ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第十四巻

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3400 東歌,相聞,長野県,千曲川,女歌,恋

[題詞]

信濃奈流  知具麻能河泊能  左射礼思母  伎弥之布美弖婆  多麻等比呂波牟

信濃なる 千曲の川の さざれ石も 君し踏みてば 玉と拾はむ 

しなぬなる ちぐまのかはの さざれしも きみしふみてば たまとひろはむ
・・・・・・・・・・・
信濃にある千曲川のほとりのさざれ石でも

あなたが踏んだのなら宝玉だと思って拾います

あなたのみ魂(たま)が触れた縁のある石として
・・・・・・・・・・・



サ3401 東歌,相聞,長野県,千曲川,別離,女歌,恋

[題詞]

中麻奈尓  宇伎乎流布祢能  許藝弖奈婆  安布許等可多思  家布尓思安良受波

なかまなに 浮き居る船の 漕ぎ出なば 逢ふことかたし 今日にしあらずは 

[なかまなに] うきをるふねの こぎでなば あふことかたし けふにしあらずは
・・・・・・・・・・・
あなたのうるさく出発を告げる舟が

漕ぎ出して行ってしまたら

もう会うことは難しい

絶対に逢わなければ 今日こそ
・・・・・・・・・・・
* 「なかまなに」はどこかの河岸か、入江か。

* 以下<国語篇(その七)>20[14-3401]「中麻奈尓」の転載。>
『「中麻奈尓」を通常の万葉仮名の読み方に従い、
「なかまなに」と訓むこととします。
「なかまなに」は「ナ・カマ・ナニ」
NA-KAMA-NANI
(na=the,belonging to;kama=eager;nani=noisy,ache of the head)
「あの・しきりに・うるさい音を立てている(舟)」 の転訛と解します。』




3402 東歌,相聞,群馬県,碓氷,別離,女歌,恋

[題詞]

比能具礼尓  宇須比乃夜麻乎  古由流日波  勢奈能我素○母  佐夜尓布良思都

日の暮れに 碓氷の山を 越ゆる日は 背なのが袖も さやに振らし 

ひのぐれに うすひのやまを こゆるひは せなのがそでも さやにふらしつ
・・・・・・・・・・・
たそがれ時だったけれど

夫が碓氷峠を超えるときに

私に袖を振る姿がはっきりと見えました

別れを惜しむ姿が心に焼きついています  
・・・・・・・・・・・



3403 東歌,相聞,群馬県,枕詞,多胡,吉井町,序詞,恋

[題詞]

安我古非波  麻左香毛可奈思  久佐麻久良  多胡能伊利野乃  於<久>母可奈思母

吾が恋は まさかも愛し 草枕 多胡の入野の 奥も愛しも 

あがこひは まさかもかなし [くさまくら] たごのいりのの おくもかなしも
・・・・・・・・・・・
私の恋は今更ながらこんなにも深いものか

多胡の入野のように見通せないほど奥深くまで
・・・・・・・・・・・
* 「まさか」 目前・今 (寝所)



3404 東歌,相聞,群馬県,序詞,恋

[題詞]

可美都氣努  安蘇能麻素武良  可伎武太伎  奴礼杼安加奴乎  安杼加安我世牟

上つ毛野 安蘇のま麻むら かき抱き 寝れど飽かぬを あどか吾がせむ 

[かみつけの あそのまそむら かきむだき] ぬれどあかぬを あどかあがせむ
・・・・・・・・・・・
上野の安蘇山の美しい真麻の束を

腕いっぱいにあふれるほど

締め付けて抱きかかえたように

この娘を思い切り抱いて寝ても

まだ飽き足らない

いったいどうしたらいいのだ わたしは
・・・・・・・・・・・



3405 東歌,相聞,群馬県,恋

[題詞]

可美都氣努  乎度能多杼里我  可波治尓毛  兒良波安波奈毛  比等理能未思弖

上つ毛野 乎度の多杼里が 川路にも 子らは逢はなも ひとりのみして 

かみつけの をどのたどりが かはぢにも こらはあはなも ひとりのみして
・・・・・・・・・・・
上野国の乎度の多杼里の川沿いの道で

あの人と会いたい

お供を連れてこないで一人で会いに来てくれないかな


上野の乎度のたどりの道まできて

あの子は人目のないところで誰かと逢っていることだろうな
・・・・・・・・・・・



3405S 東歌,相聞,群馬県,女歌,恋

[題詞]或本歌曰

可美都氣乃  乎野乃多杼里我  安波治尓母  世奈波安波奈母  美流比登奈思尓

上つ毛野 小野の多杼里が あはぢにも 背なは逢はなも 見る人なしに 

かみつけの をののたどりが あはぢにも せなはあはなも みるひとなしに
・・・・・・・・・・・
上野国の乎度の多杼里の逢道で

いい人は逢っているでしょうよ

人目を避けて
・・・・・・・・・・・



サ3406 東歌,相聞,群馬県,高崎,女歌,恋

[題詞]

可美都氣野  左野乃九久多知  乎里波夜志  安礼波麻多牟恵  許登之許受登母

上つ毛野 佐野の茎立ち 折りはやし 吾れは待たむゑ 来とし来ずとも 

かみつけの さののくくたち をりはやし あれはまたむゑ ことしこずとも
・・・・・・・・・・・
上野国佐野のおいしいカブやアブラナは

あなたのお帰りを思いながら

包丁で切ったりして料理してます

でも もうトウが立ってきましたよ

早く帰ってきて下さいな

待っていますね

たとえ今急いで来られなくても

待ってますから
・・・・・・・・・・・
* 「かみつけの」【上毛野】上野(こうずけ)の古称。
* 「くく‐たち」【茎立ち】「くく」は茎の意。カブ、アブラナなどの野菜。また、薹(とう)のたった野菜。
* 「はやし」は、包丁で切ったりして料理すること。
* 「ゑ」は、終助詞。用言・助動詞の終止形に付き、詠嘆・感動をあらわす。
* 「来」は、上古には命令形もある。
* 「とし」は、「はやく」の意もある。
* 「とも」は、接続助詞。動詞・助動詞の終止形に付く。「たとえ〜しなくても」。



