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正述心緒(正(ただ)に心緒(おもひ)を述ぶ) 2368 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞]正述心緒 垂乳根乃 母之手放 如是許 無為便事者 未為國 [たらちねの] ははがてはなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに ・・・・・・・・・
物心がついて 母の手から離れると これほどどうしようもない 未経験のめにあうのかしら 母を頼らないではいられない ・・・・・・・・・ 2369作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 人所寐 味宿不寐 早敷八四 公目尚 欲嘆 [或本歌云 公矣思尓 暁来鴨] ひとのぬる うまいはねずて はしきやし きみがめすらを ほりしなげかむ[きみをおもふに あけにけるかも] ・・・・・・・・・
* 「はしきやし」 いとおしい君を思っているうちに夜が明けてしまう 人並みに寝て熟睡するようには寝ることが出来なくて せめて夢の中で愛しい貴方の姿を見たいと思い嘆いても ・・・・・・・・・ 2370作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 戀死 戀死耶 玉鉾 路行人 事告<無> こひしなば こひもしねとや [たまほこの] みちゆくひとの こともつげなく ・・・・・・・・・
恋に苦しんで死ねば もうその恋も無くなるではないか ですか 路行く人は勝手に焦れ死ねよと そんな言づても告げてはくれない ・・・・・・・・・ 2371作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 心 千遍雖念 人不云 吾戀つ 見依鴨 こころには ちへにおもへど ひとにいはぬ あがこひづまを みむよしもがも ・・・・・・・・・
貴女を愛していると 心の中では千遍も思っていても 人には云いません 私の恋妻に逢う機会がないままかよ なにか方法がないものかなあ ・・・・・・・・・ 2372作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 是量 戀物 知者 遠可見 有物 かくばかり こひむものぞと しらませば とほくもみべく あらましものを ・・・・・・・・・
このように貴女に恋するものだと知っていたら 初めに貴女の姿を見たとき 遠くからぼんやりと見るべきでした ・・・・・・・・・ 2373作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 何時 不戀時 雖不有 夕方<任> 戀無乏 いつはしも こひぬときとは あらねども ゆふかたまけて こひはすべなし ・・・・・・・・・
いつも貴女を恋い慕わないときはありませんが 夕方が近づくにつれて 恋心はもうどうしようもありません ・・・・・・・・・ 2374作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 是耳 戀度 玉切 不知命 歳經管 かくのみし こひやわたらむ [たまきはる] いのちもしらず としはへにつつ ・・・・・・・・・
このように魂の極まる恋をし続けている 命も知らず年を過ごしている そうとも 死が別つまでさ ・・・・・・・・・ 2375作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 吾以後 所生人 如我 戀為道 相与勿湯目 われゆのち うまれむひとは あがごとく こひするみちに あひこすなゆめ ・・・・・・・・・
後の世の人よ 私のような恋はし給うな 楽しい恋をすることだ 果てしない苦しみの恋には ゆめ決して遭わないでほしい ・・・・・・・・・ 2376作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 健男 現心 吾無 夜晝不云 戀度 ますらをの うつしごころも われはなし よるひるといはず こひしわたれば ・・・・・・・・・
立派な男だてを示す心意気は私にはありません 夜昼と云わずに貴女にべったり恋し続けている私には ・・・・・・・・・ 2377作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 何為 命継 吾妹 不戀前 死物 なにせむに いのちつぎけむ わぎもこに こひぬさきにも しなましものを ・・・・・・・・・
どのように私の命を永らえましょう 愛しい貴女と恋の行為をする前に もう苦しみに死んでしまいそうだ ・・・・・・・・・ 2378作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 吉恵哉 不来座公 何為 不Q吾 戀乍居 よしゑやし きまさぬきみを なにせむに いとはずあれは こひつつをらむ ・・・・・・・・・
