水天一碧

史実はもとにしてますが事実ではありません

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こちらに書き込むのはずいぶん久しぶりになってしまいました。
せっかく今年は幕末佐幕派好きにはたまらんテーマなのに、
すっかり更新をサボってしまいました。
一応、今年の大河が始まる前にはもっと更新する予定だったんですけどね……
 
そして気づけば『八重の桜』も前半が終わってしまいましたね。
そこで、非常に大雑把な感想を書き連ねてみました。
 
 
【全体的な感想】
 一言で言うならば「よくもここまで我慢して描き込んだものだ」ということでしょうか。
 歴史好き、さらには幕末の会津藩の歴史について興味のある人でもなければ「山本八重」もとい「新島八重」のことなど知らないでしょう。八重は篤姫のように日本史に残るお姫様ではありませんし、身分が高いわけでもありません。そんな八重が生まれ育った環境、どうして「幕末のジャンヌ・ダルク」と呼ばれるようになったかの背景を説明するためには、当時会津藩が置かれていた状況を説明するしかない。それをしなければ普通の視聴者には何が何だかわからないのです。主人公の八重より兄の覚馬の方がメインみたいになってしまったことで批判されていた部分もありましたが、八重の後半生は覚馬あってこそなので、覚馬がどんな人物でどんなことをしたかがわからないと八重と新島襄がどうやって出会ったのかもわからないわけです。ですから、この長いプロローグは必要だったのだろうと思います。その点では批判に合いながらもやり遂げたNHKの姿勢はさすが大河ドラマだと思いました。
 
【夫・川崎尚之助】
 歴史好きのお仲間の間では「ニート」の愛称で親しまれた(笑)八重の最初の夫・川崎尚之助が斬新に描かれていたのも秀逸だったと思います。あの白い羽織のインテリぶりが結構ドツボにはまりました。覚馬が京都に行くまでの間は、八重と二人で「どんだけあんつぁまが好きなんだ?!」とツッコミを入れずにはいられなかったのですが、覚馬が京都へ行ってしまった後は八重の良き理解者として覚馬の代わりを勤めましたが、当時の女性としては規格外の考え方をする八重とそれを理解し支えてくれる尚之助の夫婦は、現代女性としても理想的な夫婦像として描かれているように思えました。まあ、いささか理解がありすぎるところが「ありえない」感が否めませんでしたが。
 
【二本松少年隊】
 今まで会津戦争を題材にしたドラマは何本か製作されておりましたが、白虎隊だけではなく「二本松少年隊」を取り上げたことはよいことだと思いました。白虎隊の悲劇と二本松少年隊の悲劇は同じように少年たちが戦争で命を落としたという点では同じですが、これまで戦闘によって戦死した二本松少年隊の悲劇があまりクローズアップされてこなかったことを残念に思っておりました。彼らを率いていた木村銃太郎のことももう少し詳しく取り上げてもらえればなおよかったと思いました。しかしながら、少年隊の隊士たちが懐にだるまを入れて戦に臨んだ――というのは無理があるんじゃなかな……。かさ張るでしょう、普通に。
 
