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2574 女歌 [題詞](正述心緒) 面忘 太尓毛得為也登 手握而 雖打不寒 戀<云>奴 おもわすれ だにもえすやと たにぎりて うてどもこりず こひといふやつこ ・・・・・・・・・
* 「だに・も・え・すや・と」顔だけでも忘れることができるかと 拳を握りしめて打っても懲りもしない 恋というやつめ ・・・・・・・・・ 恋を擬人化して歌う。 * 「手握りて」に、忘れようとする強い意志を示す。 * 「奴」と「恋」をおとしめる。大げさ、切実さと滑稽さを漂わせる。 2575 女歌 [題詞](正述心緒) 希将見 君乎見常衣 左手之 執弓方之 眉根掻礼 めづらしき きみをみむとこそ ひだりての ゆみとるかたの まよねかきつれ ・・・・・・・・・
* 「取る方(かた) 」弓を取る方。左。ゆんで。なかなか逢えないあなたに逢えるかと 左手の弓を執る手でかゆい眉をかいた ・・・・・・・・・ * 眉がかゆくなるのは、恋人に会える前兆と古代では考えられていたらしい。 2576 垣間見,うわさ [題詞](正述心緒) 人間守 蘆垣越尓 吾妹子乎 相見之柄二 事曽左太多寸 ひとまもり あしかきごしに わぎもこを あひみしからに ことぞさだおほき ・・・・・・・・・
* 「さだ」(副)たしかに。実に。(名)評判・うわさ。人目をはばかって気付かれないよう 葦の垣ね越しに吾が妻を見ただけで もう評判が立ってしまった ・・・・・・・・・ 2577 女歌 [題詞](正述心緒) 今谷毛 目莫令乏 不相見而 将戀<年>月 久家真國 いまだにも めなともしめそ あひみずて こひむとしつき ひさしけまくに ・・・・・・・・・
* 「まく」推量の助動詞「む」のク語法。・・だろうこと。今だけでもこちらを向いて そのお顔をよくみせてください 逢えぬまま恋に苦しむ月日は また長くなるでしょうから ・・・・・・・・・ サ2578 女歌,後朝 [題詞](正述心緒) 朝宿髪 吾者不梳 愛 君之手枕 觸義之鬼尾 あさねがみ われはけづらじ [うるはしき] きみがたまくら ふれてしものを ・・・・・・・・・
* 「梳らじ」は、くしけずるまい。今朝の寝みだれ髪に 私は櫛を通すまい いとしいあの人の腕が枕になって 触れたものだもの ・・・・・・・・・ * 「うるはし」(形シク)は、いとしい。根本に「おごそか・端正」意。 * 「き」は助動特殊型、諸説あり。 * 「が」は、格助詞「の」に同じ。 * 「手枕」は、腕まくらのこと。 * 「触れ」は、ラ行下二段活用動詞「触る」の連用形。 * 「て」は、完了の助動詞「つ」の連用形。 * 「し」は、過去動詞「き」の連体形。 * 「もの」は、形式名詞。 * 「を」は、詠嘆の間投助詞。 2579 女歌,逢会 [題詞](正述心緒) 早去而 何時君乎 相見等 念之情 今曽水葱少熱 はやゆきて いつしかきみを あひみむと おもひしこころ いまぞなぎぬる ・・・・・・・・・
この時代、女の人は常に「待たされる」存在。急いで行って少しでも早く君に逢いたい と はやっていた心が こうして逢い 目を見つめて やっと落ちつきましたよ ・・・・・・・・・ 当時「待つ」ことはもはや当たり前だったわけで、 そういうことに慣れていた節もあるから「待つ歌」を全て悲壮感で読み取る必要は無い。幅広く感じよう。 2580 [題詞](正述心緒) 面形之 忘戸在者 小豆鳴 男士物屋 戀乍将居 おもかたの わするとあらば あづきなく をとこじものや こひつつをらむ ・・・・・・・・・
