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東国の古代史
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前回は美しい榛名山も恐ろしい一面があったことに触れました。しかし、火山による温泉や地熱そのものを利用する事も可能で、マイナス面ばかりではありません。我々の生活に直接の恩恵はないものの、古代史を解明しようとするときにも役立つことがあります。
遺跡というのは地下に埋もれている場合が殆どですが、ある遺物が出てきたときに、其の遺物が埋もれた時代を知る事が基本です。でもそれは簡単な事ではありません。
 
古い文献に記載されている事でしたら文献から分かるかも知れませんが、そんな事は稀です。どうするかと云うと、同じ地層から出てくる土器などの特徴から類推するのです。土器の形状、文様、製作技法などから、製作された時代の前後関係を推定し、時間軸上に並べたものを土器編年と呼びます。出土した土器形式をこれと比較して時代推定を行うわけです。
 
でも土器編年はピンポイントで時代確定できる訳ではありません。実態を云えば、最小でも20〜30年の範囲を持った推定値でしか出す事が出来ません。時にはもっとラフな見積もりになります。形式分類毎の前後関係は正しくても、絶対年代を保証する手法ではないのです。また、最大の欠点は遺物の近くに土器自体が無いと成り立たないと云う事です。
 
以下は土器編年と、それから推定される年代です。
 
土器形式     推定年代               出来事
 Ⅰ式   5世紀第3四半期(450-475).......
 Ⅱ式   5世紀第4四半期(475-500).......埼玉県稲荷山古墳、群馬県三ツ寺遺跡
 Ⅲ式   6世紀第1四半期(500-525).......Hr-FA、 群馬県御布呂遺跡
 Ⅳ式   6世紀第2四半期(525-550).......Hr-FP、 群馬県黒井峯遺跡
 Ⅴ式   6世紀第3四半期(550-575)
 Ⅵ式   6世紀第4四半期(575-600)

それに引きかえ、火山灰の地層に遺物が埋もれていたらどうでしょう。もし噴火が起きた絶対年代が分かれば、遺物が埋もれた時代もおのずと分かります。仮に遺物が火山灰の中になくとも、火山噴火より以前なのか、以降のなのかという事は確定します。それだけでも有効なことが多いのです。つまり、火山現象は“タイムスタンプ”として利用しうるという事です。

以下は群馬県地域の火山噴火による災害年表(クリックで拡大)です。
 
イメージ 1
 
 
時間軸の中に此れだけの定点指標候補があります。しかし、新しい時代のものは文献で年代がはっきり分かっていますが、古墳時代以前のものは噴火の絶対年代を知るのも大変です。しかし、噴火は地表の植物を必ず巻き込み、火山灰はそれらをパックしてしまうので年代特定が可能な場合もあるのです。私が知る限りでは、現在、年代を決める方法には2つあります。
 
①14C測定法
噴火による炭化物や枯死した木材の中の放射性同位元素の含有量を測って年代を測定する方法です。自然界には常に一定量の質量数14の放射性炭素が存在しています。この炭素は非常にゆっくりと崩壊する性質を持っています。一方、生きている樹木の中には空気中と同じ比率で一定量の炭素14が含まれます。樹木が枯死すると以降は代謝がなくなるので、樹木中の炭素14は崩壊が進んだ分だけ量が減ります。この量を測定する事により、枯死した年代を測定します。
この測定法は誤差が大きいのですが、最近は較正技術が向上しており、従来よりも精度が向上しているようです。14C測定値は予め年代差の判明してる資料の測定値で較正しないと信頼性が上がりません。多くの年輪を持った試料等、較正のためのサンプルを多数揃えられるか否かが測定精度に影響します。
 
イメージ 2
            放射性同位元素の質量分析装置
 
②年輪年代法
噴火によって地中に埋もれた杉や檜(ひのき)を発見して、その年輪から年代を割り出す方法です。年輪というのは一定の幅を持つわけではなく、年によって変動します。この年輪幅のゆらぎを測定して標準資料としてデータベース化しておきます。杉と檜に付いては2000年以上前までの年輪間隔パターンのスケールが出来あがっています。
これとサンプルを比較して相関係数を計算することによって、木材が埋没した時期を正確に計算できます。相関係数とは統計的手法による計算ですが、要は両者の変化パターンに関連性(一致性)がどの程度あるかを数学的に計算します。
因みに、年輪幅のゆらぎは日本列島程度の範囲なら、地域によって強弱の差があるものの、基本的な変化パターンは一致するという特徴を持っていることがミソです。但し、信頼性を上げるには、木材の外皮の部分が残っている、200年分以上の年輪を持つ杉や檜を見つける必用があります。完璧なサンプルがあれば、枯死したり伐採された年と季節まで確定できます。

以下の図は、標準パターン(黒線)と測定サンプル(赤線)の計測値をグラフ化して一致性の最も高い場所で固定しています。計算方法は、赤線グラフをずらしながら、黒線グラフと一致度の高い場所を計算しながら探し出します。この操作によって、サンプルの最外皮の板材の伐採年が特定できるわけです。判明するのは伐採年なので、材木が伐採後、どのくらい乾燥などのために放置されていたかは分かりません。例えば、建物の構築年代等は推定になるわけです。それでも、14C測定法などから比べると、その精度は非常に高いものと言えます。
 
イメージ 3
        サンプルの年輪幅のゆらぎと暦年標準パターンの比較
 
 

前述の表の中で榛名山の2回の噴火時期は以下のように書いてあります。
■Hr-FA=西暦495年
■Hr-FP=西暦520年
 
2007年に榛名山麓で工事中に噴火によって埋もれたブナやカエデ材が発見されました。実は、この値は木材を14C測定法で測定した結果なのです。測定は群馬大学の火山学者である早川由紀夫教授と遺跡分析などを専門に行っているパレオ・ラボという会社が共同で行っています。この成果報告の詳細は早川由紀夫教授のホームページで読む事が出来ます。(2009年に発表公開)
 
前述したように、従来、榛名山の噴火は6世紀前半くらいに2回あったと云われてきました。しかし、正確には絞り込まれていませんでした。今回、良質なサンプルを沢山使って値を出したのは初めてではないでしょうか?だからといって、このデータが絶対正しいとは言い切れませんが、測定の方法などを見ると従来値よりも信頼性が高い気がします。その測定結果は従来予想よりも早い時期となっています。
 
 
 

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