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2646 大阪府,序詞 [題詞](寄物陳思) 住吉乃 津守網引之 浮笶緒乃 得干蚊将去 戀管不有者 [すみのえの つもりあびきの うけのをの] うかれかゆかむ こひつつあらずは ・・・・・・・・・
* 「津守」は、難波の津建設の折、それを守る為に設けられた役職名。地元の豪族に与えられた司名。漁の浮きのように ただ浮くままにまかせよう こんなに恋いしく思うこともなく ・・・・・・・・・ * 「網引き」は、あびき=地引き網で漁をすること。 * 「泛子(うけ」)は釣りに使う浮きのこと。 サ2647 序詞 [題詞](寄物陳思) 東細布 従空延越 遠見社 目言踈良米 絶跡間也 [てづくりを そらゆひきこし とほみこそ] めことかるらめ たゆとへだてや ・・・・・・・・・
* 「東細布」の「細布」に着目すると、「延喜式」から東国が布の産地であり、「東」=東国と布が結び付く。丘に晒された布が 上へ空へと続くように遠くなる あなたを見ることも 言葉を交わすこともできないから すごく不安に襲われている なにもかも絶えてしまうしるしではないかと ・・・・・・・・・ * 「東細布」は、「シキタヘ」又は「シロタヘ」に似ている。 * 「引き越す」は、小高い丘に晒された布が、上へ「空」へと続く様子で、「遠みこそ」を導く。 * 「らめ」は、「らむ」の已然形。(助動詞四型)想像・推量。 * <国語篇(その七)>より。15[11-2647]「東細布」 「突然に襲って・来た・悪い(別離の)予感」 サ2648 序詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 云<々> 物者不念 斐太人乃 打墨縄之 直一道二 [かにかくに ものはおもはじ ひだひとの うつすみなはの] ただひとみちに ・・・・・・・・・
* 「かにかくに」は、とやかくと・あれこれと・いろいろと。あれやこれやと思い悩む浮気はしない 飛騨の匠が打つ墨縄のように ただ一筋にあの人を思い続けよう ・・・・・・・・・ * 「飛騨人」は、飛騨の工(たくみ)。 * 「墨縄」は、墨壷に巻きつけてある糸。墨糸。 * 「打つ墨縄」は、墨壷に浸した糸を張って指ではじき、木材に直線を引くことで、「ただ一道」の序。 <サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/28829557.html 2649 枕詞,序詞 [題詞](寄物陳思) 足日木之 山田守翁 置蚊火之 <下>粉枯耳 余戀居久 [あしひきの] やまたもるをぢが おくかひの したこがれのみ あがこひをらむ ・・・・・・・・・
* 人々が獣害に悩む歌。山田の番をする老人が焚く蚊遣火のように 下にくすぶるような恋を私はするのでしょうか ・・・・・・・・・ * 「山田守る翁」と「かび‐や」【鹿火屋/蚊火屋】《「かひや」とも》田畑を鹿や猪(いのしし)などから守るために火をたく番小屋。一説に、蚊やり火をたく小屋とも。仮の小屋で泊まり込みで番をする老人。《季 秋》 2650 序詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 十寸板持 盖流板目乃 不<合>相者 如何為跡可 吾宿始兼 そきいたもち ふけるいための あはざらば いかにせむとか わがねそめけむ ・・・・・・・・・
そぎ板で葺いた屋根の板目のように あわなかったらどうするつもりで 私たち二人は寝始めたのだろう ・・・・・・・・・ 2651 序詞 [題詞](寄物陳思) 難波人 葦火燎屋之 酢<四>手雖有 己妻許増 常目頬次吉 [なにはひと あしひたくやの] すしてあれど]おのがつまこそ つねめづらしき ・・・・・・・・・