【西郷頼母】
 わたくしは基本的に頼母びいきですが(笑)あまり美談風に表現されてしまうと、ちょっと反発したくなります。これも愛のなせる業かと。そこから考えると、西田版の頼母はちょっといい人過ぎるかな〜。結構見逃されがちですが、あの当時の頼母ってそんなに年寄りじゃあなかったんですよ。意外かと思われるかもしれませんが、佐川さんより一つ上、大久保さんと同い年くらいの年代なんですよね。どうしても映像化されるとずいぶん重厚な俳優さんにキャスティングされてしまうのが残念です。つまり、わたくしが言いたいのは、頼母も血の気の多い若造だったってことですね(想像しづらいですけど)。西田さんの頼母はその血の気の多い感じがイマイチ出てなかったかな。
 さて、会津戦争で外せない西郷頼母の恭順説と西郷一家の女性たちの自刃ですが、このエピソードに関しては色々考えさせられます。
 国家老として一貫として「守護職辞任」「恭順講和」を主張し続けた頼母ですが、これを「京都の情勢をわかっていないからだ」とか「主従の関係が悪かったから」と断ずるのは早計であると思います。よく頼母と容保公がうまくいかなかったのは容保公が養子だったからだといいますが、その義父である先代だって養子です。大藩であればあるほど家を存続させるために養子をとることは珍しいことではなく、そのことがそれほど影響したとは考えにくいです。もともと容保公は藩士たちに好意的に迎えられてますしね。だから主従の不仲に関しては単に性格の不一致じゃないかなと思っております。
 「守護職辞任」を求め続けたのは、決して情勢に疎いわけではなくむしろ外側から見ているからこそ、会津藩が泥沼にはまっていくのが分かったのだろうと考えられます。藩を支える家老としては、そこに生きる藩士や民が飢えているのがわかっていてそれ以上の負担を強いることは忍びないという思いもあったのではないでしょうか。無論、京都側も決して喜んで留まっていたわけではないのですが、おそらくは頭ごなしな言い方をされたり一方的な見地から意見をされたりして「何も分かっていないくせに!」と反発してしまったのだろうと思います。そこは頼母の性格の狷介さがもたらしてしまったものであろうと推測されます。同じようなことは江戸の幕閣たちと京都の一会桑との間でも起こっていて、慶喜公はずいぶんと苛立っていたらしいですね。それこそ「何もわかっていないくせに!」と。
 とはいえ、頼母が京都の情勢を肌で感じていたわけではないのは確かでしょう。華やかな都で一見派手に闊歩しているように見える会津藩士たちを苦々しく思っていたのかもしれません。実際のところは田舎侍丸出しでは各藩の藩士たちと渡り合うこともできないし、公家たちには付け届けをしなければ何事もスムーズには運ばない。懐が痛くても見栄は張らなくてはいけない状況でした。現代でもそうですが、その人の立場に立って見なければ見えないことというものはたくさんあるものです。
 ところで、会津戦争でスネルって出てきましたでしょうか?京都守護職での出費が嵩んで兵制改革も武器の刷新も間に合わなかった会津藩は、奥羽諸国との同盟により新政府軍との戦に踏み込むわけですが、ドラマでは白河口での戦いに敗れた後、「すぐに反射炉を作れ」とか「新式銃を持って来い」というような無茶を言いますが、わたくし的にはあれは面白い場面であったと思います。一貫して恭順を唱えていた頼母ですが、それでも列藩同盟に対して期待するところはあったのだろうと思います。新政府軍相手に一定の勝利を収めた後に有利な講和を――という目論見だったのではないかと思います。(太平洋戦争でも、山本五十六が同じようなことを考えて対米戦争に踏み切ったわけですし)
 ところが蓋を開けてみたら、兵器のレベルも兵士の練度も比べ物にならない。それは絶望するでしょう。その場であくまで「突貫する!」と駄々を捏ねたのは、列藩同盟が実は「張子の虎」でしかなく、その上重要拠点を失ってしまったことに対する情けなさもあってせめて武士の矜持として討ち死にを願ったのではないでしょうか。この後激戦を繰り返す中、恭順を曲げなかった頼母の中にはこの時の絶望感がずっと残っていたのでは、と考えたりします。
 西郷一家の自刃についても「これぞ会津の武家の子女だ」と安易に賛美できるものではないと考えています。籠城の際に足でまといになること、万が一敵に捕らえられ辱めを受けることがないようにと自刃をする女性たちは多くおりましたが、西郷一家に関してはちょっと違うのではないかと思います。私見ではありますが、あれは「抗議の自刃」であったように思えてなりません。主である頼母の意見を聞くことなく城下に敵が迫るような事態を招いた主戦派に対する強烈な批判のように見えました。幼い娘までも道連れにした行為は間違いなく悲劇にはちがいませんが。もっともドラマではずいぶん淡白に描かれていましたね。まあ、あまりリアルに描くと怖い光景ですからね……。
 