3407 東歌,相聞,群馬県,序詞,逢会

[題詞]

可美都氣努  麻具波思麻度尓  安佐日左指  麻伎良波之母奈  安利都追見礼婆

上つ毛野 まぐはしまとに 朝日さし まきらはしもな ありつつ見れば 

[かみつけの まぐはしまとに あさひさし] まきらはしもな ありつつみれば
・・・・・・・・・・・
上野国に待つ美しい朝日が射して 

眩いように 

こうして向かい合っていますと 

あなたが眩しい
・・・・・・・・・・・
* 「まぐはし」は、「ま」は目。「くはし」は精妙な美しさの意。
* 「まきらはし」、まばゆい。




3408 東歌,相聞,群馬県,太田市,金山,うわさ,恋

[題詞]

尓比多夜麻  祢尓波都可奈那  和尓余曽利  波之奈流兒良師  安夜尓可奈思<母>

新田山 嶺にはつかなな 吾に寄そり はしなる子らし あやに愛しも 

にひたやま ねにはつかなな わによそり はしなるこらし あやにかなしも
・・・・・・・・・・・
黄金が出ても

新田山の嶺は独り山でいい

私に寄り添って可愛いと噂されている子よ 

こんなに愛おしいのだから
・・・・・・・・・・・



3409 東歌,相聞,群馬県,伊香保,人目,うわさ,恋

[題詞]

伊香保呂尓  安麻久母伊都藝  可奴麻豆久  比等登於多波布  伊射祢志米刀羅

伊香保ろに 天雲い継ぎ かぬまづく 人とおたはふ いざ寝しめとら 

いかほろに あまくもいつぎ かぬまづく ひととおたはふ いざねしめとら
・・・・・・・・・・・
伊香保の山に入道雲が次々に湧き立ち雷鳴も轟くので

(かぬまづく)人達もさわいで(おたばふ)

その方に気をとられている

好機幸い手を取り合って

さあ寝に行こう
・・・・・・・・・・・
* 「かぬまづく」未詳。



3410 東歌,相聞,群馬県,伊香保,序詞,恋

[題詞]

伊香保呂能  蘇比乃波里波良  祢毛己呂尓  於久乎奈加祢曽  麻左可思余加婆

伊香保ろの 沿ひの榛原 ねもころに 奥をなかねそ まさかしよかば 

[いかほろの そひのはりはら] ねもころに おくをなかねそ まさかしよかば
・・・・・・・・・・・
伊香保の山の麓の榛原の根のように

ねんごろに伸びて行くさ

先々のことなんか気にしないで(な〜そ)

(まさかし)今が良いいから大丈夫だよ
・・・・・・・・・・・
* 「榛原の根(ね)」を「ねんごろに」の「ね」に掛ける。



3411 東歌,相聞,群馬県,多胡,吉井町,序詞,恨,恋,口説き

[題詞]

多胡能祢尓 与西都奈波倍弖 与須礼騰毛 阿尓久夜斯豆之 曽能可<抱>与吉尓

多胡の嶺に 寄せ綱延へて 寄すれども あにくやしづし その顔よきに 

[たごのねに よせつなはへて] よすれども あにくやしづし そのかほよきに
・・・・・・・・・・・
多胡の峰を山寄せ綱で引くように 

いくら気を引いても

憎いことだよ あの娘は

美しい顔で知らぬふり 
・・・・・・・・・・・



3412 東歌,相聞,群馬県,赤城山,序詞,恋

[題詞]

賀美都家野 久路保乃祢呂乃 久受葉我多 可奈師家兒良尓 伊夜射可里久母

上つ毛野 久路保の嶺ろの 葛葉がた 愛しけ子らに いや離り来も 

[かみつけの くろほのねろの くずはがた] かなしけこらに いやざかりくも
・・・・・・・・・・・
旅行けば

上野国の久路保の山葛の蔓のように

伸びて遠のいてしまったよ

愛しい娘の元から

こんなに離れて来てしまったよ
・・・・・・・・・・・



3413 東歌,相聞,群馬県,利根川,序詞,女歌,恋

[題詞]

刀祢河泊乃 可波世毛思良受 多太和多里 奈美尓安布能須 安敝流伎美可母

利根川の 川瀬も知らず 直渡り 波にあふのす 逢へる君かも 

とねがはの かはせもしらず ただわたり なみにあふのす あへるきみかも
・・・・・・・・・・・
利根川の渡る浅瀬も知らず

ただただ川を渡ったら

波にぶつかるように出会った人

それがあなたとの出逢いでした
・・・・・・・・・・・
* 「のす」は「なす」の東訛。



3414 東歌,相聞,群馬県,伊香保,序詞,人目,恋,逢会

[題詞]