いいですよかまいません いらっしゃらない貴方を 厭わずそれでも私は貴方に恋し続けていますよ ・・・・・・・・・ 2379作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 見度 近渡乎 廻 今哉来座 戀居 みわたせば ちかきわたりを たもとほり いまかきますと こひつつぞをる
・・・・・・・・・
向こう岸まで見渡せば近いその辺を わざと回り道して もうお見えになるかと 貴方を恋い慕いながら待っています ・・・・・・・・・ |
万葉集索引第十一巻
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2380 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 早敷哉 誰障鴨 玉桙 路見遺 公不来座 はしきやし たがさふれかも [たまほこの] みちみわすれて きみがきまさぬ ・・・・・・・・・
ああ愛おしい 誰かが邪魔をしているのでしょうか 立派な桙の立つ宮かどの道を忘れたのか 貴方がやって来ません ・・・・・・・・・ 2381 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 公目 見欲 是二夜 千歳如 吾戀哉 きみがめを みまくほりして このふたよ ちとせのごとも あはこふるかも ・・・・・・・・・
貴方の目を見つめようと思って この二夜 まるで千年のように感じて待ち侘び 私は貴方を慕っているのですよ ・・・・・・・・・ サ2382 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 打日刺 宮道人 雖満行 吾念公 正一人 [うちひさす] みやぢをひとは みちゆけど あがおもふきみは ただひとりのみ ・・・・・・・・・
* 「打日刺」枕詞―うちひさす。 「うちひさす」は「うちひさつ」とも日に照り映える荘厳な宮殿への道を 人は溢れるように歩いて行くが 私のおもう人はただ一人 君 ただ一人のみ ・・・・・・・・・ 語義およびかかり方未詳。「宮」「都」にかかる。栄光にして荘厳の意とか。 『角川漢和中辞典』では、「都」は「総・ふさ」と同訓、同義でもあり、語源は「あつまる」。「まとめる、みやびやか〔都雅〕、うつくしい」の意味をもつ。 * 「打日刺」、それにしても痛々しい当て字と私は思う。 2383 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 世中 常如 雖念 半手不<忘> 猶戀在 よのなかは つねかくのみと おもへども はたたわすれず なほこひにけり ・・・・・・・・・
* 「はたたわすれず」・「かつてわすれず」世の中は常々このようなものかと思いはするが この恋心はどうしても忘れることが出来ず なおさらながら想いがつのることよ ・・・・・・・・・ (半手不<忘>)・(曽不忘) http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#535かつてわすれず(曽不忘) 2384 作者:柿本人麻呂歌集,女歌 [題詞](正述心緒) 我勢古波 幸座 遍来 我告来 人来鴨 わがせこは さきくいますと かへりくと あれにつげこむ ひともこぬかも ・・・・・・・・・
大切な貴方が無事で居ますよ 無事にお帰りになりますよと 私に告げに来る人は来ないようですねえ ・・・・・・・・・ 2385 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) <麁>玉 五年雖經 吾戀 跡無戀 不止恠 [あらたまの] いつとせふれど あがこひの あとなきこひの やまなくあやし ・・・・・・・・・
年が新らたまりつつ五年過ごしたが 実際に愛し抱き合うことの出来ないそんな恋 なのに止むことがない恋の不思議さよ ・・・・・・・・・ 2386 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 石尚 行應通 建男 戀云事 後悔在 いはほすら ゆきとほるべき ますらをも こひといふことは のちくいにけり ・・・・・・・・・
巌であっても踏破して当然の男児なのに 相手が恋となるとひるんで後になって悔いることよ ・・・・・・・・・ 2387 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ [題詞](正述心緒) 日<位> 人可知 今日 如千歳 有与鴨 ひならべば ひとしりぬべし けふのひは ちとせのごとも ありこせぬかも ・・・・・・・・・
このような日が続くと人が貴方と私の仲を気づくでしょう 今日の一日は千年のように長くならないでしょうか ・・・・・・・・・ 2388 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 立座 <態>不知 雖念 妹不告 間使不来 たちてゐて たづきもしらず おもへども いもにつげねば まつかひもこず ・・・・・・・・・