【籠城戦】
 籠城戦の描かれ方はなかなか見ごたえがありましたね。でも、八重が片袖を破り捨てて生腕出して戦ってたのはどうしてなんでしょうね?いろんな破片が飛んできて危ないと思うんですが。どこかで理由を説明してましたか?八重がものすごく活躍しているのに違和感がありましたが、前半で長々と八重がどんな風に育ってきたかを描いていたので、多少の無茶をやっても大目に見られるような気がしてしまうのが不思議です。むしろ面白く見られたなぁと思います。ふとんで砲弾の信管を消したというエピソードもちゃんと盛り込まれてましたね。でも、山川大蔵の奥さんである登勢さんが空井戸に葬られたというエピソードも、篭城戦の苦しさを表現するためにはあってもよかったのではと思いましたが。
 
【女性陣】
 今回の主人公が女性ということもあり、八重に絡んでくる女性たちはバラエティ豊かでしたね。しっかり者のお母さんや女の子らしい親友、おっちょこちょいで天真爛漫な妹分(は浮いてましたけどね……)、主人公とは正反対の兄嫁、才色兼備のライバル、憧れのお姉さま(照姫のことです)――そんな女性たちがあの篭城戦でどんな風に戦い、どんな風に生きていったのか――明治編でも出てくるであろう彼女たちに期待です。
 
いよいよ襄が出てきますね。
尚之助との離婚やあんつぁまの修羅場を乗り越えた八重がどんなふうに明治を生きるのかが楽しみです。
 

VS越前守 round3

VS 越前守 round3
 
 越前守松平春嶽は考えた。
 (アウェーで説得するのが間違いだった。あそこには横山というラスボスががっちり肥後殿を守っている。なんとしても横山から肥後殿を引き離さねば!)
 それに――と春嶽公はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
 (今回のわしには切り札がある)
 戦に勝つには敵を知らねばならない。春嶽公は会津松平家の歴史を徹底的に調べ上げた。それはもう、下手したら会津藩の者たちより歴代藩主に詳しくなっちゃったんじゃないかというくらい。
 ――で、見つけたのが『御家訓』であった。
 「ふふふふ……これさえあれば、肥後殿はもちろん、にっくき横山めも黙らせることができよう。」
 初代の正之公はいいものを残してくれた、と春嶽公は心から感謝した。なんなら会津まで行って霊廟に礼拝しに行ってもいいくらいだ。
 
