ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第十一巻

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2646 大阪府,序詞

[題詞](寄物陳思)

住吉乃  津守網引之  浮笶緒乃  得干蚊将去  戀管不有者

住吉の 津守網引の うけの緒の 浮かれか行かむ 恋ひつつあらずは 

[すみのえの つもりあびきの うけのをの] うかれかゆかむ こひつつあらずは
・・・・・・・・・
漁の浮きのように

ただ浮くままにまかせよう

こんなに恋いしく思うこともなく
・・・・・・・・・
* 「津守」は、難波の津建設の折、それを守る為に設けられた役職名。地元の豪族に与えられた司名。
* 「網引き」は、あびき=地引き網で漁をすること。
* 「泛子(うけ」)は釣りに使う浮きのこと。



サ2647 序詞

[題詞](寄物陳思)

東細布  従空延越  遠見社  目言踈良米  絶跡間也

手作りを 空ゆ引き越し 遠みこそ 目言離るらめ 絶ゆと隔てや 

[てづくりを そらゆひきこし とほみこそ] めことかるらめ たゆとへだてや
・・・・・・・・・
丘に晒された布が

上へ空へと続くように遠くなる

あなたを見ることも

言葉を交わすこともできないから

すごく不安に襲われている

なにもかも絶えてしまうしるしではないかと
・・・・・・・・・
* 「東細布」の「細布」に着目すると、「延喜式」から東国が布の産地であり、「東」=東国と布が結び付く。
* 「東細布」は、「シキタヘ」又は「シロタヘ」に似ている。
* 「引き越す」は、小高い丘に晒された布が、上へ「空」へと続く様子で、「遠みこそ」を導く。
* 「らめ」は、「らむ」の已然形。(助動詞四型)想像・推量。
* <国語篇(その七)>より。15[11-2647]「東細布」
  「突然に襲って・来た・悪い(別離の)予感」

<サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/28858499.html



サ2648 序詞,女歌

[題詞](寄物陳思)

云<々>  物者不念  斐太人乃  打墨縄之  直一道二

かにかくに 物は思はじ 飛騨人の 打つ墨縄の ただ一道に 

[かにかくに ものはおもはじ ひだひとの うつすみなはの] ただひとみちに
・・・・・・・・・
あれやこれやと思い悩む浮気はしない 

飛騨の匠が打つ墨縄のように

ただ一筋にあの人を思い続けよう
・・・・・・・・・
* 「かにかくに」は、とやかくと・あれこれと・いろいろと。
* 「飛騨人」は、飛騨の工(たくみ)。
* 「墨縄」は、墨壷に巻きつけてある糸。墨糸。
* 「打つ墨縄」は、墨壷に浸した糸を張って指ではじき、木材に直線を引くことで、「ただ一道」の序。
 
<サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/28829557.html



2649 枕詞,序詞

[題詞](寄物陳思)

足日木之  山田守翁  置蚊火之  <下>粉枯耳  余戀居久

あしひきの 山田守る翁が 置く鹿火の 下焦れのみ 吾が恋ひ居らむ 

[あしひきの] やまたもるをぢが おくかひの したこがれのみ あがこひをらむ
・・・・・・・・・
山田の番をする老人が焚く蚊遣火のように

下にくすぶるような恋を私はするのでしょうか
・・・・・・・・・
* 人々が獣害に悩む歌。
* 「山田守る翁」と「かび‐や」【鹿火屋/蚊火屋】《「かひや」とも》田畑を鹿や猪(いのしし)などから守るために火をたく番小屋。一説に、蚊やり火をたく小屋とも。仮の小屋で泊まり込みで番をする老人。《季 秋》



2650 序詞,女歌

[題詞](寄物陳思)

十寸板持  盖流板目乃  不<合>相者  如何為跡可  吾宿始兼

そき板もち 葺ける板目の あはざらば いかにせむとか 我が寝そめけむ 

そきいたもち ふけるいための あはざらば いかにせむとか わがねそめけむ
・・・・・・・・・
そぎ板で葺いた屋根の板目のように

あわなかったらどうするつもりで

私たち二人は寝始めたのだろう
・・・・・・・・・



2651 序詞

[題詞](寄物陳思)