* 「難波人葦火焚く屋の」は、「煤し」を導く序詞。難波の人が葦の火を焚く家のように もうすすけて古びてしまっているけれど 吾が古妻こそはいつも可愛いものだよ ・・・・・・・・・ * 「こそ」の結びとなる形容詞が連体形となる例。「つねめづらしき」 「こそ」 係助詞。 種々の語に付き、その事柄を取り立てて強調する。已然形で結ぶ。「こそ」と已然形との係り結びで逆接の条件句を作ることがある。万葉集にはこうした例が多く、これが係り結びの元来の用法であったとする説もある。奈良時代以前には、「こそ」の結びとなる形容詞および形容詞型活用の助動詞(「べし」「らし」)が連体形となる例が見られる。 2652 序詞 [題詞](寄物陳思) 妹之髪 上小竹葉野之 放駒 蕩去家良思 不合思者 [いもがかみ あげたかはのの はなれごま] あらびにけらし あはなくおもへば ・・・・・・・・・
あの娘の髪は竹葉野の放し飼いの馬のように 気持ちはすっかり荒れて 離れてしまったのだなあ 逢ってくれないもの ・・・・・・・・・ 2653 女歌 [題詞](寄物陳思) 馬音之 跡杼登毛為者 松蔭尓 出曽見鶴 若君香跡 うまのおとの とどともすれば まつかげに いでてぞみつる けだしきみかと ・・・・・・・・・
馬の蹄の音が轟ろけば すぐに松の木陰に飛んでいって見ます もしやあなたではないかと思って ・・・・・・・・・ 2654 女歌 [題詞](寄物陳思) 君戀 寝不宿朝明 誰乗流 馬足音 吾聞為 きみにこひ いねぬあさけに たがのれる うまのあのおとぞ われにきかする ・・・・・・・・・
恋う君を待って眠ることもできなかった明け方に だれかの夫の乗る馬の足音がするよ 独り寝のわたしに聞かせよとばかりに ・・・・・・・・・ サ2655 女歌 [題詞](寄物陳思) 紅之 襴引道乎 中置而 妾哉将通 公哉将来座 [一云 須蘇衝河乎 又曰 待香将待] くれなゐの すそびくみちを なかにおきて われかかよはむ きみかきまさむ[すそつくかはを まちにかまたむ] ・・・・・・・・・
* 「裾曳く」は、衣の裾をひきずること。紅の裳裾を濡らしさえすれば 渡れる川の向こうに君はいらっしゃる 私が渡って行こうかしら それともやはり このままお待ちし続けましょうか ・・・・・・・・・ * 「か」は、文中にあって、疑い・疑問を表す。 われかかよはむ きみかきまさむ * 「来」は、カ変動詞。 * 「まさ」は、尊敬補助動詞「ます」の未然形。 * 「む」は、推量。 2656 枕詞,奈良県,明日香,歌垣,忍び妻 [題詞](寄物陳思) 天飛也 軽乃社之 齊槻 幾世及将有 隠嬬其毛 [あまとぶや] かるのやしろの いはひつき いくよまであらむ こもりづまぞも ・・・・・・・・・
軽の社の槻の神木がいつまでもあるように いつまでも人目を忍び訪ねる隠り妻であるのか ・・・・・・・・・ 2657 怨み [題詞](寄物陳思) 神名火尓 紐呂寸立而 雖忌 人心者 間守不敢物 かむなびに ひもろきたてて いはへども ひとのこころは まもりあへぬもの
・・・・・・・・・
* ひもろきは神籬(ひもろぎ)で、囲いをして四隅に常緑樹を立てた神域。後世神社となっていった。神域に神社を建てて うやうやしくお祭りしたところで 人の心はしょせん守りきれないものだ ・・・・・・・・・ |
万葉集索引第十一巻
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2658 序詞,うわさ,女歌 [題詞](寄物陳思) 天雲之 八重雲隠 鳴神之 音<耳尓>八方 聞度南 [あまくもの やへくもがくり なるかみの] おとのみにやも ききわたりなむ ・・・・・・・・・
