、ラ行四段活用動詞「降る」の已然形。
 「れ」は、完了助動詞「り」の已然形。
 「ば」は原因理由の接続助詞。確定条件。
8 1427;春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩

[題詞](山部宿祢赤人歌四首)

従明日者 春菜将採跡 標之野尓 昨日毛今日<母> 雪波布利管

明日よりは 春菜摘まむと 標めし野に 昨日も今日も 雪は降りつつ 

あすよりは はるなつまむと しめしのに きのふもけふも ゆきはふりつつ

明日には春菜を摘もうと目星を付けておいた野に
昨日も今日も雪が降り続いていることよ

* 「若菜」は初春の若菜摘みとは異なる。
* 「標めし野」とは「〆を結んだ野原」のこと。土地・場所の所有・領有を示した。
8 1428;春雑歌,東大阪市日下町,生駒山,羈旅,望郷,枕詞

[題詞]草香山歌一首

忍照 難波乎過而 打靡 草香乃山乎 暮晩尓 吾越来者 山毛世尓 咲有馬酔木乃 不悪 君乎何時 徃而早将見

おしてる 難波を過ぎて うち靡く 草香の山を 夕暮れに 我が越え来れば 山も狭に 咲ける馬酔木の 悪しからぬ 君をいつしか 行きて早見む 

[おしてる] なにはをすぎて [うちなびく] くさかのやまを ゆふぐれに わがこえくれば やまもせに さけるあしびの あしからぬ きみをいつしか ゆきてはやみむ

[左注]右一首依作者微不顕名字
(右の一首は作者が低い身分であることから名を表さない)

難波を過ぎて草香の山を
夕暮れに超えてゆけば
山いっぱいに咲いているアセビではないが
大好きなあなたに早くお会いしたいことよ
8 1429;春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,予祝

[題詞]櫻花歌一首[并短歌]

○嬬等之 頭挿乃多米尓 遊士之 蘰之多米等 敷座流 國乃波多弖尓 開尓鶏類 櫻花能 丹穂日波母安奈<尓>

娘子らが  かざしのために  風流士の  かづらのためと  敷きませる  国のはたてに  咲きにける  桜の花の  にほひはもあなに 

をとめらが かざしのために みやびをの かづらのためと [しきませる] くにのはたてに さきにける さくらのはなの にほひはもあなに

[左注](右二首若宮年魚麻呂誦之)


少女の飾りのため
風流な人の髪飾りのため
天皇が治めていらっしゃる国のいたるところに
咲いている桜の花の
何と美しいことよ
* 桜を髪飾りにするのは、花が持っている生命力を人間に転移させる呪的な行為だった。

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