伊香保呂能 夜左可能為提尓 多都努自能 安良波路萬代母 佐祢乎佐祢弖婆

伊香保ろの やさかのゐでに 立つ虹の 現はろまでも さ寝をさ寝てば 

[いかほろの やさかのゐでに たつのじの] あらはろまでも さねをさねてば
・・・・・・・・・・・
伊香保の八坂の堰に虹があらわれるように

二人の関係が人に知られるまで

お前と一緒に寝て寝て寝続けたかったなあ  

美しい虹のような

儚かった夢のまた夢か
・・・・・・・・・・・



3415 東歌,相聞,群馬県,伊香保,譬喩,恋,反省

[題詞]

可美都氣努 伊可保乃奴麻尓 宇恵古奈<宜> 可久古非牟等夜 多祢物得米家武

上つ毛野 伊香保の沼に 植ゑ小水葱 かく恋ひむとや 種求めけむ 

かみつけの いかほのぬまに うゑこなぎ かくこひむとや たねもとめけむ
・・・・・・・・・・・
上野の伊香保の沼に植えたこなぎよ

こんなに恋に苦しむために種を植えたのか

可愛い小水葱のような子よ 
・・・・・・・・・・・



3416 東歌,相聞,群馬県,序詞,採草歌,恋

[題詞]

可美都氣努 可保夜我奴麻能 伊波為都良 比可波奴礼都追 安乎奈多要曽祢

上つ毛野 可保夜が沼の いはゐつら 引かばぬれつつ 吾をな絶えそね 

かみつけの かほやがぬまの いはゐつら ひかばぬれつつ あをなたえそね
・・・・・・・・・・・
上野国の可保夜の沼のいはい蔓よ

引き抜いたら水で濡れてしまった

いいさ このままの仲を絶やさないでいこう
・・・・・・・・・・・



3417 東歌,相聞,群馬県,序詞,恋情,作者:柿本人麻呂歌集


[題詞]

可美都氣努 伊奈良能奴麻乃 於保為具左 与曽尓見之欲波 伊麻許曽麻左礼

上つ毛野 伊奈良の沼の 大藺草 外に見しよは 今こそまされ 

[かみつけの いならのぬまの おほゐぐさ] よそにみしよは いまこそまされ
・・・・・・・・・・・
上野の伊奈良の沼に生えている大藺草よ

遠くで見ていた時より

こうして近くで知り合った今の方が

ずうっと恋しく幸せだよ
・・・・・・・・・・・



3418 東歌,相聞,群馬県,佐野,高崎,恋

[題詞]

可美都氣<努> 佐野田能奈倍能 武良奈倍尓 許登波佐太米都 伊麻波伊可尓世母

上つ毛野 佐野田の苗の むら苗に 事は定めつ 今はいかにせも 

かみつけの さのだのなへの むらなへに ことはさだめつ いまはいかにせも
・・・・・・・・・・・
上野国の佐野田の苗の群苗(=占い)で

もう結婚相手は決まっているの

いまさら言い寄っても無駄なのよ
・・・・・・・・・・・
* 「群苗(むらなえ)」 苗代からひと握りの苗を抜き取り、その本数によって吉凶を占う 点苗(うらなえ)=占い



サ3419 東歌,相聞,群馬県,難訓,恋

[題詞]

伊可保世欲 奈可中次下 於毛比度路 久麻許曽之都等 和須礼西奈布母

伊香保せよ 奈可中次下 思ひどろ くまこそしつと 忘れせなふも 

いかほせよ なかなかしけに おもひどろ くまこそしつと わすれせなふも
・・・・・・・・・・・
伊香保にいる吾が愛しの君よ

あなたはこの頃わたしの妹に

大変思いをかけていなさるとか

私と何度も一緒に寝たことを

決して忘れないでよ
・・・・・・・・・・・
* 以下<国語篇(その七)>より。21[14-3419]「奈可中次下」の転載。http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo07.htm#1[1-1]

『「奈可中次下」を通常の万葉仮名の読み方に従い、「なかちうしげ」と訓むこととします(「中」は「なか」と訓ずる例が多いのですが、「奈可」が前にありますので異音表記をしたものと考え、「ちう」と訓むこととしました。)

「いかほせよ」    
「イカ・ハウ・テイ・イオ」
「(上野の国の)男らしく・背が高く・頑丈な・戦士(が)」
(「ハウ」のAU音がO音に変化して「ホ」と、「テイ」のEI音がE音に変化して「テ」から「セ」と、「イオ」が「ヨ」となった)

「なかちうしげ」
「ナカ・チウ・チ(ン)ゲイ」
「身体を揺らして・今にも・動き出そう(出発しょう)として」
(「チ(ン)ゲイ」のNG音がG音に変化して「チゲイ」から「シゲ」となった)

「おもひどろ」
「オ・モヒ・トロ」
「(妻を)いつくしむ・感情(心。思い)を・外へ出して」

「くまこそしつと」
「クママ・コト・チ・ツトフ」
「低い声を・出して・(妻への愛を)表現しょうと・願って」
(「クママ」の反復語尾が脱落して「クマ」と、「ツトフ」のH音が脱落して「ツト」となった)

「わすれせなふも」
「ワ・ツレフ・テ(ン)ガ・フ・マウ」
「露わに・(妻を)じっと見つめ・のど仏を・膨らまして・留めた(言おうとして言えなかった)」
(「ツレフ」のH音が脱落して「ツレ」から「スレ」と、「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)
の転訛と解します。』

<サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/28944615.html
<項>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/folder/1039689.html?m=lc&p=33




3420 東歌,相聞,群馬県,高崎,恋,女歌,序詞

[題詞]

