ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第八巻

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8 1430;春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,恋愛,予祝

[題詞](櫻花歌一首[并短歌])反歌

去年之春 相有之君尓 戀尓手師 櫻花者 迎来良之母

去年の春 逢へりし君に 恋ひにてし 桜の花は 迎へけらしも 

こぞのはる あへりしきみに こひにてし さくらのはなは むかへけらしも

[左注]右二首若宮年魚麻呂誦之

昨年の春にお会いしたあなたが恋しくて
桜の花が迎えているようです
8 1431;春雑歌,作者:山部赤人,奈良県,広陵町

[題詞]山部宿祢赤人歌一首

百濟野乃 芽古枝尓 待春跡 居之鴬 鳴尓鶏鵡鴨

百済野の 萩の古枝に 春待つと 居りし鴬 鳴きにけむかも 

くだらのの はぎのふるえに はるまつと をりしうぐひす なきにけむかも

百済野の萩の古枝に春の訪れを待っていたウグイスは
もう鳴き始めているだろうか
* 「百済野」は奈良県北葛城郡。
* 「し」は助動詞、体験的過去「き」の連体形。
* 「鳴きにけむかも」; 鳴いたことだろうなあ。
 「鳴き」は、カ行四段活用動詞「鳴く」の連用形。
 「に」は、完了助動詞「ぬ」の連用形。
 「けむ」は、過去の伝聞助動詞。
 「かも」は詠嘆の終助詞。
8 1432;春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,望郷,恋情

[題詞]大伴坂上郎女柳歌二首

吾背兒我 見良牟佐保道乃 青柳乎 手折而谷裳 見<縁>欲得

我が背子が 見らむ佐保道の 青柳を 手折りてだにも 見むよしもがも 

わがせこが みらむさほぢの あをやぎを たをりてだにも みむよしもがも

あの方は懐かしく見ておられるでしょう
生まれ育った佐保道の芽吹く青柳を
せめて手折った枝なりとも
私も観る手だてがないものかしら

* 「だに・も」は、副助詞。種々につき、それを最低限・最小限のものごととして提示する。「を-だに」「に-だに」「と-だに」など格助詞の下に付く。『て-だに』「だに-も」などもよく使われた。
・佐保川は奈良市北郊を流れる川で、初瀬川に合流する。
8 1433;春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保

[題詞](大伴坂上郎女柳歌二首)

打上 佐保能河原之 青柳者 今者春部登 成尓鶏類鴨

うち上る 佐保の川原の 青柳は 今は春へと なりにけるかも 

[うちのぼる] さほのかはらの あをやぎは いまははるへと なりにけるかも

佐保の川風に打ち靡く河原の青柳は
今は鮮やかに芽吹いて春の装いになっているだろう

* 「春べ(春方)」は「春のころ。春」のこと。
* 「にけるかも」は完了助動詞「ぬ」の連用形「に」、
  過去助動詞「けり」の連体形「ける」、
  詠嘆終助詞「かも」=〜なったなあ。
8 1434;春雑歌,作者:大伴三林,奈良,春日

[題詞]大伴宿祢三林梅歌一首

霜雪毛 未過者 不思尓 春日里尓 梅花見都

霜雪も いまだ過ぎねば 思はぬに 春日の里に 梅の花見つ 

しもゆきも いまだすぎねば おもはぬに かすがのさとに うめのはなみつ

霜や雪もまだ消えていないのに
思いがけず春日の里で梅の花を見たよ

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