あなたの面影が忘れられるようなものならば やるせなく恋で放心などしていましょうか 男たるものがこんなに女々しくも ・・・・・・・・・ 2581 [題詞](正述心緒) 言云者 三々二田八酢四 小九毛 心中二 我念羽奈九二 ことにいへば みみにたやすし すくなくも こころのうちに わがもはなくに ・・・・・・・・・
言葉にしてしまえば 大したことには聞こえないでしょう 心の中の愛は計り知れないのだ 数字で勝負しようぜ ・・・・・・・・・ 2582 自嘲 [題詞](正述心緒) 小豆奈九 何<狂>言 今更 小童言為流 老人二四手 あづきなく なにのたはこと いまさらに わらはごとする おいひとにして ・・・・・・・・・
何という愚かなことを言ったものか この歳になって少年のような真似をするとは ・・・・・・・・・ 2583 [題詞](正述心緒) 相見而 幾久毛 不有尓 如<年>月 所思可聞 あひみては いくびささにも あらなくに としつきのごと おもほゆるかも ・・・・・・・・・
会わない期間がそれほどの間でもないのに 長い年月が経ったように思う 私は恋におちてしてしまったのか ・・・・・・・・・ 2584 [題詞](正述心緒) 大夫登 念有吾乎 如是許 令戀波 小可者在来 ますらをと おもへるわれを かくばかり こひせしむるは あしくはありけり
・・・・・・・・・
* 「せしむ」サ変動詞「す」の未然形に、使役の助動詞「しむ」のついたもの。・・させる。男の中の男と自負する吾を これほど恋狂いさせて 苦しめるとは 許せーん ・・・・・・・・・ * 「あしくはありけり(小可者在来)」 http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#541あしくはありけり(小可者在来) |
万葉集索引第十一巻
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2585 女歌 [題詞](正述心緒) 如是為乍 吾待印 有鴨 世人皆乃 常不在國 かくしつつ わがまつしるし あらぬかも よのひとみなの つねにあらなくに ・・・・・・・・
こんなにも思い詰めて待っているよと そんな霊になれらいいのに 世の中の人はだれだって そんなないつまでも生きてはいないことよ ・・・・・・・・ 2586 うわさ [題詞](正述心緒) 人事 茂君 玉梓之 使不遣 忘跡思名 ひとごとを しげみときみに [たまづさの] つかひもやらず わするとおもふな ・・・・・・・・
人の噂がひどいので 恋の使者も送れないが 忘れているなどとは けっして思わないで欲しい ・・・・・・・・ 2587 飛鳥 [題詞](正述心緒) 大原 <古>郷 妹置 吾稲金津 夢所見乞 おほはらの ふりにしさとに いもをおきて われいねかねつ いめにみえこそ ・・・・・・・・
* いめにみえつつ(夢所見乍) 奈良の都から遠く離れ 古くうらぶれた大原の里に 可愛いあの子を置いてきた 寂しくて気になって寝付けない せめて夢でもいいから会わせてくれ ・・・・・・・・ http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#542いめにみえつつ(夢所見乍) 2588 待つ,女歌 [題詞](正述心緒) 夕去者 公来座跡 待夜之 名凝衣今 宿不勝為 ゆふされば きみきまさむと まちしよの なごりぞいまも いねかてにする ・・・・・・・・
夕方になればきっと君が来ると 待ちつづけた夜の名残です 今もなかなか寝られないでいるのは ・・・・・・・・ 2589 女歌 [題詞](正述心緒) 不相思 公者在良思 黒玉 夢不見 受旱宿跡 あひおもはず きみはあるらし [ぬばたまの] いめにもみえず うけひてぬれど ・・・・・・・・