可美都氣努 佐野乃布奈波之 登里波奈之 於也波左久礼騰 和波左可流賀倍

上つ毛野 佐野の舟橋 取り離し 親は放くれど 吾は離るがへ 

[かみつけの さののふなはし とりはなし] おやはさくれど わはさかるがへ
・・・・・・・・・・・
上野佐野の舟橋を取り放すように 

親は私たちの間を遠ざけるけれど  

あなたと決して別れたりなんかしないからね
・・・・・・・・・・・
* 「舟橋」 水上に多くの舟を浮かべて、その上に板を張った橋。



3421 東歌,相聞,群馬県,伊香保,恋

[題詞]

伊香保祢尓 可未奈那里曽祢 和我倍尓波 由恵波奈家杼母 兒良尓与里弖曽

伊香保嶺に 雷な鳴りそね 吾が上には 故はなけども 子らによりてぞ 

いかほねに かみななりそね わがへには ゆゑはなけども こらによりてぞ
・・・・・・・・・・
伊香保の嶺で雷よ 鳴るな 

わたしは気にならないが

可愛いあの子たちが怖がるでわないか
・・・・・・・・・・
* <以下転載記事>
<ブログ[H.G.Nicol]さんの「東歌と上野国・地震とかみなりの榛名山] より転載>http://blogs.yahoo.co.jp/kawakatu_1205/54054280.html?type=folderlist

「毛」は産物である。
それが神饌になって「みけ」となる。
今、二毛作、三毛作などという言葉が西日本など温かいところで行われているが、この「毛」も産物のことである。年に二回作物が取れるから二毛作である。
なぜ東毛にはそういう集中地帯がなにのだろうか?
赤城山からの水が湧く東上野地域には古墳集中地帯がなく散漫としている。
一番問題だったのは活火山の榛名山の存在だろう。それは西毛が遠くの浅間山の噴火による火山灰で悩まされていたよりも頻繁にあったのかも知れない。
 関東一円が、将門時代など、非常に開墾に苦労した、そのごろた石のほとんどがこうした火山弾であった。古墳時代と六世紀の二回、榛名山は噴火している。
万葉集で八ヶ所に出てくる西毛地名がある。
 伊香保である。
榛名山の麓に伊香保神社がある。

 伊香保峯に 雷(かみ)な鳴りそね わが上には 故は無けれど 児らによりてそ

 伊香保峯とは榛名山である。
雷とは、そのままいなづまととってもよかろうが、火山の鳴動かもしれない。いずれにせよ古代人には榛名山は雷電の神がます山なのである。となると鹿島や阿蘇のなまず信仰をもたらすような人々も、古墳造営で入っていたかもしれない。阿蘇氏や多氏である。
 思うのは、茨城の鹿島神宮などになまず信仰があることなどは、果たして今の地震学者の脳裏に少しでもあるだろうか?民間信仰がそれをタケミカヅチに相当させたという事実は、これはもうそこが地震の巣窟だったからではないのか?



サ3422 東歌,相聞,群馬県,伊香保,恋

[題詞]

伊可保可是 布久日布加奴日 安里登伊倍杼 安我古非能未思 等伎奈可里家利

伊香保風 吹く日吹かぬ日 ありと言へど 吾が恋のみし 時なかりけり 

いかほかぜ ふくひふかぬひ ありといへど あがこひのみし ときなかりけり
・・・・・・・・・・
伊香保おろしは

吹く日も吹かぬ日もあるというが

吾が恋の想いだけは

絶えることがないなあ
・・・・・・・・・・
* 「伊香保風」は、群馬榛名山南東山地。
* 「吹か」は、カ行四段活用動詞「吹く」の未然形。
* 「ぬ」打消の助動詞「ず」の連体形。
* 「日」は名詞。
* 「あり」は、ラ行変格活用動詞の終止形。
* 「と」は格助詞
* 「言へ」は、ハ行四段活用動詞「言ふ」の已然形。
* 「ど」は、逆接の接続助詞。
* 「のみ」は限定の副助詞で、「〜だけ。〜ばかり」。
* 「し」は強調の副助詞。
* 「なかり」は、形容詞「なし」の連用形補助活用。
* 「けり」は、詠嘆の助動詞。




3423 東歌,相聞,群馬県,伊香保,序詞,恋

[題詞]

可美都氣努 伊可抱乃祢呂尓 布路与伎能 遊吉須宜可提奴 伊毛賀伊敝乃安多里

上つ毛野 伊香保の嶺ろに 降ろ雪の 行き過ぎかてぬ 妹が家のあたり 

[かみつけの いかほのねろに ふろよきの] ゆきすぎかてぬ いもがいへのあたり
・・・・・・・・・・
上野の伊香保の山に降る雪のように

ゆき過ぎがたい恋妻の家辺り
・・・・・・・・・・



3424 東歌,相聞,栃木県,太田和山,序詞,恋

[題詞]

之母都家野 美可母乃夜麻能 許奈良能須 麻具波思兒呂波 多賀家可母多牟

下つ毛野 みかもの山の こ楢のす まぐはし子ろは 誰が笥か持たむ 

[しもつけの みかものやまの こならのす] まぐはしころは たがけかもたむ
・・・・・・・・・・
下野のみかも山に生える小楢のような

清らかなあの娘は

誰の食事を世話をする妻になるのだろう
・・・・・・・・・・



3425 東歌,相聞,栃木県,恋,口説き,求婚

[題詞]

志母都家<努> 安素乃河泊良欲 伊之布<麻>受 蘇良由登伎奴与 奈我己許呂能礼

下つ毛野 阿蘇の川原よ 石踏まず 空ゆと来ぬよ 汝が心告れ 

しもつけの あそのかはらよ いしふまず そらゆときぬよ ながこころのれ
・・・・・・・・・・
下野国の安蘇の河原のあの石さえ越えて

宙を飛ぶように会いに来たよ

さあ お前の本心を聞かせておくれ
・・・・・・・・・・



3426 東歌,相聞,福島県,東北地方,会津,磐梯山,悲別,恋

[題詞]

