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3451 東歌,雑歌,女歌,宴席 [題詞] 左奈都良能 乎可尓安波麻伎 可奈之伎我 <古>麻波多具等毛 和波素登毛波自 さなつらの をかにあはまき かなしきが こまはたぐとも わはそともはじ ・・・・・・・・・・
* [左奈都良]が「酒列」であれば、恋人または夫の馬がただの馬ではなく、「ヤンサマチ競馬」に参加するための訓練中のものであったという解釈もできる。左奈都良の丘に粟を蒔いて 恋人の馬がそれを食べても 私はそれを外へと追うことはすまい ・・・・・・・・・・ 「左奈都良」は「さかつら=酒列」だとする学者もいる。加茂真渕、釈超空らである。 「酒列」は「ヤンサマチ競馬」のゴールの地名である。古来四月九日の『まつり』の日に旧地方制四十八ヶ村の各鎮守の神輿がそれぞれの氏子民によって、磯崎浦ヘ『やんさこら』の掛け声も勇ましく繰り出したことに由来すると言われる。 この祭りには、神輿が御渡りする『浜降り(磯出祭礼)』の神事と、村々の名馬が村松大神宮から酒列磯前神社までの二里八町を競走し、豊年満作を祈った神事『競馬祭』の二つの神事があります。 3452東歌,雑歌,野焼き [題詞] 於毛思路伎 野乎婆奈夜吉曽 布流久左尓 仁比久佐麻自利 於非波於布流我尓 おもしろき のをばなやきそ ふるくさに にひくさまじり おひはおふるがに ・・・・・・・・・・
趣き深い この野を焼きなさるな ほら 古草の中から 新草が生えてきているでしょう ・・・・・・・・・・ * 「おも‐しろ」おもしろ・ し[ク]は、目の前が明るくなる感じをいった語。興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。 * 「き」は、動作・状態が完了して、その結果が存在している意。 * 「な〜そ」は、禁止(〜)。 * 「にい‐くさ〔にひ‐〕」【新草】 春先に芽を出した草。若草。 * 「がに」は、理由・目的の接続助詞。動詞・助動詞の連体形に付く。 〜するだろうから、〜するように。 * 普通文末に用いる。「がに」は「がね」の上代東国方言で、平安時代には京でも用いられた。 3453 東歌,雑歌,枕詞,望郷 [題詞] 可是<能>等能 登抱吉和伎母賀 吉西斯伎奴 多母登乃久太利 麻欲比伎尓家利 [かぜのとの] とほきわぎもが きせしきぬ たもとのくだり まよひきにけり ・・・・・・・・・・
遠い郷里に残した妻が 最後に着せてくれた衣の 袂のほうが だんだんとほつれてきたよ ・・・・・・・・・・ 3454 東歌,雑歌,恋 [題詞] 尓波尓多都 安佐提古夫須麻 許余比太尓 都麻余之許西祢 安佐提古夫須麻 [にはにたつ] あさでこぶすま こよひだに つまよしこせね あさでこぶすま ・・・・・・・・・・
庭に植えた麻でつくった麻手小衾よ 今夜だけでも愛しいあの人を呼んでくれないか ね 呼び寄せてよ 麻手小衾 ・・・・・・・・・・ * 「ふすま」衾。 布などで長方形に作り、寝るときにからだに掛ける夜具。綿を入れるのを普通とするが、袖や襟を加えたものもある。現在の掛け布団にあたる。 相聞 3455 東歌,相聞,女歌,恋 [題詞]相聞 古非思家婆 伎麻世和我勢古 可伎都楊疑 宇礼都美可良思 和礼多知麻多牟 こひしけば きませわがせこ かきつやぎ うれつみからし われたちまたむ ・・・・・・・・・・
恋しいとおっしゃるなら 会いに来てくださいな 愛しいあなた 来る 来ない 垣根の柳の若芽を摘み枯らすまで 私は立ち続けてお待ちしています ・・・・・・・・・・ * 垣つ柳=垣根の柳。 * 男に答えた形をとりながら、切実に待つ女心。 3456 東歌,相聞,うわさ,恋,女歌 [題詞] 宇都世美能 夜蘇許登乃敝波 思氣久等母 安良蘇比可祢弖 安乎許登奈須那 [うつせみの] やそことのへは しげくとも あらそひかねて あをことなすな ・・・・・・・・・・
世間でどんなにうるさく噂されても 根負けして私のことを云ってはいけません ・・・・・・・・・・ 3457 東歌,相聞,恋愛,別離,女歌 [題詞] 宇知日佐須 美夜能和我世波 夜麻<登>女乃 比射麻久其登尓 安乎和須良須奈 [うちひさす] みやのわがせは やまとめの ひざまくごとに あをわすらすな ・・・・・・・・・・
宮廷に出仕する夫が 大和の女の膝を枕にすることも でも 里の妻を忘れないでください ・・・・・・・・・・ 3458 東歌,相聞,恋,後朝,女歌 [題詞] 奈勢能古夜 等里乃乎加恥志 奈可太乎礼 安乎祢思奈久与 伊久豆君麻弖尓 なせのこや とりのをかちし なかだをれ あをねしなくよ いくづくまでに ・・・・・・・・・・