あなたは私を想ってはいないらしい せめて夢でもとおまじないに祈っても 夢にさえ現れてはくれないから ・・・・・・・・ 2590 [題詞](正述心緒) 石根踏 夜道不行 念跡 妹依者 忍金津毛 いはねふみ よみちはゆかじと おもへれど いもによりては しのびかねつも ・・・・・・・・
* 「岩根」は、どっしりと根を据えた大きな岩。いわがね。いわお。 石を踏む険しい山を踏破して夜道は行き難いが 恋人によって我慢できなくなってしまった ・・・・・・・・ 2591 うわさ [題詞](正述心緒) 人事 茂間守跡 不相在 終八子等 面忘南 ひとごとの しげきまもると あはずあらば つひにやこらが おもわすれなむ ・・・・・・・・
人の噂のひどさを気にして逢わずにいたら 恋人の面影さえ忘れてしまうのでは ・・・・・・・・ 2592 [題詞](正述心緒) 戀死 後何為 吾命 生日社 見幕欲為礼 こひしなむ のちはなにせむ わがいのち いけるひにこそ みまくほりすれ ・・・・・・・・
* 恋に死ぬなんて何になろう この生ける吾がいのちこそ あなたと逢いたいのだ ・・・・・・・・ <4 560;相聞,作者:大伴百代、恋情 [題詞](<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首) 孤悲死牟 後者何為牟 生日之 為社妹乎 欲見為礼 こひしなむ のちはなにせむ いけるひの ためこそいもを みまくほりすれ ・・・・・・・・・・・
恋に死ぬなんて何になろう この生ける日にこそ あなたと逢いたいのだ ・・・・・・・・・・・> 2593 [題詞](正述心緒) 敷細 枕動而 宿不所寝 物念此夕 急明鴨 [しきたへの] まくらとよみて いねらえず ものもふこよひ はやもあけぬかも ・・・・・・・・
あなたの枕が音を立てるのですよ うるさくってつい物思いにふけってしまった もうじき朝になるわねえ ・・・・・・・・ 2594 [題詞](正述心緒) 不徃吾 来跡可夜 門不閇 ○怜吾妹子 待筒在 ゆかぬわれを こむとかよるも かどささず あはれわぎもこ まちつつあるらむ ・・・・・・・・
* 「と‐か」[連語]《格助詞「と」+副助詞「か」》はっきりしない事柄を指示する意を表す。行くことがない私を 来るかもしれないと 門も閉じずに しみじみあのこは 今も待っているのだなあ ・・・・・・・・ 2595 [題詞](正述心緒) 夢谷 何鴨不所見 雖所見 吾鴨迷 戀茂尓 いめにだに なにかもみえぬ みゆれども われかもまとふ こひのしげきに ・・・・・・・・
君を見たのは夢なのか 手を伸ばし われにかえればうつつには見えない どうかしてしまったわたし 募るばかりの恋の惑ひか ・・・・・・・・ 2596 [題詞](正述心緒) 名草漏 心莫二 如是耳 戀也度 月日殊 [或本歌<曰> 奥津浪 敷而耳八方 戀度奈牟] なぐさもる こころはなしに かくのみし こひやわたらむ つきにひにけに[おきつなみ しきてのみやも こひわたりなむ]
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心が鎮まることなどなくて なぜこんな風に 恋焦がれ続けているのだろうか 月も日も変わり経つのに ・・・・・・・・ |
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2611 女歌 [題詞](正述心緒) 今更 君之手枕 巻宿米也 吾紐緒乃 解都追本名 いまさらに きみがたまくら まきぬめや わがひものをの とけつつもとな ・・・・・・・・・
