ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第十五巻

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3551東歌,相聞,恋,女歌,序詞,浮気

[題詞]

阿遅可麻能 可多尓左久奈美 比良湍尓母 比毛登久毛能可 加奈思家乎於吉弖

阿遅可麻の 潟にさく波 平瀬にも 紐解くものか 愛しけを置きて 

[あぢかまの かたにさくなみ ひらせにも] ひもとくものか かなしけをおきて
川の流れがゆるやかで

波がたたない水面の平らな瀬でも 

愛しい者を家に置いているのに

紐を解くことがあろうか

いや 絶対に解かないぞ
* 「かなしけ」愛。〔形〕「かなし」の連体形「かなしき」の上代東国方言。いとしい(こと・もの)。




サ3552東歌,相聞,宮城県,福島県,うわさ,恋,女歌

[題詞]

麻都我宇良尓 佐和恵宇良太知 麻比<登>其等 於毛抱須奈母呂 和賀母抱乃須 

まつが浦に さわゑうら立ち ま人言 思ほすなもろ 吾が思ほのすも 

[まつがうらに さわゑうらだち] まひとごと おもほすなもろ わがもほのすも
・・・・・・
松が浦に潮騒が群がり騒ぐように

人の噂はうるさいけれど

きっとあの方は私のことを

かわらずお思いになってくださっている

私があなたを愛しく思うように
・・・・・・
* 「さわ・は」低地の沢・渓谷・谷川。
* 「ゑ」(間助)上代語。嘆息を表す。・・よ。
* 「さわゑ」騒いで。
* 「うらだち」群がり立って。
* 「うら」には、「群」・「末」・「浦」・「占」などの意がある。
* 「ま」接頭語。
* 「人言」は、人の言う言葉・うわさ・世間の評判など。
* 「おもほす」他サ四「思ふ」の未然形に上代の尊敬の助動詞「す」の付いた「おもはす」の転。「思う」の尊敬語。お思いになる。
* 「なも」推量の助動詞。(係助)上代語。強く指示する意を表す。他に対してのあつらえの意を表す・・して欲しい。
* 「ろ」上代間助として感動を表す。・・よ。
* 「なも‐ろ」 [連語]推量の助動詞「なも」+間投助詞「ろ」。上代東国方言》…ているだろうよ。
* 「吾が思ほのすも」
* 「のす」(接尾)上代東国方言。「似る」と同源。・・のように。
* 「も」詠嘆。



3553東歌,相聞,愛知県,序詞,うわさ,恋

[題詞]

安治可麻能 可家能水奈刀尓 伊流思保乃 許弖多受久毛可 伊里弖祢麻久母

あじかまの 可家の港に 入る潮の こてたずくもが 入りて寝まくも 

[あぢかまの かけのみなとに いるしほの] こてたずくもが いりてねまくも
あぢ鴨の棲む可家川の

入江に入る潮が緩やかなように

ひとの噂がおさまったら 

あの子の寝床を訪れてかき抱こうものを
http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08/29762332.html


3554東歌,相聞,恋

[題詞]

伊毛我奴流 等許<能>安多理尓 伊波具久留 水都尓母我毛与 伊里弖祢末久母

妹が寝る 床のあたりに 岩ぐくる 水にもがもよ 入りて寝まくも 

いもがぬる とこのあたりに [いはぐくる] みづにもがもよ いりてねまくも
あの娘が寝る床の周りは堅城鉄壁だが

岩をくぐる水になれれば部屋に潜り込めるだろう

さっそく布団の中に入って大願成就なりさ

みづにもがもよ みづにもがもよ



3555東歌,相聞,茨城県,古河,序詞,うわさ,恋

[題詞]

麻久良我乃 許我能和多利乃 可良加治乃 於<登>太可思母奈 宿莫敝兒由恵尓

麻久良我の 許我の渡りの 韓楫の 音高しもな 寝なへ子ゆゑに 

[まくらがの] こがのわたりの からかぢの] おとだかしもな ねなへこゆゑに
麻久良我の許我の渡し場に響き渡る

韓楫の音の高さよ 

そのように噂が高い訳がわからない 

だってそうだろ 相手の女性とは

なんの関わりもないのだから




3556東歌,相聞,枕詞,恋,うわさ

[題詞]

思保夫祢能 於可礼婆可奈之 左宿都礼婆 比登其等思氣志 那乎杼可母思武

潮船の 置かれば愛し さ寝つれば 人言繁し 汝をどかもしむ 

[しほぶねの] おかればかなし さねつれば ひとごとしげし なをどかもしむ
潮船に乗らねばわが恥 きみは悲しむ

潮船に乗られねば君の恥 わが苦しみ

潮船に二人で乗れば二人の恥 世間の餌食

君をなんとしよう



3557東歌,相聞,序詞,恋

[題詞]