愛しいあなたよ 等里の岡道が途中で折れ曲っているから お姿が見えなくなる その時には 私は声をあげて泣いています 息が苦しくなるほどに ・・・・・・・・・・ * 「汝」対象の人代名詞。おまえ、なんじ。なれ。 * 「せのこ」の「せ」は、女性から男性に親しんで呼ぶ語。「せの」は、敬称、深い情愛込める。「こ」は、人を親しんでいう語。 * 「や」は、体言に付いて呼びかけの対象であることを示す。 * 「し」は、副助詞。種々の語を承け、それを強く指示して強調する。 * 「なかだをれ」は、道が折れ曲がって、そのまま行けば道の壁にぶつかるから。 * 「等里の岡道」未詳。 * 「息づく」嗚咽、吐き出す。 * 「まで」程度をあらわす。「〜ほど」「〜ほどまで」の意。 * 「に」は、動作作用の結果、変化、・・と。 3459 東歌,相聞,女歌,作業歌,恋 [題詞] 伊祢都氣波 可加流安我<手>乎 許余比毛可 等能乃和久胡我 等里弖奈氣可武 いねつけば かかるあがてを こよひもか とののわくごが とりてなげかむ ・・・・・・・・・・
稲をついてあかぎれのした私の手を 今夜も大家の若様が手にとって かわいそうと嘆いてくださるかしら ・・・・・・・・・・ * 「殿」; 庶民は竪穴住居に住んでいたが、富裕層は高床の屋敷に住んでいたことから。 <タ・テ> http://blogs.yahoo.co.jp/chiyokokkk/24022410.html?type=folderlist ♪稲つけば かかる吾が手を 今夜もか 殿の若子(わくご)が 取りて嘆かむ(万葉集・巻14・3459) (稲をついて ひびわれた私の手を 今夜もお館の若君が かわいそうにと嘆かれることでしょうか) 地方豪族の子息に、愛されている少女のように歌っている。 稲つきの少女たちの願望で、願望と現実の落差の大きさを、一緒に歌い笑うことで、つらい労働に、 はずみがつく。 作業歌らしい。 少女のいじらしさ・心根のやさしさを思って、じんとくる。 おどま盆ぎり盆ぎり〜、盆からさきゃ、帰らんど〜♪うっ。うっ。(/_ ![]() 3460 東歌,相聞,女歌,新嘗,咎め歌,妻問い [題詞] 多礼曽許能 屋能戸於曽夫流 尓布奈未尓 和<我>世乎夜里弖 伊波布許能戸乎 たれぞこの やのとおそぶる にふなみに わがせをやりて いはふこのとを ・・・・・・・・・・
誰ですか家の戸を押し揺するのは 新嘗の祭りに夫さえ送り出し 潔斎して神様を祭るこの家の戸を押すのは ・・・・・・・・・・ * 「ぞ」は、体言、活用語の連体形、助詞などに付く。疑問語と共に用いて、疑問の意を表す、疑問語の下に付いて、不定の意を表すこともある。
* 「にふなみ」の原形は、「にひ(新)」の「あへ(饗)」で、新穀を祝う神事かとされている。 |
万葉集索引第十四巻
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3461 東歌,相聞,女歌,恋,妻問い,恨 [題詞] 安是登伊敝可 佐宿尓安波奈久尓 真日久礼弖 与比奈波許奈尓 安家奴思太久流 あぜといへか さねにあはなくに まひくれて よひなはこなに あけぬしだくる ・・・・・・・・・・・
どういうことなの 宵には来ないで 一緒に寝る時間がないじゃない 夜明けごろにのこのこやってきて ・・・・・・・・・・・ サ3462 東歌,相聞,枕詞,恋 [題詞] 安志比奇乃 夜末佐波妣登乃 比登佐波尓 麻奈登伊布兒我 安夜尓可奈思佐 [あしひきの] やまさはびとの ひとさはに] まなといふこが あやにかなしさ ・・・・・・・・・・・
* 「山沢人は、」山の沢辺に住む人。山の沢辺に住んでいる大勢の人たちが かわいい子だと評判にしているあの娘は まったくこの上もなく可愛く恋しいことだなあ ・・・・・・・・・・・ * 「の」は、格助詞 主格・修飾格。体言に付いて、それが主語であることを示す。「が」と異なるのは、従属節・疑問文・詠嘆文のみならず、終止形で言い切る文の主語ともなる。また「が」が主として人を指す語を承けるのに対し、「の」は語を選ばずに承ける。 * 「さは」<やまさはびとの ひとさはに>の重複的な言い回しは、単に「山沢人」と「さはに・人が沢山」でいいか。 * 「まな(麻奈)」は、「愛子(まなご)」の「まな(愛らしい)」とも、本来禁止の副詞と解する説や、予知霊力を持っている女子のこととも諸説あり。 * 「ま・な」 (愛・真) (名) かわいい子。いとしい女。
(接頭)で、 人を表す名詞に付いて、大切に育てている、特別にかわいがっているなどの意を表す。
* 「あやに」は、感動詞「あや」に、格助詞「に」のついたもの。なんともいいようがなく・驚くほど。また、わけもなく。* 「愛しさ」の「さ」は、形容詞を名詞に変える。愛しさ、楽しさ、など。また詠嘆の接尾語。連体中止のような役目を持つ。「〜〜なことだなあ」という意味。 3463 東歌,相聞,人目,うわさ,恋,女歌 [題詞] 麻等保久能 野尓毛安波奈牟 己許呂奈久 佐刀乃美奈可尓 安敝流世奈可母 まとほくの のにもあはなむ こころなく さとのみなかに あへるせなかも ・・・・・・・・・・・
