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3358 東歌,相聞,静岡県,富士山,恋,民謡,歌垣 [題詞] 佐奴良久波 多麻乃緒婆可里 <古>布良久波 布自能多可祢乃 奈流佐波能其登 さぬらくは たまのをばかり こふらくは ふじのたかねの なるさはのごと ・・・・・・・・・・
* 「さ」は接頭語 「ぬらく」は寝るに体言をつくる「ク」の接続したもの。二人の共寝はほんのわずかな間だけだが 二人の恋の気持ちは富士の高嶺の大沢崩れのように 激しく鳴り響いている ・・・・・・・・・・ * 「玉の緒ばかり」は、少ないこと、中絶えること。・「魂」の意・「短い」の意。 3358S1 東歌,相聞,静岡県,伊豆,天城山,うわさ,人目,恋,歌垣,民謡 [題詞]或本歌曰 麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与 まかなしみ ぬらくはしけらく さならくは いづのたかねの なるさはなすよ ・・・・・・・・・・
* 「ま」は接頭語。名詞・形容詞・形容動詞・副詞などに冠して、称美・強調の意を表す。可愛いので。可愛さに。あんまり可愛くて いとしく思ってわずかに寝ることは寝たのだが うわさは伊豆の高嶺の鳴沢のように激しいことだよ ・・・・・・・・・・ * 「シケラクはなしけること」として「愛するが故にねもしたのだが」。シは為の連用形、ケラクは助動詞ケリのク語法とすれば、「わずかに寝たことは寝た」の意になる。 * 「さ鳴らくは」は、サヌラクハの訛り。前の句のヌラクを繰り返す。「鳴る」=「うわさ・評判」と掛ける。 * 「鳴沢」は水音高く流れる渓流。 3358S2 東歌,相聞,静岡県,富士山,恋,歌垣,民謡 [題詞]一本歌曰 阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛 あへらくは たまのをしけや こふらくは ふじのたかねに ふるゆきなすも ・・・・・・・・・・
* 「逢へらくは」 逢ったことは。「逢へ」(四段・已然形)二人が会ったのはわずかな時間 二人の恋は富士の頂に降る吹雪のように激しく 積もり積もって絶えることはないよ ・・・・・・・・・・ 「ら」(完了「り」の未然形) 「く」(準体助詞)逢ふのク語法。 * 「しけや」は、「及け」は「及ぶ」の意の四段「及く」(如く)の已然形。 3359 東歌,相聞,静岡県,駿河湾,恋情,異伝,歌垣,民謡 [題詞] 駿河能宇美 於思敝尓於布流 波麻都豆良 伊麻思乎多能美 波播尓多我比奴 [一云 於夜尓多我比奴] するがのうみ おしへにおふる はまつづら いましをたのみ ははにたがひぬ [おやにたがひぬ] ・・・・・・・・・・
* 「つづら」は「蔓(つる)」の意駿河の海の磯辺に浜蔓草の生え伸びるように 私はあなたを頼みにし続けて 母とも仲違いしてしまいました ・・・・・・・・・・ 3360 東歌,相聞,静岡県,伊豆,女歌,恋,序詞 [題詞] 伊豆乃宇美尓 多都思良奈美能 安里都追毛 都藝奈牟毛能乎 <美>太礼志米梅楊 いづのうみに たつしらなみの ありつつも つぎなむものを みだれしめめや ・・・・・・・・・・
伊豆の海に立つ白波のように このまま恋を続けたいのものを どうして乱れさせましょうか 決して乱れさせはしません ・・・・・・・・・・ 3360S 東歌,相聞,静岡県,異伝,女歌,恋,序詞 [題詞]或本歌曰 之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武 [しらくもの たえつつも つがむともへや] みだれそめけむ ・・・・・・・・・・
