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3079 序詞,恋,女歌 [題詞](寄物陳思) 海若之 奥津玉藻乃 靡将寐 早来座君 待者苦毛 [わたつみの おきつたまもの なびきねむ] はやきませきみ またばくるしも ・・・・・・・・・・
大海原の沖合いに漂う玉藻のように 靡き寄り添いながら寝ましょう すぐいらしてください あなた これ以上待たせてわたしを苦しめないで ・・・・・・・・・・ 3080 序詞,恋 [題詞](寄物陳思) 海若之 奥尓生有 縄<乗>乃 名者曽不告 戀者雖死 [わたつみの おきにおひたる なはのりの] なはかつてのらじ こひはしねとも ・・・・・・・・・・
* 「わたつみ」は、神の意味と、海そのものの意として捉える。大海原の沖に生えている縄のりが 切れて絶えないようにように あなたの名はだれにも告げますまい 恋い死ぬことがあっても ・・・・・・・・・・ 3081 序詞,恋 [題詞](寄物陳思) 玉緒乎 片緒尓搓而 緒乎弱弥 乱時尓 不戀有目八方 [たまのをを かたをによりて ををよわみ] みだるるときに こひずあらめやも ・・・・・・・・・・
* 「片緒(糸)」は、2本の糸をより合わせて1本にするときの、その片方の糸。多く片思い、弱い、はかないの意をこめて使われる。縒り合わす別の糸がなければ 強い糸が出来ないように 片思いに心乱れて あなたを恋せずにいられましょうか ・・・・・・・・・・ 3082 女歌,枕詞,恋 [題詞](寄物陳思) 君尓不相 久成宿 玉緒之 長命之 惜雲無 きみにあはず ひさしくなりぬ [たまのをの] ながきいのちの をしけくもなし ・・・・・・・・・・
君知るや 逢わない時の長さを こんな苦しい想いをするくらいなら 私は命も惜しいことはない ・・・・・・・・・・ 3083 枕詞,恋 [題詞](寄物陳思) 戀事 益今者 玉緒之 絶而乱而 可死所念 こふること まされるいまは [たまのをの] たえてみだれて しぬべくおもほゆ ・・・・・・・・・・
* 「玉の緒」は霊魂が宿るという信仰の一種の祭器であったらしい。恋しくて恋しくて気が狂いそう もう死んでしまいたいくらいですよ ・・・・・・・・・・ 「タマ」という音が「魂」に通じる。「玉の緒」は、玉と玉を糸で繋いだもので、切れやすく、すぐにバラバラになってしまう。ここから「絶ゆ」「乱る」「継ぐ」などにかかり、玉を貫き通す紐の長いことから「長き」にかかる。 生命の意から「現し心」に、緒と同音であることから「惜し」にもかかる。 また、「魂・寿命」が儚く短いものであることから「短い」意を持つ。 3084 序詞,恋 [題詞](寄物陳思) 海處女 潜取云 忘貝 代二毛不忘 妹之容儀者 [あまをとめ かづきとるといふ わすれがひ] よにもわすれじ いもがすがたは ・・・・・・・・・・
忘れ貝は海人娘子が 潜水して採る二枚貝 浜辺でその貝殻の片方を拾うと 恋を忘れるそうな でもねえ その貝殻が あの人を忘れさせてくれるかなぁ 後々の世までも 忘れることはないと思うけど ・・・・・・・・・・ 3085 枕詞,恋 [題詞](寄物陳思) 朝影尓 吾身者成奴 玉蜻 髣髴所見而 徃之兒故尓 あさかげに あがみはなりぬ [たまかぎる] ほのかにみえて いにしこゆゑに ・・・・・・・・・・
朝日の中の影ぼうし 私は細長く伸びた影ぼうし 僅かな間居てどこかへ去った娘を 思い詰めてる影ぼうし ・・・・・・・・・・ 3086 恋 [題詞](寄物陳思) 中々二 人跡不在者 桑子尓毛 成益物乎 玉之緒<許> なかなかに ひととあらずは くはこにも ならましものを たまのをばかり ・・・・・・・・・・
* 「玉の緒」は、ここでは「短い間でも」「ほんのしばらくの間でも」の意。「桑子」は、桑を食べる蚕のこと。かえって 人でないなら 蚕にでも生まれたらよかった 蚕が短い命だとしても これほど恋が苦しいものなら ・・・・・・・・・・ サ3087 枕詞,序詞,奈良,恋 [題詞](寄物陳思) 真菅吉 宗我乃河原尓 鳴千鳥 間無吾背子 吾戀者 [ますげよし] そがのかはらに なくちどり] まなしわがせこ あがこふらくは ・・・・・・・・・・