居ても立ってもこの恋を表す方法がわからない いくら貴女を慕っていても それを告げなくては 貴女からの使いも来ませんね ・・・・・・・・・ 2389 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,女歌,後朝 [題詞](正述心緒) 烏玉 是夜莫明 朱引 朝行公 待苦 [ぬばたまの] このよなあけそ あからひく あさゆくきみを またばくるしも ・・・・・・・・・
この夜よ明け白むな 知るや暁の中をゆく君を送るつらさを 朱に染まっている私の体が 次に逢うときまで待つのが辛いと疼く ・・・・・・・・・ 2390 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 戀為 死為物 有<者> 我身千遍 死反 こひするに しにするものに あらませば あがみはちたび しにかへらまし ・・・・・・・・・
抱かれてそのために死ぬのでしたら 私の体は千遍も死んで生き還りましょう ・・・・・・・・・ 2391 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 玉響 昨夕 見物 今朝 可戀物 [たまかぎる] きのふのゆふへ みしものを けふのあしたに こふべきものか
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玉がほのかに光り 触れ合うかすかな音 昨夜にお会いした貴方なのに 今朝には面影が棲みついて もう私は恋におちてしまいました ・・・・・・・・・ |
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2406 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 狛錦 紐解開 夕<谷> 不知有命 戀有 こまにしき ひもときあけて ゆふへだに しらずあるいのち こひつつかあらむ ・・・・・・・・・・・
美しい高麗の錦の紐を解き衣を脱いで 今宵だけでも 生きているのか死んでいるのか判らない そんな夢の中で貴女を抱きしめましょう ・・・・・・・・・・・ 2407 作者:柿本人麻呂歌集,女歌,占い [題詞](正述心緒) 百積 船潜納 八占刺 母雖問 其名不謂 ももさかの ふねかくりいる [やうらさし] はははとふとも そのなはのらじ ・・・・・・・・・・・
* 「ももさか」 百積/百石 「さか」は容積の単位。百石。また、容積の大きいこと。百尺の大船が入る港で 占いを立てて母が聞いても 決してその人の名は言うまい ・・・・・・・・・・・ * 「やうらさし」複数の占いをし、みずからにとって都合のよい結果を探し求めているように見える。(枕詞)。 * 当時は母系であるから、母の許しが必要だった。母は、わが子の相手が、誰なのかに、深く興味を持つ。名前を告げて、母が反対したら大変である。 結婚をして子供が出来ると女の実家で育てることになる。 それは、母親にとっては、重大なことである。 古代は母系、身分でさえ母の血筋が主体となった。 2408 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 眉根削 鼻鳴紐解 待哉 何時見 念<吾> まよねかき はなひひもとけ まつらむか いつかもみむと おもへるわれを ・・・・・・・・・・・
眉毛に化粧をして小鼻を鳴らし 上着の衣の紐を解いて 貴方を待っていましょう 何時、いらっしゃるのかと 思っています 私は ・・・・・・・・・・・ 2409 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 君戀 浦經居 悔 我裏紐 結手徒 きみにこひ うらぶれをれば くやしくも わがしたびもの ゆふていたづらに ・・・・・・・・・・・
恋しい貴方逢えないで寂しく思っていると 悔しいことに夜着を留める 下紐を結ぶ手も空しい ・・・・・・・・・・・ 2410 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 璞之 年者竟杼 敷白之 袖易子少 忘而念哉 [あらたまの] としははつれど [しきたへの] そでかへしこを わすれておもへや ・・・・・・・・・・・
年も終わってしまったけれど 夜寝る床で衣を脱いでお互いの体に掛け合った貴女を 忘れてしまったと思っていますか ・・・・・・・・・・・ 2411 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](正述心緒) 白細布 袖小端 見柄 如是有戀 吾為鴨 [しろたへの] そでをはつはつ みしからに かかるこひをも あれはするかも ・・・・・・・・・・・