* 「乱れ初(そ)め」・「乱れ染(そ)め」白雲が 絶えつつさまようように このまま恋を続けたいと思ったかなあ 乱れ白雲よ ・・・・・・・・・・ * 「けむ」[助動][(けま)|○|けむ(けん)|けむ(けん)|けめ|○]過去の助動詞「き」の未然形の古形「け」+推量の助動詞「む」から活用語の連用形に付く。 過去の事実についての推量を表す。…ただろう。 サ3361 東歌,相聞,神奈川県,足柄,序詞,恋,狩猟,民謡 [題詞] 安思我良能 乎弖毛許乃母尓 佐須和奈乃 可奈流麻之豆美 許呂安礼比毛等久 [あしがらの をてもこのもに さすわなの」 かなるましづみ ころあれひもとく ・・・・・・・・・・
* 狩猟の収穫を祝う宴会の歌足柄山の四方八方にさしめぐる 張った罠の鳴り縄が響けば その間に紛れて娘と いっそう深い思いで紐を解き交わすのさ ・・・・・・・・・・ * 乎弖毛許乃母尓ー彼方此方尓ーをてもこのもにー四方八方に。 * 佐須和奈乃ーさすわなのー刺す罠のー張った罠縄が(二人のうわさの見張り)。 騒がしい中(相手を見据えた情熱的な愛の感情)が鳴り響く。 * 可奈流麻之豆美ーか鳴る間しづみー上代東国方言ー「か鳴る間」は、人が音を立て騒いでいる間のこと。「しづみ」は、こっそりと・忍び動く。 * 許呂安礼比毛等久ー二人はその間にこっそり着物の紐を解いている。 3362 東歌,相聞,神奈川県,丹沢,別離,恋,異伝 [題詞] 相模祢乃 乎美祢見<可>久思 和須礼久流 伊毛我名欲妣弖 吾乎祢之奈久奈 さがむねの をみねみそくし わすれくる いもがなよびて あをねしなくな ・・・・・・・・・・
相模峰の小さな尾根を見ないようにして里を発った 忘れるに忘れられない妻の名を叫んでしまい 私は号泣した ・・・・・・・・・・ 3362S 東歌,相聞,神奈川県,異伝,別離,恋 [題詞]或本歌曰 武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流 むざしねの をみねみかくし わすれゆく きみがなかけて あをねしなくる ・・・・・・・・・・
武蔵峰の小さな尾根を 見て見ぬふりをしつつ里を発った 忘れてゆきそうになる 妻の名を叫んでしまい 私は号泣した ・・・・・・・・・・ 3363 東歌,相聞,神奈川県,女歌,悲別,足柄,掛詞 [題詞] 和我世古乎 夜麻登敝夜利弖 麻都之太須 安思我良夜麻乃 須疑乃木能末可 わがせこを やまとへやりて まつしだす あしがらやまの すぎのこのまか ・・・・・・・・・・
* 杉の植林で働く人達の労働歌夫を大和へ旅立たせて わたしはまつの その松の木ならぬ 足柄山の杉の木の間で ・・・・・・・・・・ 3364 東歌,相聞,神奈川県,箱根,足柄,掛詞,恋情,農事,民謡,異伝 [題詞] 安思我良能 波○祢乃夜麻尓 安波麻吉弖 實登波奈礼留乎 阿波奈久毛安夜思 あしがらの はこねのやまに あはまきて みとはなれるを あはなくもあやし ・・・・・・・・・・
* 収穫祭の宴会歌。足柄の箱根の山に粟を蒔いて実がなったのに 粟わないなんて 二人は結ばれたのに逢わないなんて どうして どうしてなのよ ・・・・・・・・・・ 3364S 東歌,相聞,神奈川県,異伝,序詞,恋,民謡 [題詞]或本歌末句曰 はふくずの ひかばよりこね したなほなほに ・・・・・・・・・・
延ふ葛は 引いたら素直に寄っといで ・・・・・・・・・・ 3365 東歌,相聞,神奈川県,鎌倉,稲村が崎,序詞,恋 [題詞] 可麻久良乃 美胡之能佐吉能 伊波久叡乃 伎美我久由倍伎 己許呂波母多自 [かまくらの みごしのさきの いはくえの] きみが[くゆ]べき こころはもたじ
・・・・・・・・・・
