HKの音楽夜話

在京オーケストラの定期公演を中心に、コンサート、オペラのレビューを掲載します。

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NHK音楽祭・ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
2009年11月4日(水) NHKホール
指揮:リッカルド・シャイー
ピアノ:キット・アームストロング
バッハ:ピアノ協奏曲 第1番
マーラー:交響曲 第1番「巨人」

まず、キット・アームストロング君。17歳だそうです。東洋系の顔立ちでまだ華奢な体。ピアノの他にインペリアルカレッジ・ロンドンで数学を勉強中のマルチタレント。粒の揃ったタッチで美しいバッハを聴かせました。ブレンデルに教わっているそうですが、独特のロマンティックな表現を聴くと、さもありなん。ただ、その表現が完全に自分をものになっていて内側から湧き出ているかというと、それはこれからの課題というところでしょうか。しかし、現時点でも終楽章でみせたリズムのセンスなど、きらりと光るものは十分にあります。早熟の天才というわけではなさそうですが、こういうタイプは経験とともにじわじわと味わいが出てくるものです。

アンコールは、シューベルトのイ長調ソナタ(D.664の方)からアンダンテ。ぼくも少年の頃、弾きました。そのときは、分厚い重音の中からどうやってメロディラインをきれいに出すんだろうかと悩むばかりでしたが、キット君はさすがに上手に弾き、そこここに師匠の面影を感じる表現がありました。例えば、2つ目のテーマが出てきてH-moll, Fis-moll, G-durへと美しく転調していくところのフレーズのタメとか、中間部で繰り返されるバスの八分音符のリズムが訴える暗く燻る情熱とか。しかしこの音楽にはもっと深いものがあるような気がする。彼は、とてもセンスが良いので、そのうちそういう表現をみつけるでしょう。

さて、マーラー。サントリーホールで聴いた方の日記によると、さすがに大編成で音が飽和してしまっていたそうですが、P席を取り外して前にせり出した舞台に所狭しと並ぶ110名あまりの編成、NHKではちょうどよい音量で、各パートが濁らずよく分離して聞こえました。

いつ聴いても、何度聴いても独特な音色とアンサンブルの感覚を持つオーケストラ。けっしてメカニックに巧くはなく、一言でいえば無骨でごつごつした合わせ方。同じシャイーでもコンセルトヘボウの演奏とは出てくる音が全然違う。弦セクションは地味ながら、上からチェロバスまで細かいフレーズの作り方がきちっと統一されていて、確固としたスタイルになっている。決して重くない、むしろフェザータッチの弦。木管楽器はちょっと粗いかな。東京のオケにももっと腕の立つプレイヤーがいる。今夜のクラリネット首席氏は酔っぱらっていたのだろうか。。何ともいえない音色に大きな影響を与えているのはやはり金管だろう。そんなに力強いなという印象ではないが、とにかくトランペットもホルンも美しかった。洗練されていない、こういう田舎風の朴訥として美しいマーラーもいいんじゃないだろうか。

東京都交響楽団 第679回定期演奏会 Bシリーズ
2009/4/27(tue) サントリーホール
指揮:小泉和裕
ヴァイオリン:エリック・シューマン
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77
R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」 op.30 

ファビオ・ルイジ/シュターツカペレ・ドレスデン
2009/4/28(wed) サントリーホール
R.シュトラウス
:交響詩『ドン・ファン』 op.20
:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』 op.28
:交響詩『英雄の生涯』 op.40(原典版)


昨日、今日はシュトラウス三昧。

まずは、久しぶりに聴く小泉さん。とがった所はないし、個性的でもないし、煽って興奮させる音楽でもないんですが、なんとも響きが美しいツァラトゥストラでした。都響の美しい弦の音を堪能させてくれるという意味では、小泉さんは相性がいいんじゃないでしょうか。小泉さんの演奏を最初に聴いたのは、もう30年以上前ですが、あの頃のやや強引な棒ではなくて、「任せたよ」という感じで、しかもしっかりと全体のテンポ運びとか、ここを聴かせたいというところはしっかりと押さえた音楽で、都響の弦セクションから美しい響きを引き出す手腕はみごと。小泉さん、見直しました。それにしても、ヴァイオリンセクションの音が美しかった。

