HKの音楽夜話

在京オーケストラの定期公演を中心に、コンサート、オペラのレビューを掲載します。

読売日本交響楽団

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読売日本交響楽団第476回定期演奏会
2008年11月21日(金)サントリーホール
指揮:オスモ・ヴァンスカ
ベートーヴェン/序曲「コリオラン」、交響曲第4番、序曲「命名祝日」、交響曲第8番

昨年に続いてヴァンスカ氏のベートーヴェン・ツィクルス。昨年、2番、3番で聴かせた新鮮なアプローチを期待して来場したお客さんも多かったせいでしょうか、盛大な喝采で迎えられました。ベートーヴェンは懐が深くて、様々なスタイルを許容しつつ、なおベートーヴェンたることを音楽自体が主張するんだということを見せつけられるような演奏でした。所謂オーセンティックアプローチではありません。16型の弦楽に楽譜通りの管楽器。オーケストラ配置は対抗型。舞台下手にコントラバス。第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの配置。実際の演奏を聴いて、こういうオーケストラ配置をとる理由がよく分かりました。

演奏は速めのテンポ、恣意的なテンポの揺れやロマンティックな表現過多を排しつつ、楽譜に記載されたベートーヴェン独特のスフォルツァンド、ダイナミクスの幅を強調したザッハリヒはスタイルで、シンフォニックな構築美を音楽自らに語らせるような演奏でした。第4シンフォニーでは、序奏の最後をインテンポで押し通してそのまま主部に入るところ、アダージョの主部旋律が再現する箇所(65小節以降)でフルートの主旋律六連符に対してクラリネットの十六分音符をぶつけるところ、フィナーレのコーダもインテンポで通すところなど、新鮮なサウンドが随所に聴かれました。第8シンフォニーも力のこもった演奏で、三拍子のアレグロ楽章がまるでエロイカシンフォニーのように力強く、立体的に聴こえたのには驚きました。

若干のアンサンブルの乱れや管楽器ソロのミスはありましたが、少なくともオーケストラ全体がヴァンスカ氏のアプローチ、スタイルに共感し、同じ方向を向いて音楽をつくろうとしている姿勢に説得力を感じます。やはりベートーヴェンはおもしろい。来週の6番、来年の7番、9番も楽しみです。

読売日本交響楽団第475回定期演奏会
2008年10月20日(月)サントリーホール
指揮:下野 竜也
メゾ・ソプラノ: 重松みか
バリトン: 三原 剛
合唱: 新国立劇場合唱団
ヒンデミット/シンフォニア・セレーナ
ヒンデミット/前庭に最後のライラックが咲いたとき 〜愛する人々へのレクイエム

ヒンデミットがウォルト・ホイットマンのエレジーにセットしたこのレクイエムは、詩と音楽の幸せな結婚がまれに見る天寵の子を生むことの格好の例証ではないでしょうか。ほとんどのアメリカ人が知っているであろうこの詩、愛する人の死と残された人の悲しみをじっと観照する主体が、やがてやさしく包み込む癒しの母として死を受容していく心の過程を歌ったものと自分は解釈しますが、テクニカルには、ライラック、春の西空に沈む夕星(金星)、ツグミという3つのシンボルが対立しつつ最後に結び合わされる(twined)という、いかにもシンフォニックな構成です。こうしたシンボリズムは、散文的な言葉で評釈するよりも、ことばなしで我々の官能に直接作用する音楽の力と結び合うことで大きな感動をもたらすものです。聴けば明らか。4節、9節、13節と繰り返されるツグミへの呼びかけ、「死を受容する内なる声」を称揚するメゾソプラノの歌が第14節では“I fled forth to...”で愛する人の死を悲しむバリトンとの二重唱となり、そして、この曲中最も美しい“Death Carol”がやさしく癒すものとしての死を受け入れるその内なる声を初めて明らかにし、最終節でのフルートソロのツグミを背景にした「主体」による死の受容にいたる音楽の構成は、ホイットマンの偉大なエレジーの精髄を直感させてくれます。

さて、本日の演奏、何と言っても新国立劇場合唱団を讃えるべきでしょう。ほとんど伴奏なしで歌われる14詩節のDeath Carolは圧巻でした。オーケストラでは、15詩節を伴奏する木管ソロ、特にクラリネット藤井さんの密やかで美しい息づかいに魅了されました。バリトンの三原さんは、やや一本調子、母音の発音とアクセントの位置が不正確で、詩としてはちょっと聴き取りにくいなというのが率直な印象です。重松さんのダークな声は与えられたキャラクターによくマッチしていたと思います。全体的に声楽ソロの部分はもう少しオーケストラを抑えてほしいと思いました。細かいところですが、曲の最後、cis-gis-cisで完全調和する和音、3つのシンボルがひとつに合一するという詩の結末を音楽として表現する重要な和音だと思うのですが、なぜかソロ2声のcisが先に消えてしまってコーラスがハミングするgisだけが残りましたが、どういう解釈なのでしょうか?