奈夜麻思家 比登都麻可母与 許具布祢能 和須礼波勢奈那 伊夜母比麻須尓

悩ましけ 人妻かもよ 漕ぐ舟の 忘れはせなな いや思ひ増すに 

[なやましけ ひとづまかもよ こぐふねの] わすれはせなな いやもひますに
悩ましげにするあの娘は人妻

人妻との恋は禁忌なんだ

いけないんだよ

漕ぐ舟が去るように消えてくれ

思いをつのらせる困った女よ
* 「悩ましけ」は「悩ましき」の東国訛り。
* 「かもよ」は、助詞「かも」・「よ」が結び付き、詠嘆の意をあらわす。
* 「よ」は強調の終助詞 「や」と同じく元来は掛け声に由来する語であろうか。のち間投助詞としてはたらくようになり、文末にも用いられるようになった。意を強めるはたらきをする。
 聞き手に対し、同意を求めたり念を押したりする気持をあらわす。のち、詠嘆的な用法にも使われる。現代口語で「〜だよ」などと言う時の「よ」、女言葉の「〜よ」に繋がっている。
* 「よ」は、格助詞、上代語。動作・作用の時間的・空間的な起点を表す。・・から。 経過する場所を示して、・・を通って。 比較の基準、・・より。 手段・方法、・・で。
 体言・活用語の連体形につく。
1.詠嘆・感動。
2.呼びかけ。
3.命令の意志を確かめる。
4.強く指示する。
5.告示の気持ちを表す。



3558東歌,相聞,茨城県,古河,遊行女婦,女歌

[題詞]

安波受之弖 由加婆乎思家牟 麻久良我能 許賀己具布祢尓 伎美毛安波奴可毛

逢はずして 行かば惜しけむ 麻久良我の 許我漕ぐ船に 君も逢はぬかも 

あはずして ゆかばをしけむ [まくらがの] こがこぐふねに きみもあはぬかも
会わないまま都に行かせるのは惜しい

古河を漕ぐ船の中ででも会えないものか




3559東歌,相聞,序詞,うわさ,恋

[題詞]

於保夫祢乎 倍由毛登母由毛 可多米提之 許曽能左刀妣等 阿良波左米可母

大船を 舳ゆも艫ゆも 堅めてし 許曽の里人 あらはさめかも 

[おほぶねを へゆもともゆも かためてし] こそのさとびと あらはさめかも
大船を舳先も艫も綱で固く結んだように

固く契った二人のことは

許曽の里人も顕にすることはないでしょう




3560東歌,相聞,奈良,吉野,岐阜,序詞,うわさ,恋

[題詞]

麻可祢布久 尓布能麻曽保乃 伊呂尓R<弖> 伊波奈久能未曽 安我古布良久波

ま金ふく 丹生のま朱の 色に出て 言はなくのみぞ 吾が恋ふらくは 

まかねふく にふのまそほの いろにでて いはなくのみぞ あがこふらくは
鉄を精錬する炎のように

水銀の湧く赤土のように

顔色に出して言わないだけだ

私の恋する思いは




3561東歌,相聞,序詞,恋,女歌

[題詞]

可奈刀田乎 安良我伎麻由美 比賀刀礼婆 阿米乎万刀能須 伎美乎等麻刀母

金門田を 荒垣ま斎み 日が照れば 雨を待とのす 君をと待とも 

[かなとだを あらがきまゆみ] ひがとれば あめをまとのす きみをとまとも
門のそばの田の荒垣を慎み清めて

日が照れば雨を待つように

貴方をお待ちしていますとも
* 「かなと‐だ」金門田〔名〕金門(かなと)の近くにある田。門のそばの田。門田(かどた)。
* 「のす」(接尾) 上代東国方言。・・のように。



3562東歌,相聞,序詞,恋,孤独

[題詞]

安里蘇夜尓 於布流多麻母乃 宇知奈婢伎 比登里夜宿良牟 安乎麻知可祢弖

荒礒やに 生ふる玉藻の うち靡き ひとりや寝らむ 吾を待ちかねて 

[ありそやに おふるたまもの うちなびき] ひとりやぬらむ あをまちかねて
荒礒に生える藻が波に靡くように

黒髪を床に靡かせて独り寝しているだろうなあ

私を待ちかねながら



3563東歌,相聞,茨城県,序詞,恋

[題詞]

比多我多能 伊蘇乃和可米乃 多知美太要 和乎可麻都那毛 伎曽毛己余必母

比多潟の 礒のわかめの 立ち乱え 吾をか待つなも 昨夜も今夜も 

[ひたがたの いそのわかめの たちみだえ] わをかまつなも きぞもこよひも
比多潟の磯のわかめが立ち揺らぐように

思い乱れて私を待っているだろうか

ゆうべも今夜も




3564東歌,相聞,東京都,小菅町,恋

[題詞]

古須氣呂乃 宇良布久可是能 安騰須酒香 可奈之家兒呂乎 於毛比須吾左牟

古須気ろの 浦吹く風の あどすすか 愛しけ子ろを 思ひ過ごさむ 

こすげろの うらふくかぜの あどすすか かなしけころを おもひすごさむ
古須気の

浦吹く風でも

なんとしても

わが愛しい娘への思いを  

吹き流せはしない
* 「あど」上代東国方言。なんと・如何に。
* 「すす」上代東国方言。しつつ、しながら。(サ変「す」の終止形を重ねたもの。)
* 「こ‐ろ」子等。 「ろ」は接尾語。上代東国方言。「こら(子等)」に同じ。



3565東歌,相聞,長野県,恋

[題詞]

可能古呂等 宿受夜奈里奈牟 波太須酒伎 宇良野乃夜麻尓 都久可多与留母

かの子ろと 寝ずやなりなむ はだすすき 宇良野の山に 月片寄るも 

かのころと ねずやなりなむ はだすすき うらののやまに つくかたよるも
あの娘と今夜は寝られないかも

はだ薄の揺れている宇良野の山に

もう月が傾いてしまった




3566東歌,相聞,恋

[題詞]