* 「やも」は、[係助]係助詞「や」+係助詞「も」から。上代語で、幾重も重なる天雲に隠れて 雷の音だけが聞こえてくるように 逢えないで伝わって来るのは噂だけ そんなあなたなを想いつづけてる ・・・・・・・・・ 1 (文中用法)名詞、活用語の已然形に付く。詠嘆を込めた反語・疑問の意を表す。 2 (文末用法)已然形に付いて、詠嘆を込めた反語の意を表す。…だろうか(いや、そうではない)。 3 已然形・終止形に付いて、詠嘆を込めた疑問の意を表す。 「も」は、一説に間投助詞ともいわれる。中古以降には「やは」がこれに代わった。 * 「なむ」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形に、推量の助動詞「む」のついたもの。推量・意思・希望・当然・適当・勧誘・湾曲名命令・仮定など。 * 「のみ」は、限定の副助詞。 * 「や」は、係助詞。 * 「も」は、(係助詞)で、「やも」は反語。 * 「わたる」は、渡る。過ごす、・・・し続ける。 2659 女歌 [題詞](寄物陳思) 争者 神毛悪為 縦咲八師 世副流君之 悪有莫君尓 あらそへば かみもにくます よしゑやし よそふるきみが にくくあらなくに ・・・・・・・・・
* 「よそふる」「よそふ(比ふ)」の連体形。「結びつける、関連付ける、なぞらえる」の意。人の言うことに逆って争えば 神様だってお嫌いになるでしょう まあいいわ 世間で二人の仲を噂されても あの人のことは憎くは思っていないんだから ・・・・・・・・・ ◎ 個別再掲載欄へ→http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32727744.html 2660 女歌,枕詞 [題詞](寄物陳思) 夜並而 君乎来座跡 千石破 神社乎 不祈日者無 よならべて きみをきませと [ちはやぶる] かみのやしろを のまぬひはなし ・・・・・・・・・
* 「祷まぬ日はなし」霊験あらたかな神に祈らない日はない。夜ごと夜ごとにあなたがどうかいらしてと 霊験あらたかな神の社に祈らぬ日はありません ・・・・・・・・・ サ2661 枕詞,怨み [題詞](寄物陳思) 霊治波布 神毛吾者 打棄乞 四恵也壽之 ○無 [たまぢはふ] かみもわれをば うつてこそ しゑやいのちの をしけくもなし ・・・・・・・・・
* 「霊ぢはふ」は、ほとばしる強い霊力で守護してくれる意。「ちはやふる」。霊験あらたかな神様も今はもう私を見棄ててください ええもうこんな命なんぞ惜しくはありません ・・・・・・・・・ * 「こそ」[終助]《上代語》用言の連用形に付く。願望を表す。…てほしい。…てくれ。 ◆古語では、1.文中にあって「係り」となり、文末の活用語尾を已然形で結ぶ。上代では連体形で結ぶこともある。係助詞「ぞ」「なむ」に比し、強調の度合いが強いといわれる。2は、現代語では、多く「こそあれ」「こそすれ」「こそするが」などの形で用いられる。3は、「こそ」に続く述語部分を省いたもので、古語では、「あれ」「あらめ」「言はめ」が省かれることが多い。 2662 枕詞 [題詞](寄物陳思) 吾妹兒 又毛相等 千羽八振 神社乎 不祷日者無 わぎもこに またもあはむと [ちはやぶる] かみのやしろを のまぬひはなし ・・・・・・・・・
愛しいあの子にもう一度逢えるようにと 霊験あらたかな神の社に祈らぬ日はない ・・・・・・・・・ サ2663 枕詞,うわさ [題詞](寄物陳思) 千葉破 神之伊垣毛 可越 今者吾名之 惜無 [ちはやぶる] かみのいかきも こえぬべし いまはわがなの をしけくもなし ・・・・・・・・・