鎌倉の見越しの崎の崩れ岩のような あなたが後悔されるような そんな心を私は持っていません ・・・・・・・・・・ |
万葉集索引第十四巻
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3366 東歌,相聞,神奈川県,鎌倉,稲背川,恋 [題詞] 麻可奈思美 佐祢尓和波由久 可麻久良能 美奈能瀬河泊尓 思保美都奈武賀 まかなしみ さねにわはゆく かまくらの みなのせがはに しほみつなむか ・・・・・・・・・・
* 「まかなし」(形シク);「ま」接頭語。ほんとうにかわいい、いじらしい。ほんとうに恋しくてしょうがないから あの娘を抱きしめて寝に行く 鎌倉の水無の瀬川に潮が満ちて 渡りにくくなっていなければいいがなあ ・・・・・・・・・・ * 「み」・・なので。 * 「さ寝」の「さ」は接頭語。「寝」は、共寝。 * 「潮満つなむか」は、「潮満つらむか」の訛り。 * 「らむ」は、完了の助動詞「り」の未然形に、推量の助動詞「む」のついたもの。・・・ているであろう。 * 「か」は、詠嘆か自問自答の反語的表現。 サ3367 東歌,相聞,神奈川県,足柄,女歌,恋,皮肉,揶揄,民謡 [題詞] 母毛豆思麻 安之我良乎夫祢 安流吉於保美 目許曽可流良米 己許呂波毛倍杼 [ももづしま あしがらをぶね] あるきおほみ めこそかるらめ こころはもへど ・・・・・・・・・・
* 「か・る」【離る】[動ラ下二]「枯れる」と同語源。 空間的に遠くなる。はなれる。思い人があちこちの人と楽しんでいる もう姿を追うのはよそう 心には残るけれど ・・・・・・・・・・ * 「足柄小舟」:足柄山の杉材で作った舟。舟足の軽さが貴ばれた。 * 「足柄山の舟木の歌3首」労働歌で足柄峠の歌垣では全員で合唱されたという。
鳥総(とぶさ)立て 足柄山に 舟木伐り 樹に伐り行きつ あたら舟材(ふなぎ)を
<「と‐ぶさ」【鳥総】木のこずえや、枝葉の茂った先の部分。昔、木を切ったあとに、山神を祭るためにその株などにこれを立て、切り株に塩と酒を供え、梢枝を真ん中に立てる風習。せっかく占有の印を付けた恋人を、他の人に取られてしまったと歌っている。>< 「百つ島」は舟に掛り、思い人があちこちの人と楽しんでいる。片思いの歌。> < 「安伎奈の山」は未詳。 舟に綱つけて引くように、あなたにも綱をつけておきたいという意。> |
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3368 東歌,相聞,神奈川県,湯河原町,恋情,序詞 [題詞] 阿之我利能 刀比能可布知尓 伊豆流湯能 余尓母多欲良尓 故呂河伊波奈久尓 [あしがりの とひのかふちに いづるゆの] よにもたよらに ころがいはなくに ・・・・・・・・・・・
* 「よにもたよらに」は、温湯の湧き続ける様を、絶えることのない二人の仲と譬喩的に表現。足柄山の麓土肥の河原に湧き出る温泉のように 二人の仲が絶えることはないと あの娘は言ってはくれない ・・・・・・・・・・・ 3369 東歌,相聞,神奈川県,足柄,民謡,宴会,口説き,恋 [題詞] 阿之我利乃 麻萬能古須氣乃 須我麻久良 安是加麻可左武 許呂勢多麻久良 [あしがりの ままのこすげの すがまくら] あぜかまかさむ ころせたまくら ・・・・・・・・・・・
足柄の麻方の小菅を束ねたような質素な菅枕をしなくても わたしの手枕のほうがいいですよ 娘さん ・・・・・・・・・・ 3370 東歌,相聞,神奈川県,箱根,序詞,恋,恨 [題詞] 安思我里乃 波故祢能祢呂乃 尓古具佐能 波奈都豆麻奈礼也 比母登可受祢牟 [あしがりの はこねのねろの にこぐさの] はなつつまなれや ひもとかずねむ ・・・・・・・・・・・