* ク語法 活用語に準体言詞「く」「らく」の付いた形をク語形(法)という。真菅が生える宗我の川原に鳴く千鳥のように 私も絶え間なく夫を恋い慕っています ・・・・・・・・・・ 「く」は四段・ラ変の未然形、形容詞「−ケ」「−シケ」の未然形、助動詞「り」の未然形、「ず」「む」「けり」の未然形に付く。また「き」の連体形につく。 「らく」は上一段の未然形と上二段・下二段・カ変・サ変およびに助動詞「しむ」「ゆ」「つ」「ぬ」などの終止形につく。 「く」「らく」は接続の仕方は異なるが「こと」という意味を表す点では同じである。普通上接の活用語を体言化する接尾語として扱われる。 「恋ふらく」なり「有らく」なりは一語の体言となる。(接尾語という品詞は存在しない) 3088 奈良,掛詞,序詞,恋 [題詞](寄物陳思) 戀衣 著<楢>乃山尓 鳴鳥之 間無<時無> 吾戀良苦者 [こひごろも きならのやまに なくとりの] まなくときなし あがこふらくは ・・・・・・・・・・
愛しいあなた 私の恋する気持ちは 絶え間もなく 奈良の山に鳴く鳥の声よ ・・・・・・・・・・ サ3089 枕詞,序詞,奈良,恋 [題詞](寄物陳思) 遠津人 猟道之池尓 住鳥之 立毛居毛 君乎之曽念 [とほつひと] かりぢのいけに すむとりの] たちてもゐても きみをしぞおもふ ・・・・・・・・・・
* 「遠つ人」は、雁(猟)を言い出す枕詞。猟道の池に住む鳥のように 立っていても座っていても いつも一途に貴方だけを思い続けています ・・・・・・・・・・ * 「狩道の池」は奈良桜井の鹿路にある池。 * 「君」は人称名詞。 * 「を」は、対象の格助詞。 * 「し」は、強調の副助詞。 * 「ぞ」は、強調の係助詞。 * 「思ふ」は、ハ行四段活用動詞の連体形。(「ぞ」の結び) 一途に貴方だけを思い続ける。 サ3090 序詞,うわさ,恋 [題詞](寄物陳思) 葦邊徃 鴨之羽音之 聲耳 聞管本名 戀度鴨 [あしへゆく かものはおとの おとのみに] ききつつもとな こひわたるかも ・・・・・・・・・・
* 「もと‐な」[副]「もと」は根本の意。「な」は形容詞「無し」の語幹。 わけもなく。みだりに。葦辺を飛んでゆく鴨の羽音のように うわさだけ聞いて お会いすることもできず ただいたづらに あなたを恋し続けるのでしょうか ・・・・・・・・・・ * 「音に聞く」は、うわさに聞く。 * 「わたる」は、動詞の連用形に付いて、 ずっと〜し続ける。 * 「かも」は詠嘆の終助詞。 |
万葉集索引第十二巻
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3102 歌垣,枕詞,求婚拒否 [題詞](問答歌) 足千根乃 母之召名乎 雖白 路行人乎 孰跡知而可 [たらちねの] ははがよぶなを まをさめど みちゆくひとを たれとしりてか ・・・・・・・・・・・
素敵なあなたは ただの行きずりの人 母だけが呼ぶ私の名をお教えしたいけれども 通りすがりのあなたが誰かも知らずに たとえ高貴なお方でも お教えできませんことよ ・・・・・・・・・・・ 3103 女歌,恋,枕詞 [題詞](問答歌) 不相 然将有 玉<梓>之 使乎谷毛 待八金<手>六 あはなくは しかもありなむ [たまづさの] つかひをだにも まちやかねてむ ・・・・・・・・・・・
逢えないのならそれはそれで忍びもしましょう でも お便りを運ぶお使いさえも 待ちかねなければならないのでしょうか ・・・・・・・・・・・ 3104 人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 将相者 千遍雖念 蟻通 人眼乎多 戀乍衣居 あはむとは ちたびおもへど [ありがよふ] ひとめをおほみ こひつつぞをる ・・・・・・・・・・・
逢いたいと幾度思うか知れないが 蟻が行き来するように人目が多くて 逢いにも行けず 一人で恋い焦がれているんだよ ・・・・・・・・・・・ 3105 人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 人目太 直不相而 盖雲 吾戀死者 誰名将有裳 ひとめおほみ ただにあはずて けだしくも あがこひしなば たがなならむも ・・・・・・・・・・・
* 「けだしく‐も」副詞「けだしく」+係助詞「も」から、人目が多いからと 逢いに来てくれないままでは 私が恋い死にしたら あなたの名がでて噂になるでしょう ・・・・・・・・・・・ 1 (あとに推量または疑問の意味を表す語を伴って) おそらく。ひょっとしたら。 2 (あとに仮定の意味を表す語を伴って)もしも。 3106 女歌,恋 [題詞](問答歌) 相見 欲為者 従君毛 吾曽益而 伊布可思美為也 あひみまく ほしきがためは きみよりも われぞまさりて いふかしみする ・・・・・・・・・・・