* 「斎垣」は、神社など、神聖な場所の周囲にめぐらした垣」。神の社の越えてはてらぬ斎垣さえも 越えてしまいそうだ 今となっては 自分の名など惜しくもない ・・・・・・・・・ * 「べし」は、推量の助動詞。 〜しそうだ。 * 「惜しけく」は、形容詞「惜しけし」の連用形。 自分の名がなくなるのはいやである。 * 「も」は係助詞。否定を強める働き。 * 「なし」は、「惜しけく」を否定。 2664 [題詞](寄物陳思) 暮月夜 暁闇夜乃 朝影尓 吾身者成奴 汝乎念金丹 ゆふづくよ あかときやみの あさかげに あがみはなりぬ なをおもひかねに ・・・・・・・・・
* 「汝を思ひかねに」汝への思いを我慢出来ずに。夕月夜に来てくれないあなた 暁の闇が明けようとするうす影に わたしは影法師のようになってしまった あなたを慕う思いに堪えかねて ・・・・・・・・・ * 「思金丹」http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#543おもひかねて(思金手) 2665 うわさ,不安 [題詞](寄物陳思) 月之有者 明覧別裳 不知而 寐吾来乎 人見兼鴨 つきしあれば あくらむわきも しらずして ねてわがこしを ひとみけむかも ・・・・・・・・・
夜明が気づかないほど月が照っていたので つい寝過ごして明るくなってから帰ってきたが 人に見られてしまっただろうか ・・・・・・・・・ 2666 [題詞](寄物陳思) 妹目之 見巻欲家口 <夕>闇之 木葉隠有 月待如 いもがめの みまくほしけく ゆふやみの このはごもれる つきまつごとし ・・・・・・・・・
あの子の顔を早く見たい気持ちは 夕闇の木の茂みに隠れている 月を待ち焦がれる気持ちのようだよ ・・・・・・・・・ 2667 女歌,怨恨 [題詞](寄物陳思) 真袖持 床打拂 君待跡 居之間尓 月傾 まそでもち とこうちはらひ きみまつと をりしあひだに つきかたぶきぬ ・・・・・・・・・
衣の両袖で寝床を払い清め 共寝が叶うように願ったのに あなたは来なかった その間に夜は更けて月も消えました ・・・・・・・・・ 2668 奈良県,序詞 [題詞](寄物陳思) 二上尓 隠經月之 雖惜 妹之田本乎 加流類比来 [ふたかみに かくらふつきの をしけども] いもがたもとを かるるこのころ ・・・・・・・・・
二上山に隠れていく月は惜しいが あの子の手枕から遠ざかったままで この宵闇がひときわ辛いことであるよ ・・・・・・・・・ 2669 女歌 [題詞](寄物陳思) 吾背子之 振放見乍 将嘆 清月夜尓 雲莫田名引 わがせこが ふりさけみつつ なげくらむ きよきつくよに くもなたなびき ・・・・・・・・・
あの方がはるかにこの月を仰ぎ見て わたしを偲んでいるわ この清い澄みきった月を 雲よ たなびいて隠さないでおくれ ・・・・・・・・・ 2670 枕詞 [題詞](寄物陳思) 真素鏡 清月夜之 湯<徙>去者 念者不止 戀社益 [まそかがみ] きよきつくよの ゆつりなば おもひはやまず こひこそまさめ
・・・・・・・・・
「ゆつりなば」 過ぎていったら。澄み切った夜空から月が過ぎ去り 暗くなってしまったら 胸の思いは紛れず 恋心は募るばかりになるでしょう ・・・・・・・・・ |
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2671 女歌 [題詞](寄物陳思) 今夜之 在開月夜 在乍文 公○置者 待人無 [こよひの ありあけつくよ] ありつつも きみをおきては まつひともなし ・・・・・・・・・・
