HKの音楽夜話

在京オーケストラの定期公演を中心に、コンサート、オペラのレビューを掲載します。

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さきほどN響アワーでリサ・バティアシュヴィリのショスタコが放送されました。改めてすごい。1月の日記( http://blogs.yahoo.co.jp/kamata60/archive/2009/01/10 )で絶賛したが、印象は全く変わらない。彼女のあの広いNHKホールに響き渡る鈴が鳴るようなハイトーンはテレビでは再現できないが、厳しくも美しい、電気が走るような音楽は十分に楽しめた。西村さんもたまげておられたが、そうだろう。あの日の会場ではほとんどの人がたまげた。

年明けに始まる2009年ベストソリスト投票の最右翼だろう。ひっぱりだこで忙しいんだろうが、来年も呼んでほしい。もう何年も先までエンゲージメントがつまってるんだろうなあ。。。

昨日、新国立劇場のオペラトーク「ヴォツェック」を聴いてきた。お話は、指揮のハルトムート・ヘンヒェン氏、演出のアンドレアス・クリーゲンブルク、進行は東京大学の長木誠司氏。

クリーゲンンブルク氏は、今回の演出意図について、舞台上にある人、物、できごとはすべてヴォツェックの視点から見たものだと説明した。ヴォツェックにとって美しく見えるのはマリーと子供だけで、他の人物はすべて醜悪で怪物のように見えるらしい。それから舞台前面には水が配置されるとのこと。最近、新国立劇場では水を使った演出が多いのでまたかといわれそうですが、、、と前置きしたところで会場から笑い。そういえば、オテロもそうだった。そして、舞台進行には「黒子」が活躍するらしい。彼の話を総合すると、貧困と社会階層による悲劇の再生産と“No Exit”というのがテーマのようだ。ちょっとペシミスティックだがまあしょうがないか。今回のプロダクションはバイエルン州立オペラとの共同制作で、すでにミュンヒェンでは公開されている。その映像を見る限り、非常におもしろそうだ。

ヘンヒェン氏は、作品の音楽的特徴について解説。おもしろかったのは、アトーナルな音楽が支配する中で、2幕1場で全曲を通じただ一度だけC-durの主和音が出てくる箇所、ヴォツェックがマリーに給料を渡す場面(116-124小節)だが、ここについて、ヴォツェックは、家族に貧乏で不自由な思いをさせていることに常々罪悪感を感じており、お金を渡す瞬間だけ彼はそういうストレスから開放されるんだという解釈を述べておられたところ。なるほど、そういう見方もあるわけだ。

ベートーヴェンの第6シンフォニー、シューマンのガイベルによる3つの歌op.30、シュトラウスのサロメなどからの引用についても解説があった。ベートーヴェンとサロメはすぐ分かるが、シューマンはこれまで気づいたことがなかった。どこなんだろう??

バロックの舞踊組曲、パッサカリア、フーガ、ソナタなど厳格な楽式が、断片的なエピソードを並べたような台本にドラマとしての一体感を与えているというのは、いろんな研究者が指摘し、また我々聴き手も直感するところ。歌唱法については、シェーンベルクが創始したSprechgesangをさらに発展させ、ヘンヒェン氏によると、語りと歌との間に4段階の表現があるという。彼の言葉をそのまま使うと、1 sprechen, 2 etwas gesungen, 3 halb gesungen, 4 ganz gesungen ということらしい。こうしたsprechenのテクニークを使うのは登場人物の中でもいわゆる下層階級に属するキャラクターだけだという指摘はおもしろい。恥ずかしながら今まで見過ごしていた。