安比豆祢能 久尓乎佐杼抱美 安波奈波婆 斯努比尓勢毛等 比毛牟須婆佐祢

会津嶺の 国をさ遠み 逢はなはば 偲ひにせもと 紐結ばさね 

あひづねの くにをさどほみ あはなはば しのひにせもと ひもむすばさね
・・・・・・・・・・
会津嶺の聳える国から

遠く離れねばならなっくなった

だから愛しい君とも逢えなくなれば

せめてもの偲ぶよすがにしよう 

この紐をしっかり結んでくれ
・・・・・・・・・・



3427 東歌,相聞,福島県,東北地方,筑紫,福岡,遊行女婦,浮気,恋,防人

[題詞]

筑紫奈留 尓抱布兒由恵尓 美知能久乃 可刀利乎登女乃 由比思比毛等久

筑紫なる にほふ子ゆゑに 陸奥の 可刀利娘子の 結ひし紐解く 

つくしなる にほふこゆゑに みちのくの かとりをとめの ゆひしひもとく
・・・・・・・・・・
筑紫のちょっといい女に目がくらみ
陸奥の可刀利娘子が固く結び合わせた
あの衣の紐を解いてしまうとはねえ
・・・・・・・・・・
* 「可刀利娘子」中島裕子著から抜粋転載。
http://kitagawa.la.coocan.jp/man/3427.html
<東歌で陸奥国歌として載せられているからには、陸奥で詠まれたものとしてこだわってみたいと思う。この佐原市は位置的にいって陸奥とはかなり離れている。ではなぜ陸奥のカトリなのか? と考えると、当時の人々の交流や交易にたどりつくような気がする。つまり、織が下総で普及し、それが陸奥まで広がり、そのうちに織物だけでなく織る術も伝わった。すると、可刀利娘子とは「織の技術を身につけた娘」と解釈でき、「陸奥のカトリ」が地名である必要はなくなるのである。>(中略)
* <旅人>著。
♪筑紫なる にほふ子ゆえに 奥陸(みちのく)の かとり娘子(をとめ)の 結ひし紐とく (万葉集・巻14・3427)
歴史公園の説明版にーー石に陶版(たぶん有田焼)が埋め込んであるーーおしゃれです。
「作者は辺境の防備のために九州に遣わされた防人である。
天智2年百済の白村江の戦で唐と新羅の連合軍に大敗した日本は、4年から6年交代で東国の若者を 防人として外敵に備えさせた。
中には土地の娘と結婚して住みつく者もいたと言う。
筑紫の美しい娘ゆえに、故郷の愛しい女が結んでくれた紐を解いてしまったという意。」とある。
この歌は、『童蒙抄』以来、陸奥から筑紫に着任した防人の作とされている。
でも、陸奥から防人を出した形跡はない。
筑紫に赴いた陸奥男の詠んだ歌というのが、通説になっている中で、『代匠記』だけが、残された女の「恨テヨメル」歌と見ている。
この歌は、巻20の防人の歌でなく、巻14の東歌の中にあった。
歌の意は、(筑紫なんぞの色よい女に暗まされて、陸奥の可刀利娘子、そう、この縑娘子さまが、固く結び合わせてあげた紐、その紐を解くんだとさ。何とまあ。)
可刀利娘子は、「泊瀬娘子」や「菟原娘子」のように、可刀利(かとり)は、地名と思われる。
「可刀利」に「縑」が、懸けてある。
縑は、「固織り」の約で、目を細く固く織った薄い絹。
「縑」を産する地だから、そこを「可刀利」と称した。陸奥のどこかは、不明。
この歌は、もともと、可刀利娘子たちが、縑を織る作業の中で唱われた労働歌らしい。
東の最果ての国「陸奥」に対して、西の最果ての国「筑紫」を意識している。
東は、後でひらかれた土地で、西は、先にひらかれた土地だった。
『私注』に、「陸奥と筑紫の文化の違いから、筑紫処女のほうが、いくらか美しく眼に映るのであったかも知れぬ」とある。
・・蘇我蝦夷は、東国の異国情緒たっぷりの美女を妻にしてるけどなあ・・・
///
縑の技術も、中国か韓国から、筑紫へと、まず渡来しただろうし、可刀利にも、筑紫から、伎人が指導者として、きていたかも。
その伎人が筑紫には、美女が多かったよ〜と吹聴したのかも。
事もあろうに、このカトリサマの結んだ下紐を解いて、遠くも遠く、西の最果ての国の女と出来たとはと、男の貪欲、素早さを皮肉って、歌い笑った。
労働歌で、娘たちは、自虐の笑い、そして、不届きな男をからかい戒め歌い、作業能率をあげたらしい。(了)




3428 東歌,相聞,福島県,東北地方,二本松市,安達太良山,序詞,恋

[題詞]

安太多良乃 祢尓布須思之能 安里都々毛 安礼波伊多良牟 祢度奈佐利曽祢

安達太良の 嶺に伏す鹿猪の ありつつも 吾れは至らむ 寝処な去りそね 

[あだたらの ねにふすししの] ありつつも あれはいたらむ [ねどなさりそね]
・・・・・・・・・・
安達太良山の嶺に伏す鹿や猪のように

同じ寝床に居て待っていてほしい

わたしが通うおなじねぐらに去らずいてくれ 
・・・・・・・・・・



譬喩歌



3429 東歌,譬喩歌,静岡県,浜名湖,恨,恋

[題詞]譬喩歌

等保都安布美 伊奈佐保曽江乃 水乎都久思 安礼乎多能米弖 安佐麻之物能乎

遠江 引佐細江の みをつくし 吾れを頼めて あさましものを 

とほつあふみ いなさほそえの みをつくし あれをたのめて あさましものを
・・・・・・・・・・
遠江の引佐細江の澪標のように

私を頼みに思わせて

ほんとうはただの浮気心だったのね

あさましい
・・・・・・・・・・



3430 東歌,譬喩歌,静岡県,後朝,恋

[題詞]

