ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第十五巻

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3761作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲嘆,自覚,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

与能奈可能 都年能己等和利 可久左麻尓 奈<里>伎尓家良之 須恵之多祢可良

世の中の 常のことわり かくさまに なり来にけらし すゑし種から 

よのなかの つねのことわり かくさまに なりきにけらし すゑしたねから
・・・・・・・・・・・
世の中の普通の道理は

かくの如しということにしよう

自分で蒔いた種とはいえ

恩赦にもれてしまった 
・・・・・・・・・・・



3762作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,滋賀県,大津市,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

和伎毛故尓 安布左可山乎 故要弖伎弖 奈伎都々乎礼杼 安布余思毛奈之

吾妹子に 逢坂山を 越えて来て 泣きつつ居れど 逢ふよしもなし 

わぎもこに あふさかやまを こえてきて なきつつをれど あふよしもなし
・・・・・・・・・・・
愛しい人に逢うという

坂や山を越えて来た

けれどもいない いなかった

だから寂しく泣き暮らしているのさ

逢う術もない毎日を
・・・・・・・・・・・



3763作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,自覚,悲嘆,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

多婢等伊倍婆 許<登>尓曽夜須伎 須敝毛奈久 々流思伎多婢毛 許等尓麻左米也母

旅と言へば 言にぞやすき すべもなく 苦しき旅も 言にまさめやも 

たびといへば ことにぞやすき すべもなく くるしきたびも ことにまさめやも
・・・・・・・・・・・
旅といえば簡単だが

流刑の暮らしはどうしようと

観光も恋もない暗闇ばかり

云いすぎかなあ
・・・・・・・・・・・



3764作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,悲別,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

山川乎 奈可尓敝奈里弖 等保久登母 許己呂乎知可久 於毛保世和伎母

山川を 中にへなりて 遠くとも 心を近く 思ほせ吾妹 

やまかはを なかにへなりて とほくとも こころをちかく おもほせわぎも
・・・・・・・・・・・
山川が間に割込んで遠くなっていますが

私の心はいつも近くにいると想っていてください
・・・・・・・・・・・



3765作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,枕詞,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

麻蘇可我美 可氣弖之奴敝等 麻都里太須 可多美乃母能乎 比等尓之賣須奈

まそ鏡 懸けて偲へと まつり出す 形見のものを 人に示すな 

[まそかがみ] かけてしぬへと まつりだす かたみのものを ひとにしめすな
・・・・・・・・・・・
心に懸けて偲んで下さいと

差し上げた形見のまそ鏡は

決して他人に見せないでくださいね

二人の逢える日が遠ざからないように
・・・・・・・・・・・
* 「まつりだす」〔他サ四〕ものを尊貴の人などの前に出してさしあげる。献上する。たてまつる。進上する。



3766作者:中臣宅守,贈答,配流,恋,狭野弟上娘子

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

宇流波之等 於毛比之於毛<波婆> 之多婢毛尓 由比都氣毛知弖 夜麻受之努波世

愛しと 思ひし思はば 下紐に 結ひつけ持ちて やまず偲はせ 

うるはしと おもひしおもはば したびもに ゆひつけもちて やまずしのはせ
・・・・・・・・・・・
私を愛しいと思うならば

贈る形見のものを下紐で身に結び付けて

絶えることなく思い出してください
・・・・・・・・・・・



3767作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

多麻之比波 安之多由布敝尓 多麻布礼杼 安我牟祢伊多之 古非能之氣吉尓

魂は 朝夕に たまふれど 吾が胸痛し 恋の繁きに 

たましひは あしたゆふへに たまふれど あがむねいたし こひのしげきに
・・・・・・・・・・・
あなたのみ魂は朝な夕なに感じます

でも現身のあなたを求めて

わたしの胸は愛しさに痛みます
・・・・・・・・・・・



3768作者:狭野弟上娘子,恋,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

己能許呂波 君乎於毛布等 須敝毛奈伎 古非能<未>之都々 <祢>能<未>之曽奈久

このころは 君を思ふと すべもなき 恋のみしつつ 音のみしぞ泣く 

このころは きみをおもふと すべもなき こひのみしつつ ねのみしぞなく
・・・・・・・・・・・
近頃は貴方のことを思うと

どうしようもありません

届かない恋を怨みながら泣いています
・・・・・・・・・・・



3769作者:狭野弟上娘子,枕詞,後悔,恋,悲別,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉

ぬばたまの 夜見し君を 明くる朝 逢はずまにして 今ぞ悔しき 

ぬばたまの よるみしきみを あくるあした あはずまにして いまぞくやしき
・・・・・・・・・・・
あの夜せっかくお会いしたあなただのに

翌朝は会わずに別れてしまって

今となってとても後悔しています
・・・・・・・・・・・



3770作者:狭野弟上娘子,福井県,武生市,悲別,恋,女歌,中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