 
 決行は溜の間で行うことにした。ここなら横山に邪魔される心配はない。とはいえ近頃の容保公は、サバンナの草食動物の如く、春嶽公の気配を感じるだけで一目散に逃げ出そうとするので油断がならない。よほど横山あたりにきつく言い渡されているに違いない。そこらへんは容保公付の茶坊主にしこたま握らせて情報をとればよい。貧乏大名の会津には真似できまい。などと高をくくっていたのだが――
 「殿、肥後守様付の茶坊主がなかなか買収に応じません。」
 さっそく裏から買収に動いた側近が、困ったような顔でそう告げた。
 「なんじゃと?彼奴らどれだけ強欲なんだ!」
 「どうやら肥後守様のほうでもここには金子をかけているようで、茶坊主の奴こちらの提示した額では頷きませぬ。」
 春嶽公はぎりりと歯噛みした。
 「おのれ、横山〜〜。金がない金がないと言いながら、かけるところにはちゃっかり金をかけておるではないか!」
 春嶽公の脳裏に好々爺の顔で舌を出している横山の姿が、あたかも目の前にいるかのごとく浮かんできた。
 「よい!金に糸目はつけるな!じゃんじゃん値を上げて、小判ででこっぱちを叩いてやれ!」
 「はっ!」
 春嶽公だって政治総裁職なんて何するかわからない役職に就くに当たって、あちこちに周旋しなくてはならず決して懐が温かいわけではない。今回の出費は小さい掛かりではあるがそれなりに痛かった。
 茶坊主を買収しに行った側近は今度は意気揚々と戻ってきた。
 「殿!茶坊主の買収に成功しましてございます!」
 「よし、でかした!」
 これで容保公の動向は筒抜けだ。
 「……ところで、茶坊主にはいかほどかかった?」
 「金に糸目を付けるなとのご命令でしたので、50両ほど積みましてございます!」
 ドヤ顔で言ってのけた側近に、春嶽公は危うく膝から力が抜けそうになった。
 「ご、50両だと……?」
 一両で庶民が一年暮らせた時代である。物価が高騰しつつある昨今でも、50両ならかなりの金額である。
 (こいつには交渉するという能力が絶対的に欠けている)
 容保公を落としたら、こいつは絶対クビにする――と心に決めた。
 そして、決行の日がやって来た。あらかじめ買収した茶坊主がこっそり春嶽公の居る下之間を訪ねてきた。
 「肥後様はただ今御不浄に立たれました。先日はそのまま御不快とのことで大樹様より許されて下城されております。」
 「なるほど……」
 先だって桜田門外で討たれた井伊大老と容保公は親交があったようで、その縁で若い家茂公からやたらと好かれていた。初っ端から印象の悪い一橋公とは大違いである。
 (この間はそれで逃げられたか!)
 春嶽公はすっくと立ち上がり、豪奢な絹の袴の股立を取って走り出した。はっきり言って大名としてありえない。
 (甘いな、肥後殿。逃げられれば追いかけたくなるのが野生の本能よ!)
 なぜ江戸城内で野生の証明をしなくてはならないのかは不明だが、春嶽公は今や獲物を追い詰める猛獣になりきっていた。そして下城口まで全速力で一気に駆け抜けた。途中で誰かに声をかけられたような気がして振り返ると、目を丸くした容保公の姿があっという間に小さくなっていった。
 「なにっ、肥後殿だと?!
 春嶽公は急ブレーキをかけた。車もそうだが人だって急には止まれない。一間ほど前方に滑った春嶽公は、足の裏に焼けるような熱と布が焦げる臭いを感じた。思わず足の裏を見ると、白い足袋が焦げている上に穴まで空いていた。
 
 
 「おや、これはこれは越前守様、先程は何やら戦にでも出られるような勇ましいご様子でしたが、いかがされましたか?」
 色白の面に人の好さそうな笑みを浮かべた若い藩主は、おっとりと茶碗を手に菓子を摘んでいた。
 「――てっきり、お帰りになられたのかと思いましてな。」
 「左様でございましたか。それは異なことでございますな。なんぞ行き違いでもございましたか。」
 さては茶坊主に図られたか、と思ったが後の祭りである。今はとにかく『切り札』を使って、容保公を説得することが重要である。
 「まあ、それはさておき、今ここでお会い出来てようござった。肥後殿にはぜひとも余人を交えず話がしたかったのでな。ふふふふふ……」
 今から容保公の泣き顔が目に浮かぶようで、春嶽公は嗜虐的な悦びに思わず笑いが漏れてしまった。
 「ふ、二人きりでなんて……破廉恥なっ!!私の操は敏姫に捧げておりまするっ!」
 甲高い悲鳴を上げて、ずざざざっと後ずさり両手で体を抱きしめる容保公に、春嶽公は危うく畳の上につんのめりそうになった。
 「誰がっ、そこもと相手にナニをしたいかっ!!
 春嶽公は思わず怒鳴った。その怒声に容保公が怯えたうさぎのようにプルプル震えた。
 「……話とはほかでもない。京都守護職就任の件でござる。今までなにやらかにやらと辞退を申し出られておられたが、もちろん肥後殿は藩祖土津公の定められた『御家訓』はご存知であろうな?」
 