* 「さら‐に」【更に】[副]今重ねてあなたの手枕で寝るからなのでしょうか 私の下着の紐がわけもなくほどけてしまうなんて ・・・・・・・・・ 1 同じことが重なったり加わったりするさま。重ねて。加えて。その上に。 2 今までよりも程度が増すさま。前にも増して。いっそう。ますます。 * 「め‐や」[連語]推量の助動詞「む」の已然形に係助詞「や」 …であろうか、いや、そうではない。 * 「もと‐な」[副]「もと」は根本の意。「な」は形容詞「無し」の語幹
1 わけもなく。みだりに。2 しきりに。むやみに。
2612 枕詞,女歌[題詞](正述心緒) 白細布<乃> 袖觸而夜 吾背子尓 吾戀落波 止時裳無 [しろたへの] そでふれてしよ わがせこに あがこふらくは やむときもなし ・・・・・・・・・
ふたりの袖が触れた夜は 夫にせがむ恋は止むことがないのです ・・・・・・・・・ 2613 占い,女歌 [題詞](正述心緒) 夕卜尓毛 占尓毛告有 今夜谷 不来君乎 何時将待 ゆふけにも うらにものれる こよひだに きまさぬきみを いつとかまたむ ・・・・・・・・・
昨夜の占いでも告げられたのに その今夜にまだあなたが来ない 占を信じていつまでも待とう ・・・・・・・・・ 2614 女歌 [題詞](正述心緒) 眉根掻 下言借見 思有尓 去家人乎 相見鶴鴨 まよねかき したいふかしみ おもへるに いにしへひとを あひみつるかも ・・・・・・・・・
[左注]或本歌<曰> 眉根掻 誰乎香将見跡 思乍 氣長戀之 妹尓相鴨 / 一書歌曰 眉根掻 下伊布可之美 念有之 妹之容儀乎 今日見都流香裳眉が痒い 眉毛をかいていたら好きな男に会えるというけれど 本当かしら いぶかしく思っていたら なんと 昔の彼に会ってしまったよ ・・・・・・・・・ * 「眉根掻き」眉が痒いのは、恋しい人に会える前兆であると信じられていた。 2614S1 異伝 [題詞](正述心緒)或本歌<曰> 眉根掻 誰乎香将見跡 思乍 氣長戀之 妹尓相鴨 まよねかき たれをかみむと おもひつつ けながくこひし いもにあへるかも ・・・・・・・・・
眉毛を掻いていたら 長いあいだ思っている あの娘に会えないかなあ ・・・・・・・・・ 2614S2 異伝 [題詞](正述心緒)一書歌曰 眉根掻 下伊布可之美 念有之 妹之容儀乎 今日見都流香裳 まよねかき したいふかしみ おもへりし いもがすがたを けふみつるかも ・・・・・・・・・
眉毛を掻いていたら会えるなんてことを いぶかしく思いつつも あの娘の姿を今日は見かけるかもと また眉を掻いてみることよ ・・・・・・・・・ サ2615 枕詞 [題詞](正述心緒) 敷栲乃 枕巻而 妹与吾 寐夜者無而 <年>曽經来 [しきたへの] まくらをまきて いもとあれと ぬるよはなくて としぞへにける ・・・・・・・・・
* 「敷栲の」は、「枕」「床」「袖」「衣」「黒髪」などにかかる。枕たもとをともにして あの娘と私が結ばれる夜はなくて 年ばかりが過ぎていったよ ・・・・・・・・・ * 「枕をまきて」は、枕をして寝る意。「枕枕(まま)く」とも。 * 「経」は、ハ行下二段活用動詞「経(ふ)」の連用形。 * 「に」は、完了の助動詞・完了「ぬ」の連用形。 * 「ける」は、過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」の結び。 時は過去ってしまった 2616 [題詞](正述心緒) 奥山之 真木<乃>板戸乎 音速見 妹之當乃 <霜>上尓宿奴 [おくやまの] まきのいたとを おとはやみ いもがあたりの しものうへにねぬ ・・・・・・・・・
彼女の家の板戸をたたいたら その音があまりに響くので 人に気づかれるのを怖れて 近くの霜の上に寝てしまったよ ・・・・・・・・・ 2617 枕詞,女歌 [題詞](正述心緒) 足日木能 山櫻戸乎 開置而 吾待君乎 誰留流 [あしひきの] やまさくらとを あけおきて わがまつきみを たれかとどむる ・・・・・・・・・