* 「花つ妻」は実際に寝ない妻の意。足柄の箱根の嶺に生えている若草が 花だけで実がならないように あなたは「花つ妻」なのか 神祭りの「障りの妻」なのか それなら紐を解かないで寝るしかない そんなはずはないと思いつつ ・・・・・・・・・・・ 3371 東歌,相聞,神奈川県,足柄,恋,うわさ、防人 [題詞] 安思我良乃 美佐可加思古美 久毛利欲能 阿我志多婆倍乎 許知弖都流可<毛> あしがらの みさかかしこみ [くもりよの] あがしたばへを こちでつるかも ・・・・・・・・・・・
足柄のうっそうとした峠は恐ろしい なにも隠し事はできない 曇り夜のような 朧げに秘めていた恋人の名まで つい口に出してしまったことよ ・・・・・・・・・・・ 3372 東歌,相聞,神奈川県,大磯,序詞,恋 [題詞] 相模治乃 余呂伎能波麻乃 麻奈胡奈須 兒良波可奈之久 於毛波流留可毛 [さがむぢの よろぎのはまの まなごなす] こらはかなしく おもはるるかも ・・・・・・・・・・・
相模路の余綾の浜の真砂のように 美わしいあの娘は心切なく愛しいことよ ・・・・・・・・・・・ 3373 東歌,相聞,埼玉県,東京都,多摩川,のろけ、作業歌 [題詞] 多麻河泊尓 左良須弖豆久利 佐良左良尓 奈仁曽許能兒乃 己許太可奈之伎 [たまかはに さらすてづくり] さらさらに なにぞこのこの ここだかなしき ・・・・・・・・・・・
* 多摩川河畔では手織りの麻布を朝廷に調(税)として献上した。今も調布の地名を残す。 多摩川の川面に流す手織り布 さらさら流して仕上げる手織り布 どうしてこの子がこんなにも 抱くたびに愛しくてたまらないと この娘がかわいくてたまらないと いい人にいわれたよ いわれたよ さらにさらに さらにさらに ・・・・・・・・・・・ /////////// 【名歌鑑賞】さん。 https://blogs.yahoo.co.jp/sakuramitih15/40396732.html?vitality 多摩川に晒(さら)す手作りの布のように、さらにさらに、どうしてこの子がこんなにもいとしくてならないのだろう。 川に布を晒すのは、柔らかく美しくするためです。 多摩川流域は麻の栽培が盛んであった。 律令時代に税の一つに「調」があり、麻布が収められていた。東京の「調布」や「麻布」の地名はその名残りです。 注・ 手作り=手織りの布。
さらす=水に晒して布地を美しくする。
サ3374 東歌,相聞,埼玉県,東京都,女歌,うわさ,人目,恋さらさらに=「さらにさらに」を掛ける。 ここだ=量の多いこと。はなはだしいこと。 [題詞] 武蔵野尓 宇良敝可多也伎 麻左弖尓毛 乃良奴伎美我名 宇良尓R尓家里 [むざしのに うらへかたやき まさでにも] のらぬきみがな うらにでにけり ・・・・・・・・・・・
* 「まさで‐に」【正でに】[副]「で」は状態・方法の意の「て(手)」。本当に。真実に。武蔵野の占部神祇官に 鹿の肩焼で占ってもらった まさしくそこに 私に名を告げなかったあなたの名が 真実 現れたわ ・・・・・・・・・・・ * 占部は、神祇官に属し、占いを司った者。また、その職。 * 「かた‐やき」〔名〕上代の占いの一つ太占(ふとまに)のこと。鹿の肩骨に溝を彫り、火にあてて、そのひび割れの形で吉凶を占う。亀卜(きぼく)も同様。 * 男が心を許さないために実名を告げずに男女の関係を持つと、名のりを拒否されたその女の一族に恥をかかせた恨みをかう。 3375 東歌,相聞,埼玉県,東京都,序詞,女歌,悲別,恋 [題詞] 武蔵野乃 乎具奇我吉藝志 多知和可礼 伊尓之与比欲利 世呂尓安波奈布与 [むざしのの をぐきがきぎし たちわかれ] いにしよひより せろにあはなふよ ・・・・・・・・・・・