難波人  葦火燎屋之  酢<四>手雖有  己妻許増  常目頬次吉

難波人 葦火焚く屋の 煤してあれど おのが妻こそ 常めづらしき 

[なにはひと あしひたくやの] すしてあれど]おのがつまこそ つねめづらしき
・・・・・・・・・
難波の人が葦の火を焚く家のように

もうすすけて古びてしまっているけれど

吾が古妻こそはいつも可愛いものだよ
・・・・・・・・・
* 「難波人葦火焚く屋の」は、「煤し」を導く序詞。
* 「こそ」の結びとなる形容詞が連体形となる例。「つねめづらしき」
「こそ」 係助詞。 種々の語に付き、その事柄を取り立てて強調する。已然形で結ぶ。「こそ」と已然形との係り結びで逆接の条件句を作ることがある。万葉集にはこうした例が多く、これが係り結びの元来の用法であったとする説もある。奈良時代以前には、「こそ」の結びとなる形容詞および形容詞型活用の助動詞(「べし」「らし」)が連体形となる例が見られる。



2652 序詞

[題詞](寄物陳思)

妹之髪  上小竹葉野之  放駒  蕩去家良思  不合思者

妹が髪 上げ竹葉野の 放れ駒 荒びにけらし 逢はなく思へば 

[いもがかみ あげたかはのの はなれごま] あらびにけらし あはなくおもへば
・・・・・・・・・
あの娘の髪は竹葉野の放し飼いの馬のように

気持ちはすっかり荒れて

離れてしまったのだなあ

逢ってくれないもの
・・・・・・・・・



2653 女歌

[題詞](寄物陳思)

馬音之  跡杼登毛為者  松蔭尓  出曽見鶴  若君香跡

馬の音の とどともすれば 松蔭に 出でてぞ見つる けだし君かと 

うまのおとの とどともすれば まつかげに いでてぞみつる けだしきみかと
・・・・・・・・・
馬の蹄の音が轟ろけば

すぐに松の木陰に飛んでいって見ます

もしやあなたではないかと思って
・・・・・・・・・



2654 女歌

[題詞](寄物陳思)

君戀  寝不宿朝明  誰乗流  馬足音  吾聞為

君に恋ひ 寐ねぬ朝明に 誰が乗れる 馬の足の音ぞ 我れに聞かする 

きみにこひ いねぬあさけに たがのれる うまのあのおとぞ われにきかする
・・・・・・・・・
恋う君を待って眠ることもできなかった明け方に

だれかの夫の乗る馬の足音がするよ

独り寝のわたしに聞かせよとばかりに
・・・・・・・・・



サ2655 女歌

[題詞](寄物陳思)

紅之  襴引道乎  中置而  妾哉将通  公哉将来座 [一云 須蘇衝河乎 又曰 待香将待]

紅の 裾引く道を 中に置きて われは通はむ 君か来まさむ [一云 裾漬く川を 又曰 待ちにか待たむ] 

くれなゐの すそびくみちを なかにおきて われかかよはむ きみかきまさむ[すそつくかはを まちにかまたむ]
・・・・・・・・・
紅の裳裾を濡らしさえすれば

渡れる川の向こうに君はいらっしゃる

私が渡って行こうかしら

それともやはり

このままお待ちし続けましょうか  
・・・・・・・・・
* 「裾曳く」は、衣の裾をひきずること。
* 「か」は、文中にあって、疑い・疑問を表す。
   われかかよはむ
   きみかきまさむ
* 「来」は、カ変動詞。
* 「まさ」は、尊敬補助動詞「ます」の未然形。
* 「む」は、推量。



2656 枕詞,奈良県,明日香,歌垣,忍び妻

[題詞](寄物陳思)

天飛也  軽乃社之  齊槻  幾世及将有  隠嬬其毛

天飛ぶや 軽の社の 斎ひ槻 幾代まであらむ 隠り妻ぞも 

[あまとぶや] かるのやしろの いはひつき いくよまであらむ こもりづまぞも
・・・・・・・・・
軽の社の槻の神木がいつまでもあるように

いつまでも人目を忍び訪ねる隠り妻であるのか
・・・・・・・・・



2657 怨み

[題詞](寄物陳思)

神名火尓  紐呂寸立而  雖忌  人心者  間守不敢物

神なびに ひもろき立てて 斎へども 人の心は まもりあへぬもの 

かむなびに ひもろきたてて いはへども ひとのこころは  まもりあへぬもの
・・・・・・・・・
神域に神社を建てて

うやうやしくお祭りしたところで

人の心はしょせん守りきれないものだ
・・・・・・・・・
* ひもろきは神籬(ひもろぎ)で、囲いをして四隅に常緑樹を立てた神域。後世神社となっていった。


2658 序詞,うわさ,女歌

[題詞](寄物陳思)