山桜の板戸を開けたまま 私が待っているあの方を 誰かが止めているのかしら ・・・・・・・・・ 2618 [題詞](正述心緒) 月夜好三 妹二相跡 直道柄 吾者雖来 夜其深去来 つくよよみ いもにあはむと ただちから われはきつれど よぞふけにける ・・・・・・・・・
月が照らす夜道を妻に会おうと まっしぐらに道を急ぐが 夜は無情にも更けてゆく 待ちかねている妻よ もうすぐだ ・・・・・・・・・ 寄物陳思 2619 序詞,衣 [題詞]寄物陳思 朝影尓 吾身者成 辛衣 襴之不相而 久成者 [あさかげに あがみはなりぬ からころも] すそのあはずて ひさしくなれば ・・・・・・・・・
「韓衣」は中国風の衣服で、和風の衣のように前あわせの部分や裾が重ならないため、「あわない」から「あはず」を引き出す序詞となる。朝の影法師のように 私は痩せてしまいましたよ あなたに逢わなくなって ずいぶん久しくなりましたので ・・・・・・・・・ 2620 女歌,衣 [題詞](寄物陳思) 解衣之 思乱而 雖戀 何如汝之故跡 問人毛無 [とききぬの] おもひみだれて こふれども なぞながゆゑと とふひともなき ・・・・・・・・・
あなたへの思いに乱れて なお恋うけれど なぜあなたのためなのかと 尋ねる人はいない ・・・・・・・・・ 2621 衣,うわさ [題詞](寄物陳思) 摺衣 著有跡夢見津 <寤>者 孰人之 言可将繁 すりころも けりといめにみつ うつつには いづれのひとの ことかしげけむ
・・・・・・・・・
私の摺り衣を着たあなたを夢に見た 目覚めてみれば人々の いろんな噂が飛び交っていやな世間だな ・・・・・・・・・ |
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2622 福岡,衣,序詞 [題詞](寄物陳思) 志賀乃白水<郎>之 塩焼衣 雖穢 戀云物者 忘金津毛 [しかのあまの しほやきころも なれぬれど] こひといふものは わすれかねつも ・・・・・・・・・
志賀島の漁師の塩焼き衣のように 肌に馴染んだものだな 恋というものは忘れられないものよ ・・・・・・・・・ サ2623 染色,衣,女歌 [題詞](寄物陳思) 呉藍之 八塩乃衣 朝旦 穢者雖為 益希将見裳 [くれなゐの] やしほのころも あさなさな なれはすれども いやめづらしも ・・・・・・・・・
* 「八しほ」は、布を染め汁に浸す回数の多いことを示す。「八入」とも。染料に何度も浸して染めている衣 毎朝毎朝着ていれば 皺にもなるけれど それがまた身について ますます大切に思えているのですよ あなた ・・・・・・・・・ * 「朝な朝な」は「毎朝」。 * 「馴る」は「萎(な)る」と縁語。「着慣れる」・「衣服がよれよれになる」。あなたが好きになる。 * 「いや」は、接頭、いよいよ・ますます。 * 「めづらし」は、賞美・すばらしい・ほめるなどの意。 * 「も」は詠嘆終助詞。 2624 染色,衣,女歌 [題詞](寄物陳思) 紅之 深染衣 色深 染西鹿齒蚊 遺不得鶴 くれなゐの こそめのころも いろふかく しみにしかばか わすれかねつる ・・・・・・・・・
紅の濃染めの衣のように 色濃く心にしみ込んで 忘れられなくなってしまった ・・・・・・・・・ 2625 衣,待つ [題詞](寄物陳思) 不相尓 夕卜乎問常 幣尓置尓 吾衣手者 又曽可續 あはなくに ゆふけをとふと ぬさにおくに わがころもでは またぞつぐべき ・・・・・・・・・
