HKの音楽夜話

在京オーケストラの定期公演を中心に、コンサート、オペラのレビューを掲載します。

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明日はウィーンの謝肉祭シーズンのハイライト、オペラ舞踏会(Opernball)です。今頃はちょうどゲネラルプローベの真っ最中。毎年、左派勢力がケルントナーリンク(国立歌劇場のすぐ前あたり)で反対デモをし、舞踏会自体とともにこのデモもORFがニュースで伝えることが多いですが、今年の妨害活動はちょっと変わっています。U-Bahn Zeitungという地下鉄で配られているタブロイド紙が、デビュタントの一組がカドリーユのフォーメーションを乱して舞踏会を妨害することを画策していると報じました。

よく日本のテレビでもデビュタント(はじめてバルで踊る若者たち)が整然と4列縦隊で踊るカドリーユの場面や、タンツマイスターの"Alles Walzer"の掛け声とともに全員が夏の湘南海岸みたいに芋洗い状態でワルツを踊り出す様子などがニュースで登場したりしますが、ここで反対派が送り込んだカップルがこのデビュタントのカドリーユを妨害するというのです。

で、高級紙クーリエにこんな記事が出ていました。
http://www.kurier.at/freizeitundgesundheit/295576.php

カドリーユを乱す陰謀にどう対応するか、舞踏会の支配人、法律専門家、連邦警察庁まで、いろんな人が取材を受けています。カドリーユで決められたものと違うステップをすることを刑法犯として立件するのは困難だが、事後に損害賠償請求の可能性はある、その場では、私服の警備担当者がやんわりとご退場をお願いする、という対応になるだろう、事前に陰謀を企んでいるカップルを探索するのは難しいとか、偽デビュタントの若者にとっては、損害賠償はたいへんな額になるとか、いかにもウィーンらしい呑気で典雅な法律論が笑えます。ORFのプロデューサー、ハイデリネ・ハシェク女史は、もし不測の事態になったら、カメラをそらしてその映像を放送しないようにするとのことです。

世界不況の中でオーストリアでも失業者が増えており、例年になくオーパンバルへの風当たりはきびしいようです。入場料の230ユーロはともかくとして、入場者は椅子席かテーブルを予約しなければならないわけですが、一番高いRangloge(ドレスサークル)は17,000ユーロ(200万円くらい)ですから、そんなところで政財界の名士たちが遊んでいるのを見て失業者が怒るのも無理ないですね。

もっとも、普通の人のためにも、ぎゅうぎゅう詰めの6人テーブル960ユーロで、割り勘にすれば手が届かなくない席も用意されています。もちろん最上階の「見るだけ席」とちがって、ちゃんとダンスにも参加できるようです。ただ、シャンパンやゼクトは別勘定だから、調子こいて飲み過ぎるとたいへんです。

読売日本交響楽団第479回定期演奏会
2009年2月16日(月) 19:00 サントリーホール
ーーー
指揮:ヴァシリー・シナイスキー
ヴァイオリン:アナ・チュマチェンコ
ーーー
ハチャトリアン/ヴァイオリン協奏曲
ラフマニノフ/交響曲第2番

チュマチェンコさん、圧倒的な存在感でした。すべての表現、メロディ、リズム、音色の変化、すべてが自信に裏づけられた説得力。もう平伏すしかありません。プロフィールを拝見してもご年齢はわかりませんが、おそらく60代でしょう。その気品あふれる舞台姿からヘレニズム、サラセン、ロシアンクラシックなど様々な文化の影響を受けた中央アジアの香り高い音楽が沸き上がると、彼女自身がシェヘラザードの化身みたいに神々しく見えます。本当におそれいりました。

最近N響でドヴォルザークの名演を聴かせたエーベルレ、圧倒的なショスタコーヴィチを聴かせたバティアシュヴィリ、そしてユリア・フィッシャーなど、今をときめくヴァイオリニストたちを育てた名伯楽でいらっしゃるわけですが、やはり先生はさすが。

