Gladius Dei

落ち着いたら、能登半島に旅行しようとおもう。大したお金は落とせないけど。

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有名すぎる曲を再発見

11月25日(土) 17時開演 


マリス・ヤンソンス指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ドヴォルザーク《交響曲第九番「新世界より」》
ストラヴィンスキー《春の祭典》

京都コンサートホール 一階十五列


私がヨーロッパのオーケストラの響きに魅せられるようになったのは、オイゲン・ヨッフム率いるコンセルトヘボウ管弦楽団の演奏会を聴いたのがきっかけだった。いまでも、ヨッフムのつかっていた指揮台の鮮やかな赤色とともに、東京文化会館の四階席に響いてきた、ブルックナーやヴァーグナーの響きをおもいだすことができる。

そんな大恩あるコンセルトヘボウだけれど、この演奏会にいくかどうか、かなり迷った。今秋は、新国立劇場の《イドメネオ》にはじまって、昨夜のシュターツカペレ・ドレスデンまで、五回の音楽会にいっている。コンセルトヘボウを聴きに、京都まで出向くべきかどうか。しかも、曲目が・・・。はっきりいって、いまさら聴きたくない二曲がならんでいる。

そんな私にチケット購入ボタンを押させたのは、好奇心だった。ヤンソンスがコンセルトヘボウをどう指揮するのか知りたかった。この指揮者の演奏会には、ミュンヘンに住んでいたころ、何回も足を運んだけれど、最近は、バイエルン放送交響楽団以外のオーケストラとの演奏を聴いたことがなかった。それに、ドヴォルザークも、ストラヴィンスキーも、私の好みではないにしても、ヤンソンスには合っているにちがいない。

コンセルトヘボウは、ウィーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンなどとともに、響きのすばらしさで知られている。光沢のあるつややかさと重厚な深さ。パンフレットにもあるように、「ベルベットのような弦、黄金の金管、類希な個性的音質をもつ木管」は、人々を魅了しつづけてきた。そんな極上の響きが、曲の冒頭から会場に流れた。弱い音ではあるが、充実した響きが会場を充たした。あの緊張と充実こそ、私が演奏会にもとめているものかもしれない。

ヤンソンスの《新世界》、きっと、パワー全開で、重戦車のような演奏だろうとおもっていた。コンセルトヘボウの機能性を前面に出すにちがいないとおもっていた。しかし、予期に反して、ずいぶん洗練された演奏だった。オーケストラの巧さを感じさせながらも、繊細で優美な響きが活かされている。たとえば――聴かせどころではあるのだが――第二楽章の中間部、まるで湖畔にたたずむ貴婦人がシルクのハンカチをぬらしているといった風情。はかなく、こわれやすい美しさをあれほど見事に表現するとは・・・。

もちろん、コンセルトヘボウの重厚な響きも、充分に堪能することができた。とくに第四楽章は、予想を超えた迫力で、ただただ釘付けになっていた。金管の輝かしさ、勇ましく、それでいてどこか切ない響き。それをささえる弦のシルクのような光沢。もう、なにもいうことはない。至福のひととき。

ヤンソンスは、昨年の来日公演で見せたベートーヴェンの《交響曲第七番》のように、いわばロシア臭い演奏をするのは、もちろん、得意。かとおもえば、今日のように、有名すぎる作品の高貴な姿を、あざやかに再現してみせることもできる。細部をおろそかにすることなく、といって、全体を見失うこともない。だから、安定感をたもったまま、作品のもつさまざまな面を、聴衆に呈示することができる。オーケストラの美質を活かす手腕も大したものだ。そうしたバランスの妙が、あちこちのオーケストラから呼ばれている理由なのかもしれない。

アンコールは、ブラームスとドヴォルザーク。まだ十九時まえだし、あともう一時間くらいアンコールをやってくれればいいのにとおもってしまった。

* * * * *

今日は、コンビニエンス・ストアには寄らず、まっすぐ地下鉄の北山駅まで歩いたが、途中で見知らぬ若者に声をかけられた。どうやら、ドイツにいくまえに、ある人の代理で、半年だけ出講していた芸大の学生らしい。あの講義では、「芸大生たるもの、展覧会でも演奏会でも、とにかく実物に接しなさい」と口を酸っぱくしていっていた。若者は、その教えを守った結果、演奏会中毒になったそうだ。合掌。