* 二句までが「あり」の同音で「ありつつも」を導く序。今夜の有明の月夜のように 夜通し起きてあなたを待つなんて 私だけのはず ・・・・・・・・・・ 「有明の月」は夜遅くに出て、明けても残る月のこと。「有明の月」は明け方近くまで男を待っていたことを表す。 2672 序詞 [題詞](寄物陳思) 此山之 嶺尓近跡 吾見鶴 月之空有 戀毛為鴨 [このやまの みねにちかしと わがみつる] つきのそらなる こひもするかも ・・・・・・・・・・
この山の峰の近くに見た月が 空たかく上っている 月も恋をするかなあ ・・・・・・・・・・ 2673 枕詞 [題詞](寄物陳思) 烏玉乃 夜渡月之 湯移去者 更哉妹尓 吾戀将居 [ぬばたまの] よわたるつきの ゆつりなば さらにやいもに あがこひをらむ ・・・・・・・・・・
夜空を過ぎ渡る月が傾いてしまったら 私はさらに恋いをつのらせていることだよ ・・・・・・・・・・ 2674 大分県,女歌 [題詞](寄物陳思) 朽網山 夕居雲 薄徃者 余者将戀名 公之目乎欲 くたみやま ゆふゐるくもの うすれゆかば あれはこひむな きみがめをほり ・・・・・・・・・・
朽網山にかかっていた雲が 夕方に薄れていくと 私の恋はつのるのです あなたに逢いたいと ・・・・・・・・・・ 2675 奈良県,枕詞,序詞 [題詞](寄物陳思) 君之服 三笠之山尓 居雲乃 立者継流 戀為鴨 [きみがきる みかさのやまに ゐるくもの] たてばつがるる こひもするかも ・・・・・・・・・・
三笠の山にかかる雲はあなたの衣 つぎつぎと湧き立っている せつない恋の思いをさせてくれることよ ・・・・・・・・・・ 2676 枕詞 [題詞](寄物陳思) 久堅之 天飛雲尓 在而然 君相見 落日莫死 [ひさかたの] あまとぶくもに ありてしか きみをばあひみむ おつるひなしに ・・・・・・・・・・
私が空を流れる雲であれば良いのに そうすれば愛しいあなたを見るだろう 毎日欠かすことなく ・・・・・・・・・・ 2677 奈良県,女歌,閨怨 [題詞](寄物陳思) 佐保乃内従 下風之 吹礼波 還者胡粉 歎夜衣大寸 さほのうちゆ あらしのかぜの ふきぬれば かへりはしらに なげくよぞおほき ・・・・・・・・・・
佐保の内を山おろしの強風が吹き抜けると あの人の還りがいつかもわからないし心細い ただ嘆きつづける夜ばかりが重なる ・・・・・・・・・・ サ2678 枕詞,女歌,怨 [題詞](寄物陳思) 級子八師 不吹風故 玉匣 開而左宿之 吾其悔寸 [はしきやし] ふかぬかぜゆゑ [たまくしげ] あけてさねにし あれぞくやしき ・・・・・・・・・・
* 「さ」は接頭語。幾夜も来てくれる風もなく 悶々と過ごして もう待つのはやめようと思いながらも ひょっとしてと戸の鍵を開けておいたのに やはり彼はこなかった 未練たらしい自分に腹立たしく悔しい ・・・・・・・・・・ * 「寝にし」は、悶々と横になっていた。 * 「に」は、時の修飾格。 * 「し」は、強く指示して強調する。 * 「愛しきやし」は、自分を哀れんで嘆息する。 * 「玉櫛笥 開けて」は「大切な戸じまりをしないで」の掛詞。 * はしきやし(級寸八師)・しなこやし(級子八師) http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#544はしきやし(級寸八師) 2679 枕詞 [題詞](寄物陳思) 窓超尓 月臨照而 足桧乃 下風吹夜者 公乎之其念 まどごしに つきおしてりて [あしひきの] あらしふくよは きみをしぞおもふ ・・・・・・・・・・