和伎毛古尓 安我古非思奈婆 曽和敝可毛 加未尓於保世牟 己許呂思良受弖

吾妹子に 吾が恋ひ死なば そわへかも 神に負ほせむ 心知らずて 

わぎもこに あがこひしなば そわへかも かみにおほせむ こころしらずて
妻に恋い焦がれておれが死んだら

死神は運命だと言うだろう

そのむくいを心なしな

神様におわそう

だれもおれの心は知らない









3588遣新羅使,天平8年,悲別,出発,恋,難波,大阪

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

波呂波呂尓 於<毛>保由流可母 之可礼杼毛 異情乎 安我毛波奈久尓

はろはろに 思ほゆるかも しかれども 異しき心を 吾が思はなくに 

はろはろに おもほゆるかも しかれども けしきこころを あがもはなくに
・・・・・・・・・・・
遥か新羅に旅立つことになり

君との別れが辛いと思われることです

しかしながら

わたしは 貴女だけをいつも

思い続けることに変わりはありません
・・・・・・・・・・・
* 「はろはろに」(副) はるかに。はるばると。
* 「しかれ‐ども」〔接続〕逆態の確定条件。そうであるが。しかしながら。されども。
* 「異しき心」 あだしごころ。浮気心。



3589遣新羅使,天平8年,作者:秦間満,奈良,難波,大阪,出発,恋

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

由布佐礼婆 比具良之伎奈久 伊故麻山 古延弖曽安我久流 伊毛我目乎保里

夕されば ひぐらし来鳴く 生駒山 越えてぞ吾が来る 妹が目を欲り 

ゆふされば ひぐらしきなく いこまやま こえてぞあがくる いもがめをほり
・・・・・・・・・・・
夕暮れになると

ひぐらしが来て鳴く生駒山を

私は越えてきた

妻に少しでも早く逢いたくて
・・・・・・・・・・・



3590遣新羅使,天平8年,奈良,難波,大阪,出発,恋

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

伊毛尓安波受 安良婆須敝奈美 伊波祢布牟 伊故麻乃山乎 故延弖曽安我久流

妹に逢はず あらばすべなみ 岩根踏む 生駒の山を 越えてぞ吾が来る 

いもにあはず あらばすべなみ いはねふむ いこまのやまを こえてぞあがくる
・・・・・・・・・・・
出帆前に今一度

君に会わないではいられなくて

険しい生駒の岩根を踏み越えて

わたしは戻ってきたんだよ
・・・・・・・・・・・



3591遣新羅使,天平8年,悲別,恋情,出発,難波,大阪

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

妹等安里之 時者安礼杼毛 和可礼弖波 許呂母弖佐牟伎 母能尓曽安里家流

妹とありし 時はあれども 別れては 衣手寒き ものにぞありける 

いもとありし ときはあれども わかれては ころもでさむき ものにぞありける
・・・・・・・・・・・
妻と一緒だった時はともかく

別れてからは

いつも衣の袖は心寒いものだな
・・・・・・・・・・・



3592遣新羅使,天平8年,悲別,出発,難波,大阪,恋

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

海原尓 宇伎祢世武夜者 於伎都風 伊多久奈布吉曽 妹毛安良奈久尓

海原に 浮き寝せむ夜は 沖つ風 いたくな吹きそ 妹もあらなくに 

うなはらに うきねせむよは おきつかぜ いたくなふきそ いももあらなくに
・・・・・・・・・・・
海原に浮いて寝る夜は

沖の風よそんなに強く吹くな

寒さを忘れさせる

愛しい妻がいないのだから
・・・・・・・・・・・
* 「せむ」は、サ行変格動詞「す」の未然形「せ」に、婉曲の助動詞「む」の連体形で、〜するような
* 「うき‐ね」1 水鳥が水に浮いたまま寝ること。2 人が船の中で寝ること。3 心が落ち着かないで、安眠できず横になっていること。 