 ――大君の儀一心大切に忠勤を存すべく、列国の例をもちてみずから処すべからず。
 
 なんて素敵な響きだろう、と春嶽公はうっとりとした。
 「もちろんでございます。」
 容保公は顔色も変えずに神妙な顔で頷いた。もっと動揺して蒼くなるだろうと予想していた春嶽公は「おや?」と不審に思った。
 「ならば、将軍家の一大事によもや守護職の話をお断りなさるなどということはなさいますまいな?そのようなことがあらば、土津公のお怒りを受けようというもの。」
 さあ、どうだ、とばかりに言い切ると、容保公はふっと諦めたように小さくため息をついた。
 「『御家訓』を出されては致し方ございますまい……」
 まるで必殺技を繰り出す前のヒーローのようだ。
 「――出てよ、横山っ!!
 一瞬、本気で横山が出てくるかと春嶽公はびくりと体を強ばらせた。
 「それ、ここで出しちゃダメでしょっ!!
 ちなみに、ここは大名しか入れない場所である。
 「……というのは冗談で。」
 こほんと一つ咳払いをすると、容保公は憂い顔で言った。
 「私は公方様の御ために一身を擲つ覚悟はいたしておりますが、藩主としては何分若輩の身で、家臣どもを納得させることができませぬ。つきましては――」
 ひたと春嶽公の顔を見つめた容保公は、ずざざざっと春嶽公ににじり寄ってその手をひっしと掴んだ。
 「私に代わって、家臣どもを説得してはいただけませぬか!」
 「なんでっ?!
 これ以上横山に付き合いたくないから、わざわざ一人きりのところを狙ったのに、何が悲しくて今さら横山と話をしたいものか。
 「ああっ!世継ぎもないのに隠居させられちゃったらどうしよう……!」
 そんなわけあるか!と言いたいところだが、ここでごねられても面倒なので、春嶽公はため息をついた。
 「肥後殿はお役目をお受けする所存であることは間違いございますまいな?」
 「ええ。」
 「それでは、わしがその旨家臣どもに申し伝えればよろしいのですな?」
 「お願いできますれば。」
 「――わかりました。いたしましょう。」
 「かたじけのうございます。なにせ、事が事だけに国元から鬼のように怖い国家老が、今まさに早駕籠で会津から接近中でございますれば、私も今から生きた心地がしなくて……」
 「――え?あの、その……横山殿だけではないのですか?」
 「はい。高遠時代からの古参の重臣で、柔術の達人の上当家の御家流である溝口流の免許も持っていて、顔も達磨みたいに怖いんです――西郷っていうんですけど。」
 「それを説得しろと?」
 「はい!」
 そう答えた容保公は、未だかつて見たことのないいい笑顔であった。
 春嶽公は新たなゴングが鳴ったのを確信した。
 
 
 「しかし、敵もなかなかやりますね。」
 梶原がそう言うと、横山は渋い顔をした。
 「『御家訓』の内容が知られた時点でこちらの負けじゃ。じゃが、負けたからといってタダでは起きんぞ。」
 「でも、あの茶坊主も50両ふっかけるなんて。図々しいことですね。」
 「なぁに。あちらには痛くも痒くなかろうよ。」
 「しかもこちらは一銭たりとも身銭は切りませんでしたよね。さすがは横山様です。どういうからくりですか?」
 「ふん、三馬鹿のやることなどたかが知れてるわ。」
 「『三馬鹿』って?」
 「異国のことをよく知りもしないのに『攘夷、攘夷』と囀る水戸や、そんな水戸に煽てられて天狗になった一橋、その尻馬に乗った福井の三馬鹿じゃ。」
 「うわ〜、すごいこと言いますね……でも、その流れで行くと、殿の兄上でいらっしゃる尾張様もお仲間に入りますが……」
 「主だったのはその御三方であろうが。ま、どうせあちらは茶坊主使ってこちらを探ろうとするだろうと思ったから、茶坊主に囁いてやったのよ。『越前様はきっとそこもとに賂を渡そうとするであろう。その時に、会津からはもっともらってるという素振りを見せてやるとよい。さすれば、あちらが勝手に値を釣り上げてくれよう』とな。」
 「でも、その提案をばらされる心配はなかったんですか?」
 「あやつらも会津にたかるより福井にたかった方が身になることがわかっておるのだろ。」
 横山はずずずっと茶を啜った。そして地獄の底から聞こえてくるようなおどろおどろしい声音で呟いた。
 「こうなったら守護職を引き受けねばならぬが会津の定め。ならば、このくらいの嫌がらせくらい許されるであろ。」
 春嶽公が聞いたらどう思うかは微妙なところである。
 横山は福井藩の手の者がやたらと会津のことを調べているという知らせを忍びから聞かされ、おそらく御家訓を知られるのも時間の問題とわかった時点で腹をくくった。
 (もう引き伸ばせない)
 そのことは容保公にも告げた。容保公もここで腹をくくった。病弱ではあるが肝の座った人である。
 「こちらは京都を墳墓の地とする覚悟で臨むのですから、幕府から毟れるものは毟ってくれましょうぞ。ついでに、最後の最後まで越前様にはいや〜な思いをしていただきましょう。」
 横山は主の御前でそう宣言したのであった。
 「それで、頼母殿をぶち当てると?」
 「怒れる猪の如き勢いでこちらに向かってるそうだ。楽しみじゃのぉ。」
 ふぉっふぉっふぉっ、と笑う横山を見ながら、梶原は肝に銘じた。
 (俺が会津を率いる時の座右の銘は『転んでもタダでは起きない』にしよう)
 