窓越しに月が辺りを明るく照らす夜は どうにか心は安らいでいますが 山の嵐が吹きすさぶ夜は あの方のことを ひたすら思いつめています ・・・・・・・・・・ 2680 序詞,うわさ [題詞](寄物陳思) 河千鳥 住澤上尓 立霧之 市白兼名 相言始而言 [かはちどり すむさはのうへに たつきりの] いちしろけむな あひいひそめてば ・・・・・・・・・・
「いちしろし(=はっきりと目につく)」はっきりと人に知られてしまうで。川千鳥が棲む沢の上に霧が立つように はっきりと人に知られたのだなあ みんなで噂に興じていることよ ・・・・・・・・・・ 2681 女歌 [題詞](寄物陳思) 吾背子之 使乎待跡 笠毛不著 出乍其見之 雨落久尓 わがせこが つかひをまつと かさもきず いでつつぞみし あめのふらくに
・・・・・・・・・・
わたしのいい人が恋の使者を待つのだと 雨の中を傘もささずに出て行くのを見てしまった ・・・・・・・・・・ |
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2682 女歌 [題詞](寄物陳思) 辛衣 君尓内<著> 欲見 戀其晩師之 雨零日乎 [からころも] きみにうちきせ みまくほり こひぞくらしし あめのふるひを ・・・・・・・・・・
* 「韓衣」は袖が大きく、丈が長く、上前・下前を深く合わせて着用する。韓衣をあなたが着るのを見たいな 雨の降る一日過ごしたよ そんなことを思いながら ・・・・・・・・・・ サ2683 大阪府,京都府,逢会 [題詞](寄物陳思) 彼方之 赤土少屋尓 **零 床共所沾 於身副我妹 をちかたの はにふのをやに こさめふり とこさへぬれぬ みにそへわぎも ・・・・・・・・・・
遠くにある赤土の粗末な小屋は 小雨が降ると床まで濡れる 吾が身に添い寝して暖めてくれないか 妻よ ・・・・・・・・・・ 2684 女歌,追懐 [題詞](寄物陳思) 笠無登 人尓者言<手> 雨乍見 留之君我 容儀志所念 かさなしと ひとにはいひて あまつつみ とまりしきみが すがたしおもほゆ ・・・・・・・・・・
笠がないのでと人には言って 我が家に雨宿りして泊まっていった あなたの姿が思い出されます ・・・・・・・・・・ 2685 [題詞](寄物陳思) 妹門 去過不勝都 久方乃 雨毛零奴可 其乎因将為 いもがかど ゆきすぎかねつ [ひさかたの] あめもふらぬか そをよしにせむ ・・・・・・・・・・
あの娘の家の前を通り過ぎるなあ 雨でも降ってくれれば それをよいことに雨宿りさせてもらうのだけれど ・・・・・・・・・・ 2686 女歌 [題詞](寄物陳思) 夜占問 吾袖尓置 <白>露乎 於公令視跡 取者<消>管 ゆふけとふ わがそでにおく しらつゆを きみにみせむと とればけにつつ ・・・・・・・・・・
夕暮れになると占は力を発揮するからやってみようかしら わたしの袖に置いた白玉の露が 消えなければ来る 消えたら来ない 消えないようにそっと何か木の葉にでも 移しかえたらどうかしら ・・・・・・・・・・ 2687 女歌 [題詞](寄物陳思) 櫻麻乃 苧原之下草 露有者 令明而射去 母者雖知 [さくらをの] をふのしたくさ つゆしあれば あかしていゆけ はははしるとも ・・・・・・・・・・
道の麻の下草は露に濡れているから ここで泊まっておいでなさいな 母に知れても構わないから ・・・・・・・・・・ 2688 枕詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 待不得而 内者不入 白細布之 吾袖尓 露者置奴鞆 まちかねて うちにはいらじ [しろたへの] わがころもでに つゆはおきぬとも ・・・・・・・・・・