斯太能宇良乎 阿佐許求布祢波 与志奈之尓 許求良米可母与 <余>志許佐流良米

志太の浦を 朝漕ぐ船は よしなしに 漕ぐらめかもよ よしこさるらめ 

しだのうらを あさこぐふねは よしなしに こぐらめかもよ よしこさるらめ
・・・・・・・・・・
志太の浦を早朝から漕ぎ出す舟は

理由もなくあんなに急いだりはしない

多分女の元からの朝帰りだよ
・・・・・・・・・・



3431 東歌,譬喩歌,神奈川県,恋

[題詞]

阿之我里乃 安伎奈乃夜麻尓 比古布祢乃 斯利比可志母與 許己波故賀多尓

足柄の 安伎奈の山に 引こ船の 後引かしもよ ここばこがたに 

あしがりの あきなのやまに ひこふねの しりひかしもよ ここばこがたに
・・・・・・・・・・・・
足柄の安伎奈山の樹で造った舟が

下ろされしり引かれるように

あの子の後ろ姿に惹かれて立ち去り難い
・・・・・・・・・・・・



3432 東歌,譬喩歌,神奈川県,恋

[題詞]

阿之賀利乃 和乎可鶏夜麻能 可頭乃木能 和乎可豆佐祢母 可豆佐可受等母

足柄の わを可鶏山の かづの木の 吾をかづさねも 門さかずとも 

あしがりの わをかけやまの かづのきの わをかづさねも かづさかずとも
・・・・・・・・・・・・
足柄のわを可鶏【私を(気に)掛ける】山ではないけれど

気を掛けるという可鶏山の

かづの木の名のように

わたしをかづ(誘)してください

かづ(門)を父母が閉めていても
・・・・・・・・・・・・



3433 東歌,譬喩歌,神奈川県,鎌倉,掛詞,恋

[題詞]

多伎木許流 可麻久良夜麻能 許太流木乎 麻都等奈我伊波婆 古非都追夜安良牟

薪伐る 鎌倉山の 木垂る木を 松と汝が言はば 恋ひつつやあらむ 

たきぎこる かまくらやまの こだるきを まつとながいはば こひつつやあらむ
・・・・・・・・・・・・
たきぎを切り取る鎌倉山の

木が育って枝が垂れた木を

きみが松だと言ってくれれば

ただ恋い焦がれてばかりはおらぬものを
・・・・・・・・・・・・



3434 東歌,譬喩歌,群馬県,恋

[題詞]

可美都家野 安蘇夜麻都豆良 野乎比呂美 波比尓思物能乎 安是加多延世武

上つ毛野 阿蘇山つづら 野を広み 延ひにしものを あぜか絶えせむ 

かみつけの あそやまつづら のをひろみ はひにしものを あぜかたえせむ
・・・・・・・・・・・・
上野国の阿蘇山の蔦が

野原一面広がって伸びているように

焦がれる思いは拡がるばかり

あなたへの思いがどうして絶えることがありましょうか
・・・・・・・・・・・・



3435 東歌,譬喩歌,群馬県,伊香保,恋

[題詞]

伊可保呂乃 蘇比乃波里波良 和我吉奴尓 都伎与良之母与 比多敝登於毛敝婆

伊香保ろの 沿ひの榛原 吾が衣に 着きよらしもよ ひたへと思へば 

いかほろの そひのはりはら わがきぬに つきよらしもよ ひたへとおもへば
・・・・・・・・・・・・
伊香保の山添いの榛原の

その榛は私の一重の衣によく染まる

わが衣を染めるのにふさわしい 

わが心に裏がないように   
・・・・・・・・・・・・
* 「ひたへ」は一重の訛。一途の思いを掛ける。



3436 東歌,譬喩歌,群馬県,太田市,金山,恋

[題詞]

志良登保布 乎尓比多夜麻乃 毛流夜麻乃 宇良賀礼勢奈<那> 登許波尓毛我母

しらとほふ 小新田山の 守る山の うら枯れせなな 常葉にもがも 

[しらとほふ] をにひたやまの もるやまの うらがれせなな とこはにもがも
・・・・・・・・・・・・
小新田山が守るのは常緑の姿

愛し続けて欲しい

新田山が守る山の

枯れることのない緑のように
・・・・・・・・・・・・



3437 東歌,譬喩歌,福島県,東北地方,二本松市,安達太良山,女歌,浮気,恋

[題詞]