人気ない遠くの野で逢ってほしかった 思いやりもなく こんな人里の真ん中で逢ってくださる あなたなのね ・・・・・・・・・・・ 3464 東歌,相聞,恋,女歌 [題詞] 比登其登乃 之氣吉尓余里弖 麻乎其母能 於夜自麻久良波 和波麻可自夜毛 ひとごとの しげきによりて まをごもの おやじまくらは わはまかじやも ・・・・・・・・・・・
周囲の噂がきびしいから 真麻で作ったおそろいの枕は 私は使いません ・・・・・・・・・・・ 3465 東歌,相聞,恋,女歌 [題詞] 巨麻尓思吉 比毛登伎佐氣弖 奴流我倍尓 安杼世呂登可母 安夜尓可奈之伎 [こまにしき] ひもときさけて ぬるがへに あどせろとかも あやにかなしき ・・・・・・・・・・・
高麗錦の下着の紐を解き放ち 二人が結ばれている上に さらにどうすればよいのかしら この男のことが 無性にいとしくてたまらない ・・・・・・・・・・・ <旅人>http://blogs.yahoo.co.jp/chiyokokkk/25097960.html?type=folderlist ♪高麗錦(こまにしき)紐解き放(さ)けて 寝(ぬ)るが上に あどろせろとかも あやに愛しき (万葉集・巻14・3465) (高麗錦の 紐を解き放って 寝ている上に これ以上どうしろと言うのか たまらなくいとしいよ) 高麗は、高句麗。中国東北地方南部〜朝鮮半島北部の国。 668年に滅亡したが、日本古代の文化に大きな影響を与えた。 この歌の高麗錦は、舶来物ではなく、渡来人たちの技術が、東国で生産したもの。 高麗錦は、国産の地味な織物と違って、華やかな色彩のものだった。 古代の東国には、朝鮮半島からの渡来人が、多く住んでいた。 『日本書紀』天智 5年、「百済の男二千余人を以ちて東国に居(お)く」とある。 百済は、 660年(斉名 6) に唐・新羅連合軍に攻められ、 663年(天智 2) 、大和朝廷は、27000人の援軍を送ったが、白村江で大敗し、百済の難民とともに帰国した。 その百済難民を、東国に住まわせた。 『続日本紀』霊亀 2年(716) 5月条にも、 「駿河・甲斐・相模・上総・下総・常陸・下野の7国の高麗人1799人を以ちて、武蔵国に遷し、高麗郡を置く」とある。 高句麗は、 668年(天智 7) に唐に滅ぼされた。 その高句麗からの渡来人集団が、東国諸国に住んでいたのを、一か所に集め、 現在の埼玉県入間郡日高町・飯能市に高麗郡が設置された。 高麗錦は、これらの渡来人たちが、もたらした物の一つ。 高麗錦を日常生活に使える人は、東国でも、豪族層の人たちに限られていた。 遠江国の歌、 ♪伎倍(きへ)人の 班衾(まだらふすま)に 綿さはだ 入りなましもの 妹が小床(をどこ)に (万葉集・巻14・3354) (きへ人の使っている班模様の付いている布団には 暖かそうな綿がたくさん入っている 俺も暖かい恋人の衾に入りたいものだ) 伎倍人は、渡来した機織伎人。 渡来人の持っているものは、土着の人には珍しく、高級に見え、羨ましく思った。 高麗錦も同じ。 東国の豪族たちは、都文化に毒されたにしても、その底に、自然児の健康なたくましさがあった。 東歌には、無反省な若さがあって、羨ましい! ♪○○才になれば〜臆病者に〜なるわあ〜♪〜(#´ο`#)<転載終了> 3466 東歌,相聞,うわさ,恋,女歌 [題詞] 麻可奈思美 奴礼婆許登尓豆 佐祢奈敝波 己許呂乃緒呂尓 能里弖可奈思母 まかなしみ ぬればことにづ さねなへば こころのをろに のりてかなしも ・・・・・・・・・・・
好きなあの子と寝れば噂にある かといって一緒に寝ないと 心を押しつぶすほど 愛しくてたまらないの ・・・・・・・・・・・ 3467 東歌,相聞,妻問い,恋 [題詞] 於久夜麻能 真木乃伊多度乎 等杼登之弖 和<我>比良可武尓 伊利伎弖奈左祢 [おくやまの] まきのいたとを とどとして わがひらかむに いりきてなさね ・・・・・・・・・・・
ヒノキの板戸を叩いて 私が戸を開けたら さっと中に入ってきて 寝てくださいな ・・・・・・・・・・・ 3468 東歌,相聞,うわさ,恋,神祭り [題詞] 夜麻杼里乃 乎呂能<波>都乎尓 可賀美可家 刀奈布倍美許曽 奈尓与曽利鶏米 [やまとりの] をろのはつをに かがみかけ となふべみこそ なによそりけめ ・・・・・・・・・・・
* 「はつを(初麻)」は、麻でつくった繊維を苧(を)といい、初めての苧の意。苧に鏡をかけるという民間信仰の慣習。山鳥の尾のように長い初麻を鏡にかけて 唱えて占ったからこそ 今こうしてあなたと寄り添えるのよ ・・・・・・・・・・・ 3469 東歌,相聞,女歌,妻問い,恋 [題詞] 由布氣尓毛 許余比登乃良路 和賀西奈波 阿是曽母許与比 与斯呂伎麻左奴 ゆふけにも こよひとのらろ わがせなは あぜぞもこよひ よしろきまさぬ ・・・・・・・・・・・
