ノマドの足跡

旅、落語、本などなど。思いつくまま書いたものです。

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柳家花緑『落語家はなぜ噺を忘れないのか』角川SSC新書、2008。


たいへんおもしろかったし、興味深い本でした。

花緑は、人間国宝にもなった五代目柳家小さんの最後の弟子で実の孫。
9歳から小さんに稽古を付けてもらっていたというサラブレッド。
22歳の時に史上最年少で真打ちに昇進したという記録を持ちます。
若い世代でもっとも実力・人気ともにある落語家の一人でしょう。
最近では永谷園のCMにも出てます。おじいちゃんとの「共演」で。

まず、そのタイトルに惹かれます。
「落語家はなぜ噺を忘れないのか」
落語家がどうやってあれだけたくさんの噺を間違えずに記憶することができるのか。
まだ落語初心者の私にとってはとてもとても興味のあることです。
花緑はこれまでに、145のネタを覚えたといいます。その、方法とは!
花緑の場合、噺を覚えるときに最初にまるまるその噺をノートに書き取るそうです。
本書にはそのノートの写真まで載っています。大公開です。
さらにその145のネタは、どれもいつでも高座にかけられるわけではないとのこと。
そこで花緑は、自分の持ちネタを3つのグループに分けて考えているそうです。
 ・「いつでも高座にかけられるネタ」
 ・「2〜5回さらえば高座にかけられるネタ」
 ・「高座にかけたことはあるが作り直す必要があるネタ」
そして自分が1年間で、どのネタを何回かけたか分析までしています。

また、これまで、師匠や何人もの先輩に稽古を付けてもらった逸話も紹介されています。
失敗談も含めて。
花緑もこんな失敗していた!そこのところも読み甲斐があります。

そのなかでも読みどころとしては、師匠であり祖父でもある五代目小さんにまつわる数々の逸話でしょう。
そこでは、人間国宝であり、師匠でもある「落語家」としての小さんだけでなく、
祖父であり家族である「人間」としての小さんが垣間見えます。
同時に、師匠でもあり祖父でもあることからくる、小さんとの微妙な関係がありのままに描かれています。
「好きなテレビを見せてくれない」「一人暮らしを許してくれない」
そんな、他愛もない不平がありのままに書かれています。
そしてそんな不満を、兄弟子でもあり尊敬する先輩である小三治にぶつけたときの逸話が、これまたいい。
小三治曰く、「おまえんとっては、単なるじじいだろ」。
それでもって、「どうしてもイヤだったら、俺んところへ来い」。
花緑の小三治にたいする尊敬の念と、小三治の不器用ながらも花緑を認めているところがよくわかります。
さらに小三治は、「小さんになっちまえばいい」とも。
かつて談志が志ん朝に対して、「志ん生になれよ」といったといいます。
なんかそれにオーバーラップしてます。
互いに認め合う師弟あるいはライバルの間での、不器用ながらも率直な敬意が表れています。

最後に、落語は「伝承芸」だと花緑は書いています。
しかしこれは、形式や様式つまり「かたち」を伝承していくだけではないといいます。
むしろそんなことはどうだってよくって、伝承すべきは江戸時代からたしかに存在した「お客さんを熱狂させる空間」だといいます。
つまり、落語の本質を「熱狂空間の再現」に見出しているわけです。
そのためには、着物を脱いでスーツを着て、座布団ではなくて椅子に座って、新作をやってもいいのではないか、とも。
まだまだ将来のある花緑が、伝承芸としての落語をきわめて、それをどのように変えていくのか。たのしみです。







柳家花緑『落語家はなぜ噺を忘れないのか』角川SSC新書、2008。

http://www.amazon.co.jp/落語家はなぜ噺を忘れないのか-角川SSC新書-52-柳家-花緑/dp/4827550530/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227782996&sr=8-1


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