神事で着る白い栲の貴女の袖を わずかに見てしまったからでしょうか それでこのような恋を私はするのでしょう ・・・・・・・・・・・ 2412 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 我妹 戀無乏 夢見 吾雖念 不所寐 わぎもこに こひすべながり いめにみむと われはおもへど いねらえなくに ・・・・・・・・・・・
美しい貴女に恋する手立てはありません 夢に貴女の姿を見ようと私は思うのですが 恋が募って寝るどころではありません ・・・・・・・・・・・ 2413 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ [題詞](正述心緒) 故無 吾裏紐 令解 人莫知 及正逢 ゆゑもなく わがしたびもを とけしめて ひとになしらせ ただにあふまでに ・・・・・・・・・・・
逢ってもいないのに 私の下着の紐を貴方は夢の中で解かさせて そんなことを人には気づかせないで 本当に逢って紐を解くまでは ・・・・・・・・・・・ 2414 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](正述心緒) 戀事 意追不得 出行者 山川 不知来 こふること なぐさめかねて いでてゆけば やまをかはをも しらずきにけり
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貴女とい抱き合うことを忘れかねて 山も川も所も知らずにさまよい歩く恋の切なさ ・・・・・・・・・・・ |
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2449 作者:柿本人麻呂歌集,飛鳥,奈良,序詞 [題詞](寄物陳思) 香山尓 雲位桁曵 於保々思久 相見子等乎 後戀牟鴨 [かぐやまに くもゐたなびき おほほしく] あひみしこらを のちこひむかも ・・・・・・・・・・
雲がたなびく香具山はおぼろ あの朧な山のようにぼんやりと出会ったあの子を 後になったこれからも恋するのでしょうか 素敵な乙女であったことよ ・・・・・・・・・・ 2450 作者:柿本人麻呂歌集,序詞 [題詞](寄物陳思) 雲間従 狭や月乃 於保々思久 相見子等乎 見因鴨 [くもまより さわたるつきの おほほしく] あひみしこらを みむよしもがも ・・・・・・・・・・
雲間に渡る月が時より顔を見せるように ぼんやりと互いに出会った乙女よ もう一度会う機会が欲しい もう見ることはできないのだろうか ・・・・・・・・・・ 2451 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](寄物陳思) 天雲 依相遠 雖不相 異手枕 吾纒哉 あまくもの よりあひとほみ あはずとも あたしたまくら われまかめやも ・・・・・・・・・・
天の雲が寄り合う果てのように遠く離れて 逢うことが出来ないからといって 他の女性の手枕で寝ようなんて 私がどうしできよう ・・・・・・・・・・ 2452 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](寄物陳思) 雲谷 灼發 意追 見乍<居> 及直相 くもだにも しるくしたたば なぐさめて みつつもをらむ ただにあふまでに ・・・・・・・・・・
* なぐさめにみつつもあらむ(意追見乍有) あなたの姿に見える雲だけでも湧き立ってくれたら 見るだけでなぐさめられていられる 直接逢った時を思うほどまでに ・・・・・・・・・・ http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#537なぐさめにみつつもあらむ(意追見乍有) サ2453 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,奈良,枕詞 [題詞](寄物陳思) 春楊 葛山 發雲 立座 妹念 [はるやなぎ] かづらきやまに たつくもの] たちてもゐても いもをしぞおもふ ・・・・・・・・・・
春柳を鬘(かずら)挿す葛城山の雲ではないが 居ても立っても貴女のことだけが偲ばれる ・・・・・・・・・・
* 「楊奈疑」→柳。(春楊 葛山 發雲 立座 妹念(2453)→春柳 葛城山に 立つ雲の 立ちても居ても 妹をしぞ思ふ