アンダンテのメロディー、G線の音色に酔いました。28小節から始まるメロディ、30小節以上もブレスなしで歌う長い長い、永遠に続くかと思われる長いフレーズ、聴いている方も息を呑んで聞き惚れました。フィナーレでは、まだまだ若い子には負けないわよと言わんばかりのパッションと乱舞するリズムの響宴、しかも節度と気品も併せた様式美。こんなソリストを迎えると、読響も燃えないわけにはいきません。アレグロのカデンツァ冒頭、ソロヴァイオリンとのデュオを担当するクラリネットも気合いが入っていたし、アンダンテのしっとりした伴奏リズム、とくに25小節あたりのソリストが入る直前の引き潮のような裏打ちのやさしさ、145小節からのヴィオラのレチタティーヴォみたいなうつむき加減の独り言、フィナーレの爆発的な推進力もすばらしかった。

カデンツァは、作曲者自身が書いたものをほぼそのまま用いつつ、途中第2テーマをダブルストップで弾くところの直前の上行パッセージなど何カ所かでちょっとしたヴァリエーションを加えておられました。このコンチェルトは、ソリストがほぼ出づっぱりで、しかも数あるヴァイオリンコンチェルトの名品の中でも音符の数がおそらくいちばん多いと思いますが、最後まで涼しい顔で弾ききるそのスタミナも驚異的です。水曜日に文化会館でブラームス、フランクを弾くリサイタルがあるようですが、これはなんとしても聴きに行かねばなりませんね。

ここまででお腹一杯。休憩後のラフマニノフは、大きな音でバリバリ弾いていただき、お疲れさまでした。

2009/2/14NHK交響楽団Cプロ

NHK交響楽団第1641回定期公演Cプログラム 
2009年2月14日(土)NHKホール
ドヴォルザーク / チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
ドヴォルザーク / 交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
指揮:カルロ・リッツィ
チェロ:ミクローシュ・ペレーニ

春一番が吹いて暖かい代々木公演。バレンタインデーだからなのか、若いカップルがいつになく多い完売御礼フルハウスのNHKホール。自分も若い頃を思い出しました。はは。。

ペレーニ氏は、そういう甘美なロマンティシズムとはおよそ縁遠い音楽の求道者でした。背中を少し丸めて下を向いて登場、淡々としたステージマナー。音楽も風貌そのままの渋さ。決して大きくなくて、ややくすんだ音色。広大なNHKホールの3階では聴き取りにくいんじゃないでしょうか。このコンチェルトは、数あるチェロコンの中でも最も弾き映えするヒロイックでロマンティックな名曲ですが、大げさな身振りもなく、ただただ淡々と弾き進める名手。しかし、地味ながら、なんともいえない味わいのある演奏です。なぜそう感じるのか、ことばで説明することはできませんが、それが音楽の不思議さなのでしょう。ただ、どちらかというとオペラティックで外向的でメロディを存分に歌わせたいリッツィ氏との相性は必ずしもぴったりとはいえないような気がしました。指揮者がさあここで大見得きってやろうと身構え、オーケストラもよしとばかりに応えようとする瞬間に、ペレーニ氏はそういうトリックに肩すかしをするかのように淡々と弾き進めてしまう。そういうやりとりがまたペレーニ氏の持ち味を引き立たせるような不思議な演奏でした。アダージョの歌に耳を峙たせる自分には、木管がちょっとうるさかったかな。ソロか室内楽でまた聴きたいと思います。アレグロ楽章の56小節で忍び足のように入ってくる松崎さんの第2テーマ、よかったです。アンコールのバッハの方がしみじみと聴けたかな。

シンフォニーはリリックな歌が終始横溢する美しい演奏でした。アレグロ楽章の第2テーマが変イ長調でもどってくるfig.12のあたり、提示部よりもいっそうテンポを落として軽い弓で歌われるメロディーなんか、ああこの人はオペラの人なんだなと感じる瞬間でした。オペラと言えば、管楽器のブレスに対する感性はさすが。Largo冒頭のコラール、3小節目頭、4小節目頭のブレスを表現の一部として使うことによって、4小節目頭変ニ長調主和音につけられたアクセントがとても美しく響きます。池田さんのコールアングレ、美しかったですね。終演後は、今日一番の喝采でした。ラルゴ中間部は、かなり自由にテンポが揺れ動いていました。ラルゴ結尾のコンバス四声のハーモニー、すごい。N響にとっては、隅々まで知り尽くしたレパートリーだろうから、完成度は高かったと思いますが、どうでしょう、終演後のオケの反応を見ると、N響がリッツィ氏に100%共感していたわけではないのかな?