3593遣新羅使,天平8年,出発,難波,大阪

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

大伴能 美津尓布奈能里 許藝出而者 伊都礼乃思麻尓 伊保里世武和礼

大伴の 御津に船乗り 漕ぎ出ては いづれの島に 廬りせむ吾れ 

おほともの みつにふなのり こぎでては いづれのしまに いほりせむわれ
・・・・・・・・・・・
大伴の御津から船に乗り

漕ぎ出して さて

次はどこにの島に停泊しようか

われわれは
・・・・・・・・・・・
* 「せむ」は、サ変動詞「す」の未然形「せ」に、推量の助動詞「む」が付いたもの、と解した。



3594遣新羅使,天平8年,悲別,恋,難波,大阪

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

之保麻都等 安里家流布祢乎 思良受之弖 久夜之久妹乎 和可礼伎尓家利

潮待つと ありける船を 知らずして 悔しく妹を 別れ来にけり 

しほまつと ありけるふねを しらずして くやしくいもを わかれきにけり
・・・・・・・・・・・
船出に良い潮時を待って

停船しているとも知らないで

残念なことに あわただしく

貴女と別れて来てしまった
・・・・・・・・・・・



3595遣新羅使,天平8年,兵庫県,武庫川,出発,叙景,難波,大阪

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

安佐妣良伎 許藝弖天久礼婆 牟故能宇良能 之保非能可多尓 多豆我許恵須毛

朝開き 漕ぎ出て来れば 武庫の浦の 潮干の潟に 鶴が声すも 

あさびらき こぎでてくれば むこのうらの しほひのかたに たづがこゑすも
・・・・・・・・・・・
朝明けで

船を漕ぎ出てくると

武庫の浦の潮の干潟で

妻呼ぶ鶴の声がする
・・・・・・・・・・・



3596遣新羅使,天平8年,悲別,望郷,加古川,兵庫

[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

和伎母故我 可多美尓見牟乎 印南都麻 之良奈美多加弥 与曽尓可母美牟

吾妹子が 形見に見むを 印南都麻 白波高み 外にかも見む 

わぎもこが かたみにみむを いなみつま しらなみたかみ よそにかもみむ
・・・・・・・・・・・
いとしい妻を形見に偲ぼうと

都麻(つま)の名のある 

印南都麻を近くから見たかったが

白波が高くて

遠くからしか見られないようだ

おぼろげながら

沖合からいつまでも見ていこう
・・・・・・・・・・・



3597遣新羅使,天平8年,叙景,兵庫


[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)

和多都美能 於伎津之良奈美 多知久良思 安麻乎等女等母 思麻我久<流>見由

わたつみの 沖つ白波 立ち来らし 海人娘子ども 島隠る見ゆ 

[わたつみの] おきつしらなみ たちくらし あまをとめども しまがくるみゆ
・・・・・・・・・・・
沖から白波が立って来るらしい

海人の娘たちが乗った船も

島影に隠れて行くのが見える
・・・・・・・・・・・



3631遣新羅使,山口,岩国,土地讃美,恋

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

伊都之可母 見牟等於毛比師 安波之麻乎 与曽尓也故非無 由久与思<乎>奈美

いつしかも 見むと思ひし 粟島を 外にや恋ひむ 行くよしをなみ 

いつしかも みむとおもひし あはしまを よそにやこひむ ゆくよしをなみ
・・・・・・・・・・・
いつか見たいと思ってきた粟島を

遠くからしか見ることができません

恋しい粟島よ

行く方法がないのです
・・・・・・・・・・・




3632遣新羅使,山口,岩国,土地讃美

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

大船尓 可之布里多弖天 波麻藝欲伎 麻里布能宇良尓 也杼里可世麻之

大船に かし振り立てて 浜清き 麻里布の浦に 宿りかせまし 

おほぶねに かしふりたてて はまぎよき まりふのうらに やどりかせまし
・・・・・・・・・・・
この大船からカシの棒杭を打ち立て

浜が清い麻里布の浦に

泊まってゆくことができないものか
・・・・・・・・・・・



3633遣新羅使,岩国,山口,望郷,恋

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

安波思麻能 安波自等於毛布 伊毛尓安礼也 夜須伊毛祢受弖 安我故非和多流

粟島の 逢はじと思ふ 妹にあれや 安寐も寝ずて 吾が恋ひわたる 

[あはしまの] あはじとおもふ いもにあれや やすいもねずて あがこひわたる
・・・・・・・・・・・
粟島は逢はじということでしょうか

貴女のことを思い浮かべて

安眠することも出来ないでいます

これが恋しているということなのか
・・・・・・・・・・・



3634遣新羅使,岡山,山口,岩国,望郷,恋

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

筑紫道能 可太能於保之麻 思末志久母 見祢婆古非思吉 伊毛乎於伎弖伎奴

筑紫道の 可太の大島 しましくも 見ねば恋しき 妹を置きて来ぬ 

[つくしぢの かだのおほしま] しましくも みねばこひしき いもをおきてきぬ
・・・・・・・・・・・
筑紫路の可太の大島よ

しばらくでも見ていないと恋しい妻を

私は郷へ置いてきてしまったのだ
・・・・・・・・・・・



3635遣新羅使,天平8年,山口,岩国,望郷,恋,土地讃美

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

伊毛我伊敝治 知可久安里世婆 見礼杼安可奴 麻里布能宇良乎 見世麻思毛能乎

妹が家路 近くありせば 見れど飽かぬ 麻里布の浦を 見せましものを 

いもがいへぢ ちかくありせば みれどあかぬ まりふのうらを みせましものを
・・・・・・・・・・・
妻の住む家が近くにあれば

いくら見ていても飽くことのない麻里布の浦を

見せたいものですが
・・・・・・・・・・・
* 「見れど飽かぬ」は、土地神礼賛、安全祈願。土地讃美。



3636遣新羅使,山口,上関町,望郷,掛詞

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

伊敝妣等波 可敝里波也許等 伊波比之麻 伊波比麻都良牟 多妣由久和礼乎

家人は 帰り早来と 伊波比島 斎ひ待つらむ 旅行く吾れを 

いへびとは かへりはやこと [いはひしま] いはひまつらむ たびゆくわれを
・・・・・・・・・・・
郷に残る家族たちは

伊波比島 その名のように

斎って待っているでしょう

旅を行く私の早い無事な帰りを
・・・・・・・・・・・



3637遣新羅使,枕詞,山口,上関町,土地讃美,掛詞

[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)