音楽の例示として、1幕3場のヴォツェックとマリーの場面(363-483小節)、1幕5場の鼓手長とマリーの場面(666小節から幕切まで)、3幕2場のマリー殺害場面(73-108小節)が演奏された。演奏は、今回アンダースタディに入っている萩原潤、並河寿美、成田勝美の3氏、ピアノは小埜寺美樹さん。ほんの数メートルの距離で聴くと、みなさんすごい声だ。プロフェッショナルというのは、我々の想像をちょっと超えるところで仕事をしている。これだけのメンバーをアンダースタディにしているのはすごくないだろうか。新国は、呼ぶ歌手についてはすごいと思う。その本番歌手たちも後ろの方の席で興味深そうに聴いておられた。

最後にヘンヒェン氏から、いかがでしょう、美しい音楽ですね、シュトラウスやヴァーグナーなど後期ロマン派の音楽をお聴きになるつもりでお越し下さい(のような意味)の発言があった。賛成。むずかしく構えなくても、この音楽、直感的に美しいと思う。

いつものようにホワイエで行われたが、ほぼ満席。200人くらいの人が来ていただろうか。

NHK音楽祭・ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
2009年11月4日(水) NHKホール
指揮:リッカルド・シャイー
ピアノ:キット・アームストロング
バッハ:ピアノ協奏曲 第1番
マーラー:交響曲 第1番「巨人」

まず、キット・アームストロング君。17歳だそうです。東洋系の顔立ちでまだ華奢な体。ピアノの他にインペリアルカレッジ・ロンドンで数学を勉強中のマルチタレント。粒の揃ったタッチで美しいバッハを聴かせました。ブレンデルに教わっているそうですが、独特のロマンティックな表現を聴くと、さもありなん。ただ、その表現が完全に自分をものになっていて内側から湧き出ているかというと、それはこれからの課題というところでしょうか。しかし、現時点でも終楽章でみせたリズムのセンスなど、きらりと光るものは十分にあります。早熟の天才というわけではなさそうですが、こういうタイプは経験とともにじわじわと味わいが出てくるものです。

アンコールは、シューベルトのイ長調ソナタ(D.664の方)からアンダンテ。ぼくも少年の頃、弾きました。そのときは、分厚い重音の中からどうやってメロディラインをきれいに出すんだろうかと悩むばかりでしたが、キット君はさすがに上手に弾き、そこここに師匠の面影を感じる表現がありました。例えば、2つ目のテーマが出てきてH-moll, Fis-moll, G-durへと美しく転調していくところのフレーズのタメとか、中間部で繰り返されるバスの八分音符のリズムが訴える暗く燻る情熱とか。しかしこの音楽にはもっと深いものがあるような気がする。彼は、とてもセンスが良いので、そのうちそういう表現をみつけるでしょう。

さて、マーラー。サントリーホールで聴いた方の日記によると、さすがに大編成で音が飽和してしまっていたそうですが、P席を取り外して前にせり出した舞台に所狭しと並ぶ110名あまりの編成、NHKではちょうどよい音量で、各パートが濁らずよく分離して聞こえました。

いつ聴いても、何度聴いても独特な音色とアンサンブルの感覚を持つオーケストラ。けっしてメカニックに巧くはなく、一言でいえば無骨でごつごつした合わせ方。同じシャイーでもコンセルトヘボウの演奏とは出てくる音が全然違う。弦セクションは地味ながら、上からチェロバスまで細かいフレーズの作り方がきちっと統一されていて、確固としたスタイルになっている。決して重くない、むしろフェザータッチの弦。木管楽器はちょっと粗いかな。東京のオケにももっと腕の立つプレイヤーがいる。今夜のクラリネット首席氏は酔っぱらっていたのだろうか。。何ともいえない音色に大きな影響を与えているのはやはり金管だろう。そんなに力強いなという印象ではないが、とにかくトランペットもホルンも美しかった。洗練されていない、こういう田舎風の朴訥として美しいマーラーもいいんじゃないだろうか。

N響10月Aプロ

NHK交響楽団第1656回定期公演Cプログラム 
10月24日 ( 土) NHKホール
プレヴィン / オウルズ(2008)[日本初演]
モーツァルト / ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
ショスタコーヴィチ / 交響曲 第5番 ニ短調 作品47
指揮:アンドレ・プレヴィン
ピアノ:池場文美