前半のシンフォニア・セレーナも立派な演奏でしたが、欲を言えば、もう少しリハーサル時間があれば、さらにヒンデミットの美しい音楽語法をさらにイディオマティックにこなせるんだろうな、と思います。藤原さんのカデンツァがすごく美しい音でした。

終演後、すばらしい合唱を指導された田中先生にご挨拶して、それから下野さんとお話ししました。今回はリハーサルを4日間とったそうです。セレーナについて伺ったところ、1楽章、4楽章を特に入念にリハーサルしたとのこと。確かに、この両楽章が立派だったと思います。難しい曲でたいへんだったでしょうと伺うと、難しいがひとつひとつ勉強しているとのこと。何はともあれ、下野さんと読響のヒンデミットへの意欲的な取組み、オーケストラとしては営業的に大変でしょうが、毎年楽しみです。来年のヒンデミットシリーズは、チェロコンチェルトをやるそうです。自分の予想では、ソリストはクレメンス・ハーゲン氏でしょうか?自分は常々「オーケストラの集合知」という言葉を使いますが、こうして20世紀クラシックのイディオムを読響が自分のものにして、私たちと音楽との出会いを広げてくれる取組みに改めて感謝したいと思います。この日記を読んでいただいている皆さん、ヒンデミットの音楽は本当に美しいです。今夜のサントリーホールは少し淋しかったので、来年はもっと多くの方々とヒンデミットを聴く歓びを共有できますように。

読売日本交響楽団第154回芸劇名曲シリーズ
2008年10月 7日(火) 東京芸術劇場
指揮:ヴィクトーア・エマニュエル・フォン・モンテトン
ピアノ:高橋礼恵
ベートーヴェン/「エグモント」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番
ドヴォルザーク/交響曲第8番

藤原さんをはじめ、読響のみなさん、今夜はほんとうにお疲れさまでした。
初モノだから、当たり外れはしょうがないですね。リハーサルのポディウムに上げてしまった以上、後戻りはできないのでしょうから。

当たり外れがあっても、いろいろなマエストロを呼んで下さい。きっと我々の心に響く人を発掘できるはずだから。今夜は、とんでもない状況の中で、投げずに最後まで読響クォリティを守りきったことに敬意を表します。

高橋さんは、立派なテクニックと音色をお持ちです。場数を踏めば、きっと高橋さんらしいベートーヴェンが聴ける日が来ると期待します。

さて、再来週は下野さんのヒンデミット。毎年楽しみにしています。ライラックのレクイエムは、Schottで楽譜を買ってきて読みました。はじめて聴く曲、しかも新国のコーラス、期待しています。

読売日本交響楽団第153回芸劇名曲シリーズ
2008年9月16日(火)東京芸術劇場
指揮|スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
シューマン/交響曲第2番
R・シュトラウス/交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》


記事にできない文字列が含まれています、というエラーが出て掲載できないので、
下記に掲載しました。
http://www.rr.iij4u.or.jp/~hkamata/20080916.html

読売日本交響楽団 第474回定期演奏会
2008年9月10日(水)サントリーホール
指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
ヴァイオリン:アリョーナ・バーエワ

ブラームス/交響曲第3番
シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番
ショスタコーヴィチ/交響曲第1番

シーズン再開。いきなり重量級3曲でお腹一杯になるプログラム。

まずブラームスの第3シンフォニー。第1楽章提示部はリピートあり。全楽章がほとんどインターヴァルなしに続けて演奏される。かなり遅めのテンポ。第1楽章は6/4拍子の四分音符=120くらいか。ずっしりと質感がある弦楽は期待通りだが、楽譜上のスタッカート指示をかなり忠実に守ったイントネーションで淡々と弾き進められるので、テンポが遅い割には重く引きずる印象はない。やや控えめの管楽に対して弦楽がリードするバランスで渋めの音色。ただ、いくら控えめといっても、例えばfig.Gの1番ホルンのソロ、弦のシンコペーションに支えられて陶然とした歌を期待したいところなど、ここという見せ場はもっと前に出てきてほしい。第2楽章Andanteもかなり遅いテンポ。ちょっと小粋なinterludeという雰囲気ではなくて、重厚なアダージョ。読響はマエストロのゆっくりとした足取りに付き従って、彼が意図する詳細なイントネーションを誠実に再現しようとするが、主部が戻ってくるfig.Dへの入りでアンサンブルがもたつくなど、さすがに間延びしてやや音楽の流れを欠く。第3楽章Poco Allegrettoも悠然とした歩み。中間部の美しい弦楽、主旋律が戻るfig.Fでのホルンソロの美しさが際立った。終楽章にいたって、ようやく音楽はモーメントを得る。それまでの3つの楽章がすべてこのフィナーレのための序奏であり予感であったかのようなエネルギーの充溢と高揚感。こういうスタイル、このマエストロだからこそ許されるのだろうか。