久左麻久良 多妣由久比等乎 伊波比之麻 伊久与布流末弖 伊波比伎尓家牟

草枕 旅行く人を 伊波比島 幾代経るまで 斎ひ来にけむ 

[くさまくら] たびゆくひとを [いはひしま] いくよふるまで いはひきにけむ
・・・・・・・・・・・
草枕で旅ゆく人の

無事を祈ってきたという

その伊波比島

幾代の昔から

斎い続けて来たのだろう
・・・・・・・・・・・



3638遣新羅使,土地讃美,山口,大畠瀬戸,叙景,追想

[題詞]過大嶋鳴門而經再宿之後追作歌二首

巨礼也己能 名尓於布奈流門能 宇頭之保尓 多麻毛可流登布 安麻乎等女杼毛

これやこの 名に負ふ鳴門の うづ潮に 玉藻刈るとふ 海人娘子ども 

これやこの なにおふなるとの うづしほに たまもかるとふ あまをとめども
・・・・・・・・・・・
これがまあ

名高い鳴門の渦潮に

美しい藻を刈るという海女の娘たちなのか
・・・・・・・・・・・



3639遣新羅使,羈旅,山口,大畠瀬戸,追想

[題詞](過大嶋鳴門而經再宿之後追作歌二首)

奈美能宇倍尓 宇伎祢世之欲比 安杼毛倍香 許己呂我奈之久 伊米尓美要都流

波の上に 浮き寝せし宵 あど思へか 心悲しく 夢に見えつる 

なみのうへに うきねせしよひ あどもへか こころがなしく いめにみえつる
・・・・・・・・・・・
波の上で浮き寝をした夜

どうして思ったのか

心悲しく

妻の姿が夢に見えた
・・・・・・・・・・・



3640遣新羅使,羽栗,枕詞,山口,上関町,望郷

[題詞]熊毛浦舶泊之夜作歌四首

美夜故邊尓 由可牟船毛我 可里許母能 美太礼弖於毛布 許登都ん夜良牟

都辺に 行かむ船もが 刈り薦の 乱れて思ふ 言告げやらむ 

みやこへに ゆかむふねもが [かりこもの] みだれておもふ ことつげやらむ
・・・・・・・・・・・
都の方に行く船が欲しい

刈り薦のように乱れ散る

この思いを妻に言告げしたい
・・・・・・・・・・・



3641遣新羅使,山口,上関町,望郷,叙景

[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)

安可等伎能 伊敝胡悲之伎尓 宇良<未>欲理 可治乃於等須流波 安麻乎等女可母

暁の 家恋しきに 浦廻より 楫の音するは 海人娘子かも 

あかときの いへごひしきに うらみより かぢのおとするは あまをとめかも
・・・・・・・・・・・・
家が恋しくなる夜明けの暁に

入りくんだ海岸の方から楫の音がする

海人娘子なのだろうか
・・・・・・・・・・・・



3642遣新羅使,山口,上関町,叙景

[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)

於枳敝欲理 之保美知久良之 可良能宇良尓 安佐里須流多豆 奈伎弖佐和伎奴

沖辺より 潮満ち来らし 可良の浦に あさりする鶴 鳴きて騒きぬ 

おきへより しほみちくらし からのうらに あさりするたづ なきてさわきぬ
・・・・・・・・・・・・
沖の方から潮が満ちてくるらしい

可良の浦で餌をあさっている鶴が

鳴いて騒いでいるのが聞こえる
・・・・・・・・・・・・



3643遣新羅使,山口,上関町,望郷,異伝

[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)