天雲之  八重雲隠  鳴神之  音<耳尓>八方  聞度南

天雲の 八重雲隠り 鳴る神の 音のみにやも 聞きわたりなむ 

[あまくもの やへくもがくり なるかみの] おとのみにやも ききわたりなむ
・・・・・・・・・
幾重も重なる天雲に隠れて

雷の音だけが聞こえてくるように

逢えないで伝わって来るのは噂だけ

そんなあなたなを想いつづけてる
・・・・・・・・・
* 「やも」は、[係助]係助詞「や」+係助詞「も」から。上代語で、
1 (文中用法)名詞、活用語の已然形に付く。詠嘆を込めた反語・疑問の意を表す。
2 (文末用法)已然形に付いて、詠嘆を込めた反語の意を表す。…だろうか(いや、そうではない)。
3 已然形・終止形に付いて、詠嘆を込めた疑問の意を表す。
 「も」は、一説に間投助詞ともいわれる。中古以降には「やは」がこれに代わった。
* 「なむ」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形に、推量の助動詞「む」のついたもの。推量・意思・希望・当然・適当・勧誘・湾曲名命令・仮定など。
* 「のみ」は、限定の副助詞。
* 「や」は、係助詞。
* 「も」は、(係助詞)で、「やも」は反語。
* 「わたる」は、渡る。過ごす、・・・し続ける。




2659 女歌

[題詞](寄物陳思)

争者  神毛悪為  縦咲八師  世副流君之  悪有莫君尓

争へば 神も憎ます よしゑやし よそふる君が 憎くあらなくに 

あらそへば かみもにくます よしゑやし よそふるきみが にくくあらなくに
・・・・・・・・・
人の言うことに逆って争えば

神様だってお嫌いになるでしょう

まあいいわ 

世間で二人の仲を噂されても

あの人のことは憎くは思っていないんだから
・・・・・・・・・
* 「よそふる」「よそふ(比ふ)」の連体形。「結びつける、関連付ける、なぞらえる」の意。
◎ 個別再掲載欄へ→http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/32727744.html


2660 女歌,枕詞

[題詞](寄物陳思)

夜並而  君乎来座跡  千石破  神社乎  不祈日者無

夜並べて 君を来ませと ちはやぶる 神の社を 祷まぬ日はなし 

よならべて きみをきませと [ちはやぶる] かみのやしろを のまぬひはなし
・・・・・・・・・
夜ごと夜ごとにあなたがどうかいらしてと

霊験あらたかな神の社に祈らぬ日はありません
・・・・・・・・・
* 「祷まぬ日はなし」霊験あらたかな神に祈らない日はない。



サ2661 枕詞,怨み

[題詞](寄物陳思)

霊治波布  神毛吾者  打棄乞  四恵也壽之  ○無

霊ぢはふ 神も吾れをば 打棄てこそ しゑや命の 惜しけくもなし 

[たまぢはふ] かみもわれをば うつてこそ しゑやいのちの をしけくもなし
・・・・・・・・・
霊験あらたかな神様も今はもう私を見棄ててください

ええもうこんな命なんぞ惜しくはありません
・・・・・・・・・
* 「霊ぢはふ」は、ほとばしる強い霊力で守護してくれる意。「ちはやふる」。
* 「こそ」[終助]《上代語》用言の連用形に付く。願望を表す。…てほしい。…てくれ。
◆古語では、1.文中にあって「係り」となり、文末の活用語尾を已然形で結ぶ。上代では連体形で結ぶこともある。係助詞「ぞ」「なむ」に比し、強調の度合いが強いといわれる。2は、現代語では、多く「こそあれ」「こそすれ」「こそするが」などの形で用いられる。3は、「こそ」に続く述語部分を省いたもので、古語では、「あれ」「あらめ」「言はめ」が省かれることが多い。




2662 枕詞

[題詞](寄物陳思)

吾妹兒  又毛相等  千羽八振  神社乎  不祷日者無

我妹子に またも逢はむと ちはやぶる 神の社を 祷まぬ日はなし 

わぎもこに またもあはむと [ちはやぶる] かみのやしろを のまぬひはなし
・・・・・・・・・
愛しいあの子にもう一度逢えるようにと

霊験あらたかな神の社に祈らぬ日はない
・・・・・・・・・



サ2663 枕詞,うわさ

[題詞](寄物陳思)

千葉破  神之伊垣毛  可越  今者吾名之  惜無

ちはやぶる 神の斎垣も 越えぬべし 今は吾が名の 惜しけくもなし 

[ちはやぶる] かみのいかきも こえぬべし いまはわがなの をしけくもなし
・・・・・・・・・
神の社の越えてはてらぬ斎垣さえも

越えてしまいそうだ

今となっては

自分の名など惜しくもない
・・・・・・・・・
* 「斎垣」は、神社など、神聖な場所の周囲にめぐらした垣」。
* 「べし」は、推量の助動詞。  〜しそうだ。
* 「惜しけく」は、形容詞「惜しけし」の連用形。 自分の名がなくなるのはいやである。
* 「も」は係助詞。否定を強める働き。
* 「なし」は、「惜しけく」を否定。