* 「をぐき」は雉が住む洞。武蔵野の穴にすむ雉のように あわただしく飛び立って 立ち別れたあの宵 あれっきり あの人に逢えなくてせつないよ ・・・・・・・・・・・ 3376 東歌,相聞,埼玉県,東京都,うわさ,人目,恋,女歌 [題詞] 古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓豆奈由米 こひしけば そでもふらむを むざしのの うけらがはなの いろにづなゆめ ・・・・・・・・・・・
* 「うけらの花」は、今は「オケラ」。屠蘇にも入っている薬草。秋に花をつける。恋しくなったら私が袖を振るでしょう でも あなたは 武蔵野に生えるうけらの花のように 私への思いを表面に出してはいけませんよ ・・・・・・・・・・・ 3376S 東歌,相聞,埼玉県,東京都,異伝,恋,序詞 [題詞]或本歌曰 [いかにして こひばかいもに むざしのの] うけらがはなの いろにでずあらむ ・・・・・・・・・・・
どうすれば恋する妻へ思いを 武蔵野のうけらの花のように 表面に出さずにすむのだろうか ・・・・・・・・・・・ 3377 東歌,相聞,埼玉県,東京都,女歌,恨,恋,序詞 [題詞] 武蔵野乃 久佐波母呂武吉 可毛可久母 伎美我麻尓末尓 吾者余利尓思乎 [むざしのの くさはもろむき かもかくも] きみがまにまに わはよりにしを
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武蔵野の草葉がいっせいにこちらを向くように とにもかくにもあなたの思うがままに 私は寄り添うのだよ 君に向かって ・・・・・・・・・・・ |
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3378 東歌,相聞,埼玉県,入間,序詞,恋,民謡,歌垣 [題詞] 伊利麻治能 於保屋我波良能 伊波為都良 比可婆奴流々々 和尓奈多要曽祢 [いりまぢの おほやがはらの いはゐつら] ひかばぬるぬる わになたえそね ・・・・・・・・・・・
* 「いはゐつら」は、「滑ひゆ」。スベリヒユ科の一年草。路傍・畑など日当たりのよい所に生える。茎は赤紫色を帯び、下部は地をはう。葉は厚い肉質で長円形、つやがある。夏、黄色の小花を開く。名前は,茹でるとぬめりが出ることに由来する。ということで,食べられる。入間路の於保屋が原に生えているいはゐつらが やさしく引っ張れば ずるずるとなめらかに切れないように 私との間を絶やさないでくださいね ・・・・・・・・・・・ 真夏の暑い日差しにも,熱い地面にはいつくばるように広がっている。スベリヒユもポーチュラカの花を小さくしたような黄色い花をつける。 ・・・・・・・・ * 「いるま」【入間】埼玉県南部の市。日光への脇道の宿場町として発展。 * 「ぬるぬる」(副詞)は、なめらかなさま。 * 「そ」(終助)は、副詞「な」と呼応し、動詞の連用形(カ変・サ変の場合は未然形)をな〜その間にはさみ、禁止の意を表す。・・するな。・・してくれるな。 * 「ね」は、人に優しく頼む詞で希望の終助詞。話しかける相手に対し「〜してほしい」という希望の意をあらわす。 3379 東歌,相聞,埼玉県,東京都,女歌,序詞 [題詞] 和我世故乎 安杼可母伊波武 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 登吉奈伎母能乎 [わがせこを あどかもいはむ むざしのの] うけらがはなの ときなきものを ・・・・・・・・・・・