さて、今日は、シュターツカペレ・ドレスデンのマチネ。今さら言うまでもないすばらしいアンサンブル。この人たちは、アンサンブルの集合場所というか、どこでどうやればきちんと揃う、というポイントを全部熟知しているのでしょう。それも、自分のパートだけではなくて、オケ全体について。時間的には、昨日や今日のことではなくて、これらの曲をはじめて演奏したであろう100年以上前からのオケ全体の集合知として。だから、ルイージ氏はアンサンブルをオケに任せきって、音楽の大きなつくりに専念できるような感じ。表現の振幅がとてつもなく大きい。ヘルデンレーベンのfig.39-41あたりshimmeringというか、ざわざわっと弦と弓の摩擦音を混ぜながら静かに沸き立つようなピアニッシモやティルのエピローグでのちょっとベールをかぶったようなヴァイオリンの音のようなところから、ドンファンのクライマックスでのずしんと腹に来るような大音声、ティルのEsクラの叫ぶような高音、敢えてアグリーな音も厭わない管楽器の大胆な表現まで、音楽のつくりが大きくて、わくわくさせる。何だろう、この管楽器の表現力。肺活量がとてつもなくあって、大きな音が出せるから、相対的に神経質な弱音を出さなくても十分にダイナミックレンジがとれて音楽が大柄になるんだろうか。楽しい音楽でした。

アンコールのオベロンは、眼を閉じて聴くと、これから幕が開きそうな、そういうわくわく感。ああ、オペラハウスのオケなんだなと、しみじみ感じました。それにしても、空席が多い。プロモーションに失敗した?もったいない。

予告:あさって5/1は、新国立劇場の「ムツェンスク群のマクベス夫人」を見に行きます。

2009/2/21東京交響楽団

東京交響楽団第564回定期演奏会 
指揮=飯森範親
ピアノ=岡田博美
シューベルト:イタリア風序曲 第2番 ハ長調 D.591
リスト:死の舞踏
マーラー:交響曲 第7番 ホ短調 「夜の歌」

岡田さんのリスト、曲としてそれほど面白いとは思いませんが、すばらしいテクニックで演奏は立派でした。特に第四変奏、テンポが遅くなってディエス・イレ定旋律が5度カノンのように扱われる箇所からクラリネットソロが入って第5変奏へとテンポを速めていくあたりの音楽の運び方がすばらしかった。ヴィルトゥオージックなパッセージでも決してバタバタしない非常に落ち着いた大人の音楽を演奏する人なので、「巡礼の年」をじっくり聴いてみたい気がします。

マーラーのシンフォニー、あちらこちらにミスがあったものの、飯森氏と東響は、よくリハーサルしてそれなりにまとめていたと思います。冒頭の弦のリズムとテノールホルン、なかなか雰囲気がありました。最初のNachtmusik(2楽章)は、やや急ぎ気味の淡白な表現で、かえって長く感じたかな。スケルツォの疾走感とふわっと軽くしかもフォーカスがピシッと決まったリズム感がよかった。ヴァイオリン対向配置で弦パートのかけあいが立体的に聴こえておもしろかった。2つめのNachtmusik、253小節で弦楽の変ロ長調トニックにハープが入ってくるあたりから楽章の終わりにかけては、セレナードの余韻を感じながら眠りに落ちていくような雰囲気で、木管が美しかった。フィナーレのテンポの動かし方は、さあいくぞっという感じでやや大げさ。楽譜にも“Alle diese, wie die folgenden Modificationen des Tempo unmerklich ausführen”とわざわざ書いてありますが、音楽の自然な運動が必然としてテンポの変化につながるようなさりげなさがほしいところ。

トランペット首席氏、ミスはありましたが、圧倒的な存在感。大は小を兼ねるではありませんが、あれくらいパワーがあると、相対的にピアニッシモの繊細な表情も生きてきます。全体にチェロの音程が少し気になりました。勢い余ってシンバルを落としてしまったのはご愛嬌。それにしても、テノールホルンという楽器は、音がでかい。

2008年11月12日(水)NHKホール
ロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団
マリス・ヤンソンス(指揮)
ジュリアン・ラクリン(バイオリン)

ブラームス:バイオリン協奏曲 二長調
(バッハ:無伴奏ヴァイオリンパルティータBWV1004からサラバンド)
ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調
R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
(ブラームス:ハンガリー舞曲第1番)
(J.シュトラウス:エリエン ア マジャール)

ラクリン氏の演奏は初めて聴きました。うっとりするような美音というわけではありませんが、
腰がしっかりしてよく飛んでくる音で、中低音域に独特のねばりのある味わいがあります。
音程が不安定なところが所々にありました。彼よりメカニックに巧い人はいるでしょう。
しかし、彼の揺るぎない構成感、誠実でケレン味のない音楽づくりは、ブラームスにはぴったり
じゃないでしょうか。特にオーケストラとのアンサンブルには繊細な配慮が見られました。
ソロが入ってくるところの16分音符六連符アルペジオとオーボエとの絡み(bar.102以降)、
シンコペーションを刻むヴィオラ(例えばAdagio bar.64以降)など、呼吸を揃えたいパートを
振り向いて、視線を交わして、指揮者とともに音楽の一体感を醸成しようという姿勢。オケと
ソロがソリッドなワンピースになったシンフォニックな演奏でした。ソリストの気配りによく反応し、
オーケストラの方も丁寧で美しいサポートをつけていました。おみごと。アンコールのサラバンドは、
中間部から主部再現にかけての密やかで内省的な響きがすばらしかったと思います。