今夜も逢えないのかと思うものの とにかく占ってみようと夕方の辻に立ってみた 袖をこまかく切って幣にして散らした 袖は継ぎ当てようがなくなってしまった ・・・・・・・・・ 2626 衣,比喩 [題詞](寄物陳思) 古衣 打棄人者 秋風之 立来時尓 物念物其 ふるころも うつつるひとは [あきかぜの] たちくるときに ものもふものぞ ・・・・・・・・・
古着を捨てるように私を棄てたあの人も 枯葉が舞う時期には思いに沈むでしょう 消えてしまったわたしのぬくもりのことで ・・・・・・・・・ 2627 [題詞](寄物陳思) 波祢蘰 今為妹之 浦若見 咲見慍見 著四紐解 はねかづら いまするいもが うらわかみ ゑみみいかりみ つけしひもとく ・・・・・・・・・
* 男の歌なら、脱がそうと苦心していることになる。今まさに新しくはねかづらを着けた娘は 初々しくはにかんだりじれたりしながら 身につけた紐を解いていくことよ ・・・・・・・・・ * 新婚初夜の儀式に、「はねかづら」をつけた娘が、初々しく顔を朱に染めながら馴れない下紐を苦労して解いている姿。 * 年頃になった女性がつける髪飾り。カズラは一般に蔓性植物の茎を輪状にした髪飾りであるが、ハネカヅラの材料については、鳥の羽根を髪にさしたとも、「花かつら」と同じとも、菖蒲の葉や根を5月5日の節供につけたともいわれる。成年に達したばかりの若い女性が髪にさし、神女へと変身するためのものであることが知られる。 2628 衣,序詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 去家之 倭文旗帶乎 結垂 孰云人毛 君者不益 [いにしへの しつはたおびを むすびたれ] たれといふひとも きみにはまさじ ・・・・・・・・・
* しづ[倭文] (名)上代の織物の名。栲・麻・苧などの緯を青・赤などに染めて、乱れ模様に織り出したもの。しづおり。しづはた。 素敵な倭文機帯を垂らしている人は多いけど あなたに勝る素敵な人はいらっしゃいませんよ ・・・・・・・・・ 2628S 異伝,衣,序詞,女歌 [題詞](寄物陳思)一書歌<曰> 古之 狭織之帶乎 結垂 誰之能人毛 君尓波不益 いにしへの さおりのひもを むすびたれ たれしのひとも きみにはまさじ ・・・・・・・・・
どこのどんな誰であろうと あなたよりも勝る人はいません だってあなたが一番素敵なのですから ・・・・・・・・・ 2629 女歌 [題詞](寄物陳思) 不相友 吾波不怨 此枕 吾等念而 枕手左宿座 あはずとも われはうらみじ このまくら われとおもひて まきてさねませ ・・・・・・・・・
二人会うことが叶わなくても 私は恨みますまい せめてこの枕を私と思って 抱いてお寝みください ・・・・・・・・・ 2630 枕詞,女歌,閨怨 [題詞](寄物陳思) 結紐 解日遠 敷細 吾木枕 蘿生来 ゆへるひも とかむひとほみ [しきたへの] わがこまくらは こけむしにけり ・・・・・・・・・
<個別再掲載頁>→http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32733884.html結んだ紐を解かないまま日が過ぎるから 私の箱枕にはコケが生えてしまいそうよ ・・・・・・・・・ 2631 枕詞 [題詞](寄物陳思) 夜干玉之 黒髪色天 長夜○ 手枕之上尓 妹待覧蚊 [ぬばたまの] くろかみしきて ながきよを たまくらのうへに いもまつらむか ・・・・・・・・・
君の黒髪を床いっぱいに広げて 長い秋の夜を自分の手枕で 妻は待っているのか わたしを ・・・・・・・・・ 2632 枕詞 [題詞](寄物陳思) 真素鏡 直二四妹乎 不相見者 我戀不止 年者雖經 [まそかがみ] ただにしいもを あひみずは あがこひやまじ としはへぬとも
・・・・・・・・・
直接君に会わなければ 吾が恋は無期限に苦しいだけだ ・・・・・・・・・ |