2664

[題詞](寄物陳思)

暮月夜  暁闇夜乃  朝影尓  吾身者成奴  汝乎念金丹

夕月夜 暁闇の 朝影に 我が身はなりぬ 汝を思ひかねに 

ゆふづくよ あかときやみの あさかげに あがみはなりぬ なをおもひかねに
・・・・・・・・・
夕月夜に来てくれないあなた

暁の闇が明けようとするうす影に

わたしは影法師のようになってしまった

あなたを慕う思いに堪えかねて
・・・・・・・・・
* 「汝を思ひかねに」汝への思いを我慢出来ずに。
* 「思金丹」http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#543おもひかねて(思金手)




2665 うわさ,不安

[題詞](寄物陳思)

月之有者  明覧別裳  不知而  寐吾来乎  人見兼鴨

月しあれば 明くらむ別も 知らずして 寝て我が来しを 人見けむかも 

つきしあれば あくらむわきも しらずして ねてわがこしを ひとみけむかも
・・・・・・・・・
夜明が気づかないほど月が照っていたので

つい寝過ごして明るくなってから帰ってきたが

人に見られてしまっただろうか
・・・・・・・・・



2666

[題詞](寄物陳思)

妹目之  見巻欲家口  <夕>闇之  木葉隠有  月待如

妹が目の 見まく欲しけく 夕闇の 木の葉隠れる 月待つごとし 

いもがめの みまくほしけく ゆふやみの このはごもれる つきまつごとし
・・・・・・・・・
あの子の顔を早く見たい気持ちは

夕闇の木の茂みに隠れている

月を待ち焦がれる気持ちのようだよ
・・・・・・・・・



2667 女歌,怨恨

[題詞](寄物陳思)

真袖持  床打拂  君待跡  居之間尓  月傾

真袖持ち 床うち掃ひ 君待つと 居りし間に 月かたぶきぬ 

まそでもち とこうちはらひ きみまつと をりしあひだに つきかたぶきぬ
・・・・・・・・・
衣の両袖で寝床を払い清め

共寝が叶うように願ったのに

あなたは来なかった
 
その間に夜は更けて月も消えました
・・・・・・・・・



2668 奈良県,序詞

[題詞](寄物陳思)

二上尓  隠經月之  雖惜  妹之田本乎  加流類比来

二上に 隠らふ月の 惜しけども 妹が手本を 離るるこのころ 

[ふたかみに かくらふつきの をしけども] いもがたもとを かるるこのころ
・・・・・・・・・
二上山に隠れていく月は惜しいが

あの子の手枕から遠ざかったままで

この宵闇がひときわ辛いことであるよ
・・・・・・・・・



2669 女歌

[題詞](寄物陳思)

吾背子之  振放見乍  将嘆  清月夜尓  雲莫田名引

我が背子が 振り放け見つつ 嘆くらむ 清き月夜に 雲なたなびき

わがせこが ふりさけみつつ なげくらむ きよきつくよに くもなたなびき
・・・・・・・・・
あの方がはるかにこの月を仰ぎ見て

わたしを偲んでいるわ 

この清い澄みきった月を

雲よ たなびいて隠さないでおくれ
・・・・・・・・・



2670 枕詞

[題詞](寄物陳思)

真素鏡  清月夜之  湯<徙>去者  念者不止  戀社益

まそ鏡 清き月夜の ゆつりなば 思ひはやまず 恋こそまさめ 

[まそかがみ] きよきつくよの ゆつりなば おもひはやまず こひこそまさめ
・・・・・・・・・
澄み切った夜空から月が過ぎ去り

暗くなってしまったら

胸の思いは紛れず

恋心は募るばかりになるでしょう
・・・・・・・・・
「ゆつりなば」 過ぎていったら。


2671 女歌

[題詞](寄物陳思)

今夜之  在開月夜  在乍文  公○置者  待人無

今夜の 有明月夜 ありつつも 君をおきては 待つ人もなし 

[こよひの ありあけつくよ] ありつつも きみをおきては まつひともなし
・・・・・・・・・・
今夜の有明の月夜のように

夜通し起きてあなたを待つなんて

私だけのはず
・・・・・・・・・・
* 二句までが「あり」の同音で「ありつつも」を導く序。
「有明の月」は夜遅くに出て、明けても残る月のこと。「有明の月」は明け方近くまで男を待っていたことを表す。