夕べの占いにも今夜来ると告げられた なのに夫はどうして今夜来られないの ・・・・・・・・・・・ 3470 東歌,相聞,女歌,恋,作者:柿本人麻呂歌集 [題詞] あひみては ちとせやいぬる いなをかも あれやしかもふ きみまちがてに ・・・・・・・・・・・
逢ってから千年も経つみたい 違うというの? 自分だけがそんな風に思うのだろうか 貴方を待ちわびて ・・・・・・・・・・・ 3471 東歌,相聞,恋,女歌 [題詞] 思麻良久波 祢都追母安良牟乎 伊米能未尓 母登奈見要都追 安乎祢思奈久流 しまらくは ねつつもあらむを いめのみに もとなみえつつ あをねしなくる
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しばらく微寝れば しきりに夢に見えて うつつに逢へぬ 定めを知れと わたしを泣かすのね ・・・・・・・・・・・ |
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3471 東歌,相聞,恋,女歌 [題詞] 思麻良久波 祢都追母安良牟乎 伊米能未尓 母登奈見要都追 安乎祢思奈久流 しまらくは ねつつもあらむを いめのみに もとなみえつつ あをねしなくる ・・・・・・・・・・・
しばらく微寝れば しきりに夢に見えて うつつに逢へぬ 定めを知れと わたしを泣かすのね ・・・・・・・・・・・ 3472 東歌,相聞,恨,恋 [題詞] 比登豆麻等 安是可曽乎伊波牟 志可良<婆>加 刀奈里乃伎奴乎 可里弖伎奈波毛 ひとづまと あぜかそをいはむ しからばか となりのきぬを かりてきなはも ・・・・・・・・・・・
他人の妻だとうだうだ言うな 隣から着物を借りて それを着ないで済ます男は いないだろうぜ ・・・・・・・・・・・ 3473 東歌,相聞,群馬県,高崎市,栃木県,佐野市,旅,恋,序詞 [題詞] 左努夜麻尓 宇都也乎能登乃 等抱可騰母 祢毛等可兒呂賀 於<母>尓美要都留 [さのやまに うつやをのとの とほかども] ねもとかころが おもにみえつる ・・・・・・・・・・・
佐野山で打つ斧の音が遠ざかるように 故郷は遠ざかる 共に寝起きしたあの娘の面影ばかり思われる ・・・・・・・・・・・ 3474 東歌,相聞,旅,別離,防人 [題詞] 宇恵太氣能 毛登左倍登与美 伊R弖伊奈婆 伊豆思牟伎弖可 伊毛我奈氣可牟 [うゑだけの] もとさへとよみ いでていなば いづしむきてか いもがなげかむ ・・・・・・・・・・・
* 「植竹」は竹林のこと。竹林の根元まで響くように大騒ぎして 私が旅立った後で 妻はさぞ嘆き悲しむだろう どこを向いて妻は嘆くことだろう ・・・・・・・・・・・ 3475 東歌,相聞,女歌,別離 [題詞] 古非都追母 乎良牟等須礼杼 遊布麻夜万 可久礼之伎美乎 於母比可祢都母 こひつつも をらむとすれど ゆふまやま かくれしきみを おもひかねつも ・・・・・・・・・・・
*まなび http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/31849032.html恋い慕いながらあなたはきっと来ると じっとして居ようとしても 由布岳に隠れてしまったあなたを思うと もうどうにもならないのですね ・・・・・・・・・・・ * 「ひとりしゆく」 http://blogs.yahoo.co.jp/sirius0426jp/9135986.html?vitality [題詞] 宇倍兒奈波 和奴尓故布奈毛 多刀都久能 努賀奈敝由家婆 故布思可流奈母 うべこなは わぬにこふなも たとつくの ぬがなへゆけば こふしかるなも ・・・・・・・・・・・
* 「うべ」は、肯定の意を表す語。いかにも。いかにも私に恋焦がれているだろう 月が細くなり消えてゆくのを見ていれば さぞ心細く 私を恋しがっているだろうが 心配するな私の心は月とはちう 私の君への恋心は 月のようには変わらないから (とはいえ遠国赴任地は月より遠い) ・・・・・・・・・・・ * 「子な」は、上代東国方言、「子等」の訛り。 * 「わぬ」は、一人称の人代名詞。「われ」の上代東国方言。 * 「なも」[助動][○|○|なも|なも|○|○]《上代東国方言》動詞・動詞型活用語の終止形に付く。推量の助動詞「らむ」に同じ。現在推量・原因推量 上にくる語の活用形 終止形(ラ変は連体形)。・・・ているであろう。・・・しているだろう。 * 「たとつくの」月の時が流れ経つと * 「立と」は、上代東国方言、「立つと・経つと」 * 「ぬがなへ行けば」奴我奈敝由家杼・「我(わぬ)がゆのへは」和奴賀由乃敝波、 或本歌末句曰、奴我奈敝由家杼 和努賀由乃敝波 (或る本の歌の末の句に曰はく、流(のが)なへ行(ゆ)けど 吾(わぬ)が行(ゆ)のへば) 時(月)が流れていくのに、私が逢いに行かなければ 《我が恋心は月とは違い、幸いにも・広く・確固と・なっている・ことは疑いもなく・明らかだ。》 * 我ゆか〈のへ〉ば、「のへ」上代東国語。「なへ」の転〕上代東国語の打ち消しの助動詞「なふ」の連体形・已然形「なへ」に同じ。 * 「こふし」は、「こひし」の上代東国方言〕恋しい。 * 「かる」 形容詞の語幹に付いて動詞化する。 * 「ぬながへゆけど」(奴我奈敝由家杼)」は「流れて行くけれども」の意。<[国語篇(その十)『万葉集』難解句]>参照。http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/kokugo10.htm#584ぬながへゆけど(奴我奈敝由家杼) 3476S 東歌,相聞,恋,異伝 [題詞]或本歌末句曰 奴我奈敝由家杼 和<奴><由賀>乃敝波 ぬがなへゆけど わぬゆがのへば ・・・・・・・・・・・
過ぎてゆくが 私が行けばよいのだが 行きたくても わたしは行けない ・・・・・・・・・・・ 3477 東歌,相聞,静岡県,蒲原町,旅,恋 [題詞] 安都麻道乃 手兒乃欲婢佐可 古要弖伊奈婆 安礼波古非牟奈 能知波安比奴登母 あづまぢの てごのよびさか こえていなば あれはこひむな のちはあひぬとも ・・・・・・・・・・・
東国へ行く道にある手児の呼坂を あなたが越えてしまったら 私は恋しく辛い日々を過ごすでしょう 旅立ったあなたと いつか再会できるとしても ・・・・・・・・・・・ 3478 東歌,相聞,群馬県,白根山,石川県,白山,うわさ,恋 [題詞] 等保斯等布 故奈乃思良祢尓 阿抱思太毛 安波乃敝思太毛 奈尓己曽与佐礼 とほしとふ こなのしらねに あほしだも あはのへしだも なにこそよされ ・・・・・・・・・・・
* 「故奈の白嶺」は、越の白峰、白山説、 越中の立山説、 上野国吾妻郡の白根山説、その他あって定説はない。遠いという故奈の白嶺で 逢うときも 逢わないときも おまえとの噂は立てられるよ ・・・・・・・・・・・ * 「のえ のへ」(助動)〔上代東国語。「なへ」の転〕打ち消しの助動詞「なふ」の連体形・已然形「なへ」に同じ。 3479 東歌,相聞,栃木県,佐野市,赤見町,恋 [題詞] 安可見夜麻 久左祢可利曽氣 安波須賀倍 安良蘇布伊毛之 安夜尓可奈之毛 あかみやま くさねかりそけ あはすがへ あらそふいもし あやにかなしも ・・・・・・・・・・・
* 「草刈り」は村の共同作業、人々が知合い好意もうまれよう。デートの名所、赤見山で草を刈り、あとで逢ってくれた。承知のはずが、なぜか女は抵抗する。でもそこがまた何とも可愛い。そういって情感を<あやに>と歌っている。赤見山の草の根を一緒に刈って 逢引の場所まで作ったのに 身を許さなかったあの子 その愛しさよ ・・・・・・・・・・・ * 「あはすがへ」、「荒れ地の草を刈り開いた空き地」 * 「あらそふ」「その空き地への道を指し示す妹」 サ3480 東歌,相聞,防人,恋,出発,別離 [題詞] 於保伎美乃 美己等可思古美 可奈之伊毛我 多麻久良波奈礼 欲太知伎努可母 おほきみの みことかしこみ かなしいもが たまくらはなれ よだちきのかも
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防人赴任の 大君のご命令をうけて 愛しい妻との添い寝の床をはなれ 旅立ってきたのは ま夜中のことだったなあ ・・・・・・・・・・・ |
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3481 東歌,相聞,作者:柿本人麻呂歌集,重出,出発,別離,恋 [題詞] 安利伎奴乃 佐恵々々之豆美 伊敝能伊母尓 毛乃伊波受伎尓弖 於毛比具流之母 [ありきぬの] さゑさゑしづみ いへのいもに ものいはずきにて おもひぐるしも ・・・・・・・・・・・
衣ずれの音も出さないようそっと 家内に黙って家をあとにした 残してきた妻への思いに心が苦しい ・・・・・・・・・・・ 3482 東歌,相聞,恋,序詞 [題詞] 可良許呂毛 須蘇乃宇知可倍 安波祢杼毛 家思吉己許呂乎 安我毛波奈久尓 [からころも] すそのうちかへ あはねども けしきこころを あがもはなくに ・・・・・・・・・・・
裾の重なり合うところがあわないけれど あなたを恋しく想う心に変わりは無いよ ・・・・・・・・・・・ 3482S 東歌,相聞,うわさ,恋,異伝 [題詞]或本歌曰 [からころも] すそのうちかひ あはなへば ねなへのからに ことたかりつも ・・・・・・・・・・・
着物はね すきっと着こなしていないと たとえ寝ていようと寝ていまいと いろいろ勘ぐられて煩いものなのよ ・・・・・・・・・・・ 3483 東歌,相聞,女歌,恋,妻問い [題詞] 比流等家波 等<家>奈敝比毛乃 和賀西奈尓 阿比与流等可毛 欲流等家也須家 ひるとけば とけなへひもの わがせなに あひよるとかも よるとけやすけ ・・・・・・・・・・・