「發」→可須美多都・霞發「立つ」「居る(ゐる)」「いも」「思ふ」 「葛山」→「葛城山」を漢文風に表記。) * 「表語文字」の歌の代表。10字で表す。お見事。 * 「混成」の一首 人毛奈吉 空家者 草枕 旅尓益而 辛苦有家里(451) 人もなき 空しき家は 草枕 旅にまさりて 苦しくありけり 妻のいない空しい家は 苦しい旅にもまして 耐え難く辛いことだよ * 「万葉仮名の一例」 多良知祢乃 波々乎和加例弖 麻許等和例 多非乃加里保尓 夜須久祢牟加母 4348 たらちねの 母を別れて まこと吾れ 旅の仮廬に 安く寝むかも 母とも別れて旅の仮小屋 ほんとうに 気安く寝ることができるのかなあ * 漢字は、1字で1語を表し1音で読まれるものだが、語としての意味は捨てて、音を表す記号と化して元来「表語文字」である漢字を「表音文字」として使っているのが「仮字」(「仮名」)で、後世のひらがなとは別ものだが、これらは、一般には万葉時代に用いられた仮名、すなわち「万葉仮名」と呼ばれる。この「万葉仮名」を草書体に崩したものが「草仮名」。さらに崩して、もはや漢字としての書体を越えたものが「ひらがな」となる。 <サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/29120691.html <項>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/folder/1039689.html?m=lc&p=29 2454 作者:柿本人麻呂歌集,奈良 [題詞](寄物陳思) 春日山 雲座隠 雖遠 家不念 公念 [かすがやま くもゐかくりて とほけども] いへはおもはず きみをしぞおもふ ・・・・・・・・・・
春日山は雲に隠れて遙かに遠いのですが 故郷大和の家のことは思い出さず あの方のことばかり思っているわたしであることよ ・・・・・・・・・・ 2455 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ [題詞](寄物陳思) 我故 所云妹 高山之 峯朝霧 過兼鴨 わがゆゑに いはれしいもは [たかやまの みねのあさぎり] すぎにけむかも ・・・・・・・・・・
私のせいで人に噂されたあの女は まるで高山の嶺の朝霧が消えて行くように もうあきらめて どこかへ去ってしまったのだろうか ・・・・・・・・・・ 2456 作者:柿本人麻呂歌集,奈良,枕詞,序詞 [題詞](寄物陳思) 烏玉 黒髪山 山草 小雨零敷 益々所<思> [ぬばたまの] くろかみやまの やますげに] こさめふりしき しくしくおもほゆ ・・・・・・・・・・
黒髪山の草の上に小雨が降りしきるように しっとりとした黒髪のあの子を しきりに思いだしています ・・・・・・・・・・ 2457 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](寄物陳思) 大野 小雨被敷 木本 時依来 我念人 おほのらに こさめふりしく このもとに ときとよりこね わがおもふひと ・・・・・・・・・・
大野に小雨が降りしきる 木の下に雨宿りするように ちょうどよいと遣って来て下さい 私の愛する貴方 ・・・・・・・・・・ 2458 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞 [題詞](寄物陳思) 朝霜 消々 念乍 何此夜 明鴨 [あさしもの] けなばけぬべく おもひつつ いかにこのよを あかしてむかも ・・・・・・・・・・
朝霜は消えるなら消えてしまうが 消えぬ貴方への恋心を抱いて どのようにこの夜を明かしましょうか ・・・・・・・・・・ 2459 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,うわさ [題詞](寄物陳思) 吾背兒我 濱行風 弥急 急事 益不相有 [わがせこが はまゆくかぜの いやはやに] ことをはやみか いやあはずあらむ ・・・・・・・・・・
私の愛しいひとの浜に行こうにも その浜風がとても早くて 事が起こってそれで逢うことが出来ません ・・・・・・・・・・ 2460 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](寄物陳思) 遠妹 振仰見 偲 是月面 雲勿棚引 とほきいもが ふりさけみつつ しのふらむ このつきのおもに くもなたなびき
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遠い所にいる愛しい貴女が 私のように空を見上げて偲ぶのでしょう この月に面蔭が見えているもの この月を隠すなんていけないよ ね 棚引く雲よ ・・・・・・・・・・ |
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2483 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,髪 [題詞](寄物陳思) 敷栲之 衣手離而 玉藻成 靡可宿濫 和乎待難尓 [しきたへの] ころもでかれて [たまもなす] なびきかぬらむ わをまちかてに ・・・・・・・・・
互いの衣を体に掛け合うこともない 美しい藻のような黒髪を貴方に着せて共寝をしたい ただ 待ちわびているしきたへの夜よ ・・・・・・・・・ 2484 作者:柿本人麻呂歌集,勧誘 [題詞](寄物陳思) 君不来者 形見為等 我二人 殖松木 君乎待出牟 きみこずは かたみにせむと わがふたり うゑしまつのき きみをまちいでむ ・・・・・・・・・