美知乃久能 安太多良末由美 波自伎於伎弖 西良思馬伎那婆 都良波可馬可毛

陸奥の 安達太良真弓 はじき置きて 反らしめきなば 弦はかめかも 

みちのくの あだたらまゆみ はじきおきて せらしめきなば つらはかめかも
・・・・・・・・・・・・
陸奥の安達太良の弓を放り離しにしておいて

反らせたままの弓に弦を掛けても

多分もう使えませんでしょう

浮気に飽きて今更わたしと復縁ようなんて

もう気持ちが反ってしまってます
・・・・・・・・・・・・



雜歌




3438 東歌,雑歌,静岡県,狩り讃美

[題詞]雜歌

都武賀野尓 須受我於等伎許由 可牟思太能 等能乃奈可知師 登我里須良思母

都武賀野に 鈴が音聞こゆ 可牟思太の 殿のなかちし 鳥猟すらしも 

つむがのに すずがおときこゆ かむしだの とののなかちし とがりすらしも
・・・・・・・・・・・・
都武賀野に

鈴の音が聞こえる

可牟思太殿の次男が

タカ狩りをしているのだろう
・・・・・・・・・・・・



3438S 東歌,雑歌,異伝,狩り讃美

[題詞]或本歌曰 又曰

美都我野尓 和久胡思

美都我野に  若子し 

みつがのに  わくごし
・・・・・・・・・・・・
美都我野に 少年が
・・・・・・・・・・・・



サ3439 東歌,雑歌,宿駅,宴席,歌謡

[題詞]

須受我祢乃 波由馬宇馬夜能 都追美井乃 美都乎多麻倍奈 伊毛我多太手欲

鈴が音の 早馬駅家の 堤井の 水を給へな 妹が直手よ 

[すずがねの] はゆまうまやの つつみゐの みづをたまへな いもがただてよ
・・・・・・・・・・・・
鈴の音を響かせる吾が官馬が宿場に到着した 

さて早速早馬に堤井の水をいただきたいのだが

娘さん あなたの手から直接に飲ませて欲しい
・・・・・・・・・・・・
* 「駅鈴」は、官命で伝令の使者に、中央官庁と地方国衙(こくが)から下付された鈴。
* 「駅家(えきか)」 人馬を用意した
* 「駅使」は、駅鈴を朝廷から下付された公用の使者。
* 「宿舎」は、食糧等を提供する施設。
* 「堤井」は、周りを堰で囲み、湧き水などを溜めた水汲み場。




3440 東歌,雑歌,戯笑,宴席,異伝,歌謡

[題詞]

許乃河泊尓 安佐菜安良布兒 奈礼毛安礼毛 余知乎曽母弖流 伊R兒多婆里尓

この川に 朝菜洗ふ子 汝れも吾れも よちをぞ持てる いで子給りに 

[一云 麻之毛安礼母]  [一云 ましも吾れも] [ましもあれも]

このかはに あさなあらふこ なれもあれも よちをぞもてる いでこたばりに
・・・・・・・・・・・・
奥さんよ この川で朝菜を洗っているお方よ

あなたも私も同じ年ごろの子を持っていますね

さて そのあなたの児を私の児に賜り願いたいものです

好き合っているので そして私もあなたに
・・・・・・・・・・・・
* 「よち」 同年代の子。


3441 東歌,雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,異伝,恋,望郷

[題詞]

麻等保久能 久毛為尓見由流 伊毛我敝尓 伊都可伊多良武 安由賣安我古麻

ま遠くの 雲居に見ゆる 妹が家に いつか至らむ 歩め吾が駒 

まとほくの くもゐにみゆる いもがへに いつかいたらむ あゆめあがこま
・・・・・・・・・・・
はるか遠くの雲の向こうに見える

妻が待つ家に

いつ到着するのか

早く進め わが馬よ 
・・・・・・・・・・・



3441S 東歌,雑歌,異伝,作者:柿本人麻呂歌集,恋,望郷

[題詞]柿本朝臣人麻呂歌集曰 又曰

等保久之弖 安由賣久路古<麻>

遠くして 歩め黒駒 

とほくして  あゆめくろこま
・・・・・・・・・・・
遠くにある 歩け黒毛の馬よ
・・・・・・・・・・・



3442 東歌,雑歌,静岡県,蒲原町,羈旅,難渋

[題詞]

安豆麻治乃 手兒乃欲妣左賀 古要我祢弖 夜麻尓可祢牟毛 夜杼里波奈之尓

東道の 手児の呼坂 越えがねて 山にか寝むも 宿りはなしに 

あづまぢの てごのよびさか こえがねて やまにかねむも やどりはなしに
・・・・・・・・・・・
あずま路の手児の呼坂よ

手児の呼ぶ声に引かれれば

若い女という名の峠は越えがたい

手児の呼ぶ声に寝もやらず

宿もない山坂で寝るしかない
・・・・・・・・・・・



3443 東歌,雑歌,望郷

[題詞]

宇良毛奈久 和我由久美知尓 安乎夜宜乃 波里弖多弖礼波 物能毛比弖都母

うらもなく 吾が行く道に 青柳の 張りて立てれば 物思ひ出つも 

うらもなく わがゆくみちに [あをやぎの] はりてたてれば ものもひでつも
・・・・・・・・・・・
何も考えず道を歩いていると

青柳が枝を張って立っているのを見れば

柳葉の眉の妻を思い出す
・・・・・・・・・・・
 


サ3444 東歌,雑歌,茨城県,真壁郡,野遊び,掛け合い,女歌,歌垣,歌謡,恋

[題詞]

