NHK交響楽団第1643回定期公演Aプログラム
2009年4月4日(土)NHKホール
R. シュトラウス / 4つの最後の歌
ワーグナー(ヘンク・デ・フリーハー編) / 楽劇「ニーベルングの指環」―オーケストラル・アドベンチャー(1991)
指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:スーザン・バロック
今夜はスーザン・バロックさんの立派な歌を存分に聴かせていただきました。シュトラウスが約24分、後半のリングは、“Starke Scheite schichtet mir dort!”から大詰めまで約15分だから、オペラのひと幕ぶん以上歌ったでしょう。コヴェントガーデンや新国立劇場でのブリュンヒルデは高く評価されていますが、さすがにこなれた歌唱でした。やや暗い音色で質感はたっぷり、歌詞はしっかり聴き取れます。ちょっと華やかさがないのは、即物的に分析すれば、高次倍音成分が少ない声で、ここという所での通りがやや足りないからなのか。しかし長いフレーズを自在に繰り出す情感のこもった歌唱に感じ入りました。
「九月」の最後の部分は、出版譜とは違う歌詞の符割りでした。上の譜例をクリックすると拡大します。B&W総譜fig.Fのところ、上段が出版譜の割り付け、下段は今夜バロックさんが歌った割り付け、“V”印は、私が確認した彼女のブレス位置です。シュヴァルツコップもこの符割りで歌っていましたね。“Four Last Songs”という名称をつけたのは当時のBoosie&Hawkes編集長だったエルンスト・ロスであり、原稿出版譜もB&Wが唯一ですが、ここは歌手によって符割りが違うようです。どうでしょう。たしかに下段の符割の方が、Augen(「眼」)のアクセントが自然だし、Langsam(「ゆっくりと」)のニュアンスが一層引き立つ気がします。また、楽譜通りだと“müdgewordnen Augen”をワンブレスで歌うのはほぼ不可能で、どうしても形容詞“müdgewordnen”の後にブレスが入りますが、ことばのつながりとしては、下段の符割でここを一息にした方がより自然です。ただ、フェリシティ・ロットのように、楽譜通りの符割でのすばらしい歌唱の例もあります。
後半のリング、N響の演奏はすばらしかったと思います。乱暴なところがなく、美しい響きのヴァーグナーでした。ジークフリート2幕2場、森の場面の木管はうまかった。テノールチューバ、トロンボーン、バスチューバの和声がどこをとっても濁りのない響きで見事。弦も泡立つように豊かに響いていたように思います。デ・ワールト氏はN響初登場ですが、なかなかのヴァグネリアンのようです。
非常に楽しい演奏会でした。
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