逢いたい気持ちは 君よりも私の方が強いのに 訝しいことを言うものだね ・・・・・・・・・・・ 3107 人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 空蝉之 人目乎繁 不相而 年之經者 生跡毛奈思 [うつせみの] ひとめをしげみ あはずして としのへぬれば いけりともなし ・・・・・・・・・・・
心の中ではあの娘のことを強く思っているけれど この世の人たちの目にふれないようにしながら 年を重ねることは 生きた心地もしないことだなぁ ・・・・・・・・・・・ 3108 枕詞,人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 空蝉之 人目繁者 夜干玉之 夜夢乎 次而所見欲 うつせみの ひとめしげくは [ぬばたまの] よるのいめにを つぎてみえこそ ・・・・・・・・・・・
この世の人たちの目にふれないように 夜の夢で絶えず逢いましょう ・・・・・・・・・・・ 3109 人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 慇懃 憶吾妹乎 人言之 繁尓因而 不通比日可聞 ねもころに おもふわぎもを ひとごとの しげきによりて よどむころかも ・・・・・・・・・・・
* 「ねもころ」[形動ナリ]「ねんごろ」の古形。親密な間柄のわが妻になかなか逢えない 人目陰口が煩くて水が淀むようなこの頃であるよ ・・・・・・・・・・・ 「ねもごろ」とも。 [副]も同じ。 1 心がこもっているさま。親身であるさま。 「―にとむらう」「―なもてなし」 2 親しいさま。特に、男女の仲が親密であるさま。 「―な間柄」[名]1 親密になる ... 3110 人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 人言之 繁思有者 君毛吾毛 将絶常云而 相之物鴨 ひとごとの しげくしあらば きみもあれも たえむといひて あひしものかも ・・・・・・・・・・・
人目陰口が煩くて逢えないという あなたと私は切れ切れになると言いながら いつも逢ってきたのかしら ・・・・・・・・・・・ 3111 恋,女歌 [題詞](問答歌) 為便毛無 片戀乎為登 比日尓 吾可死者 夢所見哉 すべもなき かたこひをすと このころに わがしぬべきは いめにみえきや ・・・・・・・・・・・
どうしようもなく恋ひ恋ふ私の片想い その恋ゆえに死にそうになっているのに あなたの夢にさえ現れないのでしょうか ・・・・・・・・・・・ 3112 恋 [題詞](問答歌) 夢見而 衣乎取服 装束間尓 妹之使曽 先尓来 いめにみて ころもをとりき よそふまに いもがつかひぞ さきだちにける
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正に夢に見たからこそ 衣を取り出して身支度をしている時に 愛しいあなたからの使いが先に来たのですよ ・・・・・・・・・・・ |
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3113 怨,恋 [題詞](問答歌) 在有而 後毛将相登 言耳乎 堅要管 相者無尓 ありありて のちもあはむと ことのみを かたくいひつつ あふとはなしに ・・・・・・・・・・
* 動詞「あり」の連用形を重ねた「ありあり」+接続助詞「て」。ずっとこのままの状態でいて 後にも逢おうと言葉でかたく約束したのに 直接逢う事もなくなって ・・・・・・・・・・ ずっとこのままの状態でいて、 このまま生き長らえて。 3114 恋,うわさ,女歌 [題詞](問答歌) 極而 吾毛相登 思友 人之言社 繁君尓有 ありありて われもあはむと おもへども ひとのことこそ しげききみにあれ ・・・・・・・・・・
ずっとこのままでいて 私も逢おうと思うけれど 他の人から とかく恋の噂の絶えないあなたですから ・・・・・・・・・・ 3115 恋 [題詞](問答歌) 氣緒尓 言氣築之 妹尚乎 人妻有跡 聞者悲毛 いきのをに わがいきづきし いもすらを ひとづまなりと きけばかなしも ・・・・・・・・・・
