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この作品は2004年8月9日より連載された
くだらない小説です。(笑)
■ コケコッコの夏 〜忘れないで〜
熱帯夜がネオンをさらに熱くする。
潮風もまったく感じられない。
横浜中華街、行き交う人々は笑顔が少なかった。
中華街の食べ放題は、オーダー式が多い。
出来立てのアツアツを好きなだけ食べる。
この贅沢を今夜、バトルとして争う二人が今、
一軒の店の前に立った。
「ここが万珍楼か・・・」
「おい、逃げるなら今だぞ・・・」
「何をおっしゃるウサギさん」
この二人の名は、鮎川光男と赤坂真治。
お互い顔を見合わせると、大きな朱塗りのドア
を引いた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。
どうぞこちらです」
チャイナドレス(夏用)を着たグラマーな店員は
時折見せる太ももを気にしながら、2階の特別室
へと案内した。
壁には水墨画とガチャピンのサインが飾ってある。
2年前にロケで来たとの事だった。
鮎川はガチャピンのファンだった。
「よーし、元気が出てきたぞ!」
赤坂は冷静沈着に席を引くと、ゆっくりと座った。
万珍楼の食べ放題は制限時間120分で2500円。
品数76品で人気の店の一つ。
昔プロレスラーのジャントニオ猪場とハレタ・コー
ガンが来てほとんどのメニューを食べつくすという
珍事があり、店主はほとほと困ったが、これが雑誌
で取り上げられ、大繁盛となったのである。
鮎川光男と赤坂真治。
前者は新日本鉄道の運転手。後者は地方紙の
新聞記者。
中学時代、陸上部のライバル同士で100Mを
11秒くらいで走る校内の人気者だった。
その中学校もいまでは廃校になり、ダムの底
に沈んでいる。
鮎川の口癖は「やるんだと!」で、赤坂のは
「忘れちゃった」であった。
忘れちゃったが口癖というのも可笑しなもの
であるが、とにかく物事をすぐ忘れる性質だ
った。
前菜の「冷やしトマトの四川風」を食べ終わる
と、次の料理が運ばれて来た。
二人は同じものを注文し、食べ続け、先にギブ
アップした方が、赤フン一丁で中華街を歩く
罰ゲームを賭けていたのだった。
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