どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち?

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総合確率法

 大熊・関両委員の公開質問状にあった、「総合確率法」について、簡単な補説を書きます。総合確率法は、利根川をはじめ、久慈川・那珂川、多摩川で採用されていますが、それほどメジャーな方法ではありません。
  • (注)総合確率法というのは、貯留関数法という流出解析(大雨が降った時にどんな規模の洪水になるかという計算)をベースにして、200年に1度とかの洪水流量を求めるものです。
  •  したがって、その計算方法の確かさ(信頼性)は、①ベースとなる貯留関数法の信頼性、②総合確率法の「固有の」信頼性、と2つのレベルで吟味が必要です。

  利根川水系(八斗島、群馬県伊勢崎市)で発生する200年に1回の洪水流量(1/200流量)は、総合確率法で試算すると、21,200㎥/秒になるいう算定が、河川整備基本方針(2006.2.14策定)に掲載されています。以下、手順をおって、その考え方を説明します。

 総合確率法では、最終的に超過確率と洪水流量の関数式を作成することを目的とします。グラフにすれば、確率が小さくなるに従って、洪水流量が大きくなるという形の関数式です。この関数式を求めるには、縦軸に確率、横軸に洪水流量をとった座標軸上に幾つかの点をマッピングできれば、それを標本サンプルとして、理論上の関係式を求めることができます。
 なお、確率といいましたが、正確には“超過確率”といいます。何年かに1回のレベルの洪水とか、大雨という場合には、単なる確率ではなく、超過確率という表現を用います。一種の専門用語と思ってください。「超過」という表現に戸惑うかもしれませんが、専門用語ではそう表現するんだとご理解ください。

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 超過確率と洪水流量の関数式を導き出すために、座標軸にいくつかの(超過確率、洪水流量)の組み合わせを暫定値としてマッピングするための基礎作業をしていくのですが、これは2つの段階に分かれます。第1段階は、雨量→洪水流量という視点で検討する段階、そして第2段階は、洪水流量→雨量→超過確率という流れで検討する段階です。それぞれの段階の概略を予め示すと、下記の通りです。
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1段階から、少し丁寧に述べてみます。
まず、はじめに求めるのは1/200豪雨です。200年に1回の洪水のピーク流量を求めるのに際し、まずは200年に1回の豪雨が何mm豪雨なのかを統計処理で求めます。河川整備基本方針を策定する際には、流域平均3日間雨量で319mm豪雨が1/200豪雨とされました。
大雨の時に、全流域で均等に319mmの雨が降るということはありません。200mmのところもあれば、450mmのところもあるでしょう。しかし、利根川流域を平均して、3日間で319mmの大雨となる場合が200年に1回の大雨だというのが、この統計処理の結論です。
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話を戻します。
河川整備基本方針では、流域で平均して319mmの大雨になるのが、200年に1回の大雨(1/200豪雨)とされました。この時、統計処理に用いたデータは1901(明治34)年から1974(昭和49)年のデータでした。つまり、1975年以降の降雨データが入っていません。なぜ、2006年策定の河川整備基本方針でそんな統計処理をしたのか、詳細は明らかではありませんが、とにかく、河川整備基本方針の策定時点では、1901〜74年のデータを用いています。
  • (注)その後、国土交通省は1/200豪雨は336mmという、新しい数値を発表します(H23.9)。用いたデータは1926(大正15)〜2007(H19)までの82年間、サンプル洪水は68洪水です。従来は1/300豪雨であった336mmが、現在では1/200に相当するという立場ですが、この数値の変更により河川整備基本方針を変更するには至っていないので、以下、1/200豪雨=319mmとの見解に基づき、話を書きます。
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『利根川八斗島地点 基本高水ピーク流量の検討に関する資料』 国土交通省H23.9
 
 次の手順は、統計処理によって求めた1/200豪雨から1/200洪水を求めるという作業です。ここで用いるのは、貯留関数法という流出解析の手法です。貯留関数法では、降雨と洪水という自然現象を
  • ① 流域に降った雨が次第に河川に流出していく。
  • ② 河川に流出した洪水流量が下流に下るにつれて合流し、洪水流量が増大する。
という2つの過程に分けて、洪水という自然現象を把握します。①の過程を流域モデル、②の過程を河道モデルといいます。①の流域モデルでは、流域を流出域・浸透域という2つに区分し、それぞれの区域からの河川流出量を計算するという方法をとります。それは雨が降った場合でも、土壌が降雨を吸収する割合(逆に言うと、河川に洪水として流れ出ていく割合)が異なるという点を処理するための工夫です。この工夫が妥当かどうか、争いがありますが、今回はこの話は省略します。

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  話を総合確率法に戻します。
 話が少し込み入ったのでおさらいしますと、まず手順1として、統計処理によって200年に1回の豪雨(超過確率1/200豪雨)は319mmという結論が出ました。その319mm豪雨から、1/200洪水を貯留関数法によって求めるわけです。しかし、そんな大きな豪雨はたびたび記録されるものではありませんから、もし実際に観測された319mm豪雨だけをサンプルにして、対応する洪水を試算する場合には、降雨パターン(時間的分布、地域的分布)が変われば洪水流量は変わってくるという点を考慮できません。
しかし、基本高水で問題となるようなレベルの大雨はたびたび記録されるものではありませんから、それに相当するような豪雨のサンプルが実際には複数存在しません。そこで、仮想の319mm豪雨をたくさん作って、それをサンプル豪雨とするという方法が選ばれます。この過程で登場するのが、引き伸ばし計算です。実際に観測された豪雨を「水増し」して、たくさんの319mm豪雨を作るんです。
利根川の場合には、100mm以上を記録した31豪雨(1901〜74)を用いて、31個の319mm豪雨を作り出します。この引き伸ばしというサンプル洪水の作成方法が、科学的な基礎をもつものなのかについては、疑問も示されています。
そうした「不確かな方法」である引き伸ばし計算を用いて作成した31個の319mm豪雨を、洪水流量に変換します。方法は貯留関数法です。そして、各パターンの319mm洪水を手がかりに、全31パターンの「降雨→洪水流量のグラフ」を作成します。