安治麻野尓 屋杼礼流君我 可反里許武 等伎能牟可倍乎 伊都等可麻多武

味真野に 宿れる君が 帰り来む 時の迎へを いつとか待たむ 

あぢまのに やどれるきみが かへりこむ ときのむかへを いつとかまたむ
・・・・・・・・・・・
越前あぢの群れが鳴き騒ぐ原野に

配流されて宿れるあなたあなたが 

赦されてお帰りになる日がいつになろうとも 

お待ちしておりますとも
・・・・・・・・・・・
* 「あぢ」はアジ鴨。「あぢ真野」アジ鴨の棲む原野。


3781作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

多婢尓之弖 毛能毛布等吉尓 保等登藝須 毛等奈那難吉曽 安我古非麻左流

旅にして 物思ふ時に 霍公鳥 もとなな鳴きそ 吾が恋まさる 

たびにして ものもふときに ほととぎす もとなななきそ あがこひまさる

・・・・・・・・・・・・
旅空で物思いする時に 
ほととぎすよ
みだりに鳴くな
想いが乱れて纏まらない
・・・・・・・・・・・・




3782 作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

安麻其毛理 毛能母布等伎尓 保等登藝須 和我須武佐刀尓 伎奈伎等余母須

雨隠り 物思ふ時に 霍公鳥 吾が住む里に 来鳴き響もす 

あまごもり ものもふときに ほととぎす わがすむさとに きなきとよもす

・・・・・・・・・・・・
雨に降られて物思いする時に 
ほととぎすが飛んで来ては 
寂しげに昔を思い出させる
・・・・・・・・・・・・




3783 作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

多婢尓之弖 伊毛尓古布礼婆 保登等伎須 和我須武佐刀尓 許<欲>奈伎和多流

旅にして 妹に恋ふれば 霍公鳥 吾が住む里に こよ鳴き渡る 

たびにして いもにこふれば ほととぎす わがすむさとに こよなきわたる

・・・・・・・・・・・・
旅中のあの子を恋しく想えば 
ほととぎすが
私の住む都の方に
きっと 格別優雅に鳴いて
飛んで来ることだ
・・・・・・・・・・・・




3784 作者:中臣宅守

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

許己呂奈伎 登里尓曽安利家流 保登等藝須 毛能毛布等伎尓 奈久倍吉毛能可

心なき 鳥にぞありける 霍公鳥 物思ふ時に 鳴くべきものか 

こころなき とりにぞありける ほととぎす ものもふときに なくべきものか

・・・・・・・・・・・・
無情の鳥でしかないのだなあ 
ほととぎすは物思いする時ばかり 
鳴くものであるのだろうか
・・・・・・・・・・・・



3785 作者:中臣宅守,天平12年

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[左注]右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌

保登等藝須 安比太之麻思於家 奈我奈氣婆 安我毛布許己呂 伊多母須敝奈之

霍公鳥 間しまし置け 汝が鳴けば 吾が思ふ心 いたもすべなし 

ほととぎす あひだしましおけ ながなけば あがもふこころ いたもすべなし

・・・・・・・・・・・・
ほととぎすよ
間をしばらく置いてくれ
お前が鳴くと私の恋しく思う心が増さってどうしようもない
・・・・・・・・・・・・


<出典・転載、以下[竹取翁と万葉集のお勉強]より。>

花鳥の使ひの歌七首

天平宝字二年(758)二月に万葉集後編「宇梅乃波奈」が完成したとしますと、政治情勢からその万葉集の中でそれと判るように橘諸兄とその子の橘奈良麻呂、また丹比一族や大伴一族の関係者を、歌を詠って悼むことは出来ません。擬(なぞら)えて詠うだけです。
狭野弟上娘子への贈答歌五十六首が、擬えて丹比国人への万葉集後編「宇梅乃波奈」の編纂を引き受けた時の編纂の思いとしますと、花鳥の使ひの歌七首はその万葉集後編「宇梅乃波奈」の編纂がなった後に「寄花鳥陳思」と記すように花と鳥に何かを擬えて想いを詠う歌です。その時、擬ふ花は橘の花で、鳥は過去の時代を乞う霍公鳥(ほととぎす)です。
先の「長屋王の変」のときに大伴旅人と藤原房前の擬える相手が長屋王一族や元正上皇であるならば、「橘奈良麻呂の変」のときに花鳥の使ひの歌七首の擬える相手は橘一族と孝謙上皇ではないでしょうか。そして、万葉集です。
3784

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]許己呂奈伎 登里尓曽安利家流 保登等藝須 毛能毛布等伎尓 奈久倍吉毛能可

[訓読]心なき鳥にぞありける霍公鳥物思ふ時に鳴くべきものか

[仮名],こころなき,とりにぞありける,ほととぎす,ものもふときに,なくべきものか

[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

[校異]

[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,怨恨,狭野弟上娘子
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3784

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)

許己呂奈伎 登里尓曽安利家流 保登等藝須 毛能毛布等伎尓 奈久倍吉毛能可

心なき 鳥にぞありける 霍公鳥 物思ふ時に 鳴くべきものか 

こころなきとりにぞありけるほととぎすものもふときになくべきものか
・・・・・・・・・・・・
無情の鳥でしかないのだなあ
ほととぎすは物思いする時ばかり 
鳴くものであるのだろうか
・・・・・・・・・・・・

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