昼間は解ことしても解けない紐が 夜にはあなたのそばにこう寄ると 何と解けやすいこと ・・・・・・・・・・・ 3484 東歌,相聞,恋 [題詞] 安左乎良乎 遠家尓布須左尓 宇麻受登毛 安須伎西佐米也 伊射西乎騰許尓 あさをらを をけにふすさに うまずとも あすきせさめや いざせをどこに ・・・・・・・・・・・
麻糸をそんなに笥一杯になるまで紡がなくても 明日がないではないから さあ小床に行こうよ ・・・・・・・・・・・ 3485 東歌,相聞,枕詞,恋 [題詞] 都流伎多知 身尓素布伊母乎 等里見我祢 哭乎曽奈伎都流 手兒尓安良奈久尓 [つるぎたち] みにそふいもを とりみがね ねをぞなきつる てごにあらなくに ・・・・・・・・・・・
* [つるぎたち] [枕]身に添え、また磨(と)ぐところから、「身に添ふ」「磨(と)ぐ」にかかる。また、を神聖視するところから、「斎(いは)ふ」にかかる。「共寝」の意を含むこともある。意中の女を 自分の傍に置くことができなかった それで 声を上げて泣いてしまったぞ 幼子でもないのに ・・・・・・・・・・・ 剣の刃を「な」というところから「名」「汝(な)」にかかる。 * 「取り見」は、とり−・みる 【取り見る・執り見る】の連体形。 他動詞マ行上一段活用{み/み/みる/みる/みれ/みよ} 手に取って見る。世話をする。看病する。 * 「がね」接続助詞。動詞の連体形に付く。 〔理由〕…であるから。…だろうから。 〔目的〕…ために。…ように。 「がね」は文末に置かれるので、「終助詞」という説もある。倒置と考えれば接続助詞とする。上代語。 * 「ね」鳴き声。声を出してなく。強めの助詞「も」「ぞ」「のみ」などを伴った例が多い。 「ね」と「おと」の違い、「ね」が人の心に響く音であるのに対して、「おと」は雑音的なものを含め、風や鐘の音など比較的大きい音をいう。 * 「手児にあらなくに」幼子でもないのに。 * 「手児」は手に抱く幼子、いとし子。かわいい女。東国語。 * 「名」は愛称の接尾語。 * 「に」格助詞 * 「あらなくに」[連語]《動詞「あり」の未然形+打消しの助動詞「ず」のク語法+格助詞「に」》 ないことだなあ。ないことよ。 ないことなのに。いないのに。 ///// <chi**kokkk> https://blogs.yahoo.co.jp/chiyokokkk/28163335.html?type=folderlist ♪剣大刀 身に添ふ妹を 取り見がね 音(ね)をぞ泣きつる 手児にあらなくに(万葉集・巻14・3485 (剣大刀、そいつをいつも身に添えるように 連れ添ってきた子、その子を抱いてかわいがることもできなくなって、声をあげて泣いてしまった。小娘でもあるまいに) /// 雑徭、防人などで、旅にでた男の歌。 「手児」は、かわいい女。少女をいう東国語。 ♪愛(かな)し妹を 弓束(ゆづか)並べ巻き もころ男の こととし言はば いや片増しに (万葉集・巻14・3486) (いとし子よ、お前さんを、弓束に籐をしっかと巻くようにまいて寝るが、俺の力があいつと変わらぬというなら、もっともっと しっかり抱いてやるぞ) 恋のライバルを持つ男の気迫がある。 心が正直で、楽しい。 風雅に富みすぎる都の男性には、歌えない。 都人は、男子たるもの、恋などにめめしくとりこになって、と自嘲してしまう。 たとえば、舎人皇子は、 ♪ますらをや 片恋せむと 嘆けども 醜のますらを なほ恋ひにけり (万葉集・巻2・117) と、ますらおたる者が、片恋のごとき女々しいわざをすることかと、自己嫌悪している。 ♪梓弓 欲良(よら)の山辺の 茂かくに 妹ろを立てて さ寝処(ねど)払ふも (巻14・3489) (梓弓に霊が依り憑くという欲良、この欲良の山辺の茂みの中に、いとしい子を立たせておいて、私は寝場所の草を刈り払う) 男は、息せききって 共寝の準備をする。 女は、立って 心躍らせながらそれを見つめる。 草は、根こそぎとり払ったのかな、それともお布団代わりにしたのかな・・・ 欲良は、長野県小諸市東部の与良町か。 /// 都会人には、東国人の直情が、その方言とともに、新鮮に思われたらしい。 ほほ〜ぉ!なんて感心しながら、話がはずんだことでしょう。 東国人の「いや片増しに」に、眉をひそめながらも、にやにやと楽しんだんでしょうね。(*^▽^*)ノ 3486 東歌,相聞,恋,逢会 [題詞] 可奈思伊毛乎 由豆加奈倍麻伎 母許呂乎乃 許登等思伊波婆 伊夜可多麻斯尓 かなしいもを ゆづかなべまき もころをの こととしいはば いやかたましに 愛しのおまえを