 
 
久しぶりに何か山南さん関係のSSでも……
 
と思って過去の作品を振り返ったら、upしたと思っていたものが残っていたので、
 
「ラッキー」と思ってupしました。
 
これも完結したいシリーズだったなぁ……

かたつむりシリーズ10

悋気も嫉妬も正直の心より起こる
 
 近藤の襲名祝いの野試合も終わり、一同は宿場の茶屋を借り切り府中宿の遊女たちを総揚げにしての乱痴気騒ぎとなった。中にはちゃっかり天然理心流とは関係のない者たちも混じっていたが、そこで目くじらを立てるのは野暮と言うものだ。
 だがしかし、と土方は思う。
 「さっきの試合、すごかったですね!私も出たかったなぁ!」
 「あはは、じゃあ平助も理心流に入門する?私は大歓迎だけど。」
 「え〜、でも、私まだ北辰一刀流で免許いただいてないですから……。」
 先ほどから山南の隣には千葉道場時代の弟弟子だという藤堂が腰を据えて動こうとしない。にこにこと藤堂と話している山南の顔は常になく赤い。というか、試合に参加した者たちのほとんどが宴会が始まる以前にすでにほろ酔い状態であった。なにせ、お互いあちこち打ち身やら捻挫やらをこしらえていたので、門人である佐藤彦五郎が土方の実家で作っている「石田散薬」を振舞ったのだ。熱燗と一緒に服薬するという性質上、下戸にはいささか不親切であった。
 「ねえ、お兄さんお酌をどうぞ。」
 白粉の匂いをぷんぷんさせた遊女がお銚子を手にしなだれかかる。
 「俺はのまねえんだ。よそへ行きな。」
 何人目か忘れたが、同じようなやりとりを繰り返している。柱を背にして座り込んでいる土方は、先ほどからちっとも面白くない。広間の真ん中で原田がなぜか褌一丁で踊っている。永倉と沖田と井上がそれを見ながら手を叩いて囃し立てている。上座の近藤は大先生や紅白両軍の大将を務めた佐藤彦五郎と荻原糺らと楽しげに談笑している。あの輪の中に入っていけばそれなりに楽しいのだろうと思うのだが、土方は根が生えたようにその場から立つことができなかった。
 「歳さん、せっかくの宴会だってのに辛気臭い顔をしてなさるね。」
 そう言って隣に座ったのは伊庭であった。
 「辛気臭くて悪かったな。俺はもともとこういう面だよ。」
 土方の拗ねた言い方に伊庭は笑った。土方の視線の先を見て、試合の始まる前に見た光景を思い出す。
 「なあ、歳さん。あんた山南さんにほの字だって本当なのかい?」
 伊庭の言葉に土方はぎょっとしたように振り向いた。
 「新八っさんと左之さんが教えてくれたよ。」
 「な、な、なんであいつらが……!!
 土方としては自分の秘めたる思いは近藤くらいにしか気づかれていないと思っていたのだ。
 「え?知らなかったの、歳さん?」
 伊庭が話を聞いた限りでは、試衛館の中で土方の思いに気づいてないのは思い人である本人だけという感じだったのだ。
 「いや、そんな、俺は、あいつらに一言もそんなことは言ってない。」
 「言わなくったってわかるだろうさ。それにさっきから歳さん、山南さんのことばっかり見ていなさるじゃねえか。あんだけ熱心に見つめてるのを見りゃあ、おいらにだってわかるってもんさね。」
 動揺のあまり視線がさ迷い出した土方の様子に伊庭は言葉を失った。ここ数年来の悪所通い仲間だった土方のこんな初心な姿を見るのは初めてであった。見ている伊庭のほうが照れくさくなってくる。