ブラームスのシンフォニーは、16型の大編成の弦楽に楽譜通りの2管。音色がよく溶け合う
オーケストラだという印象。毛羽立ったところが全くない美しい弦楽と管楽器の溶け合い。
管楽器同士の溶け合い。例えば、アレグレット楽章の中間部、ファゴット+クラリネット、
ホルン+オーボエというように楽器の組み合わせを変えてメロディラインが発展していく
箇所(bar.41アウフタクト以降)がありますが、2つの楽器が溶け合うというよりも、むしろ、
一つの楽器の倍音構成が微妙に変わることによって音色が切れ目なく変化していくような印象
を受けました。そして、どこを切り取っても威圧的で乱暴な強奏がなくて、飽くまでも豊かに
響き渡るソノリティが美しい。ヴィオラ、チェロ、バスは、太いという感じじゃなくて、
フェザーのように軽く、ふわっとした心地よさ。しかも、ヴィオラはヴィオラの音がするし、
チェロはチェロの音がする。トロンボーンの三声体も軽くてよく響く。オーケストラの値打ちは、
音の大きさじゃないですね。こういう精巧で、緊密で、隅々まで気を配ったアンサンブルは、
地味かもしれませんが、ぐっと心に響きます。もうひとつ特筆すべきは、音楽の流れ。
第2楽章なんかは、主部ー中間部ー再現部と3つのフレーズだけで音楽ができているように、
次から次へとフレーズが大きなアークを描きながら切れ目なくつながっていって、聴いている
方としては息つく暇なく、酔いそうな気分になりました。ああ美しい。

最後のティル・オイゲンシュピーゲルは、ちょっとリハーサル不足でしょうか。非常に完成度が
高いブラームスの後では、フレーズの受け渡しやリズム、テンポの変わり目などにやや
こなれていないところがありました。もちろん技術的にはすばらしいと思いますが。ホルンの
1番、3番、すごいヴィルトゥオーゾです。コンマス氏、美しい音です。Erstes Zeitmassの
1小節前からのソロの下降音型、粒が揃って見事。音色だけで評価すれば、ラクリン氏よりも
断然美音です。なるほど、達者なプレイヤーが揃っていますね。

サービス精神旺盛に2曲のアンコール。リラックスしたほどほどの演奏でしたが、お客さんは
やはり派手な曲には反応しますね。

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アルティ弦楽四重奏団
2008/6/26(木)トッパンホール
豊嶋泰嗣(ヴァイオリン) / 矢部達哉(ヴァイオリン) / 川本嘉子(ヴィオラ) / 上村 昇(チェロ)

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番 イ長調 Op.18-5
武満 徹:ア・ウェイ・ア・ローン
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 Op.59-3「ラズモフスキー 第3番」

メンバーの名前を見ただけで期待が高まるクァルテット。にわか編成ではない。結成から10年間、それぞれ多忙な中で着実に活動を続けている。今夜は、ベートーヴェンのOp.18-5は矢部さんが1st、後の2曲は豊嶋さんが1stをとった。

矢部さんがトップを務めるOp.18-5、整ったフォルム、溌剌として柔軟自在なリズムがすばらしかった。いつも感心するが、矢部さんの音は本当に美しい。腕もすごいが、この楽器もすごい楽器なのでは?そんなに大きな音ではないので、ときどき1stが埋まってしまう瞬間があるが、とにかく音が美しかった。川本さんも上村さんもうまい。Allegro楽章は、4人のイントネーションがしっかり意思統一されていた。変奏形式のAndanteにはすでに晩年の傑作の萌芽が見えるのだが、ここはどうなんだろう。一貫したリズムのパルスをしっかり守ることで、端正な様式の中に音楽の変容を表現しようという意図なんだろうと思うが、自分の好みをいうと、第4変奏をもう少し沈潜させてからクライマックスにもっていくようなドラマチックなつくりが好きだ。終楽章は怒濤のアンサンブルに圧倒される。八分休符+3*八分音符のリズムが一糸乱れず各楽器に受け渡される爽快感。

ラズモフスキーも緊密なアンサンブルで立派な演奏だったが、Op.18-5で見せた完成度には至っていない印象。

それにしても皆さんうまい。うまいだけではなくて、アンサンブルの方向性が統一されている。彼らがクァルテットに専念したらどんなにすごい団体になるんだろうと想像するが、やはりオーケストラが忙しくて無理なんだろうな。

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