閉じる コメント(18)

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> *** さん、今秋はこれでおわりです。夫婦でいったのもありますから、ちょっと、合計金額は考えたくないですね・・・。しかし、充実した演奏会ばかりで、日本にいながらにして、こんな経験ができるとは、ありがたいかぎりです。

2006/11/26(日) 午後 1:38 kal*s*974 返信する

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ヤンソンスはご指摘の昨年のベートーヴェンの第7をTVで眉をひそめましたが、想像以上に懐が深いのかもしれませんね。よく考えて考えてみるとあのニューイヤーでウィーン・フィルを振ってますし、実演に触れるべき人なのかもしれません。演奏会中毒の学生を生み出すということは相当説得力のある講義であったということの証明ですね。講義する立場ではちょっと嬉しい話ではないでしょうか。

2006/11/26(日) 午後 3:26 白髪ばっは 返信する

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>白髪ばっはさん、ヤンソンスは、あまり当たりハズレのない指揮者かもしれません。いつも丹念に準備をしていそうな感じをうけます(まあ、当り前のことなんでしょうが、細部まで考え抜いていそうな雰囲気です)し、あの爆発力も大したものです。とはいえ、私は、まだいまひとつ、熱狂的に惹きつけられたことがないのですが・・・。でも、昨日のような演奏がつづくと、きっとファンになってしまうでしょうね。どうやら、日本が好きなようなので、また来るでしょう。ぜひ、実演を聴いてみてください。

2006/11/26(日) 午後 9:51 kal*s*974 返信する

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学生に声をかけられたときは驚きましたが、やはり、うれしかったです。説得力はともかく、きっと、おなじようなことを、くどくどいっていたにちがいありません(苦笑)。

2006/11/26(日) 午後 10:25 kal*s*974 返信する

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> *** さん、いいですね。うらやましい・・・。私は、妻がほかの番組を見たいというので、その番組に興味はないし、自分の部屋にやってきました。 《春の祭典》のような曲は、たしかに、実演で聴きたいですよね。《ハンガリー舞曲》はたぶん《六番》でしたけど、《スラヴ舞曲》は何番だっただろう。《十番》ではなかったですが。 学生が演奏会中毒になると大変ですよね。ああ、アルバイトに追われる日々。合掌。

2006/11/26(日) 午後 10:28 kal*s*974 返信する

ヤンソンス、去年ベートーヴェンをやっていたのですか?しかもテレビ放送していたとは!知らなかったです…。/それにしてもその学生さんのお話し、素晴らしいですね。先生冥利に尽きるのではないでしょうか。僕も音大生の友人は沢山いますがとにかく自分の演奏だけでコンサートに行く友人は少ないです。もっと若い人が実物に接する姿勢を持ってほしいものです。

2006/11/26(日) 午後 11:42 [ mar*in*bba*o ] 返信する

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> *** さん、アーノンクールは、《三十九番》の後半と《四十番》、それに《四十一番》の第四楽章だけ観ました。チャンネル権争奪戦がうかがわれて面白いでしょ(笑)。 《春の祭典》ですが、実は、正直いって、あれこれいうほど聴いていないので、感想をひかえたんですよ。「ぞくぞくするような」演奏ではありましたが。 そうそう、「熱い」といえば、チョン・ミョンフンのベートーヴェン全集は、近年稀なくらい「熱い」演奏だそうですよ。すこし気になっています。

2006/11/27(月) 午前 8:29 kal*s*974 返信する

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>マルさん、バイエルン放送交響楽団との来日公演を放映していました。/最近は、身銭を切っていろんな経験をしようとする学生がすくなくなりましたね。芸大生は、おっしゃるように、内輪の展覧会や演奏会で満足しているし、ふつうの学生は本を買わなくなりました。決して好奇心を失ったわけではないのですが・・・。そんなわけで、あの講義ではいろいろうるさくいいました(苦笑)。展覧会・演奏会レポートも課したし(鬼)。それにしても、聞く耳をもってくれた学生がいるのは、ほんとうにうれしいことです。

2006/11/27(月) 午前 8:31 kal*s*974 返信する

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いよいよRCOの日本公演が始まりましたね!僕にとっては、待ちに待った、という感じです。「新世界より」はライヴ版のCDを持っていますが、CDでも素敵な演奏が堪能できます。ましてや生であれば・・・。今週末、川崎の公演を聴きに行ってきます。新世界より、と、ベートーヴェン。音のよく鳴る良いホールなので、アムステルダムで堪能したあの夜よ再び、という気分です。あまり期待しすぎも怖いですが・・・(>_<)

