ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第八巻

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8 1440;春雑歌,作者:河辺東人,高円山,奈良,地名,植物

[題詞]河邊朝臣東人歌一首

春雨乃 敷布零尓 高圓 山能櫻者 何如有良武

春雨の しくしく降るに 高円の 山の桜は いかにかあるらむ 

はるさめの しくしくふるに たかまとの やまのさくらは いかにかあるらむ

春雨がしとしと降っている
高円の桜は今どうなっているだろうか

* 高円山は、奈良の春日山と地獄谷を挟んで南方にある小高い山。
* 「さくら」の名前の由来については、花の咲くようすがいかにもうららかなので「さきうら」と呼び、それが「さくら」に転化したとも。 
なお、万葉集で詠まれている桜の種類は「山桜」。
* 「ソメイヨシノ」は江戸末期に染井村(東京)の植木屋によって作り出された品種で、葉が出る前に花が咲き、華やかに見えることからたちまち全国に植えられ、今の桜の名所の主役となっている。
8 1441;春雑歌,作者:大伴家持

[題詞]大伴宿祢家持鴬歌一首

打霧之 雪者零乍 然為我二 吾宅乃苑尓 鴬鳴裳

うち霧らひ 雪は降りつつ しかすがに 我家の苑に 鴬鳴くも 

[うちきらし] ゆきはふりつつ しかすがに わぎへのそのに うぐひすなくも

空が霞むように雪が降っている
そんな中 我が家の庭には
春の到来を告げるウグイスが鳴いているではないか
8 1442;春雑歌,作者:丹比屋主,菜摘み,大阪

[題詞]大蔵少輔丹比屋主真人歌一首

難波邊尓 人之行礼波 後居而 春菜採兒乎 見之悲也

難波辺に 人の行ければ 後れ居て 春菜摘む子を 見るが悲しさ 

なにはへに ひとのゆければ おくれゐて はるなつむこを みるがかなしさ

難波の方にみんな出かけたが
後に一人留守居して
春菜を摘む幼な子を見るのは
なんとも侘しいことだな

* 「後れ居て」は「留守居」のこと。
8 1443;春雑歌,作者:丹比乙麻呂,野遊び

[題詞]丹比真人乙麻呂歌一首 [屋主真人之第二子也]

霞立 野上乃方尓 行之可波 鴬鳴都 春尓成良思

霞立つ 野の上の方に 行きしかば 鴬鳴きつ 春になるらし 

かすみたつ ののへのかたに ゆきしかば うぐひすなきつ はるになるらし

霞が立っている野原の上のほうへ出かけてみると
鴬が鳴いていたよ
もうこのあたりも春になったようだね

* 「行きしかば」は、カ行四段活用動詞「行く」の連用形。
  過去助動「き」の已然形「しか」、
  接続助詞「ば」偶然条件。行ってみましら。
* 「つ」は完了助動詞。
* 「らし」は推定助動詞(〜らしい)。眼前の確かな根拠から推定する。
8 1444;春雑歌,作者:高田女王,大原高安,高安王

[題詞]高田女王歌一首 [高安之女也]

山振之 咲有野邊乃 都保須美礼 此春之雨尓 盛奈里鶏利

山吹の 咲きたる野辺の つほすみれ この春の雨に 盛りなりけり 

やまぶきの さきたるのへの つほすみれ このはるのあめに さかりなりけり

山吹の花が咲いた野辺に
つぼすみれも咲いている
この春の雨に濡れながら
生き生きと輝くように咲いている

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