2672 序詞

[題詞](寄物陳思)

此山之  嶺尓近跡  吾見鶴  月之空有  戀毛為鴨

この山の 嶺に近しと 我が見つる 月の空なる 恋もするかも 

[このやまの みねにちかしと わがみつる] つきのそらなる こひもするかも
・・・・・・・・・・
この山の峰の近くに見た月が

空たかく上っている

月も恋をするかなあ
・・・・・・・・・・



2673 枕詞

[題詞](寄物陳思)

烏玉乃  夜渡月之  湯移去者  更哉妹尓  吾戀将居

ぬばたまの 夜渡る月の ゆつりなば さらにや妹に 我が恋ひ居らむ 

[ぬばたまの] よわたるつきの ゆつりなば さらにやいもに あがこひをらむ
・・・・・・・・・・
夜空を過ぎ渡る月が傾いてしまったら

私はさらに恋いをつのらせていることだよ
・・・・・・・・・・



2674 大分県,女歌

[題詞](寄物陳思)

朽網山  夕居雲  薄徃者  余者将戀名  公之目乎欲

朽網山 夕居る雲の 薄れゆかば 我れは恋ひむな 君が目を欲り 

くたみやま ゆふゐるくもの うすれゆかば あれはこひむな きみがめをほり
・・・・・・・・・・
朽網山にかかっていた雲が

夕方に薄れていくと

私の恋はつのるのです

あなたに逢いたいと 
・・・・・・・・・・



2675 奈良県,枕詞,序詞

[題詞](寄物陳思)

君之服  三笠之山尓  居雲乃  立者継流  戀為鴨

君が着る 御笠の山に 居る雲の 立てば継がるる 恋もするかも 

[きみがきる みかさのやまに ゐるくもの] たてばつがるる こひもするかも
・・・・・・・・・・
三笠の山にかかる雲はあなたの衣

つぎつぎと湧き立っている

せつない恋の思いをさせてくれることよ
・・・・・・・・・・



2676 枕詞

[題詞](寄物陳思)

久堅之  天飛雲尓  在而然  君相見  落日莫死

ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか 君をば相見む おつる日なしに 

[ひさかたの] あまとぶくもに ありてしか きみをばあひみむ おつるひなしに
・・・・・・・・・・
私が空を流れる雲であれば良いのに

そうすれば愛しいあなたを見るだろう

毎日欠かすことなく
・・・・・・・・・・



2677 奈良県,女歌,閨怨

[題詞](寄物陳思)

佐保乃内従  下風之  吹礼波  還者胡粉  歎夜衣大寸

佐保の内ゆ あらしの風の 吹きぬれば 帰りは知らに 嘆く夜ぞ多き 

さほのうちゆ あらしのかぜの ふきぬれば かへりはしらに なげくよぞおほき
・・・・・・・・・・
佐保の内を山おろしの強風が吹き抜けると

あの人の還りがいつかもわからないし心細い

ただ嘆きつづける夜ばかりが重なる
・・・・・・・・・・



サ2678 枕詞,女歌,怨

[題詞](寄物陳思)

級子八師  不吹風故  玉匣  開而左宿之  吾其悔寸

はしきやし 吹かぬ風ゆゑ 玉櫛笥 開けてさ寝にし 我れぞ悔しき 

[はしきやし] ふかぬかぜゆゑ [たまくしげ] あけてさねにし あれぞくやしき
・・・・・・・・・・
幾夜も来てくれる風もなく

悶々と過ごして

もう待つのはやめようと思いながらも

ひょっとしてと戸の鍵を開けておいたのに

やはり彼はこなかった

未練たらしい自分に腹立たしく悔しい
・・・・・・・・・・
* 「さ」は接頭語。
* 「寝にし」は、悶々と横になっていた。
* 「に」は、時の修飾格。
* 「し」は、強く指示して強調する。
* 「愛しきやし」は、自分を哀れんで嘆息する。
* 「玉櫛笥 開けて」は「大切な戸じまりをしないで」の掛詞。
* はしきやし(級寸八師)・しなこやし(級子八師) 
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#544はしきやし(級寸八師)




2679 枕詞

[題詞](寄物陳思)

窓超尓  月臨照而  足桧乃  下風吹夜者  公乎之其念

窓越しに 月おし照りて あしひきの あらし吹く夜は 君をしぞ思ふ 

まどごしに つきおしてりて [あしひきの] あらしふくよは きみをしぞおもふ
・・・・・・・・・・
窓越しに月が辺りを明るく照らす夜は

どうにか心は安らいでいますが

山の嵐が吹きすさぶ夜は

あの方のことを

ひたすら思いつめています
・・・・・・・・・・



2680 序詞,うわさ

[題詞](寄物陳思)

