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私は私用があり新幹線に乗ることとなった。地下鉄の出口を昇るとそこには防護布を纏った東京駅がある。最も防護布という名前かどうかは定かではないが…とにかく分厚い灰色の布が東京駅を覆っていた。透き通るような青空に準ずるかのように寒さは凛としている。行き交う通行人は分厚い上着を纏ってそれぞれの目的地へと歩を進める。東京駅が分厚い上着を着てそれらの通行人を見守っているように私は思えてならなかった。
ー大寒を防ぐが如し防護布ー 思えば昔から東京駅は防護布を纏っているように思われる。 それもそのはず、東京駅をあまり使わぬせいか防護布を纏っている姿しか私の海馬には刻まれていないのだから。ともかく、東京駅はその分厚い防護布を纏った姿で私の旅路を送り出し帰還を喜んでくれた。だから分厚い防護布を被った東京駅こそ私の心の故郷なのだ。 たしか今年中に分厚い防護布ははがされるそうだ。激流のように移り変わる東京で変わらない防護布の姿で私の気持ちを満たしてくれた東京駅。 防護布という心の支えが無くなろうとしている今、悲観の思いで胸がびしょ濡れになりそうであるが…私を満たしてくれたその友の門出を心から祝いたいと思う。 |
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