* 「うけら」は、オケラの古名。日当たりのよい山野に自生する。愛しいあの人をどう言い表せばいいのかしら 武蔵野のうけらの花の咲くように 何時と限った時ではなくて いつも思う人ということね ・・・・・・・・・・・ 3380 東歌,相聞,埼玉県,行田,序詞,恋,女歌,民謡 [題詞] 佐吉多萬能 津尓乎流布祢乃 可是乎伊多美 都奈波多由登毛 許登奈多延曽祢 [さきたまの つにをるふねの かぜをいたみ] つなはたゆとも ことなたえそね ・・・・・・・・・・・
埼玉の船着き場に繋いだ船の 綱が強風に負けて切れてもさ 二人の便りは絶えはしないよ ・・・・・・・・・・・ 3381 東歌,相聞,埼玉県,東京都,枕詞,序詞,恋 [題詞] 奈都蘇妣久 宇奈比乎左之弖 等夫登利乃 伊多良武等曽与 阿我之多波倍思 [なつそびく] うなひをさして とぶとりの] いたらむとぞよ あがしたはへし ・・・・・・・・・・・
宇奈比に向かって鳥がいくように 私の心も思いつづけている あなたに会いにいきたいと じっとじっと慕いつづけましょう ・・・・・・・・・・・ 3382 東歌,相聞,千葉県,木更津,恋,悲別 [題詞] 宇麻具多能 祢呂乃佐左葉能 都由思母能 奴礼弖和伎奈婆 汝者故布婆曽毛 [うまぐたの ねろのささはの つゆしもの] ぬれてわきなば なはこふばぞも ・・・・・・・・・・・
* 「ぞ‐も」係助詞「ぞ」+係助詞「も」。古くは「そも」とも。 文中にあって、その付く語を感動を込めて強く示す意を表す。うまぐたの嶺の笹葉が露霜に濡れているように 長旅を露か涙か濡れながら やっとここまでやってきたよ おまえを恋い焦がれて 郷里に残したおまえに惹かれつつ ・・・・・・・・・・・ 3383 東歌,相聞,千葉県,木更津,恋,望郷 [題詞] 宇麻具多能 祢呂尓可久里為 可久太尓毛 久尓乃登保可婆 奈我目保里勢牟 うまぐたの ねろにかくりゐ かくだにも くにのとほかば ながめほりせむ ・・・・・・・・・・・
馬来田の峰にふるさとが隠れたら こんなにも遠くに感じるものか おまえに会いたくてたまらない ・・・・・・・・・・・ 3384 東歌,相聞,千葉県,伝説,恋,民謡 [題詞] 可都思加能 麻末能手兒奈乎 麻許登可聞 和礼尓余須等布 麻末乃弖胡奈乎 かづしかの ままのてごなを まことかも われによすとふ ままのてごなを ・・・・・・・・・・・
葛飾の真間の手児奈が 気があるなんて冗談だろう 私に心を寄せているなどと あの真間の手児奈が ・・・・・・・・・・・ 3385 東歌,相聞,千葉県,葛飾,伝説,市川 [題詞] 可豆思賀能 麻萬能手兒奈我 安里之<可婆> 麻末乃於須比尓 奈美毛登杼呂尓 かづしかの ままのてごなが ありしかば ままのおすひに なみもとどろに ・・・・・・・・・・・
* 「おす‐ひ」【磯辺】「いそべ」の上代東国方言。おしへ。葛飾の真間の手児名がさ そんな可愛い子が今いたならば 真間の磯辺の波が轟くように 男たちが通って来ることだろう ・・・・・・・・・・・ 3386 東歌,相聞,千葉県,葛飾,新嘗,祭り,恋,女歌 [題詞] 尓保杼里能 可豆思加和世乎 尓倍須登毛 曽能可奈之伎乎 刀尓多弖米也母 [にほどりの] かづしかわせを にへすとも そのかなしきを とにたてめやも ・・・・・・・・・・・
* 「新嘗」は、新穂を神にささげる神事。処女が執り行い、家族も中に入れない。とはいえ、訪れた恋人を屋内に入れずにはおかないという歌。 カイツブリのごとく交いつぶる葛飾の 早稲の新穂を神にささぐ新嘗の夜だって あの愛しいお方を 閉め出したりできるものか 閉め出してなるものですか 鳰鳥のごとく 交いつぶりますとも 葛飾の早稲を神に供える新嘗祭の夜は 乙女として心身ともに清浄でなければいけない とはいえ 恋人がきたら 外に立せたままなんてできるかしら あの愛しい人を ・・・・・・・・・・・ * 鳰鳥は「にほ」は、カイツブリ。 3387 東歌,相聞,千葉県,葛飾,市川,恋 [題詞] 安能於登世受 由可牟古馬母我 可豆思加乃 麻末乃都藝波思 夜麻受可欲波牟 あのおとせず ゆかむこまもが かづしかの ままのつぎはし やまずかよはむ ・・・・・・・・・・・
