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芸術家について考えてきましたが、実践美学の立場からすると、世界を美化する仕事は、画家や俳優、音楽家といった芸術家だけに委ねられたものではありません。
芸術家は、会社員や公務員、農家や工場労働者といった職業人とは違う世界の人々であるという先入観がわれわれにはあります。そこでは、ある種の貴族化、聖別化が行われているわけです。しかし、世界美化という視点からは、美化という行為を、むしろ庶民化、世俗化してみる必要があるでしょう。
植木職人、理容師、料理人、清掃員、ゴミ収集人、内装業者、クリーニング業、貸衣装業、公衆浴場といった業種が、世界美化に従事していることは、ちょっと考えてみれば明らかでしょう。
世界美化を、職業からも自由に考えると、花に水をやる、部屋を片付ける、靴を磨く、洗濯をする、あるいは微笑むといった行為のひとつひとつが、世界を美化する実践であることも見えてきます。
このように考えると、世界美化は、劇場や美術館、コンサートホールのみならず、日常の世界こそが舞台であることがわかります。私がいる、今、ここの問題であることが見えてきます。
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