ソウル・ブルース

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 フィラデルフィア(愛称「フィリー」)にはまだ行ったことがない。ニューヨークから、アムトラックなら約1時間半。3度目のニューヨーク訪問を果たした際には、是非立ち寄ってみたい街である。

 なぜなら、雑誌『レコードコレクターズ』2003年1月号のフィリー訪問記を読んでしまったから。
 「アフロ・アメリカン・ミュージアムの4階は凄い。常に70年代のフィリー・ソウルが流れっぱなし。アーティスト写真やジャケットも飾られ、オージェイズやスリー・ディグリーズ、テディ・ペンターグラス、MFSBなど、さながらゴールド/プラチナ・ディスクの展示会場と化している」のだそうだ。1年前に火事に遭ったが、数々のヒット曲を送り出したシグマ・スタジオを含めて、ここはフィリー・ソウル崇拝者にとっての‘聖地’なのである。

 フィラデルフィアは黒人が非常に多い街だが、「自由の鐘」と独立宣言起草の地として知られ、どこか垢抜けた雰囲気があるといわれている。この地で1970年代前半、ギャンブル/ハフ(やトム・ベルなど)が生み出した都会的で洗練された一連のソウル・ミュージックは、その後のポピュラー音楽界に絶大な影響を与えてきた。
 昨年も、日本ではPIR(フィラデルフィア・インターナショナル・レコード)のリイシュー盤が大挙して出たばかり。フィリー・ソウルがこんなにも後々まで語られ、再評価される事など、夢中になって聴いていた当時には想像もつかなかったのだが…。

 私には、「デジャヴ(?)」とでも言いたくなるほど、以前からずっと脳裏に浮かんでくる光景がある。
 それは1973年か74年。蒸し暑い夏の日の昼下がり、場所はフィラデルフィアのゲットー(黒人街)だ。映像は全体に白く霞んでいるのだが、子供たちが路上で遊んだり、消火栓で水を浴びたりしているのが見える。スタイリスティックスの‘Children of the Night’(#1)のバックで流れるような、子供たちのざわめき。
 そしてBGMにはいつも、スピナーズの‘Ghetto Child’(#2)が聴こえているのである。

 スピナーズ(イギリスでは「デトロイト・スピナーズ」)は、フィリー・ソウルのアーティスト群ではあまりに過小評価されてきたグループだ。かつて『Rolling Stone』誌のライターの一人が、彼らをフランソワ・トリュフォーの映画になぞらえ、「穏やかでゆったりしているけど、時を経るに連れて高い評価を得るようになる」と評したことがある。
 事実、『Spinners』『Mighty Love』『Pick of Litter』といったフィリー・ソウル全盛時代に残した初期の作品群の輝きは、何十年たっても色褪せることがない。

 #1 スタイリスティックスの2枚目のアルバム‘Round 2’に入っている。
 #2 スピナーズのアトランティック移籍第1弾‘Spinnes’(写真)に収められたメッセージソング。

 ちなみに今年、通販で安物のマルチプレイヤーを購入、アナログをCD化できるようになった。長年眠っていたアナログレコードの山から真っ先に取り出してみたのは、やはり70年代前半のソウル・ミュージックであった。

 

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