休憩後、椅子がたくさん運び込まれて、シマノフスキ。コンチェルトとしては異例の3管編成大オーケストラ。佳曲である割に演奏機会が少ない原因のひとつは、この編成の大きさか。アリョーナ・バーエワさんが深紅のドレスで登場。若くて美貌で長身、舞台映えする見事なヴィジュアル。肝心の音楽もすばらしい。fig.40からのG線上で弾かれる美しいメロディの最高音変ホ(fig.42)の音程が決まらなかったのと、fig.83フラジオレットの発音が少し不安定だったこと以外、この難曲の隅から隅まで非の打ち所のない技巧。やや線の細い音色だが、豊かな倍音で華やかな音が飛んでくる。表現主義的で濃厚な音楽だが、バーエワさんはどちらかというと薄味に淡々と弾き進める。よくいえば上品なリリシズム。もう少し濃厚な表現がほしいところもある。例えば、fig.78からのハバネラ風ダンスリズムの同音反復メロディーはもう少しねっとりと弾いてほしいと思うが、これは趣味の問題。マエストロはトゥッティの音量を抑え気味にして彼女の美音をお客さんにしっかり味わってもらおうと配慮している様子。コハンスキが書いた超絶技巧カデンツァは圧倒的。息の音さえない静寂がホールを支配する。フィニッシュのフラジオレット上行音型の幽かな残響がホールを満たす。アップボウの弓が宙を漂い、俯いてその余韻を確かめるマエストロ。大喝采。

今夜の最後はショスタコーヴィチの第1シンフォニー。第1楽章序奏fig.3のヴィオラが香ばしい音色で優美なフレージング。ソナタ主部に至るまで、stringendo -> piu mosso -> allegrettoと微妙なテンポの動きがあるが、これがピタッと決まって爽快。大きな流れとしては、ネオクラシカルでちょっとシニカルな性格の前半2楽章からドラマティックでシリアスな後半2楽章への推移と展開がすばらしい。今夜のチューバは次田さんだっただろうか、Lento楽章のモットーになっているトリプレットリズムをしっかりした芯のある音で印象づけてコントラバスに渡すところ、巧い。中間部の葬送行進曲風のテーマをオーボエから渡されたトランペット、B管とF管のオクターブユニゾンでメロディが進むに連れてtragicな雰囲気を高めていく見事な音色のグラデーション。OBになっても圧倒的な存在感のティンパニ菅原さんのソロ。読響、巧い。最初に演奏されたブラームスを聴いて、マエストロは少しお疲れなのかなと思ったが、ショスタコーヴィチでは以前と変わらない颯爽とした音楽運びで健在ぶりに安心。フィナーレでいよいよリズムは躍動し、読響は自在のヴィルティオジティを発揮する。

余談。ショスタコーヴィチ第1シンフォニーのLento楽章fig.3からのチェロはトリスタンとイゾルデの冒頭そのままじゃないだろうか。上行飛躍のピッチインタヴァルこそ微妙に違う(トリスタン:短六度<ー>ショスタコーヴィチ:長七度)が、上行飛躍ー>クロマティック下降ー>クロマティック上行は全くの相似形。同じ楽章で頻繁に現れる短二度下降+短三度上行のモティーフは、ジークフリートや神々の黄昏の印象的な場面で度々出てくる音型。例えば、黄昏序幕から1幕に推移するところの夜明けの間奏や3幕の葬送行進曲冒頭など。20世紀初頭の若手作曲家は、色々な意味でヴァーグナーの影響を受け、そこからいかにして自分自身のスタイルを見つけるかということに苦心しただろうか。例えば、ドビュッシー「牧神の午後」の冒頭和音も、いわゆる「トリスタン和声」(f-h-dis-gis)の転回形だ。

参考楽譜:
ブラームス     Breitkopf & Hartels Partiturbibliothek 3640
シマノフスキ    Universal Edition, Wien UE6624
ショスタコーヴィチ Edition Sikorski Taschenpartitur 2224

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