* 「かなし・いも・を」愛おしい娘を弓束に籐をしっかり巻くように まき寝しているが 恋敵がおれに匹敵するというなら もっと強く抱きしめてもいいのだよ * 「を」(格助詞) ・動作のおよぶ対象を示す。・・を。 ・動作の起点・経過する場所・経過する時間等を示す。・・を。 ・離別の対象を示す。・・から。 ・・に。 ・動作の相手を示す。・・と。 ・主語となる語に付く。 * 「ゆづか」《「ゆつか」とも》矢を射るとき)、左手で弓を握る部分。ゆみづか。また、そこに巻く革など。 * 「なべ 並べ」(接助)幾重にも。 * 「巻き」枕き(係る) * 「もころ」【如/若】《上代語》同じような状態。よく似た状態。連体修飾語を受ける形で、副詞的に用いられる。 * 「もころ‐お」【如己男】自分と同等の男。自分に匹敵する相手。 * 「いや」(接頭)強意。もっと、ますます。 * 「かた・まし・に」「かた」は自動詞タ行四段「勝つ」の未然形。 * 「まし」は、推量・意志・反実仮想の助動詞。 * 「に」逆接条件を示すことも。「〜のに」。 3487 東歌,相聞,恋 [題詞] 安豆左由美 須恵尓多麻末吉 可久須酒曽 宿莫奈那里尓思 於久乎可奴加奴 [あづさゆみ] すゑにたままき かくすすぞ ねなななりにし おくをかぬかぬ ・・・・・・・・・・・
* なな〔上代東国方言。上代における打ち消しの助動詞「ぬ」の未然形「な」の重複したもの〕…ないで。…ずに。梓弓の端に玉を巻いて飾るように大切にして 共に寝ることもないままにした 将来のことを考えに考えて ・・・・・・・・・・・ * 「奥」 は、将来。 * 「かぬ」先のことを考える。 * 「かぬ」(接尾)し続けることが出来ない。 3488 東歌,相聞,うわさ,不安,恋 [題詞] 於布之毛等 許乃母登夜麻乃 麻之波尓毛 能良奴伊毛我名 可多尓伊弖牟可母 [おふしもと] このもとやまの ましばにも のらぬいもがな かたにいでむかも ・・・・・・・・・・・
* 「かた」 占いに現れたしるしこの本山の真柴にさえ 女の名は告げないのに 占いに現れたらどうしよう ・・・・・・・・・・・ 3489 東歌,相聞,枕詞,恋 [題詞] 安豆左由美 欲良能夜麻邊能 之牙可久尓 伊毛呂乎多弖天 左祢度波良布母 [あづさゆみ] よらのやまへの しげかくに いもろをたてて さねどはらふも ・・・・・・・・・・・
欲良の山辺の茂みに せがむ妻を立たせて草を払 即席の寝床をこしらえた ・・・・・・・・・・・ 3490 東歌,相聞,人目,うわさ,枕詞,恋,作者:柿本人麻呂歌集 [題詞] [あづさゆみ] すゑはよりねむ まさかこそ ひとめをおほみ なをはしにおけれ
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あとでは寄り添って寝るのだが 今は人目が多いから悟られないように 君を端っこにおいておくんだよ ・・・・・・・・・・・ |
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3491 東歌,相聞,恋,女歌 [題詞] 楊奈疑許曽 伎礼波伴要須礼 余能比等乃 古非尓思奈武乎 伊可尓世余等曽 やなぎこそ きればはえすれ よのひとの こひにしなむを いかにせよとぞ ・・・・・・・・・・・
柳なら伐ればまた生えるでしょう この世の私が 恋の苦しさに死のうとしているのに どうしろとおっしゃるのですか ・・・・・・・・・・・ サ3492 東歌,相聞,恋情 [題詞] 乎夜麻田乃 伊氣能都追美尓 左須楊奈疑 奈里毛奈良受毛 奈等布多里波母 [をやまだの いけのつつみに さすやなぎ] なりもならずも なとふたりはも ・・・・・・・・・・・
* 「は‐も」係助詞「は」+係助詞「も」。感動・詠嘆を表す。…はまあ。…だなあ。小山田の池の堤に 柳の挿し木をして根づくかつかないか でもこの恋が成るか成らないかは あなたとの二人の心が決めることですね ・・・・・・・・・・・ * 「楊奈疑」→柳。(春楊 葛山 發雲 立座 妹念(2453)→春柳 葛城山に 立つ雲の 立ちても居ても 妹をしぞ思ふ 「發」→可須美多都・霞發 「立つ」「居る(ゐる)」「いも」「思ふ」 「葛山」→「葛城山」を漢文風に表記。) * (人毛奈吉 空家者 草枕 旅尓益而 辛苦有家里(451)→人もなき 空しき家は 草枕 旅にまさりて 苦しくありけり) * 漢字は、1字で1語を表し1音で読まれるものだが、語としての意味は捨てて、音を表す記号と化し、「表語文字」である漢字を「表音文字」として使っているのが「仮字」(「仮名」)で、後世のひらがなとは別ものだが、これらは、一般には万葉時代に用いられた仮名、すなわち「万葉仮名」と呼ばれる。この「万葉仮名」を草書体に崩したものが「草仮名」。さらに崩して、もはや漢字としての書体を越えたものが「ひらがな」となる。 <サ>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/29118184.html <項>http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/folder/1039689.html?m=lc&p=29 3493 東歌,相聞,恋,異伝 [題詞] 於曽波夜母 奈乎許曽麻多賣 牟可都乎能 四比乃故夜提能 安比波多<我>波自 おそはやも なをこそまため むかつをの しひのこやでの あひはたがはじ ・・・・・・・・・・・