於吉敝欲里 布奈妣等能煩流 与妣与勢弖 伊射都氣也良牟 多婢能也登里乎

沖辺より 船人上る 呼び寄せて いざ告げ遣らむ 旅の宿りを 

おきへより ふなびとのぼる よびよせて いざつげやらむ たびのやどりを
・・・・・・・・・・・・
沖の船の旅人が都へ上る

その船をこちらへ呼び寄せて

さあ 都の妻へ告げてもらおう

今までのわが旅の宿りなどを書いて
・・・・・・・・・・・・



3643S遣新羅使,異伝,山口,上関町,望郷

[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)一云

多妣能夜杼里乎 伊射都氣夜良奈

旅の宿りを いざ告げ遣らな 

たびのやどりを いざつげやらな
・・・・・・・・・・・・
旅の宿りなどを書いて

さあ 都の妻へ告げてもらおう
・・・・・・・・・・・・



3644遣新羅使,大分,中津市,作者:雪宅麻呂,不安

[題詞]佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首

於保伎美能 美許等可之故美 於保<夫>祢能 由伎能麻尓末<尓> 夜杼里須流可母

大君の 命畏み 大船の 行きのまにまに 宿りするかも 

おほきみの みことかしこみ おほぶねの ゆきのまにまに やどりするかも
・・・・・・・・・・・・
大王の御命令のままに

大船の進行にまかせて

浮き寝の宿りをする日々よ
・・・・・・・・・・・・



3645遣新羅使,大分,中津市,望郷,不安

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

和伎毛故波 伴也母許奴可登 麻都良牟乎 於伎尓也須麻牟 伊敝都可受之弖

吾妹子は 早も来ぬかと 待つらむを 沖にや住まむ 家つかずして 

わぎもこは はやもこぬかと まつらむを おきにやすまむ いへつかずして
・・・・・・・・・・・・
愛しい妻は早く帰って来ないかと

わたしを待っているでしょう

沖海の船で漂う身で

海上に休む家もありません
・・・・・・・・・・・・



3646遣新羅使,大分,中津市,不安

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

宇良<未>欲里 許藝許之布祢乎 風波夜美 於伎都美宇良尓 夜杼里須流可毛

浦廻より 漕ぎ来し船を 風早み 沖つみ浦に 宿りするかも 

うらみより こぎこしふねを かぜはやみ おきつみうらに やどりするかも
・・・・・・・・・・・・
沖を避けて浦伝いに漕いで来たが

風の烈しさに入江に逃げ込めないで

遠い沖合で浮き寝をするはめになった
・・・・・・・・・・・・



3647遣新羅使,大分,中津市,望郷,枕詞,不安

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

和伎毛故我 伊可尓於毛倍可 奴婆多末能 比登欲毛於知受 伊米尓之美由流

吾妹子が いかに思へか ぬばたまの 一夜もおちず 夢にし見ゆる 

わぎもこが いかにおもへか [ぬばたまの] ひとよもおちず いめにしみゆる
・・・・・・・・・・・・
妻がどんなに強く思ってくれているからか 

一夜も欠けることなく

貴女を夢に見ています
・・・・・・・・・・・・



3648遣新羅使,大分,中津市,望郷

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

宇奈波良能 於伎敝尓等毛之 伊射流火波 安可之弖登母世 夜麻登思麻見無

海原の 沖辺に灯し 漁る火は 明かして灯せ 大和島見む 

うなはらの おきへにともし いざるひは あかしてともせ やまとしまみむ
・・・・・・・・・・・・
海原の沖合に灯す漁火は

もっと明るくともせ

懐かしの大和島を見よう
・・・・・・・・・・・・



3649遣新羅使,大分,中津市,漂泊,不安

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

可母自毛能 宇伎祢乎須礼婆 美奈能和多 可具呂伎可美尓 都由曽於伎尓家類

鴨じもの 浮寝をすれば 蜷の腸 か黒き髪に 露ぞ置きにける 

かもじもの うきねをすれば [みなのわた] かぐろきかみに つゆぞおきにける
・・・・・・・・・・・・
鴨のように波のまにまに浮寝をすると

黒々としている髪に

飛沫の露が降りている
・・・・・・・・・・・・



3650遣新羅使,枕詞,大分,中津市,望郷,恋

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

比左可多能 安麻弖流月波 見都礼杼母 安我母布伊毛尓 安波奴許呂可毛

[ひさかたの] 天照る月は 見つれども 吾が思ふ妹に 逢はぬころかも 

ひさかたの あまてるつきは みつれども あがもふいもに あはぬころかも
・・・・・・・・・・・・
遥かな彼方に住む恋人よ

天空の月を見るように

どうしても逢えないこのつらさ
・・・・・・・・・・・・



3651遣新羅使,旋頭歌,枕詞,大分,中津市,望郷

[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)

奴波多麻能 欲和多流月者 波夜毛伊弖奴香文 宇奈波良能 夜蘇之麻能宇倍由 伊毛我安多里見牟 [旋頭歌也]

ぬばたまの 夜渡る月は 早も出でぬかも 海原の 八十島の上ゆ 妹があたり見む 

[ぬばたまの] よわたるつきは はやもいでぬかも うなはらの やそしまのうへゆ いもがあたりみむ
・・・・・・・・・・・・
ぬばたまの闇夜を渡る月よ

早くでないか

海原の多くの島々の先から

妻の住むあたりを見届けたい
・・・・・・・・・・・・



3652

[題詞]至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首

之賀能安麻能 一日毛於知受 也久之保能 可良伎孤悲乎母 安礼波須流香母

志賀の海人の 一日もおちず 焼く塩の からき恋をも 吾れはするかも 

しかのあまの ひとひもおちず やくしほの からきこひをも あれはするかも
・・・・・・・・・・・・
志賀島の海人が

一日も欠かさず焼く塩のような

そんな辛い恋を

私はするのでしょうか
・・・・・・・・・・・・



3653遣新羅使,福岡,志賀島,叙景,望郷


[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)

思可能宇良尓 伊射里須流安麻 伊敝<妣>等能 麻知古布良牟尓 安可思都流宇乎

志賀の浦に 漁りする海人 家人の 待ち恋ふらむに 明かし釣る魚 

しかのうらに いざりするあま いへびとの まちこふらむに あかしつるうを
・・・・・・・・・・・・
志賀の浦で漁りする海人よ

家族が待っているだろうに

夜が明けるまで魚を釣っているのか
・・・・・・・・・・・・



3654遣新羅使,福岡,志賀島,叙景,望郷

[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)

可之布江尓 多豆奈吉和多流 之可能宇良尓 於枳都之良奈美 多知之久良思母

可之布江に 鶴鳴き渡る 志賀の浦に 沖つ白波 立ちし来らしも 

かしふえに たづなきわたる しかのうらに おきつしらなみ たちしくらしも
・・・・・・・・・・・・
可之布の入江で鶴が鳴きながら渡って行く

志賀の浦に

沖の白波が立って来るらしい
・・・・・・・・・・・・



3654S

[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)一云

美知之伎奴良思

満ちし来ぬらし 

みちしきぬらし
・・・・・・・・・・・・
満ちて来るらしい 
・・・・・・・・・・・・



3655遣新羅使,異伝,福岡,志賀島,叙景

[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)