伎波都久乃 乎加能久君美良 和礼都賣杼 故尓毛<美>多奈布 西奈等都麻佐祢

伎波都久の 岡のくくみら 吾れ摘めど 籠にも満たなふ 背なと摘まさね 

きはつくの をかのくくみら われつめど こにもみたなふ せなとつまさね
・・・・・・・・・・・
きはつくの丘の茎韮を

わたしがいくら摘んでも

なかなか籠一杯にはならないのよ


それならさあ

あんたのいい人と

一緒に摘めばいいじゃない

二人で籠に

山のように押し込みなさいよ ね

アー ソーダソーダ
・・・・・・・・・・・
* 「伎波都久の岡」は未詳。茨城県真壁郡付近とも。
* 「くくみら」【茎韮】「くく」は茎、「みら」はニラの古語。ニラの花茎が伸びたもの。
* 「摘め」は「摘む」の已然形。
* 「ど」(接助)は、逆接の確定条件。・・けれども。
* 「こ」は、籠。
* 「にもみたなふ(尓毛<美>多奈布)」、「なふ」は打ち消しの助動詞「なふ」の終止形。動詞の未然形に接続。ものたらない。一杯にならない。
* 「さね」は、なさいな。尊敬親愛の助動詞「す」の未然形「さ」に、相手に誂え希望の意を表す終助詞「ね」のついたもの。




3445 東歌,雑歌,女歌,恋

[題詞]

美奈刀<能> 安之我奈可那流 多麻古須氣 可利己和我西古 等許乃敝太思尓

港の 葦が中なる 玉小菅 刈り来吾が背子 床の隔しに 

みなとの あしがなかなる たまこすげ かりこわがせこ とこのへだしに
・・・・・・・・・・・
港に生い茂る葦の中から

美しい菅草を刈取ってきてくださいな

床の下に敷きましょう
・・・・・・・・・・・
たま‐こすげ【玉小菅】-〔名〕(「たま」は美称)美しい菅(水辺の草)



3446 東歌,雑歌,うわさ,譬喩,恋,遊行女婦

[題詞]

伊毛奈呂我 都可布河泊豆乃 佐<左良乎疑> 安志等比<登>其等 加多理与良斯毛

妹なろが 使ふ川津の ささら荻 葦と人言 語りよらしも 

いもなろが つかふかはづの ささらをぎ あしとひとごと かたりよらしも
・・・・・・・・・・・
あの娘が使っている川端の

物洗い場に生えている荻を

誰かがあし(葦)だと悪く言っても

近寄りたくて好ましいことには

かわりません
・・・・・・・・・・・
* 「川津」は、川端の物洗い場。



3447 東歌,雑歌,静岡県,浮島沼,枕詞,新道,譬喩

[題詞]

久佐可氣乃 安努奈由可武等 波里之美知 阿努波由加受弖 阿良久佐太知奴

草蔭の 安努な行かむと 墾りし道 安努は行かずて 荒草立ちぬ 

[くさかげの] あのなゆかむと はりしみち あのはゆかずて あらくさだちぬ
・・・・・・・・・・・
安努に行く新たに造る道だったが

途中で工事が中断し

安努には届きそうもない

雑草が生い茂って荒れてしまってるよ
・・・・・・・・・・・




サ3448 東歌,雑歌,静岡県,引佐郡,三日ヶ町,尾奈山,長久寿歌

[題詞]

波奈治良布 己能牟可都乎乃 乎那能乎能 比自尓都久麻提 伎美我与母賀母

はなぢらふ この向つ峰の 乎那の峰の ひじにつくまで 君が代もがも 

はなぢらふ このむかつをの をなのをの ひじにつくまで きみがよもがも
・・・・・・・・・・・
桜花がしきりに散る向かいの乎那の

木の生えていない峯の頂上が

時を経て平らになり

海辺の州となって水につかるまで

君が世は長く久しく栄えませ
・・・・・・・・・・・
* 「はなぢらふ」;
* 「ちらふ」は、(自ハ四)で、動詞「散る」の未然形に反復・継続の助動詞「ふ」の付いたもの、しきりに散る。
* 「おな」[をな]【乎那】静岡県南西部、三ケ日町上尾奈の地。古代、尾奈御厨(みくりやの略)があった。
* 「み‐くりや」は、神社の境内にあって、神饌(しんせん)を調理する建物。特に、伊勢神宮・賀茂神社についていう。御供所(ごくうしょ)。神饌の料を献納するために設けられた所領。
* 「ひじ」は、海辺の州。
* 「つく」(自カ四)ぴたっと合う。
* 「まで」 副助詞。体言または活用語の連体形を承け、それが事態や動作の辿り着く到達点であることを示す。時についても場所についても言う。
* 「もがも」は、願望の終助詞。「もが」に詠嘆の助詞「も」が付いたもの。平安時代には「もがな」に転じた。





3449 東歌,雑歌,枕詞,茨城県,古川市,掛詞

[題詞]

思路多倍乃 許呂母能素R乎 麻久良我欲 安麻許伎久見由 奈美多都奈由米

白栲の 衣の袖を 麻久良我よ 海人漕ぎ来見ゆ 波立つなゆめ 

[しろたへの] ころものそでを まくらがよ あまこぎくみゆ なみたつなゆめ
・・・・・・・・・・・
わたしの白栲の衣の袖を枕にするの

麻久良我よ ほら見えるでしょう

あの人が一生懸命漕ぎながら来るのが

波を立てて邪魔しないでね
・・・・・・・・・・・
* 「麻久良我」は、古地名。ーの許我・・(茨城県)
* 「よ」は、上代語。動作・作用の時間的・空間的起点を表す。



3450 東歌,雑歌,宴席,戯笑

[題詞]

乎久佐乎等 乎具佐受家乎等 斯抱布祢乃 那良敝弖美礼婆 乎具佐可<知>馬利

乎久佐男と 乎具佐受家男と 潮舟の 並べて見れば 乎具佐勝ちめり 

をくさをと をぐさずけをと [しほぶねの] ならべてみれば をぐさかちめり
・・・・・・・・・・・
乎久佐のおやっさんと

乎具佐の若い衆

彼らを並べてみれば

乎具佐のおやっさんの勝ちだ
・・・・・・・・・・・

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