貴方が訪れないのなら 貴方と思って二人で植えた待合の その松の木へ貴方を待ちに出かけよう ・・・・・・・・・ 2485 作者:柿本人麻呂歌集,女歌,後朝別れ [題詞](寄物陳思) 袖振 可見限 吾雖有 其松枝 隠在 そでふらば みゆべきかぎり われはあれど そのまつがえに かくらひにけり ・・・・・・・・・
心を寄せて袖振る貴女を 見える限り私は見つづけているのに 松の木の陰にもう隠れてしまいました ・・・・・・・・・ 2486 作者:柿本人麻呂歌集,大阪,序詞,掛詞 [題詞](寄物陳思) 珍海 濱邊小松 根深 吾戀度 人子○ [ちぬのうみの はまへのこまつ ねふかめて] あれこひわたる ひとのこゆゑに ・・・・・・・・・
* 茅渟(ちぬ)の海は大阪南部から堺市にかけての海岸。現在は大阪湾全体の美称。 茅渟の海の浜辺の小松は しだいに根を深く拡げるように わたしの恋も思いが深まるばかり あの子は出逢えない箱入り娘だから ・・・・・・・・・ 2486S 作者:柿本人麻呂歌集,大阪,序詞 [題詞](寄物陳思)或本歌<曰> 血沼之海之 塩干能小松 根母己呂尓 戀屋度 人兒故尓 [ちぬのうみの しほひのこまつ ねもころに] こひやわたらむ ひとのこゆゑに ・・・・・・・・・
茅渟の海の浜辺の小松は一面に行き渡るように わたしの恋も広く深まるばかり あの子は人の大事な箱入り娘だから ・・・・・・・・・ 2487 作者:柿本人麻呂歌集,奈良,序詞 [題詞](寄物陳思) 平山 子松末 有廉叙波 我思妹 不相止<者> [ならやまの こまつがうれの うれむぞは] あがおもふいもに あはずやみなむ ・・・・・・・・・
* 「うれむぞ」どうしてまあ。奈良山の小松の若芽が芽生えるように 日に日に可愛くなるあの子に どうしてまあ 逢わずにすますことなどできようか ・・・・・・・・・ 2488 作者:柿本人麻呂歌集,序詞 [題詞](寄物陳思) 礒上 立廻香<樹> 心哀 何深目 念始 [いそのうへに たてるむろのき ねもころに] なにしかふかめ おもひそめけむ ・・・・・・・・・
磐の上に立て廻す神の依り代のむろの木に 心を懸け想いを深めて貴女を愛し始めました ・・・・・・・・・ 2489 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](寄物陳思) 橘 本我立 下枝取 成哉君 問子等 たちばなの もとにわをたて しづえとり ならむやきみと とひしこらはも ・・・・・・・・・
* 「はも」は係助詞(終助詞的用法)「は」に終助詞「も」のついたもの。強い詠嘆の意を表す。橘の木の下に私を立たせ 下枝を手にとって 「実を結ぶでしょうか あなた」と わたしに聞いたあの娘 どうしているのかなあ ・・・・・・・・・ 2490 作者:柿本人麻呂歌集,序詞 [題詞](寄物陳思) 天雲尓 翼打附而 飛鶴乃 多頭々々思鴨 君不座者 [あまくもに はねうちつけて とぶたづの] たづたづしかも きみしまさねば ・・・・・・・・・
雲に翼を打ちつけるように飛ぶ鶴がたくさんいるように 千路に乱れて思い悩んでいます 貴方がいらっしゃらないので ・・・・・・・・・ 2491 作者:柿本人麻呂歌集 [題詞](寄物陳思) 妹戀 不寐朝明 男為鳥 従是此度 妹使 いもにこひ いねぬあさけに をしどりの こゆかくわたる いもがつかひか ・・・・・・・・・
鴛鴦(えんおう)の契りとは、オシドリのようにつがいのきずなが固く、死ぬまで変わらないことで、鴛が雄、鴦は雌。あの娘に恋して寝られずいる夜明けに 鴛鴦が仲良くここに渡っているのは 貴女からの使いでしょうか ・・・・・・・・・ おしどり夫婦ともいうが、実はカモがつがいになるのは繁殖期だけ。生涯雌雄が寄り添うと考えられてきたが、DNA鑑定の結果、ほとんんどのカモの種がつがい相手以外と交尾することがわかった。オシドリもご多分に漏れず、仲むつまじいのは雌が卵を温め始めるまで。雌の抱卵中、オシドリの雄は雄だけの群れを作り、独身の雌が現れると、雄たちは積極的にアプローチするという。 2492 作者:柿本人麻呂歌集,うわさ,枕詞 [題詞](寄物陳思) 念 餘者 丹穂鳥 足<沾>来 人見鴨 おもひにし あまりにしかば [にほどりの] なづさひこしを ひとみけむかも ・・・・・・・・・
におどり‐の〔にほどり‐〕カイツブリ思いあまって鳰鳥が水にもぐるのようにして ずぶぬれになって川を渡って来ましたが 人が見てしまったでしょうか ・・・・・・・・・ [枕] 1 鳰鳥が水に潜(かず)き、長くもぐる意から、「葛飾(かづしか)」「息長(おきなが)」に掛かる。 2 鳰鳥が雌雄並んで水に意から、「なづさふ」「二人並びゐ」に掛かる。 2493 作者:柿本人麻呂歌集,序詞,別離 [題詞](寄物陳思) 高山 峯行完 <友>衆 袖不振来 忘念勿 [たかやまの みねゆくししの ともをおほみ] そでふらずきぬ わするとおもふな
・・・・・・・・・
高い山の峰を行く鹿や猪のように供が多いので 貴女に別れの袖を振らないで来ました 私が貴女を忘れていると思わないで下さい ・・・・・・・・・ |