2006/11/28(火) 午前 0:38 [ nakkun ] 返信する

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恋人と再会するような気分でしょうか。この組合せで《新世界》の CD が出ているのですか。しかもライヴ。買おうかな(笑)。引越しのときに大量に CD を処分してしまったので、《新世界》はフリッチャイ盤くらいしか残ってないんですよ。余談ですが、3日にまた東京にいくので、「もう一度コンセルトヘボウを」とおもったのですが、全席売切れでした(悲)。川崎公演、どうぞ、堪能してきてください。

2006/11/29(水) 午前 6:30 kal*s*974 返信する

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そうですね、恋人との再会、確かにそんな気分かも♪3日の東京公演は、内田光子さんでモーツァルトに、マーラーですから、これは絶対聴きたい!と電話かけまくりましたが、30分で売り切れました(T_T)。新世界よりのライヴ版CDは、2003年6月のライヴ収録です。一曲だけですので短いですが、お求め安い価格になってますよ(^_^)。是非是非!

2006/11/30(木) 午前 0:37 [ nakkun ] 返信する

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コンセルトヘボウのマーラーは魅力的ですよね。内田光子も、最近、波に乗っているようなので、気になります。それにしても、三十分で完売ですか・・・。さすが、東京・・・。川崎公演、どうぞ堪能してきてください。 CD は、お話をうかがって、ますます気になってきました。どうしよう、これから、 TOWER か HMV のサイトをのぞこうかな。でも、一枚で済むことはないだろうし、危険だなあ・・・。

2006/12/1(金) 午後 8:55 kal*s*974 返信する

kalosさん>「鬼」というくらい大学の先生には厳しくしてもらったほうがいいと思います。大学生、勉強しない連中は本当に何も勉強しないですから。適当なレポートを適当に見て単位を付ける先生もいるようですが、kalosさんを見習ってもらいたいものです(笑)。

2006/12/3(日) 午後 8:33 [ mar*in*bba*o ] 返信する

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マルさん、ごめんなさい。私、めちゃくちゃ甘いです(爆)。とくに、教養科目の場合は、ほとんど通しちゃいます。知的好奇心とか、学習意欲を育みたいとおもって、授業では頑張るんですけど、レポートや試験は、もう、どうでもよくなっちゃって(苦笑)。

2006/12/3(日) 午後 11:36 kal*s*974 返信する

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kalosさん、TBありがとうございます。よかったんだけど・・・なんて文句言っているのはボクくらいですね。同じコンサートにお出かけになった他の方のレビューを読むとポイントは案外、外していないと思うのですが3曲(+アンコール)聴くと、これが・・・。ボクもCD買って再発見してみようと思います。

2006/12/4(月) 午前 5:49 irigomi45 返信する

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IRIGOMI さんの感想は、ベートーヴェンのせいかもしれない、とおもいながら読んでいました。とくに、《第八番》ですからね。 実は、私、ヤンソンスの演奏するベートーヴェンやブラームスを聴いて、それほど満足したことがないんです。なにか違和感を覚えてしまって・・・。なので、ほんとうは、川崎公演にもいって、その辺を確認したかったんですけどね。 とはいえ、今回は、超有名曲を再発見できただけでも大きな収穫でした。

2006/12/6(水) 午前 7:59 kal*s*974 返信する

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ロイヤル・コンセルトヘボウのヴィオラの金丸葉子さんとクラリネットのアルノ・ピータースさんと江尻南美さんのトリオでの公演2回聴きました。ツアー終了後の時間をさいてのコンサートということでしたが、3人の息のあった軽やかで、でも高度な芸術を感じるヨーロッパで聴いているような錯覚に陥るすばらしいトリオでした。

2006/12/10(日) 午後 8:27 miumiu 返信する

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すばらしい演奏会だったのですね。いいなあ。うらやましい。江尻さんの演奏はぜひ一度拝聴したいのですが、なかなか機会にめぐまれません。先日も、「東京にいくのが一日ずれていたら」と何度おもったことでしょう。ちょっとしたタイミングなんですけどね。

2006/12/11(月) 午前 9:39 kal*s*974 返信する

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