* 「継ぎ橋」は、杭を所々に打ち立て、その上に橋板を継ぎかけた橋。足音をさせずに走る駒がほしいなあ そうすれば葛飾の真間の継橋を通って 止むことなく恋人のもとに行くものを ・・・・・・・・・・・ 3388 東歌,相聞,茨城県,筑波山,女歌,歌垣,勧誘,恋 [題詞] 筑波祢乃 祢呂尓可須美為 須宜可提尓 伊伎豆久伎美乎 為祢弖夜良佐祢 [つくはねの ねろにかすみゐ すぎかてに] いきづくきみを ゐねてやらさね
・・・・・・・・・・・
筑波山の峰の霞が深いので 山道を通りにくそうにしている 生きのよさそうな男だから 連れ帰って霞が晴れまで お休みなさいと誘って 一緒に寝てから帰ってもらおうかな ・・・・・・・・・・・ |
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3389 東歌,相聞,茨城県,筑波山,苦役別離,恋 [題詞] 伊毛我可度 伊夜等保曽吉奴 都久波夜麻 可久礼奴保刀尓 蘇提婆布利弖奈 いもがかど いやとほそきぬ つくはやま かくれぬほとに そではふりてな ・・・・・・・・・・・・
* 常陸の国(今の茨城県)。妻の住む家がだんだん遠ざかる 筑波山が見えている間は 袖を振りつづけよう 妻よさらば 幸せであれよ ・・・・・・・・・・・・ * 下二段活用(隠れ-隠れ-隠る-隠るる-隠るれ-隠れよ) 3390 東歌,相聞,茨城県,筑波山,序詞,恋,別離 [題詞] 筑波祢尓 可加奈久和之能 祢乃未乎可 奈伎和多里南牟 安布登波奈思尓 [つくはねに かかなくわしの] ねのみをか なきわたりなむ あふとはなしに ・・・・・・・・・・・・
* 「かか鳴く」は、けたたましく鳴く。筑波嶺でけたたましく鳴きたてる鷲のように わたしも泣こう 山々にこだまするように もうあの人に逢うことができないのだから ・・・・・・・・・・・・ * 「のみ」 副助詞。種々の語に付き、そのことだけに限定する意をあらわす。「〜だけ」「〜ばかり」。強調の意ともなる。 「のみ-を」と格助詞の上に付いた古形で、平安時代以降は「を-のみ」格助詞の下に付くようになった。 * 「か」は、多くの場合、詠嘆か自問自答の反語的表現となる。体言または活用語の連体形を承ける。 3391 東歌,相聞,茨城県,筑波山,足尾山,序詞,恋 [題詞] 筑波祢尓 曽我比尓美由流 安之保夜麻 安志可流登我毛 左祢見延奈久尓 [つくはねに そがひにみゆる あしほやま] あしかるとがも さねみえなくに ・・・・・・・・・・・・
筑波山を振り向けば見える葦穂山よ その名のような悪いところなど 全く見当たらなかったのに 二人は別れてしまった ・・・・・・・・・・・・ サ3392 東歌,相聞,茨城県,筑波山,序詞,恋 [題詞] 筑波祢乃 伊波毛等杼呂尓 於都流美豆 代尓毛多由良尓 和我於毛波奈久尓 [つくはねの いはもとどろに おつるみづ] よにもたゆらに わがおもはなくに ・・・・・・・・・・・・