伊麻欲理波 安伎豆吉奴良之 安思比奇能 夜麻末都可氣尓 日具良之奈伎奴

今よりは 秋づきぬらし あしひきの 山松蔭に ひぐらし鳴きぬ 

いまよりは あきづきぬらし [あしひきの] やままつかげに ひぐらしなきぬ
・・・・・・・・・・・・
今日からは秋の気配をご披露かな

山の松の蔭に

ひぐらしが鳴いているよ
・・・・・・・・・・・・

【心に残る名言、和歌・俳句鑑賞】
https://blogs.yahoo.co.jp/sakuramitih15/40767523.html?vitality



3656遣新羅使,七夕,宴席,望郷,恋,福岡

[題詞]七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首

安伎波疑尓 々保敝流和我母 奴礼奴等母 伎美我美布祢能 都奈之等理弖婆

秋萩に にほへる吾が裳 濡れぬとも 君が御船の 綱し取りてば 

[あきはぎに] にほへるわがも ぬれぬとも きみがみふねの つなしとりてば
・・・・・・・・・・・・
秋萩が咲いているような私の裳裾が

たとえ濡れてもかまわない

貴方の乗っている船の

その引き綱を手に取りたい

わたしの 彦星よ
・・・・・・・・・・・・



3657遣新羅使,七夕,宴席,望郷,恋,福岡


[題詞](七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首)

等之尓安里弖 比等欲伊母尓安布 比故保思母 和礼尓麻佐里弖 於毛布良米也母

年にありて 一夜妹に逢ふ 彦星も 吾れにまさりて 思ふらめやも 

としにありて ひとよいもにあふ ひこほしも われにまさりて おもふらめやも
・・・・・・・・・・・・
一年にたった一夜だけ

恋人に逢う彦星の君も

私以上に想ってくれているかしら
・・・・・・・・・・・・



3658遣新羅使,七夕,宴席,望郷,恋,福岡


[題詞](七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首)

由布豆久欲 可氣多知与里安比 安麻能我波 許具布奈妣等乎 見流我等母之佐

夕月夜 影立ち寄り合ひ 天の川 漕ぐ船人を 見るが羨しさ 

ゆふづくよ かげたちよりあひ あまのがは こぐふなびとを みるがともしさ
・・・・・・・・・・・・
夕月に照らされる夜空

天の川を漕ぐ舟人の

人影が寄り添う

羨ましく見えるよ

とこしえに幸あれ
・・・・・・・・・・・・



3659遣新羅使,福岡,望郷

[題詞]海邊望月作九首

安伎可是波 比尓家尓布伎奴 和伎毛故波 伊都登<加>和礼乎 伊波比麻都良牟

秋風は 日に異に吹きぬ 吾妹子は いつとか吾れを 斎ひ待つらむ 

あきかぜは ひにけにふきぬ わぎもこは いつとかわれを いはひまつらむ
・・・・・・・・・・・・
やっと秋風だろうかなあ

日に日に吹きつのってくる

私の愛しい妻は

何時還って来るのかと

無事を託した神に

斎い祭りながら

一心に待っているだろう
・・・・・・・・・・・・



3660遣新羅使,福岡,望郷,枕詞,作者:土師稲足,恋

[題詞](海邊望月作九首)

可牟佐夫流 安良都能左伎尓 与須流奈美 麻奈久也伊毛尓 故非和多里奈牟

神さぶる 荒津の崎に 寄する波 間なくや妹に 恋ひわたりなむ 

[かむさぶる] あらつのさきに よするなみ] まなくやいもに こひわたりなむ
・・・・・・・・・・・・
神々しい荒津の崎に

絶え間なく寄せる波のように

妻を想うわが心に寄せる情けの波 

私は貴女にかけがえのない

恋をしています
・・・・・・・・・・・・
* かみ−さ・ぶ 【神さぶ】
自動詞バ行上二段活用活用{び/び/ぶ/ぶる/ぶれ/びよ}
神々(こうごう)しくなる。荘厳に見える。
 古めかしくなる。古びる。  年を取る。 

神らしく振る舞う。神として行動する。

* 荒津の崎=博多湾のあたり。
* あひだ−な・し 【間無し】
あひだ−な・し 【間無し】途切れない。絶え間がない。
ま−な・し 【間無し】形容詞ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
すき間がない。
* 「や」
〔疑問〕…か。
〔問いかけ〕…か。
〔反語〕…(だろう)か、いや、…ない。

* 「わた・る」 【渡る】
[一]自動詞ラ行四段活用{ら/り/る/る/れ/れ}
越える。渡る。
移動する。移る。
行く。来る。通り過ぎる。
(年月が)過ぎる。経過する。(年月を)過ごす。(年月を)送る。暮らす。 
* 「なむ」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形に、推量の助動詞「む」のついたもの。推量・意思・希望・当然・適当・勧誘・湾曲名命令・仮定など辞書に示されている。

 

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3661遣新羅使,福岡,叙景,異伝

[題詞](海邊望月作九首)

可是能牟多 与世久流奈美尓 伊射里須流 安麻乎等女良我 毛能須素奴礼奴

風の共 寄せ来る波に 漁りする 海人娘子らが 裳の裾濡れぬ 

かぜのむた よせくるなみに いざりする あまをとめらが ものすそぬれぬ
・・・・・・・・・・
風と共に寄せて来る波間で漁りする

海人娘子たちの裳の裾が濡れている
・・・・・・・・・・



3661S遣新羅使,福岡,叙景,異伝

[題詞](海邊望月作九首)一云

安麻乃乎等賣我 毛能須蘇奴礼<濃>

海人の娘子が 裳の裾濡れぬ 

あまのをとめが ものすそぬれぬ
・・・・・・・・・・
海人娘子の 裳の裾が濡れている
・・・・・・・・・・



3662遣新羅使,旋頭歌,孤独,恋,望郷,福岡

[題詞](海邊望月作九首)