あなたの訪れをもうにもと 戸外に立って待ってます 着物が露に濡れてきたけれど 家の中に入る気がしない ・・・・・・・・・・ 2689 枕詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 朝露之 消安吾身 雖老 又若反 君乎思将待 [あさつゆの] けやすきあがみ おいぬとも またをちかへり きみをしまたむ ・・・・・・・・・・
* 「またをちかへり」は、また若返って。朝露のように消えて行く私 でもまた若返って あなたをお待ちするでしょう ・・・・・・・・・・ 2690 枕詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 白細布乃 吾袖尓 露者置 妹者不相 猶<豫>四手 [しろたへの] わがころもでに つゆはおき いもはあはさず たゆたひにして ・・・・・・・・・・
私の袖に露は置くけれど あの子は逢ってくれない 気持ちが揺れているのだなあ ・・・・・・・・・・ サ2691 枕詞,女歌 [題詞](寄物陳思) 云<々> 物者不念 朝露之 吾身一者 君之随意 かにかくに ものはおもはじ [あさつゆの] あがみひとつは きみがまにまに ・・・・・・・・・・
* 「かに‐かくに」[副]あれこれと。いろいろと。あれこれと悩むのは止めよう 朝露のようにはかない私の身一つ あなたの思うままなのですから ・・・・・・・・・・ * 「の」は、比喩の格助詞。 〜のように * 「まにまに」は、「随意に」又は、成行きにまかせて、思うがまま。 <サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/28916784.html <項>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/folder/1039689.html?m=lc&p=34#28922360 2692 女歌 [題詞](寄物陳思) 夕凝 霜置来 朝戸出<尓> 甚踐而 人尓所知名 ゆふこりの しもおきにけり あさとでに いたくしふみて ひとにしらゆな ・・・・・・・・・・
夕方に凝り固まった霜が一面に敷き詰めています 朝にあなたがこの家を出るさいには 足跡を残さないように踏んで 人にあたしたちのことを 知られないようにしてくださいね ・・・・・・・・・・ 2693 [題詞](寄物陳思) 如是許 戀乍不有者 朝尓日尓 妹之将履 地尓有申尾 かくばかり こひつつあらずは あさにけに いもがふむらむ つちにあらましを
・・・・・・・・・・
これほどに恋し続けるくらいなら 朝も昼も あの娘が踏んでいる土になりたいよ ・・・・・・・・・・ |
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2694 枕詞 [題詞](寄物陳思) 足日木之 山鳥尾乃 一峰越 一目見之兒尓 應戀鬼香 [あしひきの] やまどりのをの ひとをこえ ひとめみしこに こふべきものか ・・・・・・・・・
* 山鳥は夜は別々に過ごす。たった一目みただけの娘に 恋をすることなどあるのか ・・・・・・・・・ 2695 静岡県,序詞 [題詞](寄物陳思) 吾妹子尓 相縁乎無 駿河有 不盡乃高嶺之 焼管香将有 [わぎもこに あふよしをなみ するがなる] ふじのたかねの もえつつかあらむ ・・・・・・・・・
彼女にに会いたいが機会が見えない 駿河富士の高嶺が燃えているのか のようだ ・・・・・・・・・ 2696 序詞 [題詞](寄物陳思) 荒熊之 住云山之 師齒迫山 責而雖問 汝名者不告 [あらぐまの すむといふやまの しはせやま] せめてとふとも ながなはのらじ ・・・・・・・・・