先週のAプロに関する日記で、次のように書いた。
「マエストロはオーケストラを決して追い立てない。自分のこれまでの経験上、彼がすばらしい演奏を聴かせるのは、オーケストラが曲を十分知った上で自発的にぐいぐい弾いて、そこにマエストロがところどころ美しいニュアンスをつけていくような絶妙なコンビネーションが実現するようなときだと思う。」

今日のCプロは、まさにそういう機会だった。オーケストラは、ショスタコーヴィチのこの曲を知り尽くしている。しかも、シュトラウスのドメスティカと比較すればずっと合わせやすいだろう。全曲を通じて、遅めのテンポながらメリハリよく聴かせ、マエストロのスパイスの効いた指示がとても有効だった。オーケストラの出来はやはりモティベーションによって大きく左右されるのだろう。勝手知ったる名曲、このマエストロのために渾身の演奏を、という意気込みが音になった。管楽器ソロも自分としてはベストメンバーで、満足。フルートは客演首席が続いているが、今日の宮崎由美香さんははっとするような美しい音色と連綿とした節回しすばらしかった。結局、新トップはだれになるんだろう?クラリネットはだれだったのかな?

オウルズ(Owls)って、ふくろうのことですが、もちろん初めて聴く曲。題名を見たときは、そういえば、マエストロのお姿は、ちょっとふくろうに似ているなと思った。森のいろいろな生き物をソロ楽器のペアで聴かせるという趣向の曲らしい。プレヴィン氏らしいセンスの良い曲だった。

コンチェルトを弾いた池場さん、きれいに弾いておられたが、ちょっとオーケストラの中に埋もれてしまって、華やかなところが足りないかなという印象。マエストロに気を遣い過ぎ?

N響10月Aプロ

NHK交響楽団第1656回定期公演Cプログラム 
10月24日 ( 土) NHKホール
プレヴィン / オウルズ(2008)[日本初演]
モーツァルト / ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
ショスタコーヴィチ / 交響曲 第5番 ニ短調 作品47
指揮:アンドレ・プレヴィン
ピアノ:池場文美

先週のAプロに関する日記で、次のように書いた。
「マエストロはオーケストラを決して追い立てない。自分のこれまでの経験上、彼がすばらしい演奏を聴かせるのは、オーケストラが曲を十分知った上で自発的にぐいぐい弾いて、そこにマエストロがところどころ美しいニュアンスをつけていくような絶妙なコンビネーションが実現するようなときだと思う。」

今日のCプロは、まさにそういう機会だった。オーケストラは、ショスタコーヴィチのこの曲を知り尽くしている。しかも、シュトラウスのドメスティカと比較すればずっと合わせやすいだろう。全曲を通じて、遅めのテンポながらメリハリよく聴かせ、マエストロのスパイスの効いた指示がとても有効だった。オーケストラの出来はやはりモティベーションによって大きくされるのだろう。勝手知ったる名曲、このマエストロのために渾身の演奏を、という意気込みが音になった。管楽器ソロも自分としてはベストメンバーで、満足。フルートは客演首席が続いているが、今日の宮崎由美香さんははっとするような美しい音色と連綿とした節回しすばらしかった。結局、新トップはだれになるんだろう?クラリネットはだれだったのかな?

オウルズ(Owls)って、ふくろうのことですが、もちろん初めて聴く曲。題名を見たときは、そういえば、マエストロのお姿は、ちょっとふくろうに似ているなと思った。森のいろいろな生き物をソロ楽器のペアで聴かせるという趣向の曲らしい。プレヴィン氏らしいセンスの良い曲だった。

コンチェルトを弾いた池場さん、きれいに弾いておられたが、ちょっとオーケストラの中に埋もれてしまって、華やかなところが足りないかなという印象。マエストロに気を遣い過ぎ?

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