グラズノフ:バレエ「ライモンダ」
2009年2月12日新国立劇場
ザハロワ、マトヴィエンコ、森田健太郎ほか

自分は、作品としてのライモンダがとても好きです。なぜかといえば、まずグラズノフの音楽。チャイコフスキーとはひと味ちがう魅力的な音楽、エクゾティックなハーモニー、色彩豊かなオーケストレーション。そして何よりも、クラシックバレエの中では、ドラマとして大きな可能性を秘めているからです。その鍵を握るのは、もちろんアブデラクマンのキャラクター設定とライモンダの心理です。そのアブデラクマンの役柄設定のコンセプトについて、プティパの振付けを改訂した牧阿佐美さんがプログラムに寄せた文章を少し引用します。

「アブデラクマンの人物像をどのように設定するかが演出の鍵になると思いました。」ここまでは、自分と全く同じ見解で100%賛同します。

「今回の演出ではサラセンの端正な騎士として登場させます。アブデラクマンもジャンと同様にライモンダに恋する一人の男性なのです。ある女性にひたすら憧れ、その女性を心から愛しているのに、彼女には相思相愛の恋人がいるという、いつの時代にも誰の間にも起こる、ある意味での普遍的な男女の恋愛模様として描きたいと思ったのです。」

一人の女を巡る三角関係ですか。率直に言って、それじゃ安っぽいテレビドラマですね。それにしたって、今夜の舞台では、ライモンダは終始明らかにアブデラクマンを嫌悪しています。これじゃあ三角関係でもなくて、単なるストーカー事件です。さらに、アブデラクマンは、いやしくもサラセンの「騎士」であるはずですが、このプロダクションでの彼の衣装は、どうみても十字軍当時南イタリアやシチリアを荒し回っていた海賊の頭目にしか見えません。立居振舞が洗練されていなくて、宝箱から金銀宝石を取り出して裸のままライモンダに渡そうとするとか、ライモンダの頬を両手でいきなり愛撫しようとするとか、「ばらの騎士」のオックス男爵にさえ笑われかねない粗暴な態度じゃないでしょうか。ライモンダに嫌われるのも当たり前です。この役柄設定では、相思相愛の恋人+ストーカーという構図で、だれの心にも緊張がなく、そもそもドラマが成立しないですね。

史実として残っているジャン・ド・プリエンヌが出征したであろう13世紀初頭の第五次十字軍当時、サラセンの騎士がハンガリー王の宮廷にのこのこ顔を出すなんていう設定は荒唐無稽であって、アブデラクマンの設定自体が壮大なフィクションというか、夢というか、シンボリズムなわけで、もっと大胆な性格づけが可能なはずです。男にしても、女にしても必ずあるはずのギャラントでエグゾティックでセダクティヴなものへの憧れ、性愛の誘惑との葛藤、中世カトリックの窮屈な倫理観でがんじがらめに縛られているが故の大胆な夢想、そういうパッションと貞節と戦い、人間がもっと自由だった古典ローマ時代の地中海世界へのあこがれ、来るべきルネサンスの予兆、そういうテーマがこのドラマの底流にあるんじゃないでしょうか。そうであればこそ、グラズノフは2幕のグランパダクシオンからバッカナールにあれほどセクシーな音楽を書いたのだと思います。ひとことでいえば、“cosi fan tutte”です。あるいは、エルヴィーラやドンナ・アンナが倫理観から拒みつつも本能ではジョヴァンニに魅せられてしまう心情といえばいいでしょうか。今回の牧版では、そのバッカナールの高揚感をまったく感じませんでした。