* 「いき‐の‐お」息の緒 いのち。たまのお。魂。命のかぎり私は精一杯に息をしとめたよ 愛するひとが人妻だったなんて そんなことを聞けば悲しくて ・・・・・・・・・・ ふつう「息の緒に」の形で、命のかぎりの意に用いる。 3116 恋,慰め,女歌 [題詞](問答歌) 吾故尓 痛勿和備曽 後遂 不相登要之 言毛不有尓 わがゆゑに いたくなわびそ のちつひに あはじといひし こともあらなくに ・・・・・・・・・・
私のことでひどく哀しまないで 最後まであなたと会わないなんて 言ったことはありませんよ ・・・・・・・・・・ 3117 恋 [題詞](問答歌) 門立而 戸毛閇而有乎 何處従鹿 妹之入来而 夢所見鶴 かどたてて ともさしてあるを いづくゆか いもがいりきて いめにみえつる ・・・・・・・・・・
* 「妹」…いも…恋人…愛人…妻門を閉じて戸締りもしたのに どこからか愛人が部屋の中に 入って来る夢を見てしまう ・・・・・・・・・・ 3118 恋,女歌 [題詞](問答歌) 門立而 戸者雖闔 盗人之 穿穴従 入而所見牟 かどたてて とはさしたれど ぬすびとの ほれるあなより いりてみえけむ ・・・・・・・・・・
* 「けむ」 過去の助動詞「き」の未然形の古形「け」+推量の助動詞「む」から活用語の連用形に付く。門を閉じ戸締りもしたのでしょうが 私は盗人が掘った穴にもぐって あなたを見ていたのですよ ・・・・・・・・・・
過去の事実についての推量を表す。…ただろう。…だったろう。
3119 恋[題詞](問答歌) 従明日者 戀乍将<去> 今夕弾 速初夜従 綏解吾妹 あすよりは こひつつゆかむ こよひだに はやくよひより ひもとけわぎも ・・・・・・・・・・
明日になればおまえを恋つつの旅立ちなんだ だからまだ早いけれど今宵ばかりは ひもを解いてさあ思いっきり抱き合おう ・・・・・・・・・・ 3120 女歌,恋 [題詞](問答歌) 今更 将寐哉我背子 荒田<夜>之 全夜毛不落 夢所見欲 いまさらに ねめやわがせこ あらたよの ひとよもおちず いめにみえこそ ・・・・・・・・・・
今さら抱き合ってもあなたは明け方には行ってしまう 夜毎ひと晩も絶やさず夢に出てきてよね ・・・・・・・・・・ 3121 女歌,恋 [題詞](問答歌) 吾<勢>子之 使乎待跡 笠不著 出乍曽見之 雨零尓 わがせこが つかひをまつと かさもきず いでつつぞみし あめのふらくに ・・・・・・・・・・
愛する人からの連絡を待って 雨具も無しで 外で見てたの雨が降る中を ・・・・・・・・・・ 3122 人目,うわさ,恋 [題詞](問答歌) 無心 雨尓毛有鹿 人目守 乏妹尓 今日谷相<乎> こころなき あめにもあるか ひとめもり ともしきいもに けふだにあはむを ・・・・・・・・・・
心無い雨であることよ 人目を避けてめったに逢えないあの娘に きょうこそ逢おうというのに ・・・・・・・・・・ 3123 枕詞,恋 [題詞](問答歌) 直獨 宿杼宿不得而 白細 袖乎笠尓著 沾乍曽来 ただひとり ぬれどねかねて しろたへの そでをかさにき ぬれつつぞこし
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独り寝がどうしても出来なくて 袖を笠にして難渋したけど 雨に濡れながら飛んできたよ ・・・・・・・・・・ |
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3136 恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 客在而 戀者辛苦 何時毛 京行而 君之目乎将見 たびにありて こふればくるし いつしかも みやこにゆきて きみがめをみむ ・・・・・・・・
* 「いつしかも」何時しかも;いつになったら。代名詞「いつ」に、強めの副助詞「し」、疑問の係助詞「か」+「も」。 過去・未来の不定の時を表す。どの時かに。旅にいてあなたを思う恋は苦しいものです 早く都に帰ってあなたの瞳を見たいのです ・・・・・・・・ 3137 恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 遠有者 光儀者不所見 如常 妹之咲者 面影為而 とほくあれば すがたはみえず つねのごと いもがゑまひは おもかげにして ・・・・・・・・