荒熊:ツキノワグマ。熊がいるという師歯迫山を攻め落としたが 攻めて聞いても名はあかさない ・・・・・・・・・ 師歯迫山現在の「愛鷹山」。 2697 序詞,静岡県,うわさ [題詞](寄物陳思) 妹之名毛 吾名毛立者 惜社 布仕能高嶺之 燎乍渡 [いもがなも わがなもたたば をしみこそ] ふじのたかねの もえつつわたれ ・・・・・・・・・
[左注]或歌曰 君名毛 妾名毛立者 惜己曽 不盡乃高山之 燎乍毛居君も私も名が噂になると困るから なかなか会えない 富士の高峰の火溜まりのように 燃えつづけているのに ・・・・・・・・・ 2697S 序詞,静岡県,うわさ [題詞](寄物陳思)或歌曰 君名毛 妾名毛立者 惜己曽 不盡乃高山之 燎乍毛居 [きみがなも わがなもたたば をしみこそ] ふじのたかねの もえつつもをれ ・・・・・・・・・
君も私も名が噂になると困るから なかなか会えないけれども 富士の高峰の火溜まりのように 燃えつづけていよう ・・・・・・・・・ 2698 大阪府,序詞 [題詞](寄物陳思) 徃而見而 来戀敷 朝香方 山越置代 宿不勝鴨 [ゆきてみて くればこほしき あさかがた] やまごしにおきて いねかてぬかも ・・・・・・・・・
行って会って朝には別れて 帰ればすぐまた恋いしくなる そののように恋しいあの子を 山のかなたに置いたままで 独りでどうして眠むれようか ・・・・・・・・・ 2699 奈良県,五条市,序詞 [題詞](寄物陳思) 安太人<乃> 八名打度 瀬速 意者雖念 直不相鴨 [あだひとの やなうちわたす せをはやみ] こころはおもへど ただにあはぬかも ・・・・・・・・・
阿田の川人が梁(やな)を打ち渡す瀬は 流れが速くて渡れないように じかに逢うことのできないもどかしさよ ・・・・・・・・・ 2700 枕詞,序詞 [題詞](寄物陳思) 玉蜻 石垣淵之 隠庭 伏<雖>死 汝名羽不謂 [たまかぎる] いはかきふちの こもりには] ふしてしぬとも ながなはのらじ ・・・・・・・・・
岩に囲まれた淵が人目に隠れているように 人に知られず恋い焦がれて もう死んでしまいそうでも あなたは私に名を教えてはくれまい ・・・・・・・・・ 2701 奈良県,序詞 [題詞](寄物陳思) 明日香川 明日文将渡 石走 遠心者 不思鴨 [あすかがは あすもわたらむ いしはしの] とほきこころは おもほえぬかも ・・・・・・・・・
* 「石橋」 川に置いた飛び石。橋の代用。飛び渡ってあの子のもとへ 明日香川を明日も渡ろう 飛び石のように思いに隙間はありません ・・・・・・・・・ 2702 奈良県,序詞 [題詞](寄物陳思) 飛鳥川 水徃増 弥日異 戀乃増者 在勝<申><自> [あすかがは みづゆきまさり いやひけに] こひのまさらば ありかつましじ ・・・・・・・・・
明日香川が増水するように 日増しに恋がつのれば 息が詰まって生きてはおれないよ ・・・・・・・・・ 2703 序詞 [題詞](寄物陳思) 真薦苅 大野川原之 水隠 戀来之妹之 紐解吾者 [まこもかる] おほのがはらの みごもりに] こひこしいもが ひもとくわれは ・・・・・・・・・
大野川原が浸水して見えなくなるように 密かに愛してきた妻の その下着の紐を いまこそ私が解くのだ ・・・・・・・・・ 2704 枕詞,序詞 [題詞](寄物陳思) 悪氷木<乃> 山下動 逝水之 時友無雲 戀度鴨 [あしひきの] やましたとよみ ゆくみづの] ときともなくも こひわたるかも
・・・・・・・・・
山麓を流れる川は森を轟かせて流れてゆくが 私の心はそのように絶え間なく妻を愛し続ける ・・・・・・・・・ |