安麻能波良 布里佐氣見礼婆 欲曽布氣尓家流 与之恵也之 比<等>里奴流欲波
安氣婆安氣奴等母

天の原 振り放け見れば 夜ぞ更けにける よしゑやし ひとり寝る夜は 明けば明けぬとも 

あまのはら ふりさけみれば よぞふけにける よしゑやし ひとりぬるよは あけばあけぬとも
・・・・・・・・・・
天の原を仰ぎ見ながら夜を更かす

えいままよ 一人寝る夜は

このまま明けてもしかたがない
・・・・・・・・・・



3663遣新羅使,福岡,望郷,漂泊

[題詞](海邊望月作九首)

和多都美能 於伎都奈波能里 久流等伎登 伊毛我麻都良牟 月者倍尓都追

わたつみの 沖つ縄海苔 来る時と 妹が待つらむ 月は経につつ 

[わたつみの] おきつなはのり くるときと いもがまつらむ つきはへにつつ
・・・・・・・・・・
沖の縄海苔を繰り取る時のように

貴女は私のくる時を待つのでしょう

その月日は空しく過ぎるばかりです
・・・・・・・・・・



3664遣新羅使,志賀島,叙景,福岡

[題詞](海邊望月作九首)

之可能宇良尓 伊射里須流安麻 安氣久礼婆 宇良未許具良之 可治能於等伎許由

志賀の浦に 漁りする海人 明け来れば 浦廻漕ぐらし 楫の音聞こ 

しかのうらに いざりするあま あけくれば うらみこぐらし かぢのおときこゆ
・・・・・・・・・・
志賀の浦で漁をする海人が

夜が明けて来ると

湊に帰るために舟を漕ぐらしい

楫の音が聞こえる
・・・・・・・・・・



3665遣新羅使,望郷,福岡


[題詞](海邊望月作九首)

伊母乎於毛比 伊能祢良延奴尓 安可等吉能 安左宜理其問理 可里我祢曽奈久

妹を思ひ 寐の寝らえぬに 暁の 朝霧隠り 雁がねぞ鳴く 

いもをおもひ いのねらえぬに あかときの あさぎりごもり かりがねぞなく
・・・・・・・・・・
貴女を想い寝るに寝られないままいると

暁の朝霧に隠れて鳴いています 

雁でしょうか
・・・・・・・・・・



3666遣新羅使,福岡,望郷,漂泊

[題詞](海邊望月作九首)

由布佐礼婆 安伎可是左牟思 和伎母故我 等伎安良比其呂母 由伎弖波也伎牟

夕されば 秋風寒し 吾妹子が 解き洗ひ衣 行きて早着む 

ゆふされば あきかぜさむし わぎもこが ときあらひごろも(「ぎぬ」とも)」 ゆきてはやきむ
・・・・・・・・・・
夕方になると秋風が寒いです

愛しい貴女が洗ったすがしい衣を

帰って早く着たいことよ
・・・・・・・・・・
* 「去れ」は「やって来る。〜になる」。
* 「解き洗ひ衣は「衣服を解きほどいて洗い張りたもの」。



3667遣新羅使,福岡,望郷,漂泊

[題詞](海邊望月作九首)

和我多妣波 比左思久安良思 許能安我家流 伊毛我許呂母能 阿可都久見礼婆

吾が旅は 久しくあらし この吾が着る 妹が衣の 垢つく見れば 

わがたびは ひさしくあらし このあがける いもがころもの あかつくみれば
・・・・・・・・・・
私の旅は久しくなったようだ

この私が着ている

貴女の形見の衣に付いた垢を見ると
・・・・・・・・・・



3668遣新羅使,作者:阿倍継麻呂,恋,望郷,福岡,韓亭

[題詞]到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首

於保伎美能 等保能美可度登 於毛敝礼杼 氣奈我久之安礼婆 古非尓家流可母

大君の 遠の朝廷と 思へれど 日長くしあれば 恋ひにけるかも 

おほきみの とほのみかどと おもへれど けながくしあれば こひにけるかも
・・・・・・・・・・
ここ韓亭(からとまり)は

大王が治める奈良の京と同じ遠の朝廷であるが

留まる日々が長くなると

郷や貴女への恋しい気持がつのります
・・・・・・・・・・



3669遣新羅使,作者:壬生宇太麻呂,望郷,恋,福岡,韓亭

[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)

多妣尓安礼杼 欲流波火等毛之 乎流和礼乎 也未尓也伊毛我 古非都追安流良牟

旅にあれど 夜は火灯し 居る吾れを 闇にや妹が 恋ひつつあるらむ 

たびにあれど よるはひともし をるわれを やみにやいもが こひつつあるらむ
・・・・・・・・・・
旅路にいても夜は灯を燭しているが

家に残る妻は暗闇の中で

私を恋しく想っているのでしょう
・・・・・・・・・・



3670遣新羅使,福岡,韓亭,能許島,恋,望郷

[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)

可良等麻里 能<許>乃宇良奈美 多々奴日者 安礼杼母伊敝尓 古非奴日者奈之

韓亭 能許の浦波 立たぬ日は あれども家に 恋ひぬ日はなし 

からとまり のこのうらなみ たたぬひは あれどもいへに こひぬひはなし
・・・・・・・・・・
韓亭(からとまり)の

能許の浦に波が立たない日はあっても

家に残す貴女を

恋しく思わない日はありません
・・・・・・・・・・

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