 (気づかれてないと思っていたこと自体びっくりだよ、歳さん)
 「じゃあ、念のために聞くけど、違うのかえ?」
 「えっ……」
 他人から面と向かって訊かれたことがないのか、土方は伊庭を見たまま固まってしまった。
 「おや、伊庭の若さんも来てたんだね。」
 不意に柔らかい声がかかって、伊庭は声の主を見上げた。酒のせいかほんのり顔を赤くした山南がにこにこ笑いながら立っていた。
 「ああ、山南さん。ご機嫌そうですね。」
 伊庭がそう言うと、山南は頷いた。
 「今日のお酒は美味しいからね。若さんも飲むかい?」
 そう言って山南は手に提げていたお銚子とお猪口を掲げて見せた。ふと隣りに目をやると、気の毒なくらい首まで真っ赤になった土方が石のように固まっていた。
 「山南さんはいけるクチなんだ、意外だな。」
 ありがたく酌を受けた伊庭に、山南は笑った。
 「私の故郷は酒どころでもあるからね。わりと強いんだよ。いつもは飲み過ぎないように注意しているんだけど今日は無礼講だからね。」
 「そうなんだ。そういや、連れのお若いのはどうしなさった?」
 「ん?平助のこと?なんか、話の途中で酔い潰れちゃったみたいで……。」
 振り返った山南の視線の先には藤堂が丸くなって寝入っていた。見れば広間のあちこちに同じようなマグロがごろごろと転がっている。
 「あれ?土方君も飲んでたの?珍しいね。」
 顔を真っ赤にした土方に気づいた山南がきょとんとした顔をしている。
 「いや、俺は――」
 すっかり平常心を失ってしまった土方は当の思い人の登場に、もはや挙動不審になっている。
 「じゃあ、君も一献どうぞ。」
 山南は伊庭が返したお猪口を土方に差し出した。この状況で「飲まない」という選択肢は土方になかった。意を決したという顔でお猪口を受け取った土方に、山南はご機嫌でなみなみと縁いっぱいまで酒を注いだ。
 (うわー、歳さんって酒は舐める程度しか呑まないのに……)
 わざとなのか好意なのか、山南は縁から酒がこぼれないぎりぎりまで注いだのだ。土方は大きく一つ深呼吸をして一気にお猪口を呷った。
 「と、歳さん、まずいって!」
 伊庭は慌てて止めたがすでに土方は中身を飲み干してしまっていた。
 「いやぁ、いい呑みっぷりだね。君が呑めるんだったら、一緒に呑みに行ってもよかったねえ。」
 あいかわらず上機嫌の山南がそんなことを言う。その言葉に土方がびっくりしたように目を見開く。酒のせいかほかの理由か、土方の顔が茹蛸のようにさらに赤くなっている。
 「歳さん、大丈夫かえ?」
 そっと窺うと、土方の目はもはや焦点が合っていないように見えた。心なしか体もぐらぐら揺れているように見える。
 「土方君?」
 さすがに様子がおかしいと思ったのか、手酌で飲んでいた山南もお猪口を置いて土方の顔を覗きこんだ。
 「うわっ。」
 次の瞬間、土方が唐突にがくりと前に倒れこんだものだから、ちょうど正面にいた山南が慌てて体を支えた。
 「あちゃあ、やっぱり潰れちまったか!」
 伊庭はため息をついた。呑めないなら呑めないとはっきり断ればよいものを。
 「やっぱりダメだったんだ。ヘンだな〜とは思ったんだけど……。」
 元凶である山南が申し訳なさそうに呟いた。
 「別な部屋で横になれるようにしてあげたほうがいいかな?」
 ここだと酒臭いし、と山南が首を捻っているのを見た伊庭は、はたと思いついた。