舞台装置は、限られた予算での制作でしょうから、この程度でしょうがないでしょう。

で、ザハロワさん、今夜の立ち上がりは本来の調子ではなかったか、たびたびバランスをくずしていました。終幕でやっと本来の輝き。グラン・パ・クラシックのヴァリアシオン、5番ポジションからポワントに立って、左右交互にルティレに持っていくパは何と言うのでしょうか、あのあたりの立ち姿が何とも美しかった。あいかわらずコールは立派でした。1幕2場、幻想のワルツだったか、コールのマネージュ隊列での連続フェッテ。新国コールの優秀さをアピールする振付けでしょうか。場内大いに湧きました。全般的にコールは、クラシックよりもキャラクターの方が生き生きしている印象を受けました。

新国立劇場は、バレエ団も合唱団も非常に立派です。これで座付きのオケがあれば、世界屈指の立派な劇場。今夜の東京交響楽団も立派な演奏でした。このレベルのオケがずっとピットに入れば、ものすごい劇場になるんですが。。トランペットのトップの人、すごくうまいですね。幕間にマーラー第7シンフォニーのファンファーレの練習をしておられましたが、そういえば来週の定期がこの曲ですね。練習を聴く限りは、トランペットはすごそうです。(笑)

読売日本交響楽団第158回東京芸術劇場名曲シリーズ
2009年2月 9日(月)東京芸術劇場
指揮:下野竜也
ドヴォルザーク/「オセロ」序曲
ドヴォルザーク/チェコ組曲
ドヴォルザーク/交響曲第4番

率直なところ、自分が下野さん+読響に期待するレベルに比較して完成度が十分ではなかったと思います。もちろん、演奏機会の少ない佳曲をたくさん舞台にのせてくれる下野さんと読響の取り組みには敬意を表したいと思いますし、ヒンデミットシリーズ、ドヴォルザークシリーズを今後も続けていただきたいと思います。

その中で光っていたのは「オセロ」序曲でした。序奏の弦楽合奏は美しかったし、11小節からの付点リズムのずっしりした響き、主部に入ってからの推進力もすばらしかった。最後はちょっと重くなってしまって、最後のmolto accelerandoが気持ちよく決まらなかったのが少し残念。この曲、「オセロ」と題名がついていますが、きれいなソナタ形式でかかれていて、標題に関係なく純粋音楽としても立派な曲だと思います。

チェコ組曲は、丁寧な演奏でしたが、ちょっと退屈だったかな。シンフォニーは、とくに美しいアンダンテで独特のイディオムをこなしきれていない印象。冒頭のクラリネット、ファゴット、トロンボーンのテーマでは、いちばん上の声部を担当する1番ホルンと1番クラリネットの音程が合わなくて音色が溶け合わず、おそらくヴァーグナーに触発されたんだろうと思われる転調を続ける美しい和声進行が際立たなかった感じ。fig.Cからの木管シンコペーション、コンバス三連符の複雑な伴奏音型にチェロの歌がのってくる独特なテクスチュアもバランスがコントロールしきれていなくて、今夜初めてこの曲を聴いた人は、なんだかもやもやとした印象を持ったと思います。弦のバックデスクはちょっと自信なさそうに見えました。スケルツォとフィナーレは、書法的に弾き慣れたリズム/音型なのでしょうか、ずっと表現がこなれていました。全体としては、やはり今夜初めてこの曲を聴く人にとっては、ああいい曲だなと思わせる完成度ではなかったと思います。

しかし、たった3回か4回のリハーサルで弾き慣れない曲をここまで演奏するのは、さすが下野さん+読響だと思います。下野さん、終演後おつかれのところ、自分のような一介のファンが楽譜ひろげてあれやこれやと質問するの丁寧に応えて下さるすばらしいお人柄には感服しています。また、営業的にはたいへんだろうに、ヒンデミットとか、シュニトケとか意欲的な演奏会を続けて下さる読響にも感謝しています。好き放題の感想ですみません。


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