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なお、31個パターンの洪水に対応する319mm洪水の平均値は17,971㎥/秒です。1/200流量として、この平均値17,971㎥/秒を採用することも十分合理的な推論で、実際、八ッ場ダムの洪水調節能力を600㎥/秒とした従来の推定値では、平均を取っています。
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 八ッ場ダムの洪水調節効果については、この平均値616㎥/秒を採用しているのですから、1/200流量っも同一表内の17,971㎥/秒を採用するほうが合理的にさえ思いますが、なぜか第2段階の作業が始まります。 
 第1段階は雨量→洪水流量という視点での検討でした。この後、視点を変えて、第2段階では「洪水流量→雨量→超過確率という視点での検討」を行います。グラフで言うと、縦横の関係が入れ替わった検討です。
総合確率法は、最終的に(超過確率、洪水流量)のグラフの作成が目的ですので、総合確率法の中核部分はここからです。中学生の時、1次関数(直線式)を習います。関数の形が直線だとわかっていれば、2つの点の座標がわかれば、それを手がかかりに関数式を求めることができます。話はもう少し複雑ですが、その要領で、関数式を求めるのです。
ここで、2段階の作業が必要になります。
引き伸ばし計算で31個のサンプル洪水を作ったことで、確率=雨量→洪水の関係は31パターンができました。そうすると、例えば、「10,000㎥/秒洪水は何mm豪雨の時に生じて、それはどれくらいの確率で生じるの?」と尋ねられた時に、今の状況では31個の答えとなります。しかし、この状況では最終的に求めたい「超過確率と洪水ピーク流量の関数式」をつくるためのマッピングはできません。ある洪水流量はある確率で起こるという1:1対応の関係にしないと関数式を作る基礎作業としてのマッピングができないからです。つまり、洪水流量と確率との関係が1:31になってしまっている現在の状況を、何とか1:1の関係に修正する作業が必要なんです。
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そこで、総合確率法は「平均値」を求めるという方法で処理します。このとき、既に手順1で「雨量と超過確率の関係式」が求まっているという状況を利用します。例として、10,000㎥/秒洪水を考えます。31サンプルで、10,000㎥/秒洪水を引き起こす降雨量は異なるわけです。そこで、
  • それぞれ、何mm豪雨が10,000豪雨を引き起こすのか。
  • その豪雨は、手順1の“超過確率―雨量関係式”でどのくらいの確率なのか。
  • その31個の超過確率を平均して、10,000㎥/秒洪水の超過確率(暫定値)とする
という手順です。

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こうして、ある洪水流量はこれ位の確率で生じるという暫定値を求めます。ここで暫定値を決定する時に、「確率の平均をとる」という方法が妥当かどうか、納得しがたいものがあります。
  • (注)この点はかなり細かい話になりますが、平均を取るという方法で、ある超過確率に対応する洪水ピーク流量の値(暫定値)を決定することができるのは、サンプルとして集めた31パターンの降雨パターンの発生確率・頻度が等しい確率という場合です。この点は、日本学術会議で、沖大幹・東京大学教授も述べています。
  • この場合には、流量×発生頻度という計算過程を省くことができるので、平均値を用いて、超過確率と洪水流量の関係を整理することができます。2/21付けの「意見書」で大熊・関委員が述べているのは、こういう話です。
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最後は、この暫定値としての(超過確率、洪水流量)という関係をマッピングして、マッピングされた点を手がかりに、超過確率・洪水流量の関係式を求めます。図で言うと、オレンジの線がそれです。
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以上のように求める総合確率法の計算ですが、この計算の中で
  • ① 引き伸ばし計算というサンプル洪水の作成方法は妥当か。
  • ② 貯留関数法は、本当に正しく洪水流量を計算できるのか。
    • ア 左辺と右辺の次元の違い
    • イ 同じ降雨量でも洪水規模は全然違ってくるのに、それを係数2つ(k、p)のシンプルな数式で作られている為、洪水ごとに再現性の精度が異なってくること
    • ウ 観測されているレベルでの”中規模洪水”からパラメータ(定数k、p)を算出しても、そのパラメータで、大規模洪水を算定することはできない
    • エ 浸透域・流出域という2槽式タンクでモデル化するため、飽和雨量を境に、突然、流出率がギアチェンジする形になるが、それは自然現象として妥当か。
    • 【参照1】 http://blogs.yahoo.co.jp/kajiken76xyz/61812108.html
    • 【参照2】 http://blogs.yahoo.co.jp/kajiken76xyz/61826196.html
  • ③ 「確率の平均を採る」という方法は妥当か。換言すれば、サンプル降雨の発生確率・頻度が等確率という過程に、根拠はあるのか。
について、科学的な基礎がなければ、最終的な計算結果は信用できません。しかし、その基礎が欠けている疑いがあるというのが、大熊・関両氏が考えている疑問点です。この点は私も同様に思います。

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