 「いんや、ここに寝かしておいてやったほうがいいと思うぜ。」
 「そうかい?だって煩いし酒臭いし、静かなところで寝たほうがいいんじゃないのかな?」
 「いやいや。ほら、歳さんって色男だからさ、金払ってでも相手をして欲しいって女がけっこういるんだよ。一人で寝かせておいたら、勝手に寝床にもぐりこんですき放題されちまうかもしれないからさ。」
 伊庭の言葉をぽかんと聞いていた山南だったが、話の内容が理解できると頬を赤くした。
 (うわー、こっちもいい大人なのになんて初心な反応なんだ。おいらなんだか自分が汚れちまってるような気がしてきたぜ)
 伊庭は苦笑した。
 「だからさ、山南さんさ、側にいて歳さんが女どもにいたずらされないように見張っててやってよ。」
 「う、うん。」
 「それじゃあ、よろしく!」
 そう言うと伊庭は立ち上がった。ここはさっさと退散すべきである。振り返った伊庭が見たのは、土方を柱に凭れさせるように座らせた山南が、どこか楽しげに手酌で呑んでいる姿だった。
 「伊庭さん、意外にお節介なんですね。」
 いつの間にか側に来ていた沖田がにやにやしながら声をかけてきた。
 「なんでえ、見てたのか。」
 「ええ、面白かったんで。」
 伊庭が不思議そうに見上げると、沖田はいたずらっぽく笑った。
 「山南さんってば、歳さんが伊庭さんと話し始めたの見て、急にそわそわしちゃって。連れの子わざと酔い潰して歳さんのところに行ったんですよ。」
 「本当かい?」
 「ええ。私見てましたから。でも、山南さん気づいてないんだろうなぁ。自分が焼餅やいたって。」
 伊庭が土方を見つけたとき、土方は山南だけを見ていた。山南はまったく土方のことなど見ていないように見えたのだが――
 「あの距離でお互いに気づかないなんてないでしょ。」
 互いの声が聴こえる距離で、互いに相手のことを探っていたのか。
 (なんとまあ不器用なお人たちだ)
 「ふふ。ほら、ごらんなさいよ。」
 沖田の声に振り向くと、いつの間にか山南の肩に頭を乗せて寝入っている土方と、それを嫌がる風でもなく支えている山南の姿が見えた。
 「なんだか馬鹿らしくなってきたよ、おいらは。」
 「放っておけばいいんですよ。あれであの人たちは楽しいんだから。」
 なるほど、と伊庭は得心した。
 
  ――焼餅も嫉妬もあなたを真剣に思っているから

久しぶりに……

本日お会いしたRさんが、「大河面白いよ」と仰ってたので、
 
そういえば何度も見忘れてるな〜と思いだし、今夜は久しぶりに見てみることにしました。
 
(最初の3回くらいしかちゃんと見ていなかったので)
 
いや、面白いですよ。いろいろとむさくるしいのは否めないですが。
 
わたくし的には璋子様と得子様と上皇様のドロドロがなかなか面白かったです。
 
あと、佐藤義清!未来の西行、いいですね〜。
 
なにあの清盛と仲よさげな感じvちょっとツボでした。
 
わたくしは「西行×崇徳院」押し(!)だったのですが、
 
新たに「清盛×義清(逆も可)」も有りだと思いました
 
この二人のやりとりを見るために大河を見続けてもいい!と思うくらい(笑)
 
夏あたりに同人出てないかな……
 
来週はヤマコーさんの頼長出てきますね(実は楽しみだった)。
 
 

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