河千鳥  住澤上尓  立霧之  市白兼名  相言始而言

川千鳥 棲む沢の上に 立つ霧の いちしろけむな 相言ひそめてば 

[かはちどり すむさはのうへに たつきりの] いちしろけむな あひいひそめてば
・・・・・・・・・・
川千鳥が棲む沢の上に霧が立つように

はっきりと人に知られたのだなあ

みんなで噂に興じていることよ
・・・・・・・・・・
「いちしろし(=はっきりと目につく)」はっきりと人に知られてしまうで。




2681 女歌

[題詞](寄物陳思)

吾背子之  使乎待跡  笠毛不著  出乍其見之  雨落久尓

我が背子が 使を待つと 笠も着ず 出でつつぞ見し 雨の降らくに 

わがせこが つかひをまつと かさもきず いでつつぞみし あめのふらくに
・・・・・・・・・・
わたしのいい人が恋の使者を待つのだと

雨の中を傘もささずに出て行くのを見てしまった
・・・・・・・・・・


2682 女歌

[題詞](寄物陳思)

辛衣  君尓内<著>  欲見  戀其晩師之  雨零日乎

韓衣 君にうち着せ 見まく欲り 恋ひぞ暮らしし 雨の降る日を 

[からころも] きみにうちきせ みまくほり こひぞくらしし あめのふるひを
・・・・・・・・・・
韓衣をあなたが着るのを見たいな

雨の降る一日過ごしたよ

そんなことを思いながら
・・・・・・・・・・
* 「韓衣」は袖が大きく、丈が長く、上前・下前を深く合わせて着用する。



サ2683 大阪府,京都府,逢会

[題詞](寄物陳思)

彼方之  赤土少屋尓  **零  床共所沾  於身副我妹

彼方の 埴生の小屋に 小雨降り 床さへ濡れぬ 身に添へ我妹 

をちかたの はにふのをやに こさめふり とこさへぬれぬ みにそへわぎも
・・・・・・・・・・
遠くにある赤土の粗末な小屋は

小雨が降ると床まで濡れる

吾が身に添い寝して暖めてくれないか 妻よ
・・・・・・・・・・



2684 女歌,追懐

[題詞](寄物陳思)

笠無登  人尓者言<手>  雨乍見  留之君我  容儀志所念

笠なしと 人には言ひて 雨障み 留まりし君が 姿し思ほゆ 

かさなしと ひとにはいひて あまつつみ とまりしきみが すがたしおもほゆ
・・・・・・・・・・
笠がないのでと人には言って

我が家に雨宿りして泊まっていった

あなたの姿が思い出されます
・・・・・・・・・・



2685

[題詞](寄物陳思)

妹門  去過不勝都  久方乃  雨毛零奴可  其乎因将為

妹が門 行き過ぎかねつ ひさかたの 雨も降らぬか そをよしにせむ 

いもがかど ゆきすぎかねつ [ひさかたの] あめもふらぬか そをよしにせむ
・・・・・・・・・・
あの娘の家の前を通り過ぎるなあ

雨でも降ってくれれば

それをよいことに雨宿りさせてもらうのだけれど
・・・・・・・・・・



2686 女歌

[題詞](寄物陳思)

夜占問  吾袖尓置  <白>露乎  於公令視跡  取者<消>管

夕占問ふ 吾が袖に置く 白露を 君に見せむと 取れば消につつ 

ゆふけとふ わがそでにおく しらつゆを きみにみせむと とればけにつつ
・・・・・・・・・・
夕暮れになると占は力を発揮するからやってみようかしら

わたしの袖に置いた白玉の露が

消えなければ来る

消えたら来ない

消えないようにそっと何か木の葉にでも

移しかえたらどうかしら
・・・・・・・・・・



2687 女歌

[題詞](寄物陳思)

櫻麻乃  苧原之下草  露有者  令明而射去  母者雖知

桜麻の 麻生の下草 露しあれば 明かしてい行け 母は知るとも 

[さくらをの]  をふのしたくさ つゆしあれば あかしていゆけ はははしるとも
・・・・・・・・・・
道の麻の下草は露に濡れているから

ここで泊まっておいでなさいな

母に知れても構わないから
・・・・・・・・・・



2688 枕詞,女歌

[題詞](寄物陳思)