* 「筑波嶺」は筑波山の古名。筑波嶺の 滝壺の岩に轟き落ちる水のように 高鳴るあなたを思う気持ちは 決して変わりはしないものを (貴方の便りがなくてわたしは砕けそう) ・・・・・・・・・・・・ * 「の」は、主格・修飾格の格助詞 * 「とどろ」【轟】[副]多く「に」「と」を伴って用いる。音の力強く鳴り響くさまをいう語。 * 「に」は原因を示す格助詞。 * 「おつ」は、高所から落下する。 * 「る」は存続の助動詞「り」の連体形。 * 「代(世)にも」は、あとに打消しの語を伴って、「決して」。 * 「たゆら」たよら。形動ナリ。いいかげんで定まらないさま。気が進まないこと。ゆらり。 * 「に」は、原因を示す格助詞。 * 「吾が思はなくに」私の心が変わったわけではないものを。 * 「なく」は、打消しの助動詞「ず」のク語、法・・ないこと。 * 「に」は、接続助詞。 「なくに」ないのに。ないものを。 3393 東歌,相聞,茨城県,筑波山,女歌,恋 [題詞] 筑波祢乃 乎弖毛許能母尓 毛利敝須恵 波播已毛礼杼母 多麻曽阿比尓家留 つくはねの をてもこのもに もりへすゑ ははいもれども たまぞあひにける ・・・・・・・・・・・・
* 「い」は強調を表す副助詞。筑波嶺のあちらこちらに 見張り人をすえて 母はわたしを見張っていたけれど 私たち二人の魂はいつも逢ってしまいましたね ・・・・・・・・・・・・ 3394 東歌,相聞,茨城県,筑波山,別離,恋 [題詞] 左其呂毛能 乎豆久波祢呂能 夜麻乃佐吉 和須<良>許婆古曽 那乎可家奈波賣 [さごろもの] をづくはねろの やまのさき わすらこばこそ なをかけなはめ ・・・・・・・・・・・・
茜さすさ衣筑波の稜線を どうして忘れえようか いつも汝が名を口の端に掛けている ・・・・・・・・・・・・ 3395 東歌,相聞,茨城県,筑波山,序詞,恋 [題詞] 乎豆久波乃 祢呂尓都久多思 安比太欲波 佐波<太>奈利努乎 萬多祢天武可聞 をづくはの ねろにつくたし あひだよは さはだなりぬを またねてむかも ・・・・・・・・・・・・
小筑波の峰に月が出て 随分と会えない闇夜が続いたけれど また二人で寝ることができるね しばらくお預けだったけど ・・・・・・・・・・・・ 3396 東歌,相聞,茨城県,筑波山,恋,別離 [題詞] 乎都久波乃 之氣吉許能麻欲 多都登利能 目由可汝乎見牟 左祢射良奈久尓 をづくはの しげきこのまよ たつとりの めゆかなをみむ さねざらなくに ・・・・・・・・・・・・
筑波山の茂る木の間を 飛び去る鳥のように おまえは目で見るだけのひと 二人抱き合った仲だったというのに もう他人のようだ ・・・・・・・・・・・・ 3397 東歌,相聞,茨城県,北浦,恋 [題詞] 比多知奈流 奈左可能宇美乃 多麻毛許曽 比氣波多延須礼 阿杼可多延世武 ひたちなる なさかのうみの たまもこそ ひけばたえすれ あどかたえせむ ・・・・・・・・・・・・
* 「浪逆の海」は、霞ヶ浦の一部。常陸の浪逆の海に生える玉藻は 引っ張ると切れてしまう でも二人の慕いあう想いは 途切れて絶えることはありません ・・・・・・・・・・・・ 3398 東歌,相聞,長野県,埴科,伝説,恋 [題詞] 比等未奈乃 許等波多由登毛 波尓思奈能 伊思井乃手兒我 許<登>奈多延曽祢 ひとみなの ことはたゆとも はにしなの いしゐのてごが ことなたえそね ・・・・・・・・・・・・
* 「石井の手児」は伝説上の美女。世の人との交わりが絶えようとも 埴科の石井の手児といわれる 可愛い吾が乙女よ 便りを絶やさないでおくれ ・・・・・・・・・・・・ * 信濃国(今の長野県)。 3399 東歌,相聞,長野県,女歌,木曽路,恋 [題詞] 信濃道者 伊麻能波里美知 可里婆祢尓 安思布麻之<奈牟> 久都波氣和我世 しなぬぢは いまのはりみち かりばねに あしふましなむ くつはけわがせ
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信濃路は今切り開いたばかりの道 樹木や竹の切り株に足を踏みつけないよう 沓をおはきなさい あなた ・・・・・・・・・・・・ |


