HKの音楽夜話

在京オーケストラの定期公演を中心に、コンサート、オペラのレビューを掲載します。

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2009年5月21日
新国立劇場「白鳥の湖」
出演者等は http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000086_2_ballet.html

「白鳥の湖」という演目は、新国立劇場のお客さんの層ががらっと華やかになります。ヴァーグナーをやる日の、あのヲタク風のむさくるしい雰囲気とは大違いで同じ劇場とは思えない。高校生の女の子たち、おそらく駆け出しのバレエダンサーであろう恐ろしくスタイルのいい女性たち、小さな女の子を連れたおしゃれなお母さんたち。何だか、ヒゲおじさんの自分が一人でうろうろしているのが場違いに思えます。

表現がやや淡白で大柄なザハロワさん、オデットに似合っているんじゃないでしょうか。この演目で自分の一番好きな箇所、2幕のソロ、ロン・ド・ジャンブ・アン・レールからポワントでワーキングレッグを180度に直立させるところなど、何とも格調高い、香り立つような踊りです。その前のパ・ド・ドゥでの腕を支えられたアラベスクからの深いプリエも、長い手足がさらにすーっと伸びていくようで、この人ならではの美しさがある。一方、オディールはややクィックネスが足りない感じで、2つの役の表現の違いが際立たない印象を受けました。しかし、格調高いオデットで十分満足です。

コール・ド・バレエは立派。よくもここまで脚、肩、腕、首の角度、タイミングまでビシッと揃えられるもんだと感心します。パ・ド・ドゥの中間部に入るところ、木管がシンコペーションのリズムを刻み始める所ですが、そこまで上手下手に分かれてじっとしていたコールが一斉に後ろ向きのタンルベで動き出すその直前、24人のするどい衣擦れの音とともに舞台から空気が動く。ソロダンサーもコールもすばらしい時のあの瞬間は、ぞくっとする。

東フィルはいただけなかった。とりあえず合わせたという感じで表現が平板、ソロは弱いし音程も悪い。ヴァルキューレではなかなかの好演でしたが、先日のライモンダで健闘した東響との出来映えの差がはっきりしてきたような気がします。がんばってほしい。

大詰めの解釈は昔から議論があるところです。この舞台の下敷きとなったマリンスキーの現行演出(プティパ/イワノフ/セルゲーエフ版)では、ロートバルトが翼をもぎ取られ、オデットとジークフリートはめでたく結ばますが、今回の牧改訂版は、ロートバルトの消え方をややマイルドにするも、ハッピーエンドは同じ扱い。自分の好みに過ぎませんが、ドラマとして軽い気がします。音楽が最後の木管の刻みとハープのアルペジオが入ってくるところで長調に変わり、はっきりと異次元にトランスフォームしているのと齟齬するような気がします。ここは来世にしてほしい。どうだろう?

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