待不得而  内者不入  白細布之  吾袖尓  露者置奴鞆

待ちかねて 内には入らじ 白栲の 我が衣手に 露は置きぬとも 

まちかねて うちにはいらじ [しろたへの] わがころもでに つゆはおきぬとも
・・・・・・・・・・
あなたの訪れをもうにもと

戸外に立って待ってます

着物が露に濡れてきたけれど

家の中に入る気がしない
・・・・・・・・・・



2689 枕詞,女歌

[題詞](寄物陳思)

朝露之  消安吾身  雖老  又若反  君乎思将待

朝露の 消やすき我が身 老いぬとも またをちかへり 君をし待たむ 

[あさつゆの] けやすきあがみ おいぬとも またをちかへり きみをしまたむ
・・・・・・・・・・
朝露のように消えて行く私

でもまた若返って 

あなたをお待ちするでしょう
・・・・・・・・・・
* 「またをちかへり」は、また若返って。


2690 枕詞,女歌

[題詞](寄物陳思)

白細布乃  吾袖尓  露者置  妹者不相  猶<豫>四手

白栲の 我が衣手に 露は置き 妹は逢はさず たゆたひにして 

[しろたへの] わがころもでに つゆはおき いもはあはさず たゆたひにして
・・・・・・・・・・
私の袖に露は置くけれど

あの子は逢ってくれない

気持ちが揺れているのだなあ
・・・・・・・・・・



サ2691 枕詞,女歌

[題詞](寄物陳思)

云<々>  物者不念  朝露之  吾身一者  君之随意

かにかくに 物は思はじ 朝露の 我が身ひとつは 君がまにまに 

かにかくに ものはおもはじ [あさつゆの] あがみひとつは きみがまにまに
・・・・・・・・・・
あれこれと悩むのは止めよう

朝露のようにはかない私の身一つ

あなたの思うままなのですから
・・・・・・・・・・
* 「かに‐かくに」[副]あれこれと。いろいろと。
* 「の」は、比喩の格助詞。 〜のように
* 「まにまに」は、「随意に」又は、成行きにまかせて、思うがまま。




2692 女歌

[題詞](寄物陳思)

夕凝  霜置来  朝戸出<尓>  甚踐而  人尓所知名

夕凝りの 霜置きにけり 朝戸出に いたくし踏みて 人に知らゆな 

ゆふこりの しもおきにけり あさとでに いたくしふみて ひとにしらゆな
・・・・・・・・・・
夕方に凝り固まった霜が一面に敷き詰めています

朝にあなたがこの家を出るさいには

足跡を残さないように踏んで

人にあたしたちのことを

知られないようにしてくださいね
・・・・・・・・・・



2693

[題詞](寄物陳思)

如是許  戀乍不有者  朝尓日尓  妹之将履  地尓有申尾

かくばかり 恋ひつつあらずは 朝に日に 妹が踏むらむ 地にあらましを 

かくばかり こひつつあらずは あさにけに いもがふむらむ つちにあらましを
・・・・・・・・・・
これほどに恋し続けるくらいなら

朝も昼も

あの娘が踏んでいる土になりたいよ
・・・・・・・・・・


2694 枕詞

[題詞](寄物陳思)

足日木之  山鳥尾乃  一峰越  一目見之兒尓  應戀鬼香

あしひきの 山鳥の尾の 一峰越え 一目見し子に 恋ふべきものか 

[あしひきの] やまどりのをの ひとをこえ ひとめみしこに こふべきものか
・・・・・・・・・
たった一目みただけの娘に

恋をすることなどあるのか
・・・・・・・・・
* 山鳥は夜は別々に過ごす。



2695 静岡県,序詞

[題詞](寄物陳思)

吾妹子尓  相縁乎無  駿河有  不盡乃高嶺之  焼管香将有

我妹子に 逢ふよしをなみ 駿河なる 富士の高嶺の 燃えつつかあらむ 

[わぎもこに あふよしをなみ するがなる] ふじのたかねの もえつつかあらむ
・・・・・・・・・
彼女にに会いたいが機会が見えない

駿河富士の高嶺が燃えているのか のようだ
・・・・・・・・・



2696 序詞

[題詞](寄物陳思)

荒熊之  住云山之  師齒迫山  責而雖問  汝名者不告

荒熊の すむといふ山の 師歯迫山 責めて問ふとも 汝が名は告らじ 

[あらぐまの すむといふやまの しはせやま] せめてとふとも ながなはのらじ
・・・・・・・・・
熊がいるという師歯迫山を攻め落としたが

攻めて聞いても名はあかさない
・・・・・・・・・
荒熊:ツキノワグマ。
師歯迫山現在の「愛鷹山」。



2697 序詞,静岡県,うわさ

[題詞](寄物陳思)