来るのが遅くても早くても あなただけを待っていよう 向かい峰の椎の小枝が 互い違いになっているみたいにならないでね ・・・・・・・・・・・ 3493S 東歌,相聞,異伝,恋 [題詞]或本歌曰 おそはやも きみをしまたむ むかつをの しひのさえだの ときはすぐとも ・・・・・・・・・・・
* 「遅速」 緩急・遅いことと、速いこと。遅いか速いかの度合い。ここに来るのが遅くても早くても もう気にしないわ 峰の椎の木の色だって移り変るのに 君をし待たむなんていわせて ・・・・・・・・・・・ 3494 東歌,相聞,群馬県,子持村,恋 [題詞] 兒毛知夜麻 和可加敝流弖能 毛美都麻弖 宿毛等和波毛布 汝波安杼可毛布 こもちやま わかかへるでの もみつまで ねもとわはもふ なはあどかもふ ・・・・・・・・・・・
子持山の楓の若葉が紅葉するまで 春から秋までずーっと俺と抱き合って過ごさないか おまえは どう思う ё ・・・・・・・・・・・ 3495 東歌,相聞,恨,恋,女歌 [題詞] 伊波保呂乃 蘇比能和可麻都 可藝里登也 伎美我伎麻左奴 宇良毛等奈久文 いはほろの そひのわかまつ かぎりとや きみがきまさぬ うらもとなくも ・・・・・・・・・・・
* 「ほろ」は隔てられている。巌かげの若松のように なにかに邪魔されてか これが最後だといって あなたはおい出でにならない 心ぼそいことです ・・・・・・・・・・・ * 「沿ひ」反対側、うしろ。 * 「かぎ」へだてられている。 * 「や」は、強意。 * 「と」は、・・のように。 * 「き」→「く」(東国方言) * 「うら‐もとな・し」心許無し。[形ク]気がかりで待ち遠しい。また、なんとなく不安で気がかりである。こころもとない。 3496 東歌,相聞,神奈川県,川崎市,恋 [題詞] 多知婆奈乃 古婆乃波奈里我 於毛布奈牟 己許呂宇都久思 伊弖安礼波伊可奈 たちばなの こばのはなりが おもふなむ こころうつくし いであれはいかな ・・・・・・・・・・・
橘の古婆にいる あのおさげ髪の子が 思ってくれる心根がいとしい 今にも逢いにいくとも ・・・・・・・・・・・ 3497 東歌,相聞,恋,譬喩,うわさ [題詞] 可波加美能 祢自路多可我夜 安也尓阿夜尓 左宿佐寐弖許曽 己登尓弖尓思可 かはかみの ねじろたかがや あやにあやに さねさねてこそ ことにでにしか ・・・・・・・・・・・
* 「ねじろ‐たかがや」根白高萱 川水などに洗われて、根が白く高く現れた萱。根の白い萱のように その白肌に気が怪しくなって 何度も何度も共寝したので 噂になったんだろうな ・・・・・・・・・・・ [題詞] 宇奈波良乃 根夜波良古須氣 安麻多安礼婆 伎美波和須良酒 和礼和須流礼夜 [うなはらの ねやはらこすげ] あまたあれば きみはわすらす われわするれや ・・・・・・・・・・・
* 「根柔ら小菅」は「根の柔らかい小さな菅」。恋人の浮気相手。若いいい子が大勢いるから あたしを忘れたの だけどこっちはあなたを 絶対 忘れないからね ・・・・・・・・・・・ 菅は湿地などに生えるので、ここでの「海原」は「沼沢地」。 3499 東歌,相聞,譬喩,恋,誘 [題詞] 乎可尓与西 和我可流加夜能 佐祢加夜能 麻許等奈其夜波 祢呂等敝奈香母 をかによせ わがかるかやの さねかやの まことなごやは ねろとへなかも ・・・・・・・・・・・
* 「さ‐ね」【さ寝】動詞「さぬ」の連用形から》寝ること。特に、男女が共寝すること。私が岡辺で柔らかな萱を引き寄せて 刈って作った見事な隠れ家を見て にっこりウインクしてくれたあの子 しかし簡単には 寝ようとは言わないんだよなあ ・・・・・・・・・・・ * 「なごや」〔名〕「や」は「にこや(柔─)」などの「や」と同じく、状態性の体言を作る接尾語。なごやかな状態、または物。 * 「へな」は、打消しの助動詞。 3500 東歌,相聞,譬喩,恋 [題詞] 牟良佐伎波 根乎可母乎布流 比等乃兒能 宇良我奈之家乎 祢乎遠敝奈久尓 [むらさきは ね]をかもをふる ひとのこの うらがなしけを [ね]ををへなくに
・・・・・・・・・・・
* 紫草の根は、最上級の貴族の衣服(紫衣)を染める染料に使われた。紫草の根はすっかり刈採り尽くされた いとおしく想うあの娘と 契ることもなかったというのに ・・・・・・・・・・・ * 「紫」草の「根」は、「寝」とセットで見る癖を持っていたほうがいいようだ。<むらさきの にほへる妹を 憎くあらば>も同様。 |



