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「花の世界の無限の遠さ」(「同時代」19号、2006年12月)
特集「フォルムに宿る聖なるもの」のために書いたエッセイ。タイトルはノヴァーリスのフラグメントから採った。感覚的現実界(自然界)に存在するさまざまなフォルムと永遠との関係を探ったもの。いわば私の世界観原論を語ったもののように、今にすれば思える。
……雲や水の流動性を見ていると、植物にせよ動物にせよ、生命を持った存在が、固有のフォルムを獲得するために費やしてきた途方もない歳月を思わずにはいられません。そしてわたしは、このような世界を創造した神を讃美せずいはいられない。書物や典礼を通じてではなく、自然界の観察を通して神を考えることができるようになったのは、息子を授かったおかげです。『ファーブル昆虫記』も、わたしにとっては、これほどおもしろい神学の書はないのです。
……花の世界の無限の遠さ。地上に咲き誇る花々が、徐々に萎れ、変色し、縮れ、最後には風に吹かれて飛び去る塵と化すように、わたしも、そしてわたしの息子たちも、いつか土に帰ります。無からの形成、そして無への衰微。そこにかかわる目に見えぬ力を思うとき、今ここに現存する生命(フォルム)たちは、無限に遠い聖なるものとかかわっている――そんなふうに思えてならないのです。
この文章は、「現代詩手帖」の詩誌月評で、杉本徹氏が過褒とも感じられるほど好意的に取り上げてくださった。
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