* 「常のごと」; いつものように、いつもいつも。遠くにいるので姿は見えないが いつもいつも妻の微笑む面影が浮かぶ ・・・・・・・・ * 「にして」;断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞「して」。 …であって。 3138 恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 年毛不歴 反来甞跡 朝影尓 将待妹之 面影所見 としもへず かへりこなむと [あさかげに] まつらむいもし おもかげにみゆ ・・・・・・・・
一年も経たずに 赴任先から帰るはずなのにと 朝蔭のように痩せ細って 私の帰郷を待つ妻の姿が目に浮かぶ ・・・・・・・・ 3139 枕詞,恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 玉桙之 道尓出立 別来之 日従于念 忘時無 [たまほこの] みちにいでたち わかれこし ひよりおもふに わするときなし ・・・・・・・・
都への旅装束で道に出て 古里の妻と別れて来た その日から毎日妻を思い 忘れる時はない ・・・・・・・・ 3140 恋,遊行女婦,望郷 [題詞](羇旅發思) 波之寸八師 志賀在戀尓毛 有之鴨 君所遺而 戀敷念者 はしきやし しかあるこひに ありしかも きみにおくれて こほしきおもへば ・・・・・・・・
いとおしいなんて 恋だなんていえないことなのに あなたが旅立ってしまってから 恋しいなんて思う 割り切れなくてどうかしてるわ ・・・・・・・・ 3141 枕詞,恋,遊行女婦 [題詞](羇旅發思) 草枕 客之悲 有苗尓 妹乎相見而 後将戀可聞 [くさまくら] たびのかなしく あるなへに いもをあひみて のちこひむかも ・・・・・・・・
一人旅が空しくもあるのは 行きずりの出会いで一夜を過ごし また旅に出て恋に気づくからだ ・・・・・・・・ 3142 恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 國遠 直不相 夢谷 吾尓所見社 相日左右二 くにとほみ ただにはあはず いめにだに われにみえこそ あはむひまでに ・・・・・・・・
故郷は遠く もう直には逢えない せめて夢に見たい 再び逢うだろう日まで ・・・・・・・・ 3143 恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 如是将戀 物跡知者 吾妹兒尓 言問麻思乎 今之悔毛 かくこひむ ものとしりせば わぎもこに こととはましを いましくやしも ・・・・・・・・
* 「問はましものを"」の 「まし」は反実仮想の助動詞「まし」の連体形。こんなに恋していたのなら 何故もっと話をしておかなかったのか そうしたら この旅空もこんなに辛くはなかったろうに ・・・・・・・・ 様子を尋ねもするだろうに 3144 枕詞,恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 客夜之 久成者 左丹頬合 紐開不離 戀流比日 たびのよの ひさしくなれば [さにつらふ] ひもときさけず こふるこのころ ・・・・・・・・
旅の夜が長くなれば 行きずりのひとに 衣の紐を解くわけにもいかず 郷里の妻が恋しくてならないこの頃であるよ ・・・・・・・・ 3145 枕詞,恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 吾妹兒之 阿<乎>偲良志 草枕 旅之丸寐尓 下紐解 わぎもこし あをしのふらし [くさまくら] たびのまろねに したびもとけぬ ・・・・・・・・
* 「まろ寝」 衣服は昼の格好のまま眠ること。妻が家で私を偲んでいるらしい 旅で丸寝をしていると 下着の紐がほどけてしまう ・・・・・・・・ 3146 枕詞,恋,望郷 [題詞](羇旅發思) 草枕 旅之衣 紐解 所念鴨 此年比者 [くさまくら] たびのころもの ひもとけて おもほゆるかも このとしころは ・・・・・・・・
旅装束の下着の紐が解ける 郷里の妻が私に会いたがっているからだ この頃は特に妻を思う ・・・・・・・・ 3147 枕詞,望郷,恋 [題詞](羇旅發思) 草枕 客之紐解 家之妹志 吾乎待不得而 歎良霜 [くさまくら] たびのひもとく いへのいもし わをまちかねて なげかふらしも
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旅装束の紐がほどけるのは 郷里の妻が私の帰郷を待ちかねて 泣き嘆いているからに違いない ・・・・・・・・ |