妹之名毛  吾名毛立者  惜社  布仕能高嶺之  燎乍渡

妹が名も 我が名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつわたれ 

[いもがなも わがなもたたば をしみこそ] ふじのたかねの もえつつわたれ
・・・・・・・・・
君も私も名が噂になると困るから

なかなか会えない

富士の高峰の火溜まりのように

燃えつづけているのに
・・・・・・・・・
[左注]或歌曰 君名毛 妾名毛立者 惜己曽 不盡乃高山之 燎乍毛居



2697S 序詞,静岡県,うわさ

[題詞](寄物陳思)或歌曰

君名毛  妾名毛立者  惜己曽  不盡乃高山之  燎乍毛居

君が名も 我が名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつも居れ 

[きみがなも わがなもたたば をしみこそ] ふじのたかねの もえつつもをれ
・・・・・・・・・
君も私も名が噂になると困るから

なかなか会えないけれども

富士の高峰の火溜まりのように

燃えつづけていよう
・・・・・・・・・



2698 大阪府,序詞

[題詞](寄物陳思)

徃而見而  来戀敷  朝香方  山越置代  宿不勝鴨

行きて見て 来れば恋ほしき 朝香潟 山越しに置きて 寐ねかてぬかも 

[ゆきてみて くればこほしき あさかがた] やまごしにおきて いねかてぬかも
・・・・・・・・・
行って会って朝には別れて

帰ればすぐまた恋いしくなる 

そののように恋しいあの子を

山のかなたに置いたままで

独りでどうして眠むれようか
・・・・・・・・・



2699 奈良県,五条市,序詞

[題詞](寄物陳思)

安太人<乃>  八名打度  瀬速  意者雖念  直不相鴨

阿太人の 梁打ち渡す 瀬を早み 心は思へど 直に逢はぬかも 

[あだひとの やなうちわたす せをはやみ] こころはおもへど ただにあはぬかも
・・・・・・・・・
阿田の川人が梁(やな)を打ち渡す瀬は

流れが速くて渡れないように

じかに逢うことのできないもどかしさよ
・・・・・・・・・



2700 枕詞,序詞

[題詞](寄物陳思)

玉蜻  石垣淵之  隠庭  伏<雖>死  汝名羽不謂

玉かぎる 岩垣淵の 隠りには 伏して死ぬとも 汝が名は告らじ 

[たまかぎる] いはかきふちの こもりには] ふしてしぬとも ながなはのらじ
・・・・・・・・・
岩に囲まれた淵が人目に隠れているように

人に知られず恋い焦がれて

もう死んでしまいそうでも

あなたは私に名を教えてはくれまい
・・・・・・・・・



2701 奈良県,序詞

[題詞](寄物陳思)

明日香川  明日文将渡  石走  遠心者  不思鴨

明日香川 明日も渡らむ 石橋の 遠き心は 思ほえぬかも 

[あすかがは あすもわたらむ いしはしの] とほきこころは おもほえぬかも
・・・・・・・・・
飛び渡ってあの子のもとへ

明日香川を明日も渡ろう

飛び石のように思いに隙間はありません         
・・・・・・・・・
* 「石橋」 川に置いた飛び石。橋の代用。


2702 奈良県,序詞

[題詞](寄物陳思)

飛鳥川  水徃増  弥日異  戀乃増者  在勝<申><自>

明日香川 水行きまさり いや日異に 恋のまさらば ありかつましじ 

[あすかがは みづゆきまさり いやひけに] こひのまさらば ありかつましじ
・・・・・・・・・
明日香川が増水するように

日増しに恋がつのれば

息が詰まって生きてはおれないよ
・・・・・・・・・



2703 序詞

[題詞](寄物陳思)

真薦苅  大野川原之  水隠  戀来之妹之  紐解吾者

ま薦刈る 大野川原の 水隠りに 恋ひ来し妹が 紐解く我れは 

[まこもかる] おほのがはらの みごもりに] こひこしいもが ひもとくわれは
・・・・・・・・・
大野川原が浸水して見えなくなるように

密かに愛してきた妻の

その下着の紐を

いまこそ私が解くのだ
・・・・・・・・・



2704 枕詞,序詞

[題詞](寄物陳思)


悪氷木<乃>  山下動  逝水之  時友無雲  戀度鴨

あしひきの 山下響み 行く水の 時ともなくも 恋ひわたるかも 

[あしひきの] やましたとよみ ゆくみづの] ときともなくも こひわたるかも
・・・・・・・・・
山麓を流れる川は森を轟かせて流れてゆくが

私の心はそのように絶え間なく妻